性別や年代で異なる!ヘモグロビンの基準値とは?高い・低い場合の原因
健康診断で『ヘモグロビン』が基準値より低い、または高いと診断を受けることがあります。
この記事では、ヘモグロビンの数値が変動する原因や、引き起こす病気、日常生活の中でできる改善策について解説します。
血液内の重要な成分、ヘモグロビンの基準値とは?
1.ヘモグロビンとは
赤血球の大部分を占める物質
『ヘモグロビン』は、血液中にある『赤血球』の大部分を占める物質で、『血色素』とも呼ばれます。
『ヘム』という色素と、『グロビン』というたんぱく質からできています。
酸素を運ぶ役割を果たしている!
ヘモグロビンの最大の役割は酸素の運搬作業です。肺で取り込んだ酸素を全身へ届け、二酸化炭素を再び肺へと運んでいます。これを可能にしているのは、『ヘム』が持っている、酸素と結びつく性質です。
2.ヘモグロビンの基準値
ヘモグロビンの基準値は、次の通りです。性別や年代、女性の場合は妊娠中かどうかによっても異なります。
性別・年代 | 基準値 |
男性 | 13~16g/dl |
女性 | 12~16g/dl |
妊娠中 | 11 g/dL |
高齢者 | 11 g/dL |
小児 | 12g/dl |
3.ヘモグロビンが低い・高い場合の症状
基準値より低い場合の症状
ヘモグロビンが基準値より低いと、『動悸』や『息切れ』などの症状が起こります。
先に解説したように、ヘモグロビンは、全身に酸素を運び、酸素濃度を調整する役割を担っています。
それにより、ヘモグロビンの値が基準値よりも低いと、様々な細胞組織で、『酸欠状態』になります。これが動悸や息切れを引き起こす原因です。
基準より高い場合の症状
ヘモグロビンの値が高すぎても、かえって血液の流れが悪くなり、血管が詰まる恐れがあります。
ヘモグロビンを含む赤血球は、個体の成分です。そのため赤血球が多すぎると、血液がドロドロに濃くなり、血液の流れも悪くなります。
長い間この状態が続くと、血管の中に『血栓』ができて、『動脈硬化』を引き起こす原因にもなります。
また、赤血球増加症(赤血球が増える病気)を引き起こすと、頭痛やめまい、ほてりなどの症状があらわれることもあります。
4.ヘモグロビン濃度が低い原因とリスクについて
原因は主に「鉄不足」
ヘモグロビンの濃度が低い原因は、主に『鉄不足』です。
『鉄』は体内で合成することができない物質のため、食事で摂取する必要があります。
また、鉄はヘモグロビンをつくる材料でもあります。そのため鉄不足が続くと、ヘモグロビンが作られなくなってしまいます。
食生活の乱れが、ヘモグロビン濃度の低下を招くのです。
その他「出血」も原因になる
その他、出血によってもヘモグロビンの濃度が低下することがあります。
出血は外傷だけでなく、『胃潰瘍』や『十二指腸潰瘍』、『潰瘍性大腸炎』など消化器官の病気、また、女性は『生理』や『出産時』などによっても起こります。
出血が生じ、血液自体が減少することで、ヘモグロビンの濃度が低下することがあります。
ヘモグロビンが不足すると、貧血になりやすい
そもそも貧血とは、『血液中のヘモグロビン濃度が減少している状態』のことです。
ヘモグロビンが不足すると、身体各部の組織・細胞に十分な酸素を供給することが出来なくなり、貧血となります。
中でも『鉄欠乏性貧血』は、鉄不足によりヘモグロビンが低くなることで起こる代表的な病気です。鉄分の不足が、鉄欠乏性貧血を引き起こします。
5.ヘモグロビン濃度が高い原因とリスクについて
体内の酸素が少なくなることが原因
ヘモグロビン濃度が高い原因は、『体内の酸素が少なくなっている』ことです。
激しい運動をした後や、標高の高い所で暮らしている、という場合は、体内の酸素が減り、ヘモグロビンが増える傾向にあります。
その他、妊娠や喫煙、脱水などが原因となることも
他に、『妊娠中』や『喫煙者』、『ストレスによる高血圧』などに当てはまる人も、ヘモグロビンの濃度が高くなりやすいです。
また、『脱水』により体の水分量が減ることで、相対的にヘモグロビンの濃度が高くなることもあります。
白血病や骨髄の病気の可能性もある
血液が正常に作られなくなる『白血病』や、骨髄の病気にかかっている可能性もあります。
ヘモグロビンが増えると、多血症や心筋梗塞などのリスクが!
ヘモグロビンの濃度が高くなると、『赤血球増加症(多血症)』にかかりやすくなります。
また、ヘモグロビンの濃度が高くなると、血液は濃く、ドロドロの状態になります。そのため、『心筋梗塞』や『脳梗塞』など、血管が詰まることで起こる病気にかかりやすくなります。
ヘモグロビンの数値を改善したい!どうしたら良い?
1.ヘモグロビン濃度が基準値より低い場合の改善策
食事で動物性の鉄分を補給する!
ヘモグロビン濃度が低い場合は、食事で『鉄分』を補給することが大切です。
鉄分には、植物性の食品に含まれる『非ヘム鉄』と、動物性の食品に含まれる『ヘム鉄』の2種類があります。非ヘム鉄は、体内で吸収されにくいので、動物性のヘム鉄を積極的に摂るようにしましょう。ヘム鉄は『レバー』や『牛もも肉』、『魚の血合い部分』などに多く含まれています。
ビタミンB6やビタミンB12、葉酸もあわせて摂る
たんぱく質の代謝にかかわるビタミンB6やB12、葉酸などが不足して、ヘモグロビンが減少することもあります。
あわせてこれらの栄養素も摂るよう心がけましょう。
ビタミンB6は『ニンニク』や『唐辛子』などの香辛料に多く含まれています。ビタミンB12は『しじみ』や『アサリ』などの貝類、葉酸は『レバー』に多く含まれています。また、魚類、牛乳・乳製品は全般的にこれらの成分が含まれています。
もちろん、これらだけに偏らないように、その他の栄養素もしっかり摂ってください。
2.ヘモグロビン濃度が基準値より高い場合の改善策
喫煙、ストレスなど原因を突き止めることが大切!
ヘモグロビン濃度が高い場合は、その原因を突き止めることが大切です。
先に解説したように、『喫煙』や『ストレス』も、ヘモグロビンの濃度を上げる原因になります。こうした生活習慣を見直してみましょう。
こまめに水分を補給し、脱水を防ごう
また、脱水が原因である場合もあります。こまめに水分を補給して、血液が濃くなりすぎないように注意しましょう。
まとめ
ヘモグロビンの濃度が基準値より低かったり高かったりしても、「貧血だから」などと大して気にしない人も多いかもしれません。
しかし、病気が隠れている可能性もあります。定期的に検査を受け、数値の変化を追っておくと良いですね。
ヘモグロビンの濃度は、生活習慣を見直すことで改善することも多々あります。食生活や喫煙、ストレスなどの生活習慣について見直してみましょう。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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