動悸、息切れ…肺うっ血の症状とは?原因や肺水腫との違いについて
『肺うっ血』は、心臓と肺の両方にかかわる病気です。
心臓と肺には、密接な関係があります。心臓と肺とが血管でつながっている、ということを知っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、肺うっ血とはどのような状態か、また、進行度ごとの症状や原因についても解説します。
肺うっ血について
1.肺うっ血とは
『肺うっ血』は、心臓の機能不全によって、肺を循環する血管の中の血液量が増えた状態です。
肺から心臓の『左心房』へと血液を送る『肺静脈』の血流が悪くなることで生じます。
2.「肺水腫」と肺うっ血はどう違う?
肺うっ血との区別が難しい病気に『肺水腫』があります。
肺水腫は、肺うっ血が進行して、血液中の液体成分が、血管の外へと染み出して肺にたまった状態のことです。
肺うっ血と肺水腫とをはっきり区別するのは難しいです。血管の持つ透過性によっても、病状は異なってきます。
3.肺うっ血にかかる原因
貧血や妊娠などが原因の場合は、重症化しづらい
肺うっ血の原因としては、『貧血』や『甲状腺中毒症』、『妊娠』、『動静脈短絡』などがあります。これらが原因の場合、重症化することはあまりありません。
心不全などが原因の場合、肺水腫へ移行することも
原因となる心臓の病気は、『左心不全』や『僧帽弁狭窄症(そうぼうべんきょうさくしょう)』などがあります。こうした心臓の病気が原因の場合、肺うっ血から肺水腫へと移行することがあります。
そのほかの原因。病気や栄養失調、高血圧など
上記以外に、『呼吸不全1種』や『急性呼吸促迫症不全症候群(ARDS)』、『栄養失調』、『高血圧』などが原因となることもあります。これらが原因の場合、『黄疸』や『腹水』などの症状から重症化する可能性があります。
4.肺うっ血の症状
軽症の場合、軽い運動での動悸や息切れなど
肺うっ血が軽症であれば、階段や坂道を登るときなど、軽い動作や運動をしたときに『動悸』や『息切れ』、『息苦しさ』などの症状が生じます。
中程度になると、横になったときの呼吸困難が生じる
中程度の肺うっ血の場合、夜間、横になると『呼吸困難』の症状があらわれます。
これは横になって、体が水平になると、普段は重力によって下半身にたまっている血液が急に心臓に戻ってきて、肺うっ血の程度が重くなることが原因です。そのため、座っているほうが楽に感じます。
重症の場合、安静時も呼吸困難になり、チアノーゼが生じる
重症の肺うっ血の場合は、座ったり安静にしたりしていても、呼吸困難が起こりやすくなります。
加えて、唇や爪が紫色になる『チアノーゼ』が生じます。また、呼吸音とともに、『ゼーゼー』、『ヒューヒュー』という音が聞こえるようになります。この症状のことを『心臓喘息』と呼びます。
呼吸困難や心臓喘息があらわたら、すぐに治療が必要!
呼吸困難や心臓栓塞があらわれるのは、肺うっ血の中でも重症であるサインです。肺水腫へと進行していることが多く、緊急に治療する必要があります。
肺うっ血の治療について
1.肺うっ血の検査法
聴診
胸に聴診器をあてて、胸の音を聞きます。肺うっ血の場合、胸全体から、ゴロゴロという音が聞こえます。
胸部レントゲン検査
肺うっ血にかかっていると、胸の中心あたりの『肺門部』に、境界の不明瞭な影がみられます。
呼吸機能検査
呼吸について調べます。肺うっ血の場合、呼吸数の増加や、肺活量の減少、肺のふくらみやすさ(『コンプライアンス』)の低下がみられます。
2.治療について。入院は必要?
原因となる病気に対する治療を優先
肺うっ血を引き起こす原因となっている、病気や症状に対する治療を優先します。
入院して、酸素吸入や強心薬、利尿剤で治療する
また、治療中は入院することが望ましいです。
入院して、可能な限り心臓や肺への負担を軽くします。そのうえで、『酸素吸入』や心臓の機能不全を回復する『強心薬』、過剰な水分を尿から出やすくする『利尿剤』などを投薬します。
呼吸症状が改善しなければ、人工呼吸器が必要になることも
上記の治療を行なっても、呼吸症状が改善しない場合は、人工呼吸器の使用が必要になることもあります。
肺うっ血の再発について
1.肺うっ血は再発することがある?
症状が改善しても、原因となる病気が治っていない場合や、医師の指示に従った通院・薬の服用をされない場合は、再発する可能性があります。
症状が治まっても、きちんと医師の指示に従いましょう。
2.再発予防のため、定期的な診察を
肺うっ血の再発を予防するには、定期的に医師の診察を受けることが大切です。
体調が良いからといて、自己判断で薬の服用を止めたり、運動量を増やしたりすることは絶対に避けてください。
まとめ
肺うっ血によって生じる症状は、重篤なものも多く、入院が必要になります。
呼吸するときに違和感がある、爪や唇が紫色になるなど、体調の変化があれば、病院を受診しましょう。また、心臓病などにより日常の制限がある人や投薬治療を受けている人は、必ず医師の指示に従って治療していきましょう。
執筆・監修ドクター
経歴1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年-2012年3月 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年4月 岡村医院、医師として勤務
2012年7月 岡村クリニック開院
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