あなたの生活習慣、大丈夫?「動脈硬化症」の治療や予防法とは?
『動脈硬化症』をご存じですか?
『メタボ』という言葉が浸透してから、この病名をよく耳にするようになった、というかたも多いのではないでしょうか。動脈硬化症は、食生活や運動習慣、喫煙、ストレスなどが原因で発症する『生活習慣病』のひとつです。
こちらの記事では、動脈硬化症を引き起こす原因や、自分でもできる治療法について解説します。
動脈硬化症について
動脈硬化症とは、その名の通り、『動脈が硬くなる』病気です。
1.動脈のはたらき
『動脈』は、心臓から送り出される血液が流れる血管のことです。
動脈がポンプのように収縮を繰り返す(『拍動』)ことによって、血液はスムーズに流れています。
2.動脈が硬くなると身体に起こる変化
臓器や組織に必要な栄養が届かなくなる
動脈硬化症になり、動脈が硬くなると、ポンプ作用がスムーズにはたらきません。また、血管の壁に脂肪などのかたまり(『プラーク』)が蓄積することで、血管の一部が盛り上がって、血管内側が狭くなったり、血管自体が細くなったりします。場合によっては血管が詰まってしまうこともあります。
その結果、臓器や組織に必要な、酸素や栄養分を送ることができなくなり、命に危険が及ぶこともあります。
動脈が破れやすくなる
健康な状態であれば、動脈は、簡単に破れない強さを持っています。しかし、動脈硬化症になると、硬くなることでかえって血管はもろくなり、破れやすくなります。
このようにして動脈硬化症は、さまざまな血管系の病気にもつながるのです。
3.動脈硬化症が引き起こす合併症
動脈硬化症になると、心臓に大きな負担がかかり、『高血圧』や『心肥大(ひだい)』『心不全』などの病気を引き起こします。
また、臓器や体の組織が正しく機能できなくなることで、『心筋梗塞(こうそく)』や『狭心症』、『脳梗塞』などを引き起こす可能性もあります。
さらに、血管が破れてしまうと、『大動脈解離』や『くも膜下出血』などの病気へとつながります。
動脈硬化症が起きる原因と検査方法
1.原因
日々の生活習慣が動脈硬化症の原因に!
動脈硬化症は、日々の生活が大きく影響していることがわかっています。喫煙、食事、運動、飲酒といった生活習慣、ストレス、疲労などがかかわっています。
脂っこい料理は特に注意
特に、脂っこい料理が好きな人は注意が必要です。
動脈硬化症は、『中性脂肪』や『コレステロール』が血管にたまることで、血管が詰まったり硬くなったりしてしまいます。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、肥満など持病のある人は、なおのこと食事に気を配りましょう。
喫煙も動脈硬化を促進させる
さらに、喫煙も動脈硬化を促進させる大きな原因のひとつです。
動脈硬化が進行すると、心臓が血液不足となる『虚血性心疾患』になるリスクが高まります。
加齢によって動脈硬化になることも
他にも、加齢によって動脈硬化になることもあります。特に冠状動脈、大動脈、脳、頚部、腎臓、内臓、手足の動脈に硬化が起こりやすいです。
2.検査方法
動脈硬化を引き起こしやすい要因についての検査
動脈硬化を引き起こす、可能性のある要因(『危険因子』)としては、高血圧や脂質異常症、糖尿病、喫煙歴、高尿酸血症、肥満などがあります。それぞれの病気や値について検査を行います。
調べる部位ごとにさまざまな検査を行う
検査する部位に合わせた検査を行います。実施する検査は次の通りです。
<冠状動脈>心臓エコー、造影CT、血管内視鏡、冠状動脈造影など
<脳動脈>MRI、脳動脈造影など
<頸動脈>エコー、MRI、血管造影など
<大動脈>CT、MRI、エコー、大動脈造影など
<下肢動脈>エコー、脈波、血管造影など
CAVI(キャビィ)検査
『CAVI(キャビィ)検査』は、動脈の硬さやつまり、血管年齢を計測することで、動脈硬化症かどうかを調べます。血管年齢は、健康な人の平均値と比べることで割り出します。
両腕・両足首の血圧と脈波を測定します。血圧を測るのと同じような感覚で、痛みもほとんどありません。検査は5分程度で終わるため、気軽に実施できます。
動脈硬化症の治療方法
動脈硬化症の治療方法には、『食事療法』、『運動療法』、『薬物療法』の3つがあります。
1.食事療法
悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす
動脈硬化には、コレステロールの値が大きく影響します。
悪玉コレステロールを下げ、善玉コレステロールを増やす食事を心がけましょう。具体的には、魚や大豆を中心とした食生活に変えていくことをおすすめします。また、野菜や果物、海藻類も積極的に摂取するようにしてください。
塩分やアルコールの摂取を控える
塩分を多く含む食事は血圧を上げる原因になるので、控えましょう。
また、アルコールの過剰摂取もよくありません。適量を守るようにしてください。アルコールを過剰に摂取すると、高血圧や糖尿病、脂質異常症など、動脈硬化の危険因子となる病気にかかる可能性が高まります。
肥満体質であれば、標準体重に戻す
肥満体質の人は、まずは標準体重に戻すことを優先しましょう。
2.運動療法
1日30分以上、週3回以上を目安に運動する
食事療法に、ウォーキングなどの運動を組み合わせることで、より効果が期待できます。1日30分以上を目安に、週3回以上取り組むのが理想です。
普段運動をしない人はできる範囲で!
ただし、体調の優れない日に無理して行うと、逆効果になりかねません。普段あまり運動をしない人は、慣れるまでできる範囲で行うように心がけましょう。
3.薬物療法
食事療法と運動療法で効果が見られない場合や、動脈硬化が健康を害するリスクが高い場合は薬物療法を行います。
各々の症状に合わせて、危険因子となる数値を下げるための薬を処方します。血圧を下げる『降圧薬』や、コレステロール値、中性脂肪値、血糖を下げる薬などが主です。
薬物療法を行う場合は、必ず医師の指示に従いましょう。
まとめ
生活習慣病のひとつでもある動脈硬化症は、過度な食事や飲酒、喫煙、運動不足などが原因になります。そのため、生活習慣の見直しが予防につながります。
また、動脈硬化症には自覚症状がほとんどないため、病気に気付くのが遅れがちです。身体に不調を感じたら、迷わず医師に診てもらうようにしましょう。
急なダイエットや過度な運動は、かえって体に負担をかけてしまいます。地道な毎日の積み重ねが動脈硬化を防ぎ、改善する近道です。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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