医師に聞いてみよう!1型糖尿病とは?
この疾患は、小児期を含めた若年層に多く見られますが、幅広い年代で時々見られます。
また、糖尿病全体の患者さんのおよそ5%を占めていると言われており、比較的まれな疾患であるともいえます。
今回は、この「1型糖尿病」について、生活の上で気をつけるべき事は何かを、専門医の資格を持っている先生に聞いてみました。
糖尿病とは?
生活習慣病のひとつ、糖尿病。厚生労働省の2016年の調査では、316万人を超える方が罹患していると推定されています。
ひとくちに糖尿病と言っても、「1型糖尿病」「2型糖尿病」「妊娠糖尿病」など、さまざまな種類があります。
この中で最も有名なのが、生活習慣がもととなって引きおこされる「2型糖尿病」でしょう。
1型糖尿病は、この「2型糖尿病」と異なり、自己免疫の異常によって引きおこされると言われています。
この疾患は、小児期を含めた若年層に多く見られますが、幅広い年代で時々見られます。
また、糖尿病全体の患者さんのおよそ5%を占めていると言われており、比較的まれな疾患であるともいえます。
今回は、この「1型糖尿病」について、生活の上で気をつけるべき事は何かを、専門医の資格を持っている先生に聞いてみました。
参考・出典サイト
1型糖尿病とは?
1型糖尿病とは、自己免疫機能が過剰な反応をおこし、膵臓の「インスリン生成細胞」が破壊されてインスリンの欠乏が生じることによって引きおこされます。
そのため、1型糖尿病は、2型糖尿病のように生活習慣を改めるなどの明確な予防手段がありません。
発症した場合、生涯にわたってインスリン注射による治療が必要になります。
1型糖尿病の発症者の多くが小児期を含めた若年層です。
日本では年間に10万人のうち約1.5〜2.5人の若者が1型糖尿病を発症しています。これは発症者の多い北欧諸国に比べると、圧倒的に少ないと言われています。
糖尿病患者さんの総数のうち約5%が1型糖尿病であるとされていて、「糖尿病」の中でも比較的まれな疾患であるといえます。
どんな症状が出るの?
喉が異常に渇く、頻尿、体重の減少、疲れがとれない、意識が遠のくなどがあります。
2型糖尿病などに比べ、1型糖尿病の場合はこうした症状が急激にあらわれることが多いとされています。
発症から気がつかずにいると、生命に関わる「糖尿病性ケトアシドーシス」という危険な状態になる可能性もあるため、注意が必要です。
体に異常があったら速やかに医療機関を受診し、インスリンを注射するようにしましょう。
原因は何?
膵臓内でインスリンを生成し供給する役割を果たす「β細胞」とよばれるものが自己抗体の攻撃によって、インスリン生成機能がほとんど機能しなくなってしまうことが原因です。
β細胞を抗体が攻撃し、破壊する原因はまだはっきりとはわかっていません。
「自己免疫」が関与していて、免疫反応が誤って働いているのではないか?と推測されています。
先生に聞いてみよう!
原因は何?予防法は?
Q. 子どもが1型糖尿病と診断されました。特に甘いものなどを多量に食べさせていたということはありません。原因は何なのでしょうか。
A. 1型糖尿病は血糖を調整するインスリンというホルモンを作る膵臓のβ細胞が破壊されることで、インスリンの分泌能力が低くなってしまう病態です。
破壊される原因は諸説ありますが、現在のところ明確に解明されていません。2型糖尿病と異なり、食事や運動不足などの生活習慣とは関係がありません。
Q. 自分が1型糖尿病です。子どもにも遺伝してしまうのでしょうか?
A. 1型糖尿病が遺伝することは稀なので気にされない方が良いと思います。
Q. 予防法はありますか?
A. 現在のところ明確な予防策はありません。
2型糖尿病と違うところは?
Q. 1型糖尿病になってしまった場合、やってはいけないことはありますか?
A. 一般的な日常生活に制限はないですが、自分のインスリンが出てない場合はインスリン注射を必ず行う必要があります。
1、2日打たないだけでも高血糖で緊急入院を要する場合もありますのでその点は注意が必要です。
Q. 食事制限や運動の必要性などで、2型糖尿病と異なる点はありますか?
A. 1型糖尿病は、いわゆる生活習慣病ではありません。食べる食事に応じたインスリンを投与してただければ食事制限はありません。
運動もインスリンを少な目に打ったり、少し食べてから運動するなど低血糖にならないように留意すれば問題ありません。
Q. 合併症を引きおこすことはありますか?
A. 高血糖状態の持続や血糖変動幅が大きいと将来に網膜症、腎症、神経障害、大血管障害などの合併症リスクが上昇しますのでしっかりインスリンを打って血糖を調整していくことが大切です。
生活で気をつけることは?
Q. 子どもが1型糖尿病になったのですが、おやつは食べてはいけないのでしょうか。
A. おやつもたべれます。食事や運動と組み合わせたり、食べる量に応じてインスリンを追加することで摂取できます。
過度な制限は隠れて食べたりなどにつながりますのでお子様と相談しながら決めるのが良いのではと考えます。
Q. 2型糖尿病から1型糖尿病に移行することはありますか?
A. 初めは2型糖尿病のように生活習慣の改善などで血糖コントロールができ、徐々にインスリンが出なくなっていく「緩徐進行1型糖尿病」という病気があります。
疑えば血液検査で分かりますが、気がつかれず2型糖尿病と考えられ、実は緩徐進行1型糖尿病だったと後で分かることもあります。
このタイプの場合、膵臓に負担をかけるような内服薬ではなく、早めにインスリン注射などで膵臓を保護する治療が望ましいと考えられています。
Q. 子どもであっても、1型糖尿病だったら運動は控えるべきなのでしょうか。
A. 運動もできます。運動自体に制限はありませんが、捕食(低血糖様になったときに食べるもの)を用意して行ったり、運動前のインスリン量を少な目に調整したりして行います。
1型糖尿病のプロスポーツ選手も少なくないです。
Q. 子どもにインスリン注射を持たせるのが不安です。怪我をしたり、打ち忘れたりしないようにするにはどうしたらいいでしょうか。
A. 学校では先生方や友達と情報を共有することが大切です。
インスリンは細くて短い針の注射なのでよほどでなければ怪我をすることはありませんが、打ち忘れが続くと体調不良につながりますので、保護者がいない状況でもインスリン投与が必要なことを分かって確認して頂ける状況が望まれます。
Q. 1型糖尿病を発症してしまった場合は、どのように病気と付き合っていくのが良いでしょうか。
A. インスリンを適切に打って生活していけば食事や運動など日常の制限はありません。
大切なのは合併症につながらないように血糖コントロールをしていくことです。1型だからといって生活が大きく制限される事はありません。
病気とつきあっていくために
1型糖尿病は研究が進んできていますが、現在のところ完治が難しい病気です。
しかし、うまく付き合っていけば食事や運動も多少の注意は必要ですが、大きな制
限はありません。
大切なのは、インスリン注射を忘れず、血糖値のコントロールを行っていくことです。
小さなお子様が罹患された場合でも、医療機関とご家族だけでなく、学校とも連携して対応する事でうまく付き合って頂けますので、悲観せず前向きに取り組んでいただければと思います。
執筆・監修ドクター
経歴2006年3月 北里大学医学部卒業
2008年4月 北里大学内分泌代謝内科学入局
(平塚共済病院、川崎市立井田病院などへ出向)
2011年4月 北里大学病院 内分泌代謝内科 助教
2014年4月 北里大学医学部 内分泌代謝内科学 助教
2016年4月 山岸クリニック相模大野 開院
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