腎性高血圧はなぜ起こる?症状や治療法、食事の注意点を解説
『腎臓』というと、尿を作る器官のイメージが強いかもしれません。実は血圧の調整にもかかわっています。『腎性高血圧』は、そんな腎臓が原因で起こる高血圧です。
この記事では、腎性高血圧の薬を使った治療や手術、食事の注意点について解説します。
腎性高血圧について
1.腎性高血圧とは
まず、高血圧には2種類ある!
そもそも『高血圧』には、2つの種類があります。ひとつは、原因となる病気がない『本態性高血圧』です。もうひとつは、何らかの病気が原因になって起こる『二次性高血圧』です。
腎性高血圧は、二次性高血圧のひとつ
『腎性高血圧』は、先に解説した2つのうち、『二次性高血圧』にあたります。腎臓の疾患が高血圧を引き起こします。
腎臓と血圧がどう関係するの?
腎臓は、血圧の調整にかかわる臓器です。
腎臓には『腎動脈』という血管を通じて、血液が運ばれます。
この腎動脈が何らかの原因で狭くなり、血流量が減ると、体の中に水分が不足していると体が認識します。それにより、腎臓から血圧を上げるホルモンが分泌されるのです。
こうして腎臓が血圧を上げ続けてしまうことで起こる高血圧が『腎性高血圧』です。
2.腎性高血圧の原因について
腎性高血圧は、先に解説したように、腎動脈が狭くなることで起こります。
腎動脈が狭くなる原因には、次のような病気があります。
動脈硬化症
腎性高血圧の原因として、最も多いのが『動脈硬化症』です。その場合、約半数の人は同時に『糖尿病』にもかかっています。
動脈硬化症は、動脈の『血管壁』にコレステロールがたまり、内膜がどんどん厚くなる病気です。
50代以降の男性に多く発症します。
線維筋性異形成
線維筋性異形成は、動脈を作る筋肉が、うまく形成されず『血管壁』にこぶができる病気です。
若い人から60代くらいの人に発症します。
大動脈炎症候群
大動脈炎症候群は、動脈の壁に、原因不明の炎症が起こる病気です。
若い女性に発症することが多いです。
3.腎性高血圧の症状について
初期は、ほとんどが無症状
腎性高血圧の初期は、ほとんどが無症状です。
急に血圧が変化すると、めまいや頭痛を感じる
血圧が急に高くなったり、高血圧が急速に悪化したりすると、『めまい』や『頭痛』を感じることがあります。
放っておくと、心不全や心筋梗塞などを招くことも…
腎性高血圧を放っておくと、『心不全』や『心筋梗塞』『脳血管障害』などの病気を引き起こすことがあります。
4.どんな人にかかりやすい?
腎性高血圧は、先に解説したように「動脈硬化症」が原因になることも多いです。
そのため生活習慣との関連が高く、『肥満』や『糖尿病』、『喫煙の習慣がある』といった人は、腎性高血圧になるリスクが高くなります。
腎性高血圧の治療法について
1.検査法
腎性高血圧によって、血圧を上げる『レニン』というホルモンが分泌されます。そのため『血液検査』で血中のレニンの値を測定します。
そのほか、『超音波』や『CT』、『MR血管造影』、『腎動脈造影』などで、『画像検査』を行います。
画像検査では、腎臓の動脈の血流や動脈が狭くなっていないかなどを確認します。
2.腎性高血圧の薬物治療
「降圧剤」で血圧を下げる
薬物治療としては、『降圧剤』を用いて血圧を下げます。
降圧剤としてよく使われるのは、『ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬』や『アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬』です。単体で効果がみられなければ、他の降圧剤とあわせて使います。
降圧剤の副作用や使用できないケース
降圧剤は副作用として、『高カリウム血症』になることがあり、注意が必要です。
高カリウム血症とは、体内のカリウム量の過剰、またはカリウムの細胞外への移動によって、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることです。
また、腎機能低下や、両側動脈狭窄、単腎例には原則として使用することができません。
3.腎性高血圧の手術
腎性高血圧の根本治療には、手術をおこないます。
せまくなった腎動脈を広げる手術
手術では、腎動脈のせまくなった箇所を広げます。
そのために、『経皮的動脈形成術(PTRA)』と呼ばれる手術法を用います。これは動脈にカテーテルを通して、バルーンで血管を拡張したり、『ステント』と呼ばれる筒状の器具を、せまくなった箇所にとどめおいたりする手術法です。
そのほかの手術法
PTRAの実施が難しい場合は、『血管のバイパス手術』がおこなわれることもあります。さらに、それも困難であれば、『腎摘出手術』も考慮されます。
腎性高血圧の診断をうけたら…気をつけること
1.食べ物について
塩分を控えることが大切!
腎性高血圧の場合、『塩分を控えること』が特に大切です。1日にとる塩分量は6グラム未満を目標にしましょう。
塩分をとりすぎると、血圧を上げてしまうのはもちろんですが、腎臓にも影響を与えます。
血圧を下げるために、体は水分を体内に貯めようとしますが、体内の水分量が多いと血液量が多くなります。それらをろ過することが、腎臓に負担をかけ、『腎障害』を進みやすくします。
塩分を減らす工夫を
麺類の汁は残す、減塩調味料を使うなど工夫すると良いですね。
また、塩分の代わりに、スパイスや薬味を使ったり、だしのうま味やお酢の酸味をきかせたりすることもおすすめです。普段から濃い味のものを食べている人は、この機会に薄味に慣れるようにしましょう。
2.生活習慣について
肥満の人は、標準体重を目指す!
腎性高血圧の原因になる「動脈硬化」は、『肥満』や『皮質異常症』によってかかりやすくなります。肥満状態であれば、減量し、標準体重を目指しましょう。
生活の中に運動を取り入れる
適度な運動は、尿たんぱくを減少させ腎臓の負担が減るため、血圧のコントロールに役立ちます。
喫煙やストレスも、リスクを高めるため注意
そのほか『喫煙』や『ストレス』も、腎性高血圧のリスクを高めます。禁煙を心がけ、ストレスの解消にもつとめてください。
まとめ
腎性高血圧にかかっていても、自覚症状はほとんどありません。
しかし、血圧が高いまま放っておくと、腎臓だけでなく、心臓や脳にダメージを与えることがあります。早くに発見し、血圧をコントロールするためにも、日頃から血圧を測定する習慣をつけることをおすすめします。
また、腎性高血圧にかかったら、食事制限や運動などに取り組み、改善につとめましょう。また動脈硬化が原因の場合、再発しやすいため、しっかりと生活習慣を見直す必要があります。
執筆・監修ドクター
経歴1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年-2012年3月 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年4月 岡村医院、医師として勤務
2012年7月 岡村クリニック開院
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