胸の痛みは心臓からのSOS?虚血性心疾患を医師が解説
虚血性心疾患には狭心症や心筋梗塞といった病気が含まれます。
いずれも、激しく締め付けられるような胸痛、胸焼けをはじめ、顎や左肩、奥歯などにも痛みが感じられることもあります。
これらの病気は一般的には動脈硬化をおこすことにより発症します。
動脈硬化などによりこの血管が狭くなる、もしくは閉塞をおこしたりするなどして、心臓に血液が充分に行きわたらない酸欠状態(虚血)を、「虚血性心疾患」といいます。
今回は、循環器専門医の先生に虚血性心疾患についてお話をうかがいました。
胸の痛みは心臓からのSOS?
虚血性心疾患の中でも命に関わってくるものが心筋梗塞です。
発症直後の心筋は不整脈や急性心不全など死に至る可能性が非常に高い合併症を生じます。
胸痛、動悸、息切れなど、虚血状態となった心臓の発する徴候が、日頃のちょっとした運動や仕事中に感じられるようになったら要注意です。
今回は、循環器専門医の先生に虚血性心疾患についてお話をうかがいました。
虚血性心疾患とは?
血管の中を流れる血液は、心臓のはたらきによって全身を循環しています。
送り出された血液は、生命を維持するために必要な酸素と栄養を運搬し、身体のさまざまな組織に提供しています。
その栄養で満たされた血液を心筋に供給しているのが「冠動脈」と呼ばれている心臓を取り囲む3本の血管です。
動脈硬化などによりこの血管が狭くなる、もしくは閉塞をおこしたりするなどして、心臓に血液が充分に行きわたらない酸欠状態(虚血)を、「虚血性心疾患」といいます。
心臓の働き
心臓は血液を全身にくまなく送り出すポンプの役割を担っています。
その大きさは握りこぶしくらいであり、筋肉によって作られています。平均的な大きさは300g程度です。
4つの部屋に分かれていて、右上は右心房、右下は右心室、左上は左心房、左下は左心室とそれぞれ呼ばれています。
ポンプとしての働きは、1分あたり約60~80回、1日あたり10万回以上という伸縮活動(拍動)を反復し、全身に血液を送り出しています。
血液は全身に行き渡り、体を構成する細胞が必要とする酸素や栄養を効率良く供給します。
そのルートは、大静脈→右心房→右心室→肺動脈→肺と巡り、肺で酸素の供給を受けたあと左心房→左心室→大動脈と、再び全身を巡ります。
まさに生命維持の中心となる臓器なのです。
虚血性心疾患と呼ばれる2つの病気「狭心症」と「心筋梗塞」
いずれも、激しく締め付けられるような胸痛、胸焼けをはじめ、顎や左肩、奥歯などにも痛みが感じられることもあります。
これらの病気は一般的には動脈硬化をおこすことにより発症します。
動脈硬化とは、血管の中に「プラーク」といわれるコレステロール(脂質)の塊ができ、冠動脈内が詰まるもしくは狭窄することで発症します。
このプラークが心筋への血流を阻害することで、心筋に必要とする血液の量を満たすことができずに「虚血状態」に陥ります。
その結果、胸が締め付けられるような痛みがあらわれます。これが「狭心症」です。
狭心症の症状
狭心症の特徴的な症状として、運動時に胸骨の後方に胸の痛みや圧迫感があらわれますが、症状は休むことで、10秒から数分以内には治まるとされています。
また、人によってはこれを痛みではなく「不快感」と表現されることがあります。
この不快感は肩や背中、腕の内側、喉やあご、奥歯などに拡散されることもあります。このような痛み(不快感)を放散痛と呼びます。
発症した場合は安静にし、血管拡張薬であるニトログリセリンなどを投与することにより痛みは消失します。
投与により改善する場合には狭心症が強く疑われますので、医療機関の受診が必要です。
あわせて読みたい
心筋梗塞の症状
動脈硬化がさらに進行すると、なんらかの拍子にプラークが破れることがあります。
破裂したプラークはやがて冠動脈内で血栓となり、心筋への血流を堰き止めてしまうことがあります。
この状態を「心筋梗塞」もしくは「急性心筋梗塞」といいます。前胸部の中央および胸全体に激しい痛みがあらわれます。
痛みは30分以上持続することが多く、呼吸困難や冷汗、背中や顎の痛み、胃痛、吐き気などの放散痛があらわれることもあります。
心筋梗塞の治療には緊急を要します。発症直後は危険が伴う不整脈があらわれやすいので、速やかに119番に救急要請してください。
あわせて読みたい
心疾患のQ&A
Q:胸の痛みを感じたら、どういった病気を疑うのでしょうか?狭心症や心筋梗塞以外にも「胸の痛み」を感じる病気はありますか?
A:心疾患としては、心膜炎、大動脈解離、肺動脈血栓塞症など、肺疾患としては、気胸、肺炎、肺癌などが多岐にわたります。
気になる症状がある場合には内科外来受診をお勧めします。
あわせて読みたい
あわせて読みたい
あわせて読みたい
あわせて読みたい
Q:ときどき短い間ですが、胸の痛みを感じることがあります。受診した方がいいでしょうか?また、何科を受診すべきでしょうか?
A:持続時間が短かったとしても、胸のどのあたりに(部位)、どのようなときに(誘発因子)、どれくらいの間隔(頻度)で生じ、再現性があるかをお聞きする必要があります。
内科を受診してください。年齢や性別、動脈硬化の危険因子を併発されているかによって精査を行って参ります。
予防のために心がけることとは?
日本人は古くから脳卒中の発症率は高い一方、虚血性心疾患はあまり馴染みのない病気でした。
近年、食の欧米化が日本人の虚血性心疾患発症率増加に拍車をかけたと考えられています。
そして現在、虚血性心疾患のなかでも、とりわけ心筋梗塞によって、年間3万人以上の人たちが命を落としています。
狭心症や心筋梗塞を引きおこす動脈硬化の原因は、喫煙や肥満、ストレスなど、生活習慣、更には高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病によるところが大きいです。
このため、SOS信号を受ける前に生活習慣を正すことが重要です。
たとえ手術によるカテーテル治療やバイパス手術を受けていても、動脈硬化の原因となる生活習慣を改善しなければ、再発することも考えられます。
禁煙や食生活の改善、運動不足の解消などを医師と相談しながら、継続することが大切になります。
あわせて読みたい
あわせて読みたい
あわせて読みたい
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴2006年 近畿大学医学部卒業
東京都老人医療センター(現:健康長寿医療センター)初期研修医
2008年 独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 後期研修医
2010年 日本医科大学付属病院 循環器内科入局 同大学院生、久保田クリニック副院長
2014年 日本医科大学付属病院 循環器内科助教
関連コラム
「胸の痛みは心臓からのSOS?虚血性心疾患を医師が解説」以外の病気に関するコラムを探したい方はこちら。
関連する病気
「胸の痛みは心臓からのSOS?虚血性心疾患を医師が解説」に関する病気の情報を探したい方はこちら。