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肺炎

目次
  1. 概要
  2. 症状
  3. 原因
  4. 検査内容と主な診療科目
  5. 治療方法と治療期間
  6. 治療の展望と予後
  7. 発症しやすい年代と性差
医師

【執筆ドクター】

 板東 浩 先生

概要

肺炎とは?

肺炎は、肺胞(はいほう:肺に存在する空気の袋)及び周辺組織に発生する炎症です。一般に「肺炎」と呼ばれる疾患はさまざまに細分化されますが、こちらの記事では、主に市中肺炎を扱います。中でも「細菌性肺炎」の解説を中心としています。
ほとんどは細菌・ウイルスなどの病原体による感染症ですが、一部に例外も存在します。

肺炎全般に共通する症状としては、次のようなものが知られています。

・湿性の咳(痰がからんだ咳)
・胸痛 ・悪寒
・発熱 ・息切れ

様々な肺炎

肺炎にはいくつかの分類があります

・市中肺炎(CAP:しちゅうはいえん)

一般的な社会生活を送っていて、医療機関・介護施設などにほとんど関連がない人の肺炎です。
簡単に表現するならば、「普通の生活をしている人の肺炎=市中肺炎」と捉えることができます。

市中肺炎の原因は病原体への感染です。
患者さんの年齢、生活環境などにより、さまざまな病原体が考えられます。
市中肺炎の主な病原体は細菌、非定型病原体、ウイルスの3種類です。
そのほかに、真菌(カビ・酵母の仲間)、寄生虫による肺炎も存在します。

・細菌性肺炎

真正細菌と呼ばれる細菌が引き起こす肺炎です。
一般的に「細菌」と呼んだ場合、真正細菌を指していると考えて構いません。
肺炎の起炎菌(きえんきん:炎症の原因となる菌)として代表的なのは、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌などです。

インフルエンザ菌は細菌であり、インフルエンザウイルスとは別物です。インフルエンザを引き起こす病原体ではありません。

・非定型肺炎

非定型病原体と呼ばれる病原体が引き起こす肺炎です。
通常の細菌と異なり、「β-ラクタム系抗生物質が効かない病原体」による肺炎を「非定型肺炎」と呼んでいます。
代表的な病原体としては、マイコプラズマ、レジオネラ、クラミジアが知られています。

β-ラクタム系抗生物質は、細菌の細胞壁合成を阻害する作用を持っています。「ペニシリン系抗菌薬」「セフェム系抗菌薬」などが、β-ラクタム系抗生物質に該当します。細胞壁の合成を阻害するので、細胞壁を持たない細菌には効きません。また、β-ラクタム系抗生物質を分解する酵素―β-ラクタマーゼを産生する細菌にも効果は期待できません。

・ウイルス性肺炎

ウイルスが引き起こす肺炎です。
インフルエンザウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、RSウイルスなどが原因になります。
厳密には非定型肺炎の一種です。

・真菌性肺炎

カビ・酵母の仲間である真菌が引き起こす肺炎です。
真菌による肺炎を「肺真菌症」と呼ぶこともあります。
アスペルギルス、カンジダ、クリプトコッカスなどの真菌が肺真菌症の原因になり得ます。
非定型肺炎の一種ですが、健康な人が肺真菌症に罹患することは稀(まれ)なので、別の項目として扱っています。

・寄生虫による肺炎

寄生虫が肺に侵入すると、肺炎を引き起こす恐れがあります。
寄生虫による肺炎を「肺寄生虫症」と呼ぶこともあります。
イヌ回虫、ネコ回虫、イヌ糸状虫などが原因になります。
非定型肺炎の一種ですが、ほかの病原体に比べると稀(まれ)なので、別項目として扱います。

・誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

誤嚥とは、本来、「気道に入るべきではないものが気道に入る現象」です。
唾液、食べ物などが気道に入り、肺に炎症をきたした状態が「誤嚥性肺炎」です。

本来、器官に異物が入ると、咽(む)せて咳きこみます。
無意識のうちに(=反射的に)咳が出るので、咳反射と言います。
咳で異物を外に出し、誤嚥を防いでいるわけです。
しかし、高齢者は咳反射がうまく機能せず、頻繁に誤嚥を起こす場合があります。
そのため、誤嚥性肺炎は高齢者に多く見られる肺炎として知られています。

・医療ケア関連肺炎(HCAP)

医療・介護との関連が疑われる肺炎を「医療ケア関連肺炎」に分類しています。
次のいずれかの条件を満たす場合、医療ケア関連肺炎として扱います。

・過去90日以内に、急性期病棟に入院している
・過去30日以内に、在宅での点滴静注・創傷ケアを受けている
・過去30日以内に透析を受けている
・過去90日以内に、介護施設、療養施設に居住している ・家族内に多剤耐性菌の感染者がいる

多剤耐性菌は、複数の薬剤に耐性を持っている(=効かない)細菌のことです。

医療ケア関連肺炎の場合、市中肺炎に比べて薬剤耐性菌が関与している確率が高くなります。
入院治療をおこなった場合の死亡率は20~40%と高く、市中肺炎より明確に予後不良(=経過・生存率が思わしくない)です。

透析患者や化学療法を受けている患者の肺炎に対して、市中肺炎と同様の治療を行うべきではないとの考えから「医療ケア関連肺炎」という分類が生まれました。
薬剤耐性菌が関与している確率が高い以上、市中肺炎と同じ扱いにはできないからです。
これは、肺炎の原因による分類ではなく、肺炎患者の環境要因による分類となります。

介護施設居住者の肺炎を「医療ケア関連肺炎」と扱うことから「高齢者の肺炎」と誤解する人もいますが、条件さえ満たしていれば年齢は関係ありません。
ただし、「医療ケア関連肺炎を起こす人に高齢者が多い」というのは事実です。

ちなみに、近年は療養型病床・精神病床を療養施設に含めて、当該の病床に入院中の肺炎を医療ケア関連肺炎と捉えるのが一般的です。

・院内肺炎(HAP)

院内感染した肺炎を「院内肺炎」に分類しています。
具体的には、「入院から48時間以上が経過している一般病床の入院患者」に発生した肺炎を指します。

すでに入院が必要な基礎疾患を持っている状態なので、予後は芳(かんば)しくありません。
迅速に治療開始できる環境にもかかわらず、院内肺炎の死亡率は25~50%に達します。
ただし、主な死因が基礎疾患にある場合も含んでいます。

易感染性患者における肺炎

「抗TNFα製剤(=免疫機能を低下させる薬)を投与している状態」「免疫機能が障害された状態」など、日和見感染(ひよりみかんせん)を起こす患者さんの肺炎を指しています。日和見感染とは、「免疫機構がきちんと機能せず、さまざまな病原体に感染する状態」です。健康な人なら感染しないような病原体にも容易に感染します。

・ニューモシスチス肺炎

ニューモシスチス肺炎を引き起こすのは、「ニューモシスチス・イロベチイ」と呼ばれる真菌です。
健康な人がニューモシスチスに感染する例はきわめて稀(まれ)です。
基本的には、「後天性免疫不全症候群(AIDS)の人」「ステロイドの全身投与を受けている人」など、免疫機構がきちんと働いていない人が感染する病原体です。

・間質性肺炎(かんしつせいはいえん)

「肺胞(空気を取りこむ袋)の壁」が硬く厚い状態に変化し、呼吸しにくくなる病気を指します。
正式名称は「間質性肺疾患」で、このうち原因不明のものを「突発性間質性肺炎」と呼んでいます。
一般的な「感染による肺炎」とは別の病気です。

症状

肺炎の症状は、風邪に似ている。
自覚症状だけで、「風邪なのか、肺炎なのか」を判別するのは非常に困難である。

以下に肺炎の主な症状を列挙する。

・発熱
・全身倦怠感
・悪寒
・咳
・呼吸困難
・胸痛
・振戦(手足のふるえ)

「風邪が重症化した症状」と捉えることもできる。
一般的な風邪で胸痛が出ることは少ないが、ほかは風邪と同様である。
このような「風邪で見られる症状」を「感冒様症状(かんぼうようしょうじょう)」と呼ぶ。

原因

肺炎を引き起こす病原体は多岐にわたる。
主な病原体・原因」を掲載する。

1.市中肺炎(CAP)

普通の生活を送っている人が肺炎に罹患した場合、「市中肺炎」に分類する。
市中肺炎の代表的な病原体は、細菌、非定型病原体、ウイルスである。

・細菌性肺炎

細菌性肺炎の起炎菌(きえんきん:炎症を引き起こす菌)としては、次のような細菌が知られている。
肺炎全体の18.8%で起炎菌となっている肺炎連鎖球菌を筆頭に、数多くの細菌が肺炎の原因となる。

市中肺炎での原因菌となる割合は

肺炎連鎖球菌:24.6%
インフルエンザ菌:18.5%
黄色ブドウ球菌:3.4%
モラクセラ・カタラーリス:2.2%
クレブシエラ・ニューモニエ(肺炎桿菌)1.3%
緑膿菌(りょくのうきん):0.4%

・非定型肺炎(非定型病原体による肺炎)

非定型肺炎の原因となる非定型病原体には、次のような種類が存在する。
以下、市中肺炎で原因となる割合を示します。

クラミジア・ニューモニエ:6.5%
マイコプラズマ・ニューモニエ:5.2%
レジオネラ・ニューモフィラ:3.9%

クラミジア、マイコプラズマ、レジオネラはいずれも細菌の一種。
しかし、「細胞壁の合成を阻害する抗生物質が効かない」という共通点を持っている。
通常の細菌と異なる特徴を持っていることから、非定型病原体に分類されている。

・ウイルス性肺炎

ウイルス性肺炎の原因となるウイルスには、次のような種類が存在する。

インフルエンザウイルス
水痘・帯状疱疹ウイルス
RSウイルス

多くのウイルスが、(稀にではあるものの)肺炎の原因となる。
全国健康保険協会の調査によると、ウイルス性肺炎は市中肺炎全体の16.4%を占めている。

細菌性肺炎に比べると、膿性痰(のうせいたん:黄色・緑色の痰)が出ることは少ない。
代わりに頭痛、全身筋肉痛といった症状が出やすいとされている。

2.誤嚥性肺炎

異物を肺に誤嚥(=誤って気道に吸いこんでしまう)することで発症する。
口腔内の内容物(唾液・食べ物)のほか、胃の内容物を誤嚥する例もある。

健康な人なら、気道に異物が入ると咳きこむ。
咳をすることで、異物を気道の外に出す「咳反射」がおこる。
しかし、高齢者は嚥下機能(えんげきのう:飲み込む機能)が弱っているので、咳反射が機能しない場合が出てくる。
その結果、気道に異物が入りやすくなる。

もっとも一般的な誤嚥性肺炎は、口腔内の内容物を誤嚥することで起こる。
口腔内の内容物は、主に唾液・食物だがその際に口腔内常在菌が気道に入ることがある。

口腔内の常在菌が気管支・肺で炎症を起こすと、誤嚥性肺炎を起こす。
誤嚥性肺炎の起炎菌となる常在菌には、口腔連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、口腔内嫌気性菌などがあげられる。

・化学性肺炎

化学性肺炎は、誤嚥性肺炎の一種。
細菌感染ではなく、誤嚥した物質の毒性によって炎症が起こる。
代表的なのは、胃の内容物を誤嚥し、胃酸で肺が炎症を起こす症例。
そのほか、石油製品などを誤嚥した場合も化学性肺炎を起こす。

3.医療ケア関連肺炎(HCAP)

市中肺炎を引き起こすのと同じ病原体が原因になるが、比率がやや変化する。
最大の原因が肺炎連鎖球菌なのは同じだが、緑膿菌、黄色ブドウ球菌の比率が高くなる。
そのほか、「モラクセラ・カタラーリス」と呼ばれるグラム陰性球菌による肺炎もしばしば見られる。グラム染色という方法で紫色に染まる細菌を「グラム陽性」、赤く見える細菌を「グラム陰性」と区別する。一般的に、グラム陰性菌は薬剤に対する抵抗力が強く、抗菌剤が効きにくい。

また、市中肺炎と比べて、抗菌剤への耐性を有する細菌の割合が高くなる。
耐性菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌(PRSP)などが知られている。

4.院内肺炎(HAP)

院内肺炎の原因菌としては、緑膿菌、黄色ブドウ球菌が高頻度で見られる。
黄色ブドウ球菌には、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)も含まれる。
また、大腸菌などの「グラム陰性腸内細菌」が肺に感染して肺炎を起こしている例も見られる。

ただし、入院から4~7日で肺炎を発症した場合、肺炎連鎖球菌、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌の比率が高く市中肺炎に近い傾向がある。

一方、入院から時間が経過すると、緑膿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、グラム陰性腸内細菌の比率が高まる。
これは、入院から時間が経過するほど、院内感染の割合が増えるためである。
院内は抗菌剤を多用するので、抗菌剤の効きにくい耐性菌が生き残りやすい環境である。
その結果、院内感染した場合、薬剤耐性菌、グラム陰性菌(もともと抗菌薬が効きにくい)の割合が増えることになる。

5.易感染性患者における肺炎

免疫機能が低下し、さまざまな病原体に感染する状態であれば、原因は多岐にわたる。健康な人には稀(まれ)な病原体による肺炎も多く見られます。

・ニューモシスチス肺炎

ニューモシスチス・イロベチイという真菌が原因である。
健康な人が感染することはほとんどない。基本的に、免疫機能に問題のある人が感染する病原体である。

検査内容と主な診療科目

肺炎の疑いがある場合は、内科・呼吸器内科を受診する。
ただ、本人が風邪と肺炎を明確に区別できていることはほとんどない。
多くの場合は、「風邪をこじらせた」「インフルエンザではないか」などの自覚症状を訴えて受診する。

肺炎の診断方法

肺炎を診断するにあたっては、診察に加えて画像診断をおこなうのが一般的である。

・断続性ラ音

息を吸うときに「バリバリ」「ブツブツ」などの雑音が生じる。
ラ音は「ラッセル音」の略だが、ラ音と呼ぶのが一般的です。

・ヤギ声

患者に「イー」と発音させたとき、聴診器で「エー」と聞こえる状態を「ヤギ声」と呼ぶ。
肺に水が溜まる(=胸水)と音伝導が向上するため聞こえ方が変化する。
そのため、胸水の有無を判断するのに役立つが、肺炎の場合も「ヤギ声の所見」を認めることがある。

・打診時の濁音

打診では、指・器具などで叩いたときの音を聴診器で確認する。
本来、正常な肺の上では「清音(=澄んだ大きい音)」が聞こえるが、「濁音(=濁った小さな音)」が聞こえるなら肺炎の疑いが出てくる。

日本では歴史的にこういった診断法が発達し、打診も重要視されていた。
一方、近年では検診の発展により肺炎に罹患する人が減少したため、X線撮影やCTなどの診断法が優先され、打診の意義や施行頻度が減少している。

・胸部X線における浸潤影(しんじゅんえい)

浸潤影というのは、境界線が不明瞭な影を指す。
肺胞(はいほう:肺の中にある空気の袋)に液体などが入りこんだ結果、境界のぼやけた影が生じる。

医師から見て「肺炎が疑われるが、胸部X線で影が認められない」という場合、24~48時間経過した後に再撮影するか、すぐに胸部CT撮影をすることで判断できる例がある。

風邪と肺炎の区別

診察によって風邪と肺炎を見わけるのは簡単ではない。
特にマイコプラズマ肺炎などの「非定型肺炎」は、肺炎に特徴的な症状・所見(しょけん:診察・画像診断などの結果)が乏しいので、確定診断が難しい場合もある。

そのため、診察・画像診断で「肺炎の疑いがある」と思われる場合、血液検査を実施することがある。
血液検査では「CRP(C-reactive protein:C反応性タンパク)」と「WBC(白血球)」など炎症反応にかかわる数値を確認する。

CRPは、「体内で炎症が起きているとき」「体内の組織が壊れたとき」などに増加する。
CRPの数値を見ることで、炎症の有無を判断できる。「0.3mg/dl以下」が正常値となっている。

白血球は、細菌から身体を守るための細胞である。
体内で炎症が起きていると増加するので、炎症の有無を判断するのに役立つ。
WBCの数値は「3500~9000/μl」程度が基準値となっている。

・尿検査

外来で治療可能な場合、尿検査をすることもある。
肺炎連鎖球菌、レジオネラ菌は尿検査で発見することが可能である。
原因菌が特定できれば、「どの抗菌薬が効果を発揮しやすいか」を把握した上で治療開始できる。

細菌性肺炎と非定型肺炎の判別

外来で治療できる状態であれば、細菌性肺炎と非定型肺炎の判別をおこなう。
重症なら確定診断より原因の特定を待たず、経験的に症状の改善・軽快を目指すエンピリック治療を優先するが、軽症では判別した上で抗菌薬の種類を決定するのが一般的である。

ちなみに、欧米では「細菌性肺炎と非定型肺炎の判別」を重視しない。
判別することなく、細菌・非定型病原体のいずれにも有効な抗菌薬を使用するのが普通である。

しかし、日本では肺炎連鎖球菌の薬剤耐性化が進んでいる。
「マクロライド系抗菌薬」「テトラサイクリン系抗菌薬」に耐性を有する肺炎連鎖球菌が多く、事実上、細菌性肺炎に「マクロライド系・テトラサイクリン系抗菌薬」を投与できない。

そのため、欧米のように「マクロライド系・テトラサイクリン系抗菌薬」で細菌性肺炎・非定型肺炎の(大部分に)に対応できる状況とは言えない。
そのため日本の診断ガイドラインでは細菌性肺炎と非定型肺炎を判別する方向になっている。

・非定型肺炎の判別基準

細菌性肺炎と非定型肺炎を区別するための判別基準としては、次の基準が知られている。

・60歳未満である
・基礎疾患(持病)を持っていないか、軽微である
・主な症状として、頑固な咳がある
・胸部に聴診器をあてても、肺炎に特徴的な所見が乏しい
・喀痰が見られない、あるいは迅速診断法で原因菌が明らかにならない
・白血球の数値が10000/μl未満である

上記6項目のうち、4項目以上が該当すれば「非定型肺炎の疑い」、3項目以下ならば「細菌性肺炎の疑い」と判断する。

治療方法と治療期間

「市中肺炎」「医療ケア関連肺炎」「院内肺炎」というそれぞれの種別によって、原因菌の傾向が異なる。

市中肺炎の場合、薬剤耐性菌の割合は少ない。

医療ケア関連肺炎では市中肺炎に比べると、耐性菌の比率が高くなる。

また、必然的に医療ケア関連肺炎を起こす人は、高齢者の割合が高くなる。
日本では、肺炎による死亡者の96%超が高齢者(65歳以上)である。特に、85歳以上は、肺炎に罹患したときの死亡率が若年者の1,000倍以上も高くなる。
当然ながら、ハイリスク群と言える。

「急性期病床に入院してから48時間以上が経過している人」が肺炎を発症した場合は、「院内肺炎」に分類する。
院内肺炎は、院内感染の疑いがきわめて強いと考えられる。
抗菌剤を使用する環境で感染しているので、薬剤耐性菌が関与している確率が高くなる。

院内肺炎はもともと入院しているので、当然、入院治療となる。
しかし、市中肺炎と胃腸ケア関連肺炎の場合、「外来治療にするべきか、入院治療にするべきか」の判断をしなければいけない。

治療場所の判断基準は、「肺炎の重症度」による。
「どのくらいのリスクがあるか」による患者の分類を「リスク層別化(-そうべつか)」という。肺炎におけるリスク層別化の判断基準が「A-DROP」である。

A-DROPの判断基準

A-DROPの基準は

・年齢(Age)⇒男性70歳以上、女性75歳以上である
・脱水(Dehydration)⇒BUN「21mg/dl」以上、または脱水の所見あり
・呼吸(Respiration)⇒SpO2「90%以下」
・見当識(Orientation)⇒意識障害あり
・血圧(Pressure)⇒収縮期血圧(下の血圧)「90mmHg」以下

以上の5項目のうち、いくつに該当しているかで重症度を判別する。BUNとは、尿素窒素量のことである。この数値が高いほど脱水の傾向にある。
SpO2とは、動脈血酸素飽和度で数値が低いほど、酸素をうまく取りこめていないことになる。

・0項目⇒軽症:外来治療
・1~2項目⇒中等症:外来or入院治療
・3項目⇒重症:入院治療
・4~5項目⇒超重症:集中治療室(ICU)治療

ただし、ショック症状をきたしている場合は、該当する項目数に関係なく超重症として扱う。

原因菌による治療区分の決定

「薬剤耐性菌の関与をどの程度、考慮するべきか」により、治療方針が変わる。
そのため、「薬剤耐性菌の関与リスク」で治療区分を判別する必要がある。
医学的な重症度だけでなく、背景情報も含めて治療方針を決定する。

1医療ケア関連肺炎で、次のいずれかを満たすか?YES⇒D群 NO⇒2へ
a.人工呼吸器による管理が必要
b.集中治療室などで集中管理が必要

2 入院管理が必要な状態か? YES⇒3へ NO⇒A群

3 耐性菌リスク因子のいずれかにあてはまるか?YES⇒C群 NO⇒B群
a.過去90日以内に抗菌薬の投与を受けている
b.過去90日以内に経管栄養を実施している
c.過去にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に感染している

A群 外来治療を実施

B群 入院治療を実施するが、耐性菌を考慮しない

C群 入院治療を実施し、耐性菌を考慮して抗菌薬を選択

D群 多くの耐性菌に効果を発揮する強力な抗菌薬を選択

細菌性肺炎の治療方針

細菌性肺炎においては、次のような基準で抗菌薬を選択する。
治療方針の解説は、日本呼吸器学会の「成人市中肺炎診療ガイドライン」による。

1.細菌性肺炎の疑い~外来治療

・基礎疾患、危険因子がない場合
「β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬(経口薬)」

・軽度の基礎疾患があるか、65歳以上の場合
「β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬(経口薬)」
さらに、必要に応じて
「マクロライド系抗菌薬(経口薬)」
「テトラサイクリン系抗菌薬(経口薬)」

・慢性呼吸器疾患があるか、ペニシリンアレルギーがある場合
「ニューキノロン系抗菌薬(経口薬)」

・医師の判断で注射薬を用いる場合
「CTRX(セフトリアキソン:セフェム系抗菌薬)」

2.細菌性肺炎の疑い~入院治療

・基礎疾患がないか、若年成人の場合
「PIPC(ピペラシリン:β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬の注射薬)」

・軽度の基礎疾患があるか、65歳以上の場合
「PIPC(ピペラシリン:β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬の注射薬)」

「セフェム系抗菌薬(注射薬)」

・慢性の呼吸器疾患がある場合
「PIPC(ピペラシリン:β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬の注射薬)」

「セフェム系抗菌薬(注射薬)」

「カルバペネム系抗菌薬」または「ニューキノロン系抗菌薬(注射薬)」

3.肺炎連鎖球菌~外来治療

・ペニシリン感受性の肺炎連鎖球菌と思われる場合
「アモキシシリン(ペニシリン系抗菌薬の経口薬)」
「ペネム系抗菌薬(経口薬)」

・ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌の疑いがある場合
「ニューキノロン系抗菌薬(経口薬)」
「ケトライド系抗菌薬(経口薬)」

4.肺炎連鎖球菌~入院治療

「ペニシリン系抗菌薬(注射薬)」
「CTRX(セフトリアキソン:セフェム系抗菌薬の注射薬)」
「第四世代セフェム系抗菌薬(注射薬)」
「カルバペネム系抗菌薬」
「バンコマイシン(グリコペプチド系抗菌薬)」

5.インフルエンザ菌~外来治療

「β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬(経口薬)」
「第二世代、第三世代セフェム系抗菌薬(経口薬)」
「ニューキノロン系抗菌薬(経口薬)」

6.インフルエンザ菌~入院治療

「PIPC(ピペラシリン:β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬の注射薬)」
「第二世代、第三世代、第四世代セフェム系抗菌薬(注射薬)」
「ニューキノロン系抗菌薬(注射薬)」

7.クレブシエラ(肺炎桿菌)~外来治療

「β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬(経口薬)」
「第二世代、第三世代セフェム系抗菌薬(経口薬)」
「ニューキノロン系抗菌薬(経口薬)」

8.クレブシエラ(肺炎桿菌)~入院治療

「β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬(注射薬)」
「第二世代、第三世代、第四世代セフェム系抗菌薬(注射薬)」
「カルバペネム系抗菌薬」
「ニューキノロン系抗菌薬(注射薬)」

9.黄色ブドウ球菌~外来治療

「β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬(経口薬)」

10.黄色ブドウ球菌~入院治療

「β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬(注射薬)」
「第一世代、第二世代、第四世代セフェム系抗菌薬(注射薬)」
「カルバペネム系抗菌薬(注射薬)」
「グリコペプチド系抗菌薬(注射薬)」

11.緑膿菌~外来治療

「ニューキノロン系抗菌薬(経口薬)」

ニューキノロン系抗菌薬で治療をはじめたあと、「どの薬剤に感受性があるか」を確かめて、薬剤を再選択するのが望ましいとされている。

12.緑膿菌~入院治療

「抗緑膿菌用ペニシリン系抗菌薬(注射薬)」
「抗緑膿菌用第三世代、第四世代セフェム系抗菌薬(注射薬)」
「カルバペネム系抗菌薬(注射薬)」
「ニューキノロン系抗菌薬(注射薬)」

非定型肺炎の治療

非定型肺炎に対しては、以下のような基準で抗菌薬を選択する。
日本呼吸器学会の「成人市中肺炎診療ガイドライン」に準じて、治療方針を解説する。

1.非定型肺炎の疑い~外来治療

・若年成人、または基礎疾患を持たないor軽微
「マクロライド系抗菌薬(経口薬)」
「テトラサイクリン系抗菌薬(経口薬)」

・65歳以上、または慢性の心疾患・肺疾患がある
「マクロライド系抗菌薬(経口薬)」
「テトラサイクリン系抗菌薬(経口薬)」
「ニューキノロン系抗菌薬(経口薬)」
「ケトライド系抗菌薬(経口薬)」

2.非定型肺炎の疑い~入院治療

「マクロライド系抗菌薬(注射薬)」
「テトラサイクリン系抗菌薬(注射薬)」
「ニューキノロン系抗菌薬(注射薬)」

ウイルス性肺炎の治療

ウイルス性肺炎の場合、ウイルスの種類ごとに治療方針が変わる。

インフルエンザウイルスの場合

「オセルタミビル(経口薬)」
「ザナミビル(吸入薬)」

水痘・帯状疱疹ウイルスの場合

「アシクロビル」など、水痘・帯状疱疹ウイルスに有効な抗ウイルス薬

そのほかのウイルス

有効な抗ウイルス薬が存在しないウイルスの場合、必要に応じて対症療法を実施しながら、自然治癒を待つことになる。

肺炎予防

予防接種により、種類によっては肺炎にかかる確率を低減することが可能である。
肺炎予防に有用なワクチンとしては、次のようなものが知られている。

1.成人用肺炎球菌ワクチン

肺炎の最大要因―肺炎連鎖球菌への感染を予防するワクチンである。
「13価肺炎球菌結合型ワクチン」と「23価肺炎球菌多糖体ワクチン」の2種類が存在する。日本で定期接種となっているのは「23価肺炎球菌多糖体ワクチン」である。
65歳以上の高齢者、心疾患・肺疾患を有する人に推奨されている。

2.インフルエンザワクチン

インフルエンザの予防接種である。
インフルエンザウイルスに起因する肺炎を予防するのに役立つ。
また、インフルエンザに罹患すると免疫が弱まって、細菌性肺炎にもかかりやすくなる。
そのため、インフルエンザ予防は、間接的に細菌性肺炎の予防にもつながる。

治療の展望と予後

抗生物質の発明により、細菌感染症の死亡率は大きく低下した。
肺炎も例外ではない。
しかし、近年、抗生物質が効かない細菌―耐性菌の増加が問題になっている。

薬剤耐性

耐性菌が増加しはじめたのは、抗生物質が広く用いられるようになった1940年代以降である。
もともと、ある種類の抗生物質が効かない細菌というのは、一定の割合で存在していた。
人間にも、体質的に麻酔が効きにくい人がいるように、細菌にも個体差がある。

しかし、抗生物質の普及で「抗生物質に反応する菌」がどんどん減っていくと、相対的に耐性菌が増加する。
抗生物質の効かない耐性菌だけが増殖するようになり、気づけば、どんどん耐性菌の割合が増えていくことになる。
結果、最終的には「ほとんどが耐性菌」という状況になる場合もある。

そのほか、同じ種類の抗生物質を繰り返し使用したり、長期的に使用したりするうちに、細菌が後天的に耐性を獲得する場合もある。
死んだ細菌のDNAを取りこみ遺伝的性質が変化する形質転換をおこしたり、細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)により、細菌の遺伝的形質が変更される形質導入をおこしたりするなどで性質が変わることがある。

抗生物質の成分を分解・化学変化により無効化することもある。酵素によって抗生物質を分解し、効かなくする。
細菌の細胞壁合成を阻害する「β-ラクタム系抗生物質」を加水分解する酵素―β-ラクタマーゼによる薬剤耐性が代表例である。多くのペニシリン耐性菌がβ-ラクタマーゼによる薬剤耐性を獲得している。

抗生物質が作用する場所にある分子の性質を変えることもある。
抗生物質が「分子A」を破壊することで殺菌するなら、細菌の体内にある「分子A」を別の物質に変えることで、抗生物質の影響を逃れる。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、この方法により薬剤耐性を得ている。

細菌の細胞内に入りこんできた抗生物質を、細胞外に排出する緑膿菌などもいる。多くのグラム陰性細菌は排出ポンプを備えていて、もともと薬剤への抵抗性が高い。

薬剤耐性菌による肺炎

抗菌剤を投与すると、「感受性菌(=抗生物質に反応する細菌)」が抑制される一方、耐性菌は生存・増殖する傾向が生じる。
そのため、抗菌剤を用いている医療機関では、耐性菌が増加しやすくなる。
結果、「医療ケア関連肺炎」「院内肺炎」においては耐性菌の関与が多い。

薬剤耐性菌による肺炎は、「薬が効かず、時間経過によって重症化するリスク」を有している。実際、非定型肺炎の代表例であるマイコプラズマ肺炎でも「薬剤耐性」が問題になっている。
旧来、マイコプラズマに対しては「マクロライド系抗菌剤」が効果的であった。しかし、近年は「マクロライド耐性マイコプラズマ」が出現し、薬を処方しても治癒に向かわず、重症化して入院に至る症例が増えている。

肺炎を含め、多くの感染症で「薬剤耐性菌」は大きなリスクとなっている。
以下、肺炎の起炎菌となる薬剤耐性菌の一例である。

・ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌(PRSP)
・マクロライド耐性肺炎連鎖球菌(MRSP)
・多剤耐性肺炎連鎖球菌(MDRSP)
・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
・バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)
・多剤耐性緑膿菌(MDRP)

新しい抗菌薬が開発されても、いずれは細菌が薬剤耐性を獲得する。
今のところ、この「いたちごっこ」を解決する方法は見いだせていない。
広範囲の細菌に効果を示すことから「切り札」と考えられていた「カルバペネム系抗菌薬」に対しても、1993年、「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」が登場している。

合併症

肺炎の合併症として代表的なものに、肺膿瘍(はいのうよう)、膿胸(のうきょう)、敗血症がある。

1.肺膿瘍

肺が細菌感染を起こすと、肺組織の一部が破壊されて空洞になり、内部に膿が溜まることがある。
この状態が「肺膿瘍」である。黄色ブドウ球菌、連鎖球菌のほか、口腔内にいる生きるために酸素を必要としない嫌気性細菌などが原因になる。
肺炎の合併症として生じることもある、誤嚥性肺炎と同じく、誤嚥をきっかけに発症することも多い。

2.膿胸

肺は、「胸膜(きょうまく)」と呼ばれる膜に覆われている。
膜は二重構造になっており、内側の「臓側胸膜」と外側の「壁側胸膜」にわかれている。
膿胸は胸膜が感染を起こして、2枚の膜の隙間(=胸膜腔)に膿が溜まった状態である。

ずっと以前には、肋膜炎と呼ばれており現在の胸膜炎に相当する。

肺炎から進展することがあり、肺膿瘍を伴う症例も多く見られる。
腹膜腔にチューブを刺して膿を排出する処置が必要になる。

3.敗血症

肺炎などの感染症では、細菌が血流に入りこむリスクが存在する。
この状態を「敗血症」と呼ぶ。敗血症が悪化すると、心拍・呼吸が早まり、血圧低下を起こす。
血流の減少で臓器が壊死するリスクもあり、敗血症ショックを起こせば生命にかかわる。

発症しやすい年代と性差

厚生労働省の2015年統計によると、肺炎は日本人の死因―第3位となっている。
日本人の主な死因の9.4%を占めている。

人口10万人あたりの死亡者数に直すと、2015年、「人口10万人あたり96.4名」が肺炎で死亡している。

1947年には「人口10万人あたり約130名」が肺炎により死亡していた。
その後、肺炎による死亡者数は急減し、1965年以降は「人口10万人あたり20~30名」を推移していた。
しかし、1980年代から再び増加に転じて現在に至る。

「抗生物質の進歩」「衛生面の改善」により減少したが、高齢化が進んだことで再び死亡者が増加したものと考えられている。

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