マイコプラズマ肺炎の基本情報

マイコプラズマ肺炎とは?
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマニューモニエという細菌による感染症です。
一年中感染の可能性がありますが、冬に感染者が増える傾向です。感染すると風邪とよく似た症状を発症します。しかし、風邪のように回復せず、咳や熱が長引きます。
若年層に多くみられる肺炎でもあります。
マイコプラズマ肺炎の基礎知識
病名
マイコプラズマ肺炎
別名
なし
症状
発熱や全身倦怠感、頭痛、痰を伴わない咳など。
罹患者数
年間で感受性人口の5~10%が罹患するとされている。
発症しやすい年齢と性差
小学校や中学校での流行が多く、7~8歳がピーク。
原因
非定型病原体(※1)―肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)に感染することで起こる感染症。
受診の必要性
長引く咳などの症状があるときは、小児科、呼吸器内科を受診。
検査内容
感染症迅速検査(専用キットによる検査)と遺伝子検査と血液検査(マイコプラズマ抗体検査)。
治療可否
治療は可能。
治療法
一般的には、マクロライド系(※2)のエリスロマイシン(※3)、クラリスロマイシン(※4)などの抗生剤が処方される。
治療期間
抗生剤による治療を7日~14日間。
編集部脚注
※1 非定型病原体
非定型病原体は、「β-ラクタム系抗菌薬で殺菌することができない細菌」です。
β-ラクタム系抗菌薬は「細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンの合成を阻害する薬」の総称です。
具体的には「ペニシリン系抗菌薬」「セフェム系抗菌薬」などが該当します。
マイコプラズマ肺炎の病原体―マイコプラズマ・ニューモニエは「細胞壁を持たない細菌」なので、細胞壁の合成を阻害しても意味がありません。
また、レジオネラ属の細菌は「細胞内寄生菌」であり、人間の細胞内で増殖します。
β-ラクタム系抗菌薬は細胞内にほとんど入らないため、細胞内寄生菌には効果が期待できません。
さらに、クラミジア属の細菌は細胞壁に「ペプチドグリカン層」がありません。
当然ながら、「ペプチドグリカンの合成を阻害する薬」であるβ-ラクタム系抗菌薬は無効です。
このような「β-ラクタム系抗菌薬が効かない細菌」を指して「非定型病原体」または「非定型細菌」と総称しています。
※2 マクロライド系
マクロライド系は、抗菌薬の系統の1つです。
細菌のタンパク質構成器官―リボソームの働きを阻害する薬です。
リボソームは2つのサブユニットにわかれており、細菌のリボソームは「30S」と「50S」から構成されます。
マクロライド系抗菌薬は、50Sと結合して、本来の働きができないように阻害します。
「細菌の増殖を抑える」という効き方をすることから、「静菌的に作用する」と表現されます。
ちなみに、人間のリボソームは「40S」と「60S」なので、マクロライド系抗菌薬の影響を受けません。
そのため、マクロライド系は「人間に対する毒性がきわめて低い抗菌薬」と見なされています。
※3 エリスロマイシン
エリスロマイシンは、マクロライド系抗菌薬の1つです。
1952年に精製された「最初のマクロライド系抗菌薬」になります。
抗菌スペクトルが広い(=さまざまな種類の細菌に効果的である)薬ですが、マクロライド系の中では副作用が強いとされています。
※4 クラリスロマイシン
クラリスロマイシンは、マクロライド系抗菌薬の1つです。
1990年に開発された薬で、副作用も穏やかになっています。
また、エリスロマイシンが1日4~6回の服用を要したのに対し、1日2回の服用で済むというメリットもあります。
■医師が推薦する情報サイト
厚生労働省 マイコプラズマ肺炎に関するQ&A
国立感染症研究所 マイコプラズマ肺炎とは
■参考サイト
マイコプラズマ肺炎に関するQ&A
国立感染症研究所
マイコプラズマ肺炎とは?
マイコプラズマ肺炎は、発熱・咳・頭痛などの症状を引き起こす感染症です。「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌に感染することで発症します。
風邪の症状に似ていますが、どんどん咳がひどくなります。咳は長引き、熱が下がってからも3~4週間ほど継続します。

マイコプラズマ肺炎は年間を通して発症する
冬場に流行する傾向がありますが、夏に感染することも珍しくありません。年間を通して感染の恐れがあります。
かつて、日本では4年おきに大流行していて、流行年が夏季オリンピックの年に重なっていたことから「オリンピック熱」と呼ばれることもありました。
しかし、1984年(ロサンジェルス五輪)、1988年(ソウル五輪)の年に大流行して以降、特にオリンピック開催年だけ流行するという傾向は見られなくなっています。
マイコプラズマ肺炎は若年者の発症が多い
子供・若い人の発症が目立ち、例年、マイコプラズマ肺炎にかかる患者の8割程度が14歳以下となっています。
一例として、2012年の年齢別報告数を確認すると、次のようになっています。
0~4歳 | 30.2% |
5~9歳 | 31.4% |
10~14歳 | 18.6% |
15~19歳 | 3.4% |
20~39歳 | 7.8% |
40~59歳 | 3.3% |
60歳以上 | 5.3% |
圧倒的に若年者の発症が多く、20~39歳といった抵抗力の高い年齢層でも7.8%という高い数字です。
反面、60歳以上で5.3%と低く、高齢者の罹患率があまり高くありません。
本来、肺炎の原因菌として、もっとも一般的なのは「肺炎レンサ球菌」です。
肺炎レンサ球菌による肺炎にかかりやすいのは、「65歳以上の高齢者」と「5歳未満の乳幼児」です。
つまり、抵抗力の低い乳幼児・高齢者の罹患率が高くなっています。
マイコプラズマ肺炎は「5~35歳」において主要な肺炎であり、肺炎レンサ球菌による肺炎とは異なる傾向を持っています。
【参考】NIID 国立感染症研究所 2012年第35号<注目すべき感染症>マイコプラズマ肺炎
日本呼吸器学会 成人肺炎診療ガイドライン2017
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