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パニック障害

目次
  1. 概要
  2. 症状
  3. 原因
  4. 検査内容と主な診療科目
  5. 治療方法と治療期間
  6. 薬物療法
  7. 心理社会的治療
  8. 自律訓練法の標準訓練
  9. その他の治療と対処法
  10. 治療の展望と予後
  11. 発症しやすい年代と性差

概要

パニック障害とは?

パニック障害は、突然起こる鋭い不安発作が何度も繰り返される病気です。パニック障害でみられる不安発作は、特に誘因なく起こることがほとんどです。発作が繰り返されると、次第に外出することや一人になるのが怖くなったり、発作を恐れて活動を控えたりするようになるなど、生活に大きな支障が出やすくなります。

また、強い不安に伴って、動悸、息苦しさや呼吸困難、胸の痛みや苦悶感、吐き気やお腹の違和感、汗、めまい、寒気又は暑さなどの体の症状が強く出るために、体の病気ではないかと思うことも少なくありません。そのため、まず体の病気を疑って救急科や様々な科を受診するものの、異常がみられず、何でもないと言われてしまうことも少なくありません。

不安発作は耐え難く辛いものの、体の病気ではなく、そのことで死んでしまうことは勿論ありませんし、やがて治まります。しかし、精神科・心療内科の治療によって良くなることを知らなければ、いつまでも症状に悩み、生活範囲がどんどん狭くなりってしまうことにもなりかねません。
周囲の人の理解がないと、単に心が弱いだけだ、気のせいなどとされ、すっかり自信を無くし、自尊心を失って、打ちひしがれたり、うつ状態になったりこともあります。

パニック障害は、適切に治療を行えば、きちんと(※)寛解(かんかい)に至る病気です。ご本人や周りの人々が正しい知識を持って、治療にあたることが大切です。しかし、一方で治療に数か月あるいは年単位かかることも少なくありません。また、きちんと治療しないと再発が多いことも知られています。完全寛解を目指し、その後の再発予防も含め、適切に治療を受けましょう。

※2013年に米国精神医学会からDSM-Ⅴが発表され、パニック障害は「パニック症」に名称が変更されましたが、認知されている「パニック障害」という言葉を使用します。
※寛解…限りなく症状がない、おだやかな状態であること。

症状

パニック障害は、突発的に強い不安に駆られ、動悸や息切れを起こすことが代表的な症状である。一過性のものだと考えて放置すると、慢性的に不安な状態が続くことになる。
パニック障害の症状は3つに分類され、パニック発作、予期不安、広場恐怖がある。
パニック発作が主な症状で、発作を恐れて予期不安と広場恐怖のどちらか、またはどちらも発症するケースがある。

1.パニック発作

パニック発作は鋭いく強い不安発作のことを指す。鋭い不安発作は不安に伴って、交感神経系が優位になるため、動悸、息苦しさや呼吸困難、胸の痛みや苦悶感、吐き気やお腹の違和感、汗、めまい、寒気又は暑さなどの体の症状を伴うことが多い。
パニック障害でみられるパニック発作は、特に誘因なく起こることが基本である。また発作が何度も繰り返されることが診断基準となっている。

パニック発作の診断基準

国際的な診断基準の代表的なものには世界保健機関(WHO)によるICD(International Classification of Disease)分類と米国精神医学会によるDSM(Diagnostic and Statisitical Manual)分類がある。
DSM-IV によると、下記の14症状のうち4つ以上を同時に発症し、症状が現れてから10分後がピークであるものがパニック発作と診断される。
まずはパニック発作があるかでパニック障害の診断は決まってくる。

①動悸、心悸亢進(しんきこうしん)、または心拍数の増加
②発汗
③身震いまたは震え
④息切れ感または息苦しさ
⑤窒息感
⑥胸痛または腹部不快感
⑦嘔気または腹部の不快感
⑧めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
⑨現実感消失(現実でない感じ)、または離人症状(自分自身から離れている)
⑩コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
⑪死ぬことに対する恐怖
⑫異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
⑬冷感または熱感
⑭口渇(国際疾病分類第10版のみ)

2.予期不安

パニック発作が繰り返されると、また起こるのではないかと不安になって来る。これを予期不安という。発作が起こると死んでしまうのではないかと破局的に考えやすくなったり、発作を恐れて活動を控えたりするようになるなど、生活に大きな支障が生じる。

3.広場恐怖

広場恐怖とは、平たく言えば、慣れ親しんだ場所や人を離れて慣れない場所で助けを得られず孤立することへの恐怖を指す。他の疾患でも見られる。
パニック障害でみられる広場恐怖では、発作が起こってしまったらすぐに助けを求められない、あるいはすぐに安全な所へ異動できないような場所に出かけることに恐怖を感じ、そういった場所を回避してしまうことが多い。例えば、会議室、映画館や劇場、あるいはエレベーター、観覧車、満員電車、デパートの地下の売り場、美容院や歯科にかかることなどを避けてしまうことがみられる。軽度の場合は誰か親しい人が同伴すれば行くことが出来る場合もあるが、症状が重くなってくると親しい人がいたとしてもそのようなところに行けないばかりでなく、自宅やごく近所しか出かけられなくなってしまう。

原因

パニック障害の原因はまだ十分に解明されているわけではない。
現時点で考えられる仮説は主に3つある。

脳機能の異常

パニック障害は、脳が恐怖を異常に感じ取ってしまうことが原因だとする説が有力になっている。
脳は大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)の扁桃体(へんとうたい)を中心とした、恐怖神経回路を持っている。
大脳辺縁系は本能や情動、記憶をコントロールする部分で、そのなかで扁桃体は情動と記憶に関する働きを担っている。

人間が不安や恐怖を感じるときは、海馬(かいば)という記憶を司る部分からノルアドレナリンという神経伝達物質によって扁桃体に情報が伝わります。
これが恐怖神経回路である。

このときにノルアドレナリンが過剰に分泌され、恐怖や不安を必要以上に感じてしまうという説である。
さらにいうと、このノルアドレナリンの分泌を調整するセロトニンが少ないことが原因だといわれている。

治療法にある薬物療法のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)がパニック障害に有効であることが、この仮説の裏付けとなっている。

心理的要因

パニック障害は理由もなく発作が起こることとされているが、過去に患者さんが経験したことが原因になっていることも考えられる。
いわゆるトラウマというものや、蓄積されたストレスによる影響である。

社会的要因

これは心理的要因につながる要因だが、日本文化特有の要因である。
日本人は伝統的に恥を嫌う。そのため日本では対人恐怖症の人が多く人目を避ける傾向にあり、パニック障害に陥る可能性も高いとされている。

しかし、近年のグローバル化に伴い、こうした日本人特有の傾向も薄らいでいるため、この要因は説としてあまり有力ではない。

原因の歴史的変化

19世紀の終わりからフロイトの学説を中心に不安は心理的葛藤が主たる原因とされていた。

一方で1940年代からパニック発作の誘発物質が見出されてきたこと、1960年代に抗うつ薬のイミプラミンが鋭い不安発作を持つ一群に有効であることが示されたことなどから、従来は不安神経症とされていた病態の中から、鋭い不安発作を持つ一群が生物学的基盤を持つ疾患概念として独立し、「パニック障害(panic disorder)」としてクローズアップされてきた歴史がある。
1980年にアメリカ精神医学会による疾病分類DSM-Ⅲにおいてパニック障害が不安障害の下位分類に採用され、現在に至っている。その後神経伝達物質・受容体研究から成因についても研究が進んできた。現在までに、ノルアドレナリン系の機能異常説、セロトニン系の機能異常説、ベンゾジアゼピン系の機能異常説などが有名である。

その一方で、パニック発作は確かに薬物療法がかなり有効であるものの症状限定発作や広場恐怖には有効性が限定的である場合もみられること、認知行動療法の有効性も確立していることなどから、この病態は生物学的仮説で気ではとらえきれず、心理社会的要因なども関与していることが示唆されている。

検査内容と主な診療科目

鋭く強い不安発作が繰り返され、行動制限がみられる場合、受診が望ましい。

鑑別診断(※)を行う

※症状を引きおこしている疾患を探るため、さまざまな他の要因を否定して絞り込んでいく方法

パニック発作でみられる身体症状は多く、身体疾患を否定するための診断や検査が必要がある。
パニック発作と似たような症状を起こす身体疾患には甲状腺機能亢進症褐色細胞腫糖尿病性ケトアシドーシス低血糖などの内分泌代謝性疾患、狭心症不整脈肺塞栓症うっ血性心不全などの循環器疾患、喘息低酸素症などの呼吸器疾患があげられる。そのため甲状腺ホルモンの状態などをみる血液検査、心電図検査が鑑別のため行われる。
薬物等による影響が原因のこともある。例えばカフェイン、依存薬物の摂取、アルコール離脱、向精神薬からの離脱症状でパニック発作が現れることもある。内服薬、嗜好品の情報も医師に伝えたほうが良い。

主な診療科は精神科・神経科・精神神経科

身体の病気が否定され、パニック障害の疑いがある場合は、上記を受診するのがよい。精神科、精神神経科、神経科は同じものなので、この3つのどれかが標榜されていれば対応は可能であると考えられる。

似たようなイメージをもたれる科には神経内科、心療内科がある。
神経内科は神経の異常によって身体に支障が出ている病気を診る。手足の麻痺やパーキンソン病、脳梗塞などを診察する。神経内科と看板に掲げていても、心の病気を診察する医療機関もある。
精神的な要因で身体に異常が出ている(胃潰瘍や気管支喘息など)ときに診察をおこなうのが心療内科である。心療内科と掲げてあっても軽いうつ病や、不安障害を診察する医院も存在する。

上記のことを考慮すると、パニック障害は精神科、神経科、精神神経科を受診するのがよい。心療内科、神経内科でも心の病気を診ているのは、「精神科」という名前では患者さんが受診しにくい場合があるためでもある
ただし、医療機関によってその背景はさまざまであるため、得意な分野などを詳しく知りたい場合は、公的機関である保健所、保健センター、あるいは精神保健福祉センターに相談してみるのも良い。各都道府県の精神神経科診療所協会または精神科病院協会などのホームページを見て専門の医療機関を探すのも良いだろう。

内科で診てもらうことについて

初めは精神的な病気ではないと考え、最寄りの内科で診てもらう人が多くいる。体の病気が見落とされる方が弊害が大きいので体の病気かどうか迷ったらそのほうが良い。しかし、身体を診ても悪いところはなく「健康です」と言われた場合は、パニック障害を疑って精神科を受診するのがよいだろう。

治療方法と治療期間

パニック障害の治療で有効性が確立しているのは薬物療法認知行動療法である。

いくつかの研究では、両者の効果はほぼ同等であり、併用するとさらに効果的であるとされる。日本では、認知行動療法は費用と時間がかかるため、保険診療で実施している医療機関はほとんどないといってよい。現実的には薬物療法が中心であるが、これ単独ではもちろん効果は不十分であり、本人及び家族に対して心理教育を含む支持的精神療法を併用することがほとんどである。具体的にはこれは病気の症状であり、性格や気のせいではないこと、発作では死ぬことはない事を本人と家族によく説明し、治療法が確立していることを説明する。

落ち着いて気をそらしていくと症状は自然に軽減することを経験してもらい、症状のコントロールの仕方を学んでもらう。症状が落ち着いてきたら、行動を少しずつ拡大する暴露療法を試み、また、不要な緊張をしないようにリラクゼーションを行う。

薬物療法

抗うつ薬

◆SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors/選択的セロトニン再取り込み阻害(そがい)薬)

SSRIは抗うつ薬の一種で、脳神経の働きを調整する作用がある。投与して2週間後程度で、効果がみられるようになる。
従来の薬で現れていた副作用がなくなったことが長所だが、別の副作用が出てきているのが難点である。
SSRIによる作用機序(さようきじょ/作用する仕組み)は下記の通りです。

1.不安や恐怖を感じる場所や状況になると、神経伝達物質であるノルアドレナリンによって、不安や恐怖が扁桃体に伝えられる。

2.このノルアドレナリンはもう一つの神経伝達物質であるセロトニンによって調整される(不安や恐怖が抑えられる)。しかし、パニック障害を患っていると、この調整が上手くできない状態になっている。

3.セロトニンは扁桃体に情報を伝えた後、セロトニントランスポーターという通り道を通って戻っていく (再取り込み/再吸収)が、そこのセロトニントランスポーターのみを選択的にSSRIが阻害する。

4.阻害されたセロトニンは扁桃体に留まり、ノルアドレナリンなどの感情伝達物質の調整を引き続きおこなう。
結果的にセロトニンが増えて、調整力が上がる。

日本で使用されているのは以下の4種類である。

商品名:ルボックス、デプロメール
成分名:フルボキサミン
商品名:デキシル
成分名:パロキセチン
商品名:ジェイゾロフト
成分名:セルトラリン
商品名:レクサプロ
成分名:エスシタロプラム

成分はそれぞれ異なるが、抗パニック効果はあまり違いがみられない。日本でパニック障害に適応があるものはパロキセチン、セルトラリンのみである。
また、24歳以下の患者に対しては自殺関連行動の増加がみられたため、SSRIの投与は慎重にすべきとされている。
重篤な副作用としては、頻度は少ないが、セロトニン症候群がある。服用後、以下の症状が数時間で現れ、症状はSSRIの服用を止めると24時間以内に治まることが多い。症状が出た場合は速やかに医師に連絡する必要がある。

注意点

・18歳未満、24歳以下の患者に処方する際には十分に注意すること
18歳未満の子ども、青年に対して処方しても効果がみられないというデータや、興奮、攻撃性(反発行動)が増したという報告がある。
24歳以下の患者に対しては自殺関連行動の増加がみられたため、SSRIの投与は慎重にすべきとされている。

副作用

・セロトニン症候群
SSRIの服用後、数時間で現れる副作用である。精神的、身体的に以下のような症状がみられる。
症状はSSRIの服用を止めると24時間以内におさまるが、副作用の症状が出た場合は速やかに医師に連絡する。

・不安、混乱、イライラする
・興奮し、脈が速くなる
・動き回る
・手足が勝手に動く
・眼が勝手に動く
・震える
・身体が固くなる
・汗をかく
・発熱
・下痢
など

ごくまれに重篤化して、横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)や腎不全(じんふぜん)が起こる場合がある。

◆SNRI(Serotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitors/セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

SNRIはSSRIにノルアドレナリン再吸収阻害作用が追加された薬である。
SNRIはノルアドレナリンの再取り込みも阻害するため、興奮や不安といった感情の信号を強くする。そのため、抗うつ薬として使用される。
いくつかの研究ではSNRIのうち、ベンラファキシンがパニック障害への有効性が示されている。しかし日本での適応はない。

◆TCA(Tricyclic Antidepressants/三環系(さんかんけい)抗うつ薬)

TCAはSSRIやSNRIといった新しい抗うつ薬が登場する前に使われていた抗うつ薬である。主な作用は、ノルアドレナリンかセロトニンの再吸収を阻害することである。TCAのうちイミプラミンやクロミプラミンはパニック障害への有効性が示されているが、副作用が多いことが難点で、現在では使われることは減っている。

副作用は以下の通りである。

・眠気
・口渇
・便秘
・起立性低血圧
・頻脈
・目のかすみ
・鼻閉
など

◆non-TCA(四環系抗うつ薬)

SSRIやSNRI、TCAに比べて速効性が高く、服用を始めて4日程度で作用する。
TCAの副作用をある程度抑えたタイプの薬である。パニック障害への有効性のエビデンスには乏しい。

◆抗不安薬(ベンゾジアゼピン系抗不安薬)

パニック障害の治療に用いられる薬物療法のもう一つの治療薬が抗不安薬である。
SSRIやSNRI、TCAに比べて速効性があるのが特徴である。多数の種類があり持続時間と効果の強さに差がある。
患者さんの症状を考慮して使い分ける。

抗不安薬の作用機序(※)

※医薬品が人体に何らかの効果を及ぼすメカニズムのこと

1.GABA(Gamma Amino Butyric Acid/ガンマアミノ酪酸)という興奮や不安を抑える神経伝達物質がある。
2.GABAの脳内作用を増強するものが抗不安薬になる。GABAの作用が強くなることで、脳内が落ち着いて興奮や不安が静まる。
抗不安薬の副作用は、脳の機能がスローダウンすることである。眠気や物忘れ、筋弛緩作用、痙攣作用を引き起こすことがあるため、服用してからの運転や作業は控える必要がある。

また、常用量依存などの問題もあり、現在は初期に頓用で限定的に併用する以外は、重症例で一時的・短期的にSSRIと併用されたり、何らかの事情でSSRIなどが使えないケースで使用されるにとどまる。

心理社会的治療

心理社会的療法は薬物療法と併用されることが多い。日常診療で併用されるのが多いのは暴露療法である。急性期の鋭い不安発作を薬物療法で消退させた後、心理社会的療法で予期不安や回避行動の軽減を行ったり、再発予防に行われることが多い。薬物療法も、発作が起きていないからと油断せずに継続することが大切である。症状がなくなってから、少なくとも1~2年は服用を続けることが望ましい。またパニック障害の原因といえるのは環境の変化に伴うストレスだが、生活上のストレスが関係ないとはいえない。ストレスが発作の確率を高めるともいわれている。十分な睡眠と休息、適度な運動やバランスの取れた食生活を心がける。たばこは健康に悪影響だといわれる嗜好品だが、同様にパニック障害やうつ病といった精神障害を引き起こしやすい要因でもある。

◆暴露療法(ばくろりょうほう/エクスポージャ)

行動療法の一つである。患者さんが過って認知している、不安や恐怖を感じる場所や状況に対して、実際に行動を起こして克服、慣れさせようという目的でおこなうものが暴露療法である。
1.まず、不安や恐怖の対象を100点満点で段階順に挙げる。(最も強く不安や恐怖を感じることを100点、不安を感じないことを0点として10点ごとに物事を挙げる)
2.通常、中段(40~50点台)の物事から実際に直面してチャレンジをしていく。
そこから高い点数にチャレンジを繰り返していくことで、徐々に不安や恐怖を克服するのが目標である。
チャレンジの失敗が続き、0点の物事でも達成できない場合、系統的脱感作法(けいとうてきだつかんさほう)というものがある。これはいわゆるイメージトレーニングで、不安な場所や状況を思い浮かべ、克服できるようにする。

◆認知行動療法

ここでは系統的な狭義の認知行動療法について述べる。軽症であれば認知療法単独で用いられるが、重症例では併用される。初期に薬物療法でパニック発作を軽減させた後、薬物療法を中止して予期不安や回避行動に対し認知行動療法を行うなどの方法もある。再発予防には薬物療法よりも認知行動療法が勝っているという報告もある。自費診療で行う医療機関がほとんどである。

◆自律訓練法(リラクゼーション)

心療内科医を中心に、治療に取り入れている医療機関もある。不安な状態やパニック発作になったときに落ち着けるように、呼吸法やリラックスできる方法を身につける。訓練を繰り返すことで、心が整理でき、自己調節機能が回復するとされている。一回3~5分でおこなうことができ、一日に3~4回の実施が目安。不安が強い人はより多くの回数をこなしても問題はない。しかし、第3~6公式(下記記載)は正しい方法でおこなうことが難しく、他の病気にも配慮しなければならないので専門家と一緒におこなうことが望ましい。

自律訓練法の標準訓練

自律訓練法の一般的なもので、背景公式と第1公式から第6公式までの合計7つの公式(※)がある。

※公式とは、訓練中に頭のなかで唱える言語公式のことをいいます。
始める前に、環境を整える。少し暗いぐらいの、静かで落ち着ける空間でおこなう。
足が90°曲げて座れる椅子に、軽く眼をつぶってリラックスした状態で座る。腕時計やベルトは外しておく。
では、公式に沿って自律訓練法を説明する。基本的に頭のなかで公式ごとの内容を反復して唱え、イメージする訓練をおこなう。

背景公式(安静練習):「気持ちが落ち着いている」とイメージする

頭を空っぽにして、リラックスできている、と反復して頭のなかでイメージする。

第1公式(四肢重感練習):「手足が重たい」とイメージする

両手両足の重みを感じる。同時におこなわず、利き腕、利き足から重みを感じる。

第2公式(四肢温感練習):手足が温かいことを実感、イメージする

リラックスするほど手足の温度は上がっていく。
十分にリラックスできると、重さと同じく、温かさも自然に感じるようになる。

第3公式(心臓調整練習):心臓が静かに打っていることをイメージする

リラックス状態になっていると、心臓は静かに打っている。
その鼓動をそのまま聞き、感じることでよりリラックスしていく。

第4公式(呼吸調整練習):楽に呼吸していることをイメージする

リラックス状態では、楽に深い呼吸をしている。
イメージすることで、さらにリラックスしていく。
ただし、呼吸器系の疾患を持っている人には原則としておこなわない。

第5公式(腹部温感練習):お腹が温かいことをイメージする

腹部の神経に注意を向けて、暖かさを感じとる練習である。
消化器系の病気を持っている人には注意が必要になる。

第6公式(額部涼感練習)(がくぶりょうかんれんしゅう):額が心地よく涼しいことをイメージする

頭寒足熱を促す公式である。
てんかんや頭部外傷後遺症の人におこなってはいけない。

消去動作

訓練が一通り終わったら意識レベルが低下し、筋肉も緩んでいる状態にあるのですぐに行動することは危険である。必ず消去動作をおこなう。
消去動作の主な内容は、手の開閉運動を5~6回、肘の屈伸運動を3~4回、背伸びをして深呼吸などである。

その他の治療と対処法

禁煙

治療には禁煙が推奨される。タバコを吸うと、ニコチンによって脳が快感を生み出すドーパミンを大量に放出する。この状態が途切れると、ニコチン離脱という状態になり、タバコが欲しくなる。その状態になるとイライラしたり抑うつ状態になったりして、うつ病やパニック障害といった精神障害を起こしやすいというデータが出ている。

周囲の協力

パニック障害になると、自分で感情がコントロールできない状態になり、自傷行為に及んだり、他者の負担になる言動を起こしたりする可能性がある。
そこまで進行すると、パニック障害は一人で治療することは困難な病気であるため周りの人の理解と支えが必要になる。
パニック障害だけでなく、精神障害というものは身体的に異常がないことが多いため、見た目ではなかなか分からないが、家族や身の回りの人が病気だということを正しく理解して支える必要がある。

理解しようとする姿勢が大切

パニック障害は脳内物質のバランスが崩れることで発症する。医学的な根拠もあるが、家族や周囲の人に「気の持ちよう」「思い込みだ」と理解されないことが心の負担になる。共感と理解をしてもらうことが患者さんにとって不安が安らぐことにつながる。

パニック障害の発作を起こした時の周囲の人の対処法

発作は30分程度で治まり、発作で亡くなることはない。パニック障害の発作をおこした人の周りの方は、慌てず冷静に「大丈夫」「すぐに落ち着く」などの声をかける。

医師の判断を仰ぐ

症状の程度によって医師の判断で薬を増量することがある。自身や家族の判断で薬の減量や中止をおこなうと症状が長引いてしまい、治療の延長の原因になる。疑問や不安は医師に伝えて確認をおこなう。

治療の展望と予後

治療によって症状が改善する可能性は高い

パニック障害は他の精神疾患を併存(※)しやすいことで知られる。米国での大規模な疫学調査の報告によると、パニック障害を患う人は50~65%の確率でうつ病を同時に患うというデータがある。全般性不安障害は25%、社会恐怖は15~30%、特定の恐怖症は10~20%、強迫性障害は8~10%の併存(※)があるとされている。
※二つ以上の不安障害の条件を同時に満たして患うこと

合併しやすい疾患と症状

うつ病性障害

一週間以上ほとんど毎日気分が沈む、物事に興味がわかない、眠れない、食欲が何などの症状が続く。

双極性障害

躁(そう)状態とうつ状態を繰り返す。
躁状態とは・・・躁とはせかせかと騒がしいことをいう。その名前の通り、気分が高揚して支離滅裂な言動をしてしまう状態のことを指す。逆に抑うつ状態に急になったりもする。

全般性不安障害

全般性不安障害は、仕事や学業、家事、天災、事故といったあらゆる事柄に理由のない不安を常に感じてしまう病気。不安の性状はパニック障害でみられる鋭い不安発作ではなく、浮動性、持続性のものである。

社交不安障害

人前でのスピーチや書字、グループでの会食など、注目を浴びる場面で極度の不安が起こり、生活上の支障・不利益が大きくなる様な病気。

特定の恐怖症について

特定の恐怖症は、その人特有の怖いと感じる物事に対しての恐怖症ということである。
理由や原因が明確にあり、それを恐れる度合いが強い場合、特定の恐怖症と診断される。恐怖の対象となるのは以下のような物事になる。
・動物系:ヘビやイヌ、昆虫など
・自然系:嵐や雷、高いところ、水など
・血液:注射や血糊、外傷部分など
・状況:トンネル、閉所、エレベーター、飛行機など

物質使用障害

日本ではパニック障害とアルコールなどの物質使用障害との併存も多い。

発症しやすい年代と性差

NCS(National Comorbidity Survey)による米国での調査では、生涯有病率は4.7%、12ヶ月有病率は2.7%である。また女性は男性の2倍以上有病率を示した。
年齢別にみると、18~29歳は2.8%、30~44歳は3.7%、45~59歳は3.1%、60歳以上は0.8%と青年期から壮年期に広くみられる。
日本での調査では12ヶ月有病率は0.5%と米国よりも少ないようである。

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