冷え症とは
「寒くてよく眠れない」「握手したら手が冷たいと言われた」「手足の末端が冷えて仕事が辛い・・・」こんな冷えに悩んでいる方が多くいます。
よくいわれる「冷え症」は、西洋医学的には病(やまい)ではなく、自律神経失調症の症状の一種といわれています。
「冷え症」ではなくて「冷え性」と表記します。
冷え性は自律神経のバランスが乱れる、ホルモンバランスの乱れるなどによって血行が悪くなり、手や足先などが冷えたり実際体温が低下することもあります。
原因はさまざまなので、軽く考えず冷えの原因を探すことが大切です。
日常的に、冷えによって頭痛や腹痛、めまい、肌荒れ、不眠、低血圧といったさまざまな症状があらわれます。
冷え性の原因になりやすい自立神経の乱れを正すためにも、生活環境を見直すことが望まれます。
冷え性の症状
「冷え性」は体の一部や時には全身が冷たく感じてつらい症状のことです。
「冷え性」の体温による基準はなく、体温が35℃以下に低下した場合に冷え性ではなく「低体温症」と判断されます。冷え性と低体温症は違いますが、ダイエットやエアコンの使いすぎで、平熱が35℃台という低体温症の人も増えています。
低体温症の人にも、冷え性と同じく以下の症状があらわれがちです。
- 疲れる、だるい、のぼせる、不眠・惰眠
- めまい、頭痛・頭重、しびれなどの脳神経系の症状
- 立ちくらみ、顔の紅潮、不整脈、動悸など循環器系の症状
- 息切れ、あくび、咳、のどの不快感など呼吸器の症状
- 吐き気・嘔吐、胃の不快感、胸焼け、下痢、便秘、腹部膨満、食欲不振などの消化器系の症状
- 肩こり、腰痛、背部痛、足の痛み、後頭部の筋肉痛など運動器の症状
- 発汗、青白い顔、指先の冷え、顔面紅潮など皮膚の症状
- 頻尿、勃起不全などの泌尿器・生殖器系の症状
- あせる、イライラする、不穏、無感動、無表情、集中力の低下など
冷え性の診療科目・検査方法
診療と検査は主に内科で行います。
末梢の血流に障害を与える病気の可能性を除外する検査をおこなう場合があります。
特に原因となる病気が見当たらない場合に冷え症と診断されます。
冷え性は西洋医学では「病気ではない」と判断されます。
そのほか、血液検査、自律神経・末梢血流検査、基礎代謝、代謝機能、各種ホルモン検査などをおこなうこともあります。
冷え性の原因
身体の手や足などの末梢でおこる血流障害が原因ではないかといわれています。
こうした血流障害は膠原病や糖尿病、動脈硬化などでおこることもあります。なにかの病気が背景にあって冷え性がおこっている可能性もあるのです。
しかし、特に病気のない健康な人にもおこることがあります。その場合は自律神経機能の調整がうまくいかないことなどが原因ではないかとされています。
よくいわれる「冷え性」の原因は、長時間冷房のきいた空間に身を置くこと、鉄分不足、冷水・果物の摂り過ぎ、ダイエットによる代謝低下、薄着、ハイヒール・窮屈な下着による締め付けによっておこります。
このような外的要因は直接の原因ではなく、こうしたことがきっかけで自律神経の調節がうまく機能しなくなるためではないかと考えられています。
自律神経は交感神経と副交感神経の2種類の神経を指しています。この2つの神経は身体の内外のストレスに合わせてバランスをとりながら機能しています。
たとえば緊張した状態では、交感神経の働きが活発になると心拍数を上昇させ、体温を上げます。逆に副交感神経は心拍数を遅くし、体温を下げます。
このように交感神経と副交感神経が状況に合わせてバランスをとりながら機能しています。
自律神経が影響しておこる冷え性のメカニズムはこうしたバランスの調整がうまくいかないためにおこるのではないかと考えられています。
例えば心身共にストレスフルな生活が毎日続くと、交感神経ばかりが機能し、その結果、血管が収縮して血行が悪くなります。こうしたことで「冷え」がおこるのではないかといわれています。
女性の場合は、妊娠中や更年期に女性ホルモンの乱れによっても自律神経失調症をおこしやすくなります。
また、内向的で社会への適応が難しいと感じる人は自律神経の調整が機能しづらいといわれています。
冷え性の予防・治療方法・治療期間
漢方薬を取り扱う内科医であるなら、冷え性のタイプによって合う漢方薬を処方することがあります。
自分でできる改善法を実践することも大切です。
自律神経の乱れを改善するには、食事を含め生活にメリハリをつけることが大切です。
栄養バランスのとれた規則正しい食事、適度な運動、充分な睡眠、湯船で温まる入浴などをこころがけましょう。
食事
一日3食、できれば決まった時間に摂ることが大切です。
なかでも朝食をきちんと摂ることは体温を上げ身体のリズムを整えます。
ダイエット中の極端な食事制限は、自律神経の乱れの原因になることがあります。
運動
ウォーキングなどの全身運動、これが難しければ、睡眠前のストレッチも有効です。
また、筋トレにも効果が期待できます。体の発熱量は筋肉を使うと上昇します。また筋肉がつくと基礎代謝があがり、体温も上昇します。
入浴
38度から40度のぬるま湯による半身浴(みぞおちの辺りまで湯に浸かること)も副交感神経の働きにより、手足の血管の拡張を促します。額に汗をかくぐらいまで少し長めに浸かります。リラックスすると副交感神経の働きで血管が拡がるため、血行がよくなります。
ストレス解消
ストレス解消も自立神経を整えるのに有効です。ストレス解消法はいろいろありますが、有名なストレス解消法のキーワードがあるので紹介します。
それは、6つの言葉の頭文字を取った「STRESS」からきています。
S:SPORTS〈運動〉
生活習慣病の予防だけではなく、ストレス解消にも役立ちます。体を動かし汗をかくことで気分転換にもなります。
T:TRAVEL〈旅行〉
いつもと違う環境に身をおいてみるのも良いでしょう。見える風景が変わると、いつもと違う考えが浮かびやすくなります。
R:Recreation〈レクリエーション〉
仕事が忙しくていつも緊張状態になっていないか自問してみましょう。息抜きの時間も必要です。一日のうちで休憩時間をとり、仲間や家族と過ごしたり趣味に没頭してみたりするとよいでしょう。オンとオフをはっきりして生活にメリハリがつけば、自律神経の乱れ改善にもつながります。
E:Eating〈食事〉
たんぱく質、ビタミン、ミネラルは、こころの3大栄養素といわれており、ストレスへの抵抗力を高めることができます。
毎日朝食を摂り、規則正しい食事をこころがけましょう。
S:Speaking〈会話〉
コミュニケーションをとることでストレスが軽減されます。また、声を出すこともストレス発散につながります。
S:Sleep〈睡眠〉
睡眠は疲労を回復し、自律神経のバランスを整えます。
冷え性の治療経過(合併症・後遺症)
冷え性は生活の質を低下させるだけでなく、ほかの病気を発症しやすくするという説もあります。生活習慣の改善にかかわるため、長期的に取り組む必要があります。
冷え性になりやすい年齢や性別
女性3,124人を対象にした調査では、全体の52%に冷えの自覚が認められたという報告があります。さらに、55歳以上の更年期年齢にも50%以上に認められているということです。
男性に対しての調査はありません。
執筆・監修ドクター
経歴1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。
関連する病気
冷え性以外の病気に関する情報を探したい方はこちら。
関連カテゴリ
冷え性に関連するカテゴリはこちら。
関連コラム
「冷え性」に関するコラムはこちら。