かいりせいうんどうしょうがい解離性運動障害
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解離性運動障害とは
解離性運動障害(かいりせいうんどうしょうがい)は大きな災害や危機的状況に遭遇した場合、その状態に精神が耐え切れないと判断したとき、自分を守るために、身体症状があらわれる障害です。
解離性、または転換性障害のひとつです。
心因的、精神的ストレスなどによりおこる機能的障害で、無意識のうちに体に何らかの障害がおこります。
解離性運動障害は、本来ひとつにまとまっているはずの認知、記憶、知覚、自意識という自我がバラバラになり、正常に働くことができない精神状態にあります。
そのなかでも、解離性運動障害の場合、心理的ストレスの苦悩が感情としてではなく、身体症状に転換されてあらわます。
身体が動かない、失語、けいれんなどが生じるため、身体障害を訴えますが、実際に検査などをしても身体に異常はありません。そのために周囲に信じてもらい理解を得ることが難しい局面もあります。
早めに病気に気づき治療を受けることが大切です。
解離性運動障害の症状
解離性運動障害の症状には、運動症状、感覚症状、発作症状があります。
運動症状
運動症状としては、手足の運動機能低下によって歩き方に異変が生じる、支えなしでは立てないなどの歩行障害があります。
ほかにも脱力、麻痺、身体のけいれん、手足の震え、痛み、身体の一部が無意識に動くなどや、声を出せなくなる失声症や発音がうまくできなくなる構音障害、二重に見える複視などが挙げられます。
感覚症状
感覚症状としては、視覚、聴覚、皮膚感覚の異常、嚥下(えんげ)障害などが挙げられます。
発作症状
発作症状では、意識消失、手足の震えなどが挙げられます。
また、事故などによる骨折が治癒した後も歩行困難が続く場合や、身体疾患がなかなか改善しない場合なども、解離性運動障害が影響していることがあると考えられています。
解離性運動障害の診療科目・検査方法
解離性運動障害の原因
解離性運動障害は、心理社会的ストレスなどの精神的ストレスや、災害、事故、暴行、性的虐待、監禁、戦闘経験などによる辛い経験による心的外傷がきっかけです。
そうしたものから自分自身がダメージを受けないように、精神の中核である自我が緊急に退避することで、運動機能が低下すると考えられています。
解離性運動障害の予防・治療方法・治療期間
解離性運動障害の治療には、まず、患者さんの不安を解消できる環境を作り、症状の経過を注意深く観察します。心的外傷が深く関わっているといわれているため、治療にもそれに有効な心理療法が勧められます。
精神療法に加えて、抗不安薬、抗うつ薬などを使用した薬物療法も併用することがあります。
解離性障害に対して、日本で保険適応となっている薬剤はなく、有効性が示されている薬剤もありませんが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの投与が試されることはあります。
それぞれの症状にあわせて理学療法を試す場合があります。
解離性運動障害の治療には、家族や周りの人々が理解することと、信頼関係がとても重要になると考えられています。
軽い解離性運動障害であれば時間の経過とともに自然治癒するケースもあるようですが、多くは治療には時間がかかります。
解離性運動障害の治療経過(合併症・後遺症)
子どもの解離性運動障害の場合は、多くは良好な経過をたどります。成人以降では慢性的な経過をたどるケースが多いと考えられています。
数日~数か月で症状が改善、消失するケースがありますが、心理的葛藤がおこると再び症状が出現するケースもあります。
出現している症状にもよりますが、治療には時間がかかると覚悟したうえで取り組む必要があります。
解離性運動障害になりやすい年齢や性別
解離性運動障害は日本でどれくらいの人がかかるのかはよくわかっていませんが、かかる人の割合は低いと考えられています。
10歳未満での発症は少なく、思春期から成人期に発症するケースが多いとされています。どちらかというと女性に多くみられると考えられています。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター

経歴1986年 浜松医科大学 ・同大学院修了 博士(医学)卒業
埼玉医科大学精神医学教室,
2003年 石心会狭山病院(現埼玉石心会病院)精神科部長,
2007年 医療法人弘心会 武蔵の森病院副院長
2011年 医療法人弘心会 武蔵の森病院 院長
2019年 日本医療科学大学兼任教授
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