依存症とは
依存症(いぞんしょう)とは、特定のものや行動を適度な範囲にとどめておくことができず、意志の力でやめられなくなる状態をいいます。
欲求を制御することができず、生活上優先しなければならないことがおろそかになって、健全な生活を営むことができなくなり、本人だけでなく家族にも苦痛が生じるようになります。
身体や精神の不調で、日常生活に支障が出るなどの問題がおこるため、医療機関での治療が必要になります。
脳の病気としても扱われるため、専門機関でアドバイスを得ることが望まれます。一人で抱え込まず、孤立しないことが大切です。
専門医療機関のサポートを受けたり自助グループに参加するなど、周囲の人にも協力してもらうことで回復することが可能です。
依存症の症状
依存症は大きく2つに分けられます。アルコールや煙草、薬物のような「物質への依存」と、ギャンブルやインターネット、オンラインゲーム、テレビや買い物のような「プロセスへの依存」です。
症状としては、物質を摂取したいという欲求を自分で抑えることができない状態である「精神依存」と、薬物や物質の反復使用により、「離脱症状」と呼ばれる身体がその物質がなければ正常に動作せず何らかの身体症状があらわれる「身体依存」があります。
精神依存
精神依存では、物質を摂取したいと渇望する強い欲求や強迫感があり、やめたくてもやめられずに繰り返してし過剰な量を使用するなど、意志の制御が不能になります。
また、思いついたらすぐに行動し、ほかのことや環境などを考えずに衝動的になります。害があるにも関わらず物質に対しこだわり、追求、貪欲的になります。
身体依存
身体依存が形成されているかを判断するのは、離脱症状の有無によります。
離脱症状とは禁断症状とも呼ばれます。連続的に摂取していた物質の摂取を中止することで、体内からその物質が急速に消失することであらわれる一連の異常徴候のことです。
発汗、イライラ、不安、不眠、手指の震え、てんかん、うつ、幻覚、幻聴、幻視などがあらわれます。
身体的な症状としては、依存している物質にもよりますが、肝硬変などの肝臓疾患、高血圧や発癌リスクが高くなる、性機能の障害などがあります。身体の損傷のほか、思考障害や記憶障害、認知機能低下などの脳へのダメージもあります。
また、これらが原因となって二次的に引きおこされる問題として、人間関係や家族、夫婦間の関係の悪化や社会的なトラブルなどがあります。
依存症の診療科目・検査方法
依存症の原因
依存症の成立には、いくつかの要因が考えられており、多くの専門機関で現在も研究が進められています。
原因は「物質の特性によるもの」「人格要因」「環境要因」「脳の仕組み」などによると考えられています。
薬物で興奮作用や頭脳が明晰に感じる、薬物やアルコールで精神が安定するなど、摂取する物質には特定の効果があります。
使用者は期待通りに効果があらわれると、また使いたいと思い、繰り返してしまいます。これを強化効果といいますが、この物質の特性が要因となってしまうことが多くあります。
依存症になりやすいのは特定の性格や人格を持つ人だという研究もされていました。しかし、近年ではむしろその物質に依存した結果として、特定の人格傾向になるという可能性も大きいといわれています。
また、アルコールに関してはアルコール分解酵素を多く持っているかどうかという体質にも関係しています。この体質は遺伝性のものであるため、遺伝要因も少なからずあるといえます。
環境要因としては、家族や近親者との死別や離別、家庭の不和、欠損家庭など家庭にかかわることや、いじめ、ストレス、職業上の不適応、不満などが多いといわれています。
脳の仕組みとしては、アルコールや薬物を例にとると、これらを摂取すると脳内に快楽物質が放出されます。
それにより中枢神経が刺激され、快楽につながります。すると、脳がそれを対価であると認識し、対価を求める神経回路が働くようになるとされています。
快楽物質をとりこむことが慢性化してしまうと、より強い喜びを求めるようになり、行為はエスカレートし、意志でコントロールしようとしても難しくなっていきます。
依存症の予防・治療方法・治療期間
依存症の治療を受ける本人が無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の5つの行動をおこそうとする段階によって、また症状の程度や使用物質の種類によって治療方法が異なります。
「認知行動療法」「行動療法」などのような精神療法と、向精神薬や嫌酒薬、禁煙補助薬など依存の対症それぞれに対する薬物療法が用いられます。
薬物依存の場合には少しずつ薬を減らしていく方法もあります。離脱症状には薬物療法で治療にあたります。
精神にかかわる病気のため、治療には長期間を要します。
依存症の治療経過(合併症・後遺症)
依存症の治療では、快楽物質を求め続ける脳の回路ができると、脳をもとの状態に戻すことは難しくなります。
やめる努力をしていても、なにかの拍子に繰り返してしまうことは依存症の多くの人におこります。そうしたケースで周囲の人が責めないこと、また、本人は自責のあまり自棄的にならないことが重要です。
依存対症を絶つために、例えば飲酒やギャンブル以外の時間の過ごし方を模索することや、ほかに楽しみをみつけることなども必要です。
依存症になりやすい年齢や性別
依存症の年齢や性別は、法務省の患者調査では、2016度の時点でアルコール依存症が約9.5万人、薬物依存症が約6.5千人、ギャンブル等依存症が約3千人いました。
性差や年代については依存症にも種類があるため一概にいえません。
アルコール依存症は若い女性に増えているとの報告があります。また、男女に関係なく、摂取を始めた年齢が早いほど、依存症になる危険性が高いことは明らかであるため、注意が必要です。
執筆・監修ドクター
経歴1986年 浜松医科大学 ・同大学院修了 博士(医学)卒業
埼玉医科大学精神医学教室,
2003年 石心会狭山病院(現埼玉石心会病院)精神科部長,
2007年 医療法人弘心会 武蔵の森病院副院長
2011年 医療法人弘心会 武蔵の森病院 院長
2019年 日本医療科学大学兼任教授
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