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統合失調症

目次
  1. 概要
  2. 症状
  3. 原因
  4. 検査内容と主な診療科目
  5. 治療方法と治療期間
  6. 治療の展望と予後
  7. 発症しやすい年代と性差
医師

【執筆ドクター】

 板東 浩 先生

概要

統合失調症とは?

統合失調症は、幻覚や妄想が見られる精神疾患です。100人に1人くらいが罹患する病気で、比較的よく見られる精神疾患の1つです。治療薬の進歩がめざましく、最近では治療成績が大きく向上しました。
ただし、統合失調症は、「幻覚・妄想」などの目立った症状だけではありません。「気力低下・自閉傾向」など、うつ病に見られるような症状も見られます。幻覚・妄想などを陽性症状、気力低下などを陰性症状と呼んでいます。
幻覚・妄想などの激しい症状を伴う精神障害としては、統合失調症のほかに双極性障害(躁うつ病)も知られています。また、「現実を認識できない」「焦燥感・イライラ感」などは境界性パーソナリティ障害、気分障害などでも生じることがあり、ほかの病気ときちんと区別しながら診断する必要があります。
統合失調症の主な症状は「幻覚(特に幻聴)」と「妄想」です。しかし、そのほかにも「無気力になる」「集中力が低下する」など、さまざまな症状をきたします。今のところ、発症原因は明確になっていません。
統合失調症が疑われるなら、受診するべき診療科目は「精神科」です。精神疾患の場合、患者さん本人が「自分は病気ではない」と主張することがあります。そのような状況では、患者さんの同意を得て治療することが困難なので、入院治療が必要になります。

統合失調症スペクトラム

アメリカ精神医学会の「精神障害/疾患の診断・統計マニュアル」は、2013年に第5版(DSM-5)が出版されました。
DSM-ⅣTR(2000年)からDSM-5にアップデートされた際、統合失調症の扱いは大きく変わっています。
具体的には、統合失調症を「正常な状態と明確に区分できる病気」と捉えることをやめています。「正常な状態」から「統合失調症」までを連続体(=グラデーションのようになっていて、明確な区分が存在しない)と捉える方向にシフトしました。
そのため、DSM-5において、統合失調症及び関連疾患は「統合失調症スペクトラム」というカテゴリーに属しています。
統合失調症スペクトラムでは、症状の程度・持続期間などにより、次の5つの症状を定義しています。

1.統合失調型障害(統合失調型パーソナリティ障害)

統合失調症スペクトラムの中では、もっとも軽い病態です。
「親密な人間関係をうまく築けない」「急に緊張に苛(さいな)まれて、落ち着いていられなくなる」などの問題を抱えます。
統合失調症に見られるような幻覚・妄想はありませんが、しばしば奇妙な「認知の歪み」「知覚の歪み」を持っています。
他人の些細な言動に特別な意味を見いだす「関係念慮」、オカルト・超能力などに対する関心が見られるケースも多く、周囲からは「奇特・風変わりな人物」と見られることがあります。

2.妄想性障害

「自分は誰かに愛されている(被愛妄想)」「自分は特別な存在である(誇大妄想)」「誰かに陥れられている(被害妄想)」などの妄想にとらわれます。
妄想が1か月以上にわたる一方、統合失調症のほかの症状が見られない場合、妄想性障害の疑いが出てきます。

3.短期精神病性障害

統合失調症が疑われるような症状が発現しますが、1日以上1か月未満の一時的な症状にとどまります。
妄想、幻覚、意味のわからない会話などは最終的になくなり、発症前の状態に回復します。

4.統合失調症様障害

統合失調症の診断基準を満たす程度の症状が発現しますが、その状態は1か月以上6か月未満にとどまります。
完全に回復はしないまでも、6か月以内に統合失調症の診断基準は満たさなくなります。

5.統合失調症

統合失調症に特徴的な複数の症状が1か月以上にわたっており、統合失調症を疑うに十分な兆候が6か月以上にわたって続いている場合、統合失調症と診断します。

参考サイト

症状

統合失調症の症状は、「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」「病識の障害」の4種類に大別できる。
具体的な症状には個人差があるが、統合失調症の特徴を大まかに理解するにあたり、症状を4つに分類することは有益である。

1.陽性症状

幻覚・妄想など、統合失調症に特有の症状を「陽性症状」という。
幻覚・妄想はほかの精神疾患にも見られるが、統合失調症の幻覚・妄想は特徴的であり、主症状と見なされている。
いわゆる幻覚・妄想のほか、妄想に近い症状として、「自我障害」と呼ばれるものも存在する。

<幻覚>

幻覚は「実際には存在しないものを知覚する症状」である。
五感のいずれに生じることもあり、「存在しないものが見えること」を幻視、「存在しない声が聞こえること」を幻聴と言う。
「存在しないにおい(幻臭)」「存在しない味(幻味)」などの幻覚も存在するが、統合失調症では圧倒的に幻聴、次いで幻視が多く見られる。
幻聴の内容はさまざまだが、「お前はクズだ」など罵倒する内容、「次はあそこに行くつもりだろう?」など監視をほのめかす内容が多いとされている。
「幻聴と会話して独り言をつぶやく(独語)」「幻聴の内容に笑う(空笑)」などの症状を伴いやすく、周囲から奇異に見られる要因になる。

<妄想>

妄想は「事実に反する内容を信じこむ症状」である。
妄想の場合、周囲が内容を訂正しても、まず聞き入れない。
妄想の内容は人それぞれだが、代表的な妄想には次のような種類が存在する。

誇大妄想

「自分には圧倒的な才能がある」「自分は特別な宿命を持っている」「自分は神だ」などと思いこむことを指す。

迫害妄想

「周囲の人間は自分を嫌っていて、攻撃の機会をうかがっている」などと思いこんだ状態を指す。

注察妄想

「通行人が自分をチラチラ見て監視している」「家に閉じこもっていても、誰かが自分を見ている」などと信じこんだ状態。

関係妄想

「テレビの映りが悪いのは、自分への嫌がらせだ」「近所の人が笑ったのは、自分をバカにして笑ったに違いない」など、普通なら関連がないことを関係づける妄想。

被毒妄想

「食べ物・水道に毒が入っているはずだ」「眠っている間に毒物を注射されている」などの疑念を強く信じこんだ状態。

心気妄想

「頭痛は、脳腫瘍に違いない」「今、咳が出たのは肺がんだ」など、自分が生命にかかわる重病であると思いこむ。

血統妄想

「自分は天皇の末裔だ」「皇帝ナポレオンの子孫がアジアに逃れており、自分はその子孫だ」など、自分を特別な血縁だと思いこむ妄想。

<自我障害>

妄想に似た症状の1つで、「自分の行動・思考は自分のものである」という感覚が失われることを指す。
統合失調症に特徴的な自我障害としては、以下の5種類が知られている。

思考伝播(しこうでんぱ)

自分の考えていることが、周囲に(テレパシーのように)伝わってしまう感覚を指す。もちろん、本当に伝わるはずはないが、本人は「伝わっている感覚」を信じこんでいる。

思考奪取

考えていることが、頭の中から抜き取られるような感覚を指す。思考が抜かれて、自分が空っぽになるような感覚を訴える人もいる。

思考吹入(しこうすいにゅう)

外部から、頭の中に考えが入りこんでくる感覚。言葉・文字を介して正常に頭に入るのではなく、(たとえばテレパシーのように)直接、考えを埋めこまれるような感覚を訴える人がいる。

思考化声

普通、頭の中で言葉を使って考えた場合、単に考えるだけである。しかし、「考えたことがそのまま声として聞こえる」という感覚になる人がいる。

作為体験

外部から思考・行動を制御されているような感覚。「何を考えるか」「何をするか」を自分の意思で決めておらず、誰かに決定されているような感覚になる。

2.陰性症状

統合失調症の症状は、幻覚・妄想だけではない。
「感情が表に出なくなる」「家にこもりがちになる」など、世間一般で「うつ病の症状」と見なされているような症状が出る。
このような症状を「陰性症状」と呼ぶ。

感情鈍麻(かんじょうどんま)

表情が硬くなり、喜怒哀楽をうまく表現できない状態。
他者に共感する感覚が薄れるわりに、緊張・不安などの感覚は強く残こる。
周囲と気持ちを通わせ、交流することが難しくなる。

意欲低下

仕事、勉強など、やるべきことに身が入らなくなる。
多くの場合、趣味などの個人的活動に対する意欲も低下する。
何もせず、家の中でゴロゴロするなど、無為に時間を過ごすことが多くなる。

自閉(社会的引きこもり)

人との交流にも消極的になり、家にこもりがちになる。
悪化すると、入浴もせず、着替えもしないなど、衛生面にも気を遣わなくなることがある。
「社会性が低下し、引きこもり状態に近づいていく」というのも、精神疾患における大きな問題の1つ。

3.認知機能障害

認知機能障害は、情報処理能力、集中力、注意力などの低下を意味する。
知的能力を十分に発揮できなくなり、仕事・学業などに悪影響が及ぶ。

集中力・記憶力の低下

「1つのことに集中する」「物事を覚える」といった機能が低下する。
統合失調症の患者は「頭の中がざわついている」と訴えることも多く、集中力・記憶力を発揮するのが困難な状況にある。

判断力の低下

「物事の優先順位を決める」「スケジュールを立てる」「臨機応変に行動する」などの能力が低下する。
広い意味での問題解決能力が失われるので、仕事・勉強などの知的活動が難しくなる。

具象化傾向(ぐしょうかけいこう)

「比喩(ひゆ)」などの多彩な表現を使った会話が苦手になる。
ボキャブラリーが貧困になり、具体的な表現ばかりが目立つようになる。

4.病識の障害

病識というのは、「自分が病気である自覚」を指す言葉である。
精神疾患の場合、正しく病識を持っていない患者もいる。
その場合、医師から病名を告げられても、自分が病気であることを認識できない。
統合失調症は、病識のない患者が特に多い疾患として知られている。

原因

現在、統合失調症の原因は明らかになっていない。
「遺伝的素因と環境要因が相互に影響している」と考えるのが一般的である。
遺伝的素因が影響していると考えられるのは、家族内で複数の人が発症する例が散見されるからである。
たとえば、同じ遺伝的素因を持つ一卵性双生児の場合、一方が統合失調症を発症すると、もう片方も50%の確率で発症する。
また、統合失調症の母親から生まれた子供は、約10%の確率で統合失調症を発症している。
ただ、一卵性双生児でも100%の一致率ではない。
つまり遺伝的素因だけで「統合失調症になるかどうか」が決まるわけではない。
統合失調症は、進学・就職・結婚など「人生の節目で発症することが多い」とされている。
環境が大きく変化して、心理的ストレスが過大になったとき、発症しやすいことが窺(うかが)える。
心理的ストレスが影響する事実から、ある程度、環境要因が関連していると推測することが可能である。

脳の変化

統合失調症の患者は、脳の前頭葉・側頭葉が(健康な人よりも)小さいことがわかっている。
ただし、「平均して若干、体積が小さい」と言える程度で、それほど明確な差はない。
さらに、統合失調症の患者は、「神経伝達物質に問題が起きている」と考えられている。
神経伝達物質は、神経細胞から別の神経細胞に情報を伝える物質である。
神経伝達物質の1つであるドーパミンが過剰になると、幻覚・妄想が出やすくなると考えられている。
そのほか、近年はセロトニン・GABA(ガンマアミノ酪酸)など、複数の神経伝達物質が統合失調症に関連していると考えられるようになってきた。

検査内容と主な診療科目

統合失調症の疑いがある場合、受診するべき診療科目は「精神科」となる。
医療機関によっては、「心療内科」「精神・神経科」などの名称を用いている場合もある。
本人に「自分は病気なのではないか?」という自覚があり、自分の意思で受診するならば、初診は外来の診療所で問題ない。
外来の診療所は「心療内科クリニック」などの名称を標榜する例が増えている。
一方、「病気である」という自覚が薄い患者の場合、外来の診療所では対応しきれないことが多くなる。
あらかじめ、入院設備のある精神科病院・大学病院に問い合わせ、対応について相談するのが望ましい。

外来と入院

薬物療法の進歩もあり、昔と比べて外来治療が可能な例も増えている。
ただ、次のような症例では入院治療を選択することになる。

・本人が日常生活に困難・苦痛を感じて、入院治療を希望している場合
・幻覚、妄想などによる影響が強く、日常生活を送るのが困難である場合
・病識に乏しく、通院・服薬などの治療を受けいれない場合

本人が「自分は病気ではない」と主張して治療を拒否する場合は、やむを得ず、家族などの同意のもと、強制的に入院手続きを進める必要がある。
この方式でおこなわれる入院を「医療保護入院」と呼ぶ。

診断方法

統合失調症の診断は、主に本人・家族への問診によっておこなう。
主な問診内容は、次のとおりである。

・どのような症状が出ているか?
・症状が現れたのは、いつ頃か?
・どのような経過をたどったのか?
・社会生活 / 日常生活に影響は出ているか?
・どのように育ったか?(生育歴)
・今まで、何の病気にかかったことがあるか?
・家族の中に、精神疾患の既往歴がある人物はいるか?

このような質問に加えて、精神科医師が患者の態度・行動を観察して、状態を確認していく。
その際、双極性障害、うつ病、パーソナリティ障害など、ほかの精神疾患ではないか慎重に鑑別する。
また、脳腫瘍、ウイルス性脳炎、甲状腺疾患など身体の病気が原因で、精神症状が出ることもある。
身体の病気を除外するため、CTによる画像診断、髄液検査などを実施することがある。

治療方法と治療期間

統合失調症の治療にあたっては、一般的に薬物療法と心理社会的治療の2つを試みる。
心理社会的治療は、いわば「社会参加のためのリハビリテーション」である。
薬物療法と心理社会治療は、統合失調症の治療における両輪となる。
ただし、心理社会的治療が単独でおこなわれることはない。
原則として、まずは薬物療法で症状を落ち着けることが優先される。

薬物療法

統合失調症の薬物療法において、主軸になるのは「抗精神病薬」である。
別名で「神経遮断薬」「メジャートランキライザー」と呼ばれることもある。
抗精神病薬にはいくつかの種類が存在する。

1.定型抗精神病薬

古くから使われているので、「従来型抗精神病薬」と呼ばれることもある統合失調症の陽性症状(幻覚・妄想)などを抑える薬である。
「神経伝達物質の1つ―ドーパミンが過剰に作用すると、幻覚・妄想が現れる」というドーパミン仮説に基づいた薬で、ドーパミンの働きを抑える。

フェチノアジン系抗精神病薬

定型抗精神病薬の1つ。ドーパミンだけでなく、セロトニン、ノルアドレナリン、ヒスタミンなど、さまざまな神経伝達物質の作用を抑える。
セロトニンを抑制すれば陰性症状も改善できる場合があり、ノルアドレナリンを抑制すれば興奮状態を緩和できることがある。
また、ヒスタミンを抑えることで、睡眠の質を向上できる場合もある。
ただ、さまざまな神経伝達物質に作用するので、「意図しない作用(=副作用)」も出やすくなる。
「レボメプロマジン」「クロルプロマジン」などが知られている。

ブチロフェノン系抗精神病薬

定型抗精神病薬の1つで、ドーパミンの働きを選択的にブロックする。
ほかの神経伝達物質にはあまり作用しないので、統合失調症の陽性症状だけを強力に抑えることができる。
ただし、ドーパミンを強力に抑えることから、逆にドーパミンが不足する場合がある。
ドーパミンが減りすぎると、「手足の震え」「不随意運動(=本人の意思と無関係に身体が動く)」などの副作用が出ることがある。
「ハロペリドール」「インプロメン」などがある。

ベンザミド系抗精神病薬

ドーパミンの作用を抑えるメカニズムの定型抗精神病薬。
ただし、あまり作用が強くないので、統合失調症の陽性症状を抑えるには高用量が必要になる。
そのため、統合失調症に用いられる例は減っている。
代表的な薬は「スルピリド」。

2.非定型抗精神病薬

新しく開発された抗精神病薬なので、「新規抗精神病薬」と呼ばれることもある。
幻覚・妄想などの陽性症状だけでなく、「意欲低下・気持ちが沈む」などの陰性症状にも作用を発揮する。
また、副作用が少ないので、現在は非定型抗精神病薬を第一選択とするのが一般的である。
実際、「症状の改善」「治療に反応する(=効果が出る)患者の割合」などの統計からも、非定型抗精神病薬のほうが優れていると見なされている。

セロトニン・ドーパミン拮抗薬(SDA)

幻覚・妄想の原因は、「中脳辺縁系における過剰なドーパミン」と考えられている。
中脳皮質系のドーパミンが少なくなると、今度は陰性症状が出てしまう。
そのため、本当に必要なのは、「脳全体のドーパミンを抑える作用」ではなく「中脳辺縁系のドーパミンを抑える作用」である。
SDAは中脳辺縁系のドーパミンを抑えて陽性症状を改善しながら、同時にセロトニンを抑える。
セロトニンはドーパミンを抑制する神経伝達物質なので、セロトニンを抑制することで、中脳皮質系のドーパミンを増加させることができる。
その結果、統合失調症の陰性症状にも作用する。
簡単にまとめるなら、SDAは「中脳辺縁系ではドーパミンを抑え、中脳皮質系ではドーパミンを増やす薬」である。
代表的なのは、「リスペリドン」「ペロスピロン」など。

多元受容体標的化抗精神病薬(MARTA)

ドーパミン、セロトニンに加えて、ヒスタミン、アセチルコリンなど多岐にわたる神経伝達物質を抑える薬。
作用に幅があり、気持ちを安定させる働きが期待できる。
「不安感」「抑うつ状態」「衝動的な行動」を抑制するので、統合失調症だけでなく、双極性障害(いわゆる躁うつ病)の治療にも用いられる。
「オランザピン」「クエチアピン」などがある。

ドーパミン受容体部分作動薬(DSS)

陽性症状では「中脳辺縁系におけるドーパミンの過剰」が問題になり、陰性症状では「中脳皮質系におけるドーパミンの不足」が問題になる。
DSSは、中脳辺縁系の過剰なドーパミンを抑え、中脳皮質系のドーパミン不足を解消する薬である。
簡単に表現するなら、ドーパミンが適正に働くように調整する作用を持っているといえる。
DSSに属する非定型抗精神病薬としては「アリピプラゾール」が知られている。

3.補助的な治療薬

統合失調症で現れるのは、幻覚・妄想をはじめとする典型的な症状だけではない。患者の悩みを解消するため、抗精神病薬以外にも、補助的な治療薬を処方することが多くなっている。
多くの患者は、複合的な症状に悩んでいる。

睡眠薬 / 睡眠導入剤

統合失調症に限らず、精神疾患にかかっている人は睡眠リズムが不規則になりがちである。不眠に悩んでいる人も多い。
そこで、睡眠リズムを整え、睡眠の質を向上するために、睡眠薬を処方することがある。

抗不安薬

不安感・焦燥感などに悩んでいる場合、抗不安薬を処方することがある。
抗不安薬は、「マイナートランキライザー」という別名がある。
現在、主に「ベンゾジアゼピン系」の抗不安薬が用いられている。
脳内の神経伝達物質GABAに働きかけて、神経細胞の伝達を抑える。
代表的な抗不安薬としては「ジアゼパム」「プロマゼパム」「エチゾラム」「ロフラゼプ酸エチル」などが知られている。

抗うつ剤

統合失調症の陰性症状を緩和するために、抗うつ剤を処方することがある。
しかし、抗うつ剤は本体、うつ病・不安障害に用いる薬剤である。
統合失調症に対して処方するには、慎重さが求められる。

抗コリン薬

神経伝達物質アセチルコリンの働きを弱める薬である。
アセチルコリンを抑えると、相対的にドーパミンの作用が強くなる。
抗精神病薬でドーパミンを抑えすぎると、ドーパミン不足による副作用が現れる場合がある。
代表的な副作用としては、錐体外路系にかかわる症状(EPS:すいたいがいろけいしょうじょう)が知られている。
この錐体外路系にかかわる症状を緩和するために、ドーパミンの作用を強める抗コリン薬を処方する場合がある。
しかし、本来ならば、薬の副作用を薬で抑えるのは、あまり望ましい方法ではない。抗コリン薬にも副作用がある。状況を見極めながら、慎重に用いるべき薬剤といえる。

心理社会的治療

薬物療法で症状が落ち着いてきたら、心理社会的治療を検討する。
統合失調症により、患者は「生活能力の低下」「社会参加の機会喪失」といった問題を抱えている場合が多い。
そこで、リハビリテーションをおこない、社会復帰に向けた道筋をつくることが必要になる。
そのほか、心理社会的治療に期待できる効果としては、「薬物療法の補助」「再発リスクの低減」などが挙げられる。

1.生活技能訓練(ソーシャルスキルトレーニング:SST)

「対人関係の維持・構築」「自立した日常生活の練習」を目的に、グループワークをおこなう。
集団で、それぞれの役割を演じながら、社会生活に慣れていく練習である。
同じように努力を続ける仲間もできるので、精神的な拠り所を得ることも期待できる。

2.作業療法

簡単な作業を通じて、集中力・持続力などを向上する。
将来的な職場復帰・就労に向けた訓練としても大きな意味を持つ。

3.心理教育

統合失調症に関する知識をつけ、服用している薬について学ぶ。
正しい理解が、治療意欲の向上へとつながる。

4.認知行動療法

考え方の傾向が、「悩みを増加させる」「心理的ストレスを増やす」などの要因になっている例もたくさんある。
そこで、精神科医師・臨床心理士などと会話しながら、より健全な考え方の獲得を目指す。

治療の展望と予後

病気の症状として「病識がない(=自分が精神疾患であることを理解しない)」という特徴があり、統合失調症の治療を難しくしている。
近年は治療成績が向上していて、予後(病気の経過)もかなり良好になってきた。
50~60%の患者は、「完治」または「社会生活にほとんど支障がない軽度障害」まで回復している。
しかしながら、10~20%の患者は「重度障害」が残ることもあり、油断できない病気である。

再発予防

「統合失調症を予防する」というのは現実的ではない。
環境の変化など、心理的ストレスをきっかけに発症することが多いが、一定のストレスは避けられるものではない。
環境の変化が起こらない人生など、存在しないためである。
そのため統合失調症においては、「早期発見・早期治療を心がけること」に加えて、「再発を予防すること」が重要になる。
統合失調症は「未治療期間(発症から、医療機関を受診するまでの期間)」が短いほど、予後が良好である。
精神疾患の疑いが見られた時点で即受診すれば、完治する確率は向上する。
また、統合失調症は再発率が高く、再発・再燃を繰り返すごとに治療効果を得にくくなっていく。
そのため、症状が治まったあとも、再発予防のために薬を飲み続ける必要がある。
自己判断による服薬中止をせず、予防的な服用をきちんと続ける。

幻覚・妄想などの症状がいったんは改善しても、薬の服用をやめると高い確率で再発する。
継続的に服薬しなかった場合、60~80%の患者が数年以内に再発する。
薬物療法の進歩により治療成績は向上しているが統合失調症は再発リスクの高い病気である。
「症状が改善したのに薬を飲み続ける」というのを快く思わない患者さんは多い。
しかし、再発リスクを踏まえて、予防的に服薬を続ける必要がある。
服薬を中断した途端に再発するわけではない。そのため油断しがちだが、環境の変化など、心理的ストレスが増えたときに再発する傾向がある。
医師の指示に従って治療を継続することが、再発リスクを低減するための第一歩である。

合併症

統合失調症と合併しやすい症状・病気は、いくつか存在している。
基本的には、抗精神病薬の副作用に起因する。
代表的な合併症としては、以下のような症状が知られている。

1.アカシジア

手足にムズムズするような感覚が出て、じっとしていられなくなる。
別名で「静座不能症(せいざふのうしょう)」と呼ぶこともある。
アカシジアの症状が出ると、意味もなく歩き回ったり、貧乏揺すりをしたりするようになる。
患者の多くは、「心がソワソワするというよりは、身体がソワソワする」と訴える。
悪化すると、2~3分の間、寝ている・座っているのさえ苦痛に感じます。
強い不眠を伴い、精神的に不穏な状態が続く。
遅発性ジスキネジア、振戦(手足の震え)などと合わせて、「錐体外路系症状(EPS:すいたいがいろけいしょうじょう)」と呼ばれる。
統合失調症の治療に用いる抗精神病薬の代表的な副作用である。

2.遅発性ジスキネジア

口唇・手足など、身体の一部が勝手に動く症状。
抗精神病薬の副作用として知られているが、服用開始から数か月、数年を経て現れる場合がある。
長期間を経て現れることから、遅発性ジスキネジアと呼ばれている。

・口をモグモグ動かす
・舌を左右に動かす
・手足が勝手に動く
・手足に力が入り、突っ張る

遅発性ジスキネジアが出やすいのは、高齢者である。
子供・若い人がジスキネジアを発症することはあまり多くない。
アカシジアなどと合わせて、錐体外路系症状と総称される。

3.高血糖 / 糖尿病

抗精神病薬の副作用に、肥満・高血糖がある。
それに加えて、統合失調症には「引きこもりがちになる」「活動意欲が低下する」といった症状が見られる。
入院患者であれば、環境的にベッドの上で過ごす時間が長くなりがちである。
以上から、「薬の副作用+ほとんど動かない生活」の相乗作用により、メタボリックシンドロームに陥りやすくなる。
統合失調症患者の肥満・糖尿病リスクは、1.5~2.0倍に上ると報告されている。

発症しやすい年代と性差

統合失調症は、比較的、高頻度で見られる精神疾患の1つ。
生涯の中で統合失調症に罹患する確率は1%程度と考えられている。
100人に1人くらいの割合で、生涯に1度は統合失調症にかかることになる。
統合失調症の好発年齢(=発症しやすい年齢)は、10代後半~20代中頃とされている。
しかしながら、30代での発症も少なからず見られ、「一定年齢を迎えたら発症しない」というものではない。
男女の発症率は同程度だが、平均的な発症年齢は異なる。
男性と比べて、女性の平均発症年齢は5歳ほど遅い。
進学、就職、結婚など、環境が大きく変わったタイミングで発症する傾向がある。

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