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せんもうせん妄

更新日:2022/08/09 公開日:2019/12/10 view数:13,858

せん妄(せんもう)とは、突然発症する脳機能意識レベルの障害のことを指し、具体的には幻覚、不安、錯覚、注意力や思考力の低下、見当識障害、覚醒レベルの変動などが突然あらわれます。
認知症と似た症状があり合併することもありますが、別の病気として区別されます。認知症、がん、脳血管障害を患う状態におこりうる病気です。高齢者においては、全身状態が悪い状況や、がんや脳卒中など重篤な病気の外科手術後、あるいは入院しているという環境だけで引きおこされることもあります。

せん妄症状は、時間帯によってあらわれたり消失したりします。過活動型、低活動型、混合型とタイプがあり、3分の2は過活動型ですが、低活動型は見過ごされやすく抑うつ状態と間違われ、診察が遅れがちです。意識の混乱による危険行動による事故・自殺や誤嚥性肺炎などをおこすリスクは高く、死に至る危険性もありますが、早期発見と早期治療によって死亡リスクを低くできる可能性もあります。

せん妄症状は高齢者だけでなく、若年層にも発症することがあるのですが、若年層の場合、原因が薬物や急性アルコール中毒によるものが多いとされます。


目次
  1. せん妄の症状
  2. せん妄の診療科目・検査方法
  3. せん妄の原因
  4. せん妄の予防・治療方法・治療期間
  5. せん妄の治療経過(合併症・後遺症)
  6. せん妄になりやすい年齢や性別

せん妄の症状

せん妄は意識の障害であり、注意力の低下や時間・場所・人に対する認識の低下など、さまざまな症状がみられます。しかし、症状があらわれる時間は不安定で、なかには夜間に強くあらわれる患者さんもいます。あらわれ方も不安定なことが多い病気です。
主に以下の症状があげられます。

  • ぼんやりすることが多く、もうろうとしている
  • 支離滅裂でつじつまのあわないことを訴える
  • 物忘れが激しくなる
  • 夜眠る時間に興奮して覚醒状態になり、夜間不眠となり昼夜逆転する
  • 症状が変わりやすいのが特徴であり、夜間に不安定になることが多い
  • 入院中など、点滴やチューブを自分で抜いてしまったりして、安静状態を保てない
  • 幻覚、錯覚、妄想を訴える

また高齢者の場合はせん妄の持続時間が長くなるという特徴があり、認知症と見分けるのが難しい場合もあります。若年者の場合はせん妄がおこった際興奮状態になることが多いのですが、逆に高齢者の場合、物静かになって反応の薄いような状態になり、周囲から見逃されやすいので注意が必要です。

せん妄3つのタイプ

過活動型

興奮、幻覚、妄想、夜間徘徊があり、転倒、点滴抜去などが心配される

低活動型

無気力、無表情、傾眠傾向にある。うつ病や不眠症と誤認されやすい

混合型

過活動型と低活動型が混合する

せん妄の診療科目・検査方法

注意力や見当識の障害が変動を伴って、突然急激にあらわれるため、家族や周りにいる人は異変にすぐに気付けます。少しでもせん妄の疑いがありそうなら、すぐに精神科脳神経内科を受診してください。かかりつけ医があれば専門の医療機関を紹介してもらえるでしょう。
アルコールの離脱症状、抗うつ薬・睡眠薬などの中枢神経系に作用する薬物の摂取などもせん妄の危険因子となるため、問診や診察の時に飲酒歴や内服歴の確認もおこなわれます。
さらに危険因子となる感染症や心疾患、脳にかかわる病気、代謝疾患などを調べるため、血液検査、尿検査、心電図検査、レントゲン検査、頭部CTやMRIなどの検査もおこなわれます。

せん妄の原因

脳の老化、脳血管障害や認知症の既往、高血圧、動脈硬化性がせん妄をおこしやすい要素と考えられています。それらの要素をせん妄症状として引き出すのは環境の変化(入院や施設入所)、病気による拘束、心身のストレス、脱水、脳血管障害や脳腫瘍など中枢神経疾患、感染症や心筋梗塞、肝・腎機能障害などの全身性疾患、薬物中毒などがあげられます。薬物のなかでは、抗不安薬や抗うつ薬など向精神薬、抗パーキンソン病薬、消化器薬、抗不整脈薬、抗ヒスタミン薬などに危険因子があります。高齢者の場合、複数の薬を使用していることが多く、せん妄のリスクは高くなります。

若年者、高齢者共通してせん妄の原因となるのは、身体疾患、薬剤、手術による身体的ストレス侵襲であり、特に高齢であることは危険因子の一つとして考えられています。また、認知症や精神疾患を持っている場合にも危険因子となります。

また、アルコールを多飲していた人や麻薬などの薬物を使用していた人が、急に離脱した時にもせん妄が生じやすいです。

せん妄の予防・治療方法・治療期間

まず、せん妄を引きおこしている原因となっている病気そのものを治療します。各種検査で原因を特定し、感染症が原因であれば抗菌薬による治療、脱水であれば水分と電解質を静脈内投与するなどの治療をおこないます。
ほとんどが入院による投薬治療などですが、低血糖など比較的容易に治療でき、症状も軽度であれば救急外来で通院によって治療する場合もあります。せん妄を悪化させる可能性のある薬剤を服用中の場合、可能であれば使用を中止したり、分量の調整をおこないます。

また、入院中は静かに落ち着けるような環境を確保して、静かで刺激の少ない個室の病室が用意され、ケガを防止するための対策がなされます。離床センサーマットを取り入れる、ベッド柵を高くする、転落防止マットを敷くなどが施されます。点滴などの抜去対策には、最小限の拘束としてミトンを手に使用するなどが講じられる場合もあります。加えて、昼夜のめりはりをつけるため、照明の工夫をする、カレンダーや時計を設置して日付や時間の認識ができるようにする、自宅で親しんでいたものを身近におくなど、自己認識の手助けをできるよう居室の工夫をします。家族もできるだけ患者さんに話しかける時間を増やし、いまどこに自分がいるのかなど認識ができるようコミュニケーションをとることが大切です。

治療期間については、せん妄をおこした原因によって違います。低血糖や脱水など比較的治療が容易におこなえる場合なら、短時間の処置で経過観察をおこなって治療終了する場合もあります。しかし、原因が重篤な病気の場合、その病気に対する治療期間によって変わってきます。治療が終わってもせん妄症状が一部残り、長期間かかることもあります。

せん妄の治療経過(合併症・後遺症)

原因を特定でき、迅速に治療がおこなわれれば、せん妄をおこした人の多くは回復するといわれています。治療が少しでも遅れてしまうと、完全には回復せず、一部の症状が残ってしまうこともあります。数週間から数カ月間せん妄の症状が続き、改善に時間を要することがあります。場合によっては、せん妄症状から認知症に似た慢性の脳機能障害に進展することもあります。

また、入院患者でせん妄をおこした人は、入院中にほかの合併症がおこる割合がせん妄のない人よりも最大で10倍高くなるといわれています。入院中にせん妄になった患者の35〜40%が、1年以内に死に至りますが、死因はしばしばほかの重篤な病気によるもので、せん妄そのものによって死亡するわけではありません。入院患者でせん妄をおこした人、特に高齢者では、入院期間が長くなり治療費の負担も重くなります。退院後の回復にも時間がかかってしまうことが多いです。

せん妄になりやすい年齢や性別

症状が一時的にあらわれ、さまざまな病気の経過のなかでおこるものなので、患者数を把握した文献はありません。しかし、70歳以上の入院患者では15〜50%の確率で発症したというデータもあります。
どの年代でもおこりうる症状ではありますが、高齢になればなるほど頻発します。実際に、介護施設の入居者ではせん妄が多くみられることが知られています。
若年層での発症に関していえば、薬物や命を脅かす心臓や脳の病気が原因となるため注意が必要です。性差は特に認められません。

執筆・監修ドクター

信田 広晶
信田 広晶 医師 しのだの森ホスピタル 理事長 担当科目 心療内科/精神科

経歴昭和61年3月  青山学院大学文学部教育学科心理学専修コース卒業
平成6年3月  東邦大学医学部卒業
平成6年4月  東京女子医大病院で臨床研修を終え、
        東京女子医大精神神経科入局
平成8年7月  武蔵野赤十字病院心療内科勤務
平成11年10月 しのだの森ホスピタル入職

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