肺炎の種類はたくさんある!高齢者の注意すべきものは?
肺炎の症状は風邪によく似ています。しかし、重くなると命にかかわります。
2016年の統計では主な死因の3位になっており、高齢者や別の病気にすでにかかっている場合は、肺炎が重症化しやすくなります。
また、ウイルスや細菌などへの感染による肺炎は急激に感染者を増やすこともあります。
例えば近年ではコロナウイルスによる感染で肺炎をおこし、時には世界中へ注意喚起や対策が必要な規模になることもあります。
ここでは肺炎の種類や分類、予防などについて解説します。
肺炎にはどんなものがあるの?
肺に炎症をおこす病気が肺炎です。原因や状況によって症状や治療法も変わります。そのため、肺炎にはいくつかの分類方法があります。
細菌、ウイルス、時にはカビの仲間でも感染
肺炎のほとんどは細菌やウイルスなどによって発症します。
細菌による肺炎が多く、そのなかでも肺炎球菌はもっとも多い肺炎の原因です。ほかにも紛らわしい名前ですがインフルエンザ菌という細菌などが代表的です。
ウイルスは細菌よりも小さく、生物としての性質も完全ではない、物質と生物の中間のような存在です。
冬に猛威をふるうインフルエンザや麻疹(ましん)ウイルス、水ぼうそうの原因になる水痘ウイルスなど多くのウイルスがウイルス性肺炎の原因になります。
そのほか、マイコプラズマなど、ウイルスと細菌の中間の性質をもつ微生物も原因になります。これは非定型肺炎とよばれます。
また免疫力が低下しているとカビなどの真菌でも感染します。ほかにも寄生虫による肺炎などもあります。
感染した場所での分類も重要
感染による肺炎を日常生活のなかで発症したものが「市中肺炎」です。インフルエンザなどから肺炎になったものです。
これに対して、医療や介護にかかわっておこる肺炎を「院内肺炎」や「医療ケア関連肺炎」とよびます。院内肺炎は入院後、48時間以内に発症する肺炎です。
ほかの病気やケガなどで入院して感染し発症したものです。医療ケア関連肺炎は病院や介護施設、あるいは自宅で治療中に発症した肺炎です。
病気の治療中で免疫が低下していると、普段は感染しないような病原体に感染することがあります。
また、施設内での感染は薬が効かなくなった耐性菌などの感染による場合もあり、治療が難しい傾向にあります。
肺の部位での分類や、感染のしかたによる呼び名も
肺への感染で肺炎になった場合、多くは肺胞(はいほう)に感染します。そのため「肺胞性肺炎」とよばれます。
これに対し、肺胞と肺胞の間の組織である間質(かんしつ)に炎症をおこすのが「間質性肺炎」です。
進行すると間質の組織が線維化(せんいか)といって、硬く変化し肺が膨らんだり縮んだりしにくくなるため、機能が低下します。
間質性肺炎は感染や使用している薬の副作用などが原因でおこることもあります。しかし、ほとんどは原因がわかりません。
これは特発性間質性肺炎と呼ばれ、厚生労働省から難病に指定されています。
誤嚥性肺炎は飲み込む機能の低下によっておこる肺炎です。誤嚥(ごえん)とは飲み込んだものが食道に送られず、気道や気管に入ってしまうことです。
誤嚥した時に、唾液や食べ物、飲み物などに含まれた細菌などによって感染する肺炎です。
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高齢者は誤嚥性肺炎に注意
高齢者ほど誤嚥性肺炎には注意しなければいけません。年齢を重ねるほど飲み込む機能が低下して誤嚥することが増えるからです。
また、通常であれば咳(せき)をして誤嚥したものを吐き出すことができますが、そうした機能も弱くなります。
寝ている間、知らぬ間に病原体を含んだ唾液を誤嚥し誤嚥性肺炎の原因になることもあります。
高齢者が肺炎になっても症状がわかりにくいことがあります。
一般的には肺炎になると、38度以上の発熱があり、激しい咳や濃い色の痰(たん)が出たりします。
しかし、高齢者の場合はだるい、食欲がない、熱があっても微熱程度で、いつのまにか重症になっていることがあります。
普段と様子が違う、呼吸の回数がいつもより多いという場合は要注意です。気づいたら早めに呼吸器内科などの医療機関を受診しましょう。
高齢者では入院することをきっかけに筋力が低下し動けなくなったり、心臓にかかわる病気や、認知症になったりすることもあるからです。
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診察はレントゲンで肺を見る
患者さんの肺をレントゲンで撮影すると、影の境界線がはっきりしないもやもやした状態で肺にうつりこんでくることがあります。
これは浸潤影(しんじゅんえい)といって肺炎特有のレントゲンのうつり方です。
レントゲン撮影の前に聴診器での聴診で呼吸音を聞き、ラ音とよばれるカサカサしたような音や、イがヤに聞こえるヤギ声などの雑音を確認することもあります。
肺炎と判断した場合は、血液や痰、尿などを調べて、細菌やウイルスを特定します。
まずは予防!高齢者には肺炎球菌ワクチンが有効
肺炎にまずはかからないように予防を意識することが大事です。
手洗い、うがい、マスクの着用は日常的に手軽におこなえる予防の基本です。
手洗いにはアルコール消毒薬の使用がおすすめです。近頃では家庭用のものも販売されるようになってきました。
うがいは声を出しながらおこなうとより効果があります。マスクはしっかり鼻まで覆います。また、一度外したら捨てて交換するようにしましょう。
*令和2年3月現在、新型コロナウイルスが全世界に流行し、潜伏期間が長く症状も出づらく感染力も強いのが特徴で収束まで時間がかかってしまいそうな状況です。
頻回の手洗い(1日10回以上)で感染伝播のリスクは55%低下します。
アルコール消毒も65%低下するため、マスクやアルコール消毒の不足が続いている状況ですが、うがい、手洗いをしっかりおこない、人が集まるような場所にはいかないように注意して、自分のできることを続けることが重要となります。
誤嚥性肺炎の予防にはしっかり歯をみがくことが重要です。
デンタルフロスなどでしっかり歯垢(しこう)を落とす、マウスウォッシュなどで除菌をするのもよいでしょう。
タバコは慢性閉塞性肺疾患(COPD)という治らない肺の病気の原因にもなり、肺炎になりやすくなるので、禁煙しましょう。
予防接種を受けることも重要です。肺炎球菌による感染を予防する肺炎球菌ワクチンは65歳以上での定期接種がおこなわれています。
効果は5~10年ほどあり、65歳から5歳刻みの年齢で1回だけ無料で打つことができます。
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執筆・監修ドクター
経歴2010年 昭和大学医学部卒業
2010年 昭和大学横浜市北部病院初期研修医
2012年 昭和大学横浜市北部病院総合内科
2014年 帰陽会丹羽病院
2015年 昭和大学横浜市北部病院総合内科助教
2017年 霞ヶ関診療所
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