くれぶしえらかんせんしょうクレブシエラ感染症
クレブシエラ感染症とは、クレブシエラという細菌によって、さまざまな感染症が引きおこされる病気です。
クレブシエラはグラム陰性の細菌です。肺炎桿菌とも呼ばれます。健康な人の身体にも存在していて、通常は無害です。しかし、身体が弱っている状態では、感染症の原因となることがあります。
そのため、クレブシエラ感染症は医療施設などで発生することが多いといわれています。
多くはありませんが、医療施設以外でも感染がみられ、肺炎などをおこすことがあります。
その場合、以下のような人がかかりやすいといわれています。
- アルコール依存症の人
- 糖尿病の患者さん
- 免疫力が低下している人
- 高齢者
治療には抗菌薬を使用します。
近年は、薬に耐性を持つ耐性菌があらわれ、治療が困難になっていることが問題視されています。
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- 目次
クレブシエラ感染症の症状
おもに以下のような感染症を引きおこします。
- 腎臓や膀胱(ぼうこう)などの尿路感染症
- 肺炎
- 気道など呼吸器の感染症
- 敗血症
敗血症になると、血管の拡張がおこり血圧が低下したり、臓器内の毛細血管にある血液が凝固することで全身に症状があらわれます。
新生児では、髄膜炎の原因となることもあります。
クレブシエラは、緑膿菌や黄色ブドウ球菌と並んで、病院に入院して48時間以上経ってから発症する「院内肺炎」の原因となることの多い細菌です。
肺炎をおこすと、以下のような症状があらわれます。
- 咳(せき)
- 発熱、悪寒
- 呼吸困難
- 倦怠感
- 胸の痛み
- 血液が混じった痰(たん)が出る
重症の肺炎の場合、膿胸(のうきょう)になることがあります。肺は、胸膜(きょうまく)と呼ばれる2枚の膜で包まれています。2枚の胸膜の間を胸膜腔といいます。胸膜腔に細菌が感染し、膿が溜まったりした状態が膿胸です。
クレブシエラ感染症の診療科目・検査方法
感染した部位、あらわれている症状によって診療科目は変わります。
例えば、呼吸器の感染症と思われる症状があれば、内科、もしくは呼吸器内科となります。また、入院中に感染した場合は、その医療機関で治療を受けることになります。
感染した部位によって、検査の内容はさまざまです。基本的には、原因となっている菌を特定する必要があります。
呼吸器の感染症を発症した場合、気管支鏡検査で肺の分泌物や痰を採取します。そして、採取したサンプルを顕微鏡で観察したり、細菌の培養検査などをしてクラブシエラを特定します。
感染症の部位によっては、血液や尿を調べることもあります。
また、超音波やX線、CTによる検査をおこなうこともあります。
クレブシエラ感染症の原因
クレブシエラという細菌自体は、健康な人の身体にも存在します。
通常は身体に無害ですが、抵抗力が弱くなることが原因で感染症を引きおこします。
感染する経路は、以下が考えられます。
- やけどの傷
- 尿路
- 気道
- 静脈用カテーテル
- 手術後の排液管
- 気管チューブ
- 血液
クレブシエラ感染症の予防・治療方法・治療期間
通常は、セファロスポリン系やフルオロキノロン系の抗菌薬で治療します。
具体的な薬剤名ではセフトリアキソンやレボフロキサシンなどです。セフトリアキソンは注射、もしくは、点滴します。レボフロキサシンは注射、もしくは、飲み薬として飲みます。
感染した細菌の耐性化が進んでいる場合があります。その場合は、通常の抗菌薬の治療では困難となることがあります。耐性化とは、細菌の性質が変化して、抗菌薬が効きにくくなることです。
クレブシエラ感染症の治療経過(合併症・後遺症)
近年は、細菌の多剤耐性化が問題となっています。多剤耐性化とは、耐性化が進んで、複数の抗菌薬が効きにくくなることです。
クレブシエラは、基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)を産生することがわかっています。ESBLを産生する細菌は、第3世代セフェム系の抗菌薬に対して耐性化をおこします。抗菌薬が効かなくなることで治療が困難となり、死亡率が高くなります。
日本では、外国に比べて多剤耐性化は広がっていないといわれています。
しかし、今後、広がる恐れもあり、日本においても十分な対応ができるよう、体制づくりが求められています。
引き続き、多剤耐性化についての研究が進んでいくと考えられています。
また、検査方法や治療に関する、実践的なガイドラインが作られることが期待されています。
クレブシエラ感染症になりやすい年齢や性別
患者さんの数についての統計データはありません。
発症しやすい性差、年代についても報告はありませんが、以下の人は発症するリスクが高いといわれています。
- 長期間、入院または施設に入所している人
- 体の抵抗力が弱くなっている人
- カテーテルや排液管などの医療器具が体内に入っている人
- 高齢者
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴1998年 埼玉医科大学 卒業
1998年 福岡大学病院 臨床研修
2000年 福岡大学病院 呼吸器科入局
2012年 荒牧内科開業
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