血糖値が高いと、どんなリスクがある?原因と改善方法について
『糖尿病』は、増え続ける生活習慣病のひとつです。
厚生労働省の平成27年の調査によると、40歳~70歳の男女で糖尿病が強く疑われる人は13.3%、糖尿病の可能性が否定できない人は14.8%でした。
対象者の約3割に糖尿病の疑いがあり、いまや「身近な病気」であることは明らかです。
この記事では、『血糖値が高い場合』の身体への影響と、対処法について解説します。
血糖値とは
『血糖値』とは、血液中の『ブドウ糖』の濃度のことで、数値が高い場合は糖尿病の可能性があります。
健康診断などで、検査前日の夜9時以降何も食べずに翌朝に測る血糖値を『空腹時血糖値』、検査前の飲食を問わずに測る血糖値を『随時血糖値』といいます。
血糖値が高くなる原因
1.血糖値が高くなる原因とは
血糖のはたらき
血液中のブドウ糖(血糖)は、血液によって身体中の組織に運ばれて細胞に入っていきます。
そこで代謝されてエネルギーとなり、脳や全身の臓器、筋肉を動かすもとになります。
血糖が細胞に入るにはインスリンが必要
膵臓から分泌される『インスリン』というホルモンが、筋肉・脂肪組織・肝臓の細胞などに血糖を取り込むようにはたらきかけています。
インスリンがうまく作用していないと、細胞に入れなかった血糖が血液中であふれ、血糖値が高くなります。
インスリンがうまく作用しない2つの要因
インスリンの分泌量の不足
インスリンが出ないか、もしくは出かたが悪いと血糖値が上がります。これを『インスリン分泌不全』とよびます。
インスリンは出ているが機能していない
インスリンはじゅうぶんに出ているにもかかわらず、うまく効かない場合があります。これを『インスリン抵抗性』とよびます。
2. 妊娠中に血糖値が高まる原因とリスク
ホルモンバランスの変化が原因
妊娠中は、糖を代謝するバランスがくずれ、高血糖になることがあります。
また、胎盤から出される酵素によってインスリンの分泌量が落ちたり、働きが妨げられたりします。
妊娠中に高血糖になるリスク
妊娠中に高血糖になると、妊娠糖尿病になり網膜症や腎症を引きおこします。
またそれだけでなく、胎児も高血糖になり流産をしたり、巨大児になったりするなどリスクが高まります。
とくに、こんな人は要注意!
家族に肥満や糖尿病歴のある人、高年での妊娠をした人、巨大児の出産経験がある人は、『妊娠糖尿病』になるリスクが高いので気をつけましょう。
血糖値が高いことによる体への影響
1.血糖値が高いときに出る症状
血糖値が高いと以下のような自覚症状が出ます。
・身体がだるくて疲れやすい
・のどが渇く
・水をたくさん飲む
・尿の量が多い
・夜間にトイレに行く回数が増える
・おなかがすいてよく食べるのに体重が減少してきた
そのほか、眠気やめまいなど「神経障害」の症状が出ることもあります。
2. 血糖値が高いことで起こりやすい病気
高血糖はあらゆる病気のリスクがある
血糖値が高く、とくに糖尿病にかかると、身体のさまざまな臓器や器官に合併症を引きおこします。
糖尿病の合併症には、糖尿病特有の『3大合併症』と、糖尿病を持っているとかかりやすい合併症があります。
糖尿病の3大合併症とは
3大合併症とは、『糖尿病性網膜症』『糖尿病性腎症』『糖尿病性神経障害』で、いずれも血糖値の高い状態が続いたために、毛細血管が障害され起こります。
動脈硬化による合併症
糖尿病は動脈硬化を促進させます。そのため、『心筋梗塞』や『脳梗塞』など生命を危険にさらす恐れがある合併症も引きおこします。
とくに、高血圧・脂質異常症・肥満の人が糖尿病になった場合、動脈硬化が非常に進みやすくなります。
血糖値が高い場合の改善方法
1.食事療法
規則正しい食生活が基本
糖尿病の食事療法は、正しい食習慣を身につけるとともに、過食や偏食をしないことが基本です。
1日の適性エネルギー量から、食事を決める
医師が血糖値から病状を推測し、年齢・体格・労働量などを参考に、1日に食べる食事のエネルギー量(kcal)を割り出します。
それに従って1日の食事量を決め、適正体重になるよう努めます。
エネルギー量の計算は、食品交換表を参考に
食品交換表は、日常食べている多くの食品をおもに含まれている栄養素で6つのグループに分けたものです。
1単位が80kcalなので、1日の摂取エネルギー量をバランスよく計算しやすくなっています。
エネルギー量の管理だけでは不十分!
健康を保つために必要な栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)や食物繊維をしっかりと摂って、栄養のバランスを整えることが大切です。
2.運動療法
運動で細胞が活発化し、インスリンに反応!
運動をすると、体の細胞が活発化しインスリンに反応しやすくなります。すると、細胞がブドウ糖をじゅうぶんに取り込みやすくなります。
自分に合った運動療法を
運動によるトラブルを防ぐために、健康状態をチェックしてから「運動の種類・強度・時間」を決定します。
その人が運動できる最大限をあらわす運動強度を100とすると、その40~60%が最適だといわれています。
早歩きやジョギングがおすすめ
15~30分持続できる早歩きやジョギングなどの有酸素運動が効果的だとされています。
3.入院療法
教育入院
教育入院では、食事や運動、生活習慣や糖尿病の知識、低血糖時の対処法などを学びます。
生活習慣を改善することで、『血糖コントロール』ができるようになることをめざします。
治療入院
血糖のコントロールが日常生活ではむずかしく、重い合併症を引き起こした場合は通常の治療入院となります。
まとめ
糖尿病の初期は無症状のことが多く、多飲や多尿などの症状も見逃しやすいといわれています。そのため、症状が出たころには病気が進行していることが多いです。
しかし、血糖値が高いままにしておくとさまざまな合併症を引きおこし、命に危険がおよぶ場合もあります。
症状がない場合でも、血糖値が高いと言われたら一度病院を受診したほうがよいでしょう。
生活習慣を見直して血糖コントロールをすることが、健康な体づくりにつながります。
執筆・監修ドクター
経歴1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年-2012年3月 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年4月 岡村医院、医師として勤務
2012年7月 岡村クリニック開院
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