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医師が教える!「脳」の基本のしくみと、脳の病気の種類や症状

更新日:2017/03/31 公開日:2017/03/31 view数:4,879
脳のしくみ

『脳』は、思考や感情、運動機能など、人間のありとあらゆる活動をコントロールする器官です。

この記事では、そんな脳のしくみや働き、病気について解説します。

目次
  1. 脳の構造としくみについて
  2. おもな脳の病気
  3. まとめ

脳の構造としくみについて

脳は、『大脳』、『小脳』、『脳幹』の大きく3つに分けられます。

大脳 小脳 脳幹

1.大脳のしくみと働き

大脳の構造

大脳は、脳の大部分を占めています

大脳の中心にある溝によって、左右2つの半球に分かれており、半球は『脳梁(のうりょう)』という神経線維でつながっています。

大脳の表面は、神経細胞の集まりである『大脳皮質(灰白質)』で覆われています。大脳皮質は顔に近い部分から順に『前頭葉』、『頭頂葉』、『後頭葉』に分かれています。側面は『側頭葉』といいます。

その下には、『大脳基底核(白質)』というかたまりがあります。また、大脳の中心部には『大脳辺縁系』という神経線維があります。

大脳 構造

部位ごとにちがう!大脳のはたらき

大脳は、部位によって働きが異なります。部位ごとのおもな働きは次の通りです。

頭頂葉:空間の知覚機能・接触・圧力・温度・痛みなどの感覚情報処理

後頭葉:色・形などの視覚情報を処理

側頭葉:言語の理解、記憶や物事の判断、感情を制御、聴覚を処理

2.小脳のしくみと働き

小脳は、体の動きや平衡感覚にかかわる

小脳は、体の動きをコントロールしたり、平衡感覚を司ったりする役割を担っています。

一度習得した動作の記憶を小脳が保存することで、バランスやスピードを要求されるような、高度な手足の動きが可能になります。

小脳が損傷を受けると…

そのため小脳が損傷を受けると、『運動失調』の症状がしばしば見受けられます。

小脳の異常を見つけるためには、歩く姿や姿勢の検査も含む『神経学的検査』がおこなわれます。

また、出血・梗塞・腫瘍・変性などの構造的な異常の場合は、『CT』や『MRI』による断層撮影で明らかになるケースもあります。『MRI』の方が『CT』よりも、微細な変化を含め詳細に調べることができます。

3.脳幹のしくみと働き

脳幹 睡眠

脳幹は、『間脳(視底、視底下部)』、『中脳』、『橋』、『延髄』に分かれています。中脳から延髄にかけて、『網様体』という神経システムがあります。

脳幹は、意識、睡眠と覚醒、呼吸、循環、血圧、嚥下、発語などを司る、生命維持活動の中枢です。

脳幹がダメージを受けると、『意識障害』や『言語障害』など身体機能に重大な障害が起こります。ときには死亡することもあります。

おもな脳の病気

脳梗塞

このように、人間にとって重要な働きをしている『脳』も、他の臓器と同じように病気になることがあります。

おもな脳の病気には、『脳梗塞』や『脳出血』、『くも膜下出血』、『脳腫瘍』、『パーキンソン病』、『三叉神経痛』などがあります。

1.脳梗塞

脳の血管が詰まり、その先に酸素や栄養が届かなくなる

『脳梗塞』は、脳の血管が詰まり、その先の部位に酸素や栄養分が届かなくなる病気です。

中高年以上に多く発症します。

脳梗塞の症状

脳梗塞は、血流がとまって壊死した脳の部分によって、あらわれる症状が違います。おもに『めまい』や『言語障害』、『手足の麻痺』、『歩行障害』などがあらわれます。また、治療後も後遺症が残ることがあります。

■麻痺
脳梗塞で最も頻度の高い症状が『麻痺症状』です。

片側の手足や顔面が脱力したり、筋力が低下して『片麻痺(半身麻痺)』になったりすることが多いです。

右大脳がダメージを受けると左半身に麻痺が生じ、左大脳がダメージを受けると右半身に麻痺が生じます。

■感覚障害

『感覚障害』は、感覚が鈍くなったり、消失したりする障害のことです。痛みを感じることもあり、日常生活に支障をきたすこともあります。

感覚を司る神経がダメージを受けると生じます。感覚を司る神経と運動神経とは経路が同じなので、麻痺に感覚障害をともなうこともあります。

■高次脳機能障害

『高次脳機能障害』は、脳がダメージを受けることで、記憶・集中力・言語などに障害が起きることです。直前にあった出来事を忘れてしまうなど、日常生活にも影響が出ることもあります。

■摂食・嚥下障害

『摂食・嚥下障害』は、食べ物をうまく飲み込めなくなる障害です。

原因の4割は、脳出血や脳梗塞などによる『脳血管障害』だと考えられています。摂食・嚥下障害が起こると、食べ物が気管に入る『誤嚥(ごえん)』が多くなり、『誤嚥性肺炎』などの病気を引き起こすこともあります。

脳梗塞の治療

通常は、『薬物療法』で治療します。病状や脳梗塞発症してから時間が経過していない場合は血栓溶解療法や血管内治療など『手術』をおこなうこともあります。

脳梗塞を予防するには、日頃から脳ドックなど検査をうけることが大切です。

2.脳出血

脳内の動脈が破れ、出血した状態

『脳出血』は、脳内の動脈が何らかの原因で破れて、出血した状態です。

出血量が多い場合は、緊急手術が必要になることもあります。手術では、血腫の除去をおこないます。

脳出血の予防には、定期的に検査を受けることと、高血圧をコントロールすることが大切です。

脳出血の症状

『意識障害』や『運動麻痺』、『感覚障害』などが症状としてあらわれます。

血腫が大きくなると、『脳浮腫』により頭蓋内圧が高くなり、『脳ヘルニア』を起こします。重症の場合は、脳幹部が圧迫されて死に至ります。

また、脳出血は軽症化しつつあります。しかし、依然として運動障害や感覚障害、認知症などの後遺症で悩む人も多いのが現状です。

脳出血による死亡数は減りつつある!

近年、脳出血による死亡数は減ってきています。

その最大の理由は、高血圧の内科的治療が広まり、血圧のコントロールが十分おこなわれるようになったことだと考えられます。

3.くも膜下出血

脳の表面を覆う「くも膜」の下で出血する

『くも膜下出血』は、頭蓋骨の下で脳の表面を覆う膜のひとつ『くも膜』の下側に出血している状態です。脳の表面を覆う膜には他に『硬膜』『軟膜』があります。

くも膜

くも膜下出血が起こる原因は、『脳動脈瘤』という脳の血管のふくらみであることがほとんどです。

その他の原因には、先天的に脳の動脈と静脈とがつながっている『脳動静脈奇形』や、『モヤモヤ病』があります。

くも膜下出血の症状

くも膜下出血の症状は、『激しい頭痛』です。

くも膜下出血にかかった人のほとんどが、出血した瞬間に「今まで経験したことのない」、「バットで殴られたような」頭痛を自覚します。

この頭痛は、くも膜の下にある脳の保護膜の一部が、痛みを感じる機能を持っているために起こります。その他、出血の程度によって『激しい嘔吐』や『意識を失う』といった症状があらわれることもあります。

くも膜下出血の治療

くも膜下出血の治療としては、『クリッピング手術』や足の付け根の動脈からカテーテルを入れ、動脈瘤をふさぐ『脳動脈瘤塞栓術』をおこないます。

くも膜下出血を予防するには、定期的に検査を受け、破裂する前に脳動脈瘤を見つけることが大切です。

くも膜下出血はやや女性に多い!

くも膜下出血は、脳卒中の約10%を占めています。日本では、人口10万人に対して約20人に発症し、統計上はやや女性に多く発症します。

原因が脳動脈瘤破裂による場合は、死亡や重度後遺症が残る確率が高いです。

4.脳腫瘍

頭蓋骨の中にできる腫瘍のこと

『脳腫瘍』は、頭蓋骨の中にできる腫瘍全般のことです。

脳腫瘍は2つに分けられます。体の他の部位にできたがんが転移して発生する『転移性脳腫瘍』と、脳自身から腫瘍ができる『原発性脳腫瘍』です。原発性脳腫瘍は、さらに『良性』と『悪性』とに分けられます。最終的な診断は、手術で取り出した腫瘍を、顕微鏡で観察することでおこないます。

一般的に、悪性脳腫瘍は周囲に根を生やすように発育していきます。これに対して、良性脳腫瘍は、周囲の脳とある境界を保ったまま、徐々にまわりを圧迫しながら大きくなります。

脳腫瘍の原因と発生率

原発性脳腫瘍の原因は未だ判明していません。年間発生率は、人口10万人に対して10~15人ほどの割合です。

大人と子どもで、脳腫瘍のできやすい部位が違う!

脳腫瘍は、年齢によって発生しやすい部位が異なります。

成人にできる脳腫瘍で多いのは、『大脳』です。小児の場合は、『小脳』や『脳幹』にできることが多いです。

また、脳腫瘍は多くの場合、ひとつしかできません。しかし、転移性脳腫瘍や悪性リンパ腫の場合は、2つ以上できることもあります。

脳腫瘍の症状

脳腫瘍の一般的な症状は、早朝に起こる『強い頭痛』です。

脳そのものは、固い頭蓋骨で保護されています。

この内部に脳腫瘍ができると、頭蓋骨の内部で圧力が上がります。これを『頭蓋内圧亢進症状』と呼んでいます。頭蓋内圧亢進症状は、『頭痛』、『吐き気』、『眼がぼやける』、『嘔吐』などをともないます。また、脳圧亢進が進行すると、意識低下がみとめられることもあります。

その他には、徐々に進行する『麻痺』や『感覚障害』、『言語障害』、『視野が一部欠ける』、『性格の変化』、乳汁分泌や不妊症などの『内分泌障害』があらわれます。

また、今までにてんかん発作を起こしたことのない人が、初発でてんかん症状をみとめた場合は、脳腫瘍の疑いが強いです。

脳腫瘍の治療

脳腫瘍の治療法は、種類や症状の度合いによって異なります。おもな治療法としては、『薬物療法』や『放射線療法』、『手術療法』などがあります。

5.パーキンソン病

「ドーパミン」が減少することで起こる

パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質である『ドーパミン』が減少することが原因で起きる病気です。症状としては、『手の震え』や『筋肉がこわばる』、『動作が遅くなる』、『歩行障害』などがあらわれます。

症状は徐々に進行し、10数年後には寝たきりになることもあります。有病率は、人口10万人に対し100-180人程です。

パーキンソン病の原因と治療について

詳細な原因は、現在も明らかになっていません。

治療は『薬物療法』や『リハビリ』をおこないます。重症な場合は、手術が必要になることもあります。

6.三叉神経痛(さんさしんけいつう)

三叉神経痛

顔に強い痛みを感じる

三叉神経痛は、顔の感覚(痛覚、触覚、冷熱感)を脳に伝える『三叉神経(さんさしんけい)』の領域に強い痛みを自覚するようになる病気です。

三叉神経痛による顔の痛みは特徴的です。

痛みは非常に強く、発作的な激痛が数秒から数分続きます。痛みがないときは、他に症状はありません。

三叉神経痛の痛みは、洗顔やお化粧、ひげそりなど、さまざまな動作から誘引されます。また、冷たい水を飲むと痛みがはしったり、痛みで歯磨きができなかったりすることもあります。

季節によって痛みが変動するのも特徴です。痛みがどう変動するかは、季節の変わり目や梅雨、冬など人によって異なります。

三叉神経痛の原因と治療について

三叉神経痛の原因は、血管による神経の圧迫であることが多いです。

治療は『薬物療法』が基本です。重症の場合は、『手術』で三叉神経と血管とを引き離すこともあります。

7.認知症

認知症の分類について

認知症は、『アルツハイマー型認知症』が最も多く、他に『脳血管性認知症』や『レビー小体型認知症』などがあります。

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が変性もしくは消失し、脳が萎縮することが原因です。

脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血が原因です。

認知症の症状

認知症にかかると、『物忘れ』や思考力など『知的能力の低下』、『不眠』、『抑うつ』、妄想などの症状が

あらわれます。また、『徘徊』や『嚥下障害』、『排尿・排便障害』がみられることもあります。

認知症の原因となる病気

認知症は、老化や脳の後天的な病気が原因で起こります。原因となる病気には、次のものがあります。

神経変性疾患:アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、

進行性核上性麻痺、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、大脳皮質基底核変性症、嗜銀顆粒性認知症など

脳血管障害:血管性認知症

外傷:慢性硬膜下血腫、頭部外傷後遺症

感染:クロイツフェルトヤコブ病、亜急性硬化性全脳炎、進行性多巣性白質脳症、脳炎・髄膜炎HIV脳症(AIDS脳症)神経梅毒(進行麻痺)

腫瘍:脳腫瘍

内分泌・代謝・栄養疾患:甲状腺機能低下症副甲状腺機能亢進症副甲状腺機能低下症反復性低血糖Cushing症候群副腎皮質機能低下症下垂体機能低下症、リピドーシス、肝不全腎不全Wilsonペラグラ

その他:Wernicke脳症アルコール脳症正常圧水頭症

※下線部    の疾患は治療可能が期待される認知症

『脳』は、思考や感情、運動機能など、人間のありとあらゆる活動をコントロールする器官です。

異変に気づいたら、早めに病院へ!

認知症は、早期に発見して適切に対応すれば、症状の改善や進行の抑制をのぞめるケースもあります。

以前と比べて様子がおかしい、と思ったら、早めに病院でみてもらいましょう。

まとめ

脳

脳のしくみや、比較的有名な脳の病気について解説しました。病気はこれ以外にも、さまざまな神経疾患などがあります。

症状はささいなものでも、実は脳に病気の原因があることもあります。

中には治療を急いだ方が良いものや、治療することで症状の改善がかなり期待できるものもあります。何か違和感を覚えたら、早めに病院を受診しましょう。

 

執筆・監修ドクター

尾畑 十善
尾畑 十善 医師 おばた内科クリニック 院長 担当科目 内科/脳神経内科

経歴2000年   福岡大学医学部卒業
2008年   福岡大学病院 神経内科 助教
2009年   福西会病院 神経内科部長
2012年   福西会病院 神経内科・リハビリテーション科部長
2016年9月 おばた内科クリニック開院

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