認知症には種類がある?タイプ別対応法
皆さんは認知症と聞くとどんなことを思い浮かべるでしょうか。
物忘れがひどくなったり、時には暴力的になったり、ということを想像される方が多いと思います。
しかし、実際には認知症にも種類があり、症状にも違いがあります。
今回は、おもに「4大認知症」やその他の認知症、介護の対応策などもあわせて解説します。
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4大認知症以外にも認知症はある
4大認知症とは
認知症の90%は4つのタイプに占められています。
その中でも多いのが「アルツハイマー型」です。次に多いのが「脳血管性認知症」で、「レビー小体型認知症」、「前頭側頭型認知症」と続きます。
この4つの認知症をまとめて「4大認知症」とよびます。4大認知症はそれぞれ、初期症状や進行に違いがあります。
パーキンソン病やアルコール摂取も認知症に!
このほかにも認知症があります。頭蓋内で脳髄液が多くなる「正常圧水頭症」による認知症であれば治療で回復する可能性があります。
また、近年知られているのは、高齢者に多い認知症が、若い年齢でも発症する「若年性認知症」です。
他の病気によって引きおこされる場合もあります。
代表的なものとしては「パーキンソン認知症」です。これはパーキンソン病がきっかけでレビー小体型認知症のような状態になるものです。
また、アルコール大量摂取によりおこる「アルコール性認知症」もあります。アルコールの取り過ぎで脳の活動に必要なビタミンB1が不足しておこります。
治療として長期間断酒をすると、認知症の症状は改善され機能回復するケースも多くあります。
アルコール性認知症はウエルニッケ・コルサコフ症候群とよばれる病気と同じものではないかという説もあります。
このほかにも複数の認知症が混ざり合った「混合型認知症」とよばれるものもあります。
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介護者はどう対応すればいいの?種類別解説
認知症になっている本人もいつもなにかしら不安を感じています。
少しでも認知症患者さんが明るい気持ちになれるよう、接し方や対処の仕方を工夫してみるとよいでしょう。
また、居室をトイレの近くに変える、家の中のつまずきやすい段差や毛脚の長いカーペットなどをなくすなど、少しでも過ごしやすい環境を工夫しましょう。
自分が認知症であるということは受け入れがたいものです。介護を拒否する場合は無理強いをせず、本人のプライドを尊重した対応をこころがけましょう。
そうした場合は、ゆっくりと拒否する理由を聞きだすことも大切です。
一番多いアルツハイマー型認知症への対応は?
アルツハイマー型認知症は主に物忘れや日付・時間の認識の混乱、意欲低下、怒りっぽいなどの症状があらわれます。
同じことを何度も言われても感情的になったり怒ったり、叱ったりせず、否定されることで生まれる不安や興奮をなくすことが大切です。怒られたことへの屈辱的な気持ちはあります。
例えば「生まれた田舎に帰る」と言い張るときには、「今日は○○を手伝ってほしいから一緒にお願いします」などと役割を与えるとよいでしょう。
服が着られないなど日常おこなえていた行動に対しては、手順のひとつひとつを具体的に説明します。
また、日にちや時間を自分で認識しやすいように、大きな文字のカレンダーや時計、季節感のある飾り物を見えやすいところに掲示しましょう。
レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症は習慣を利用して
レビー小体型認知症の多くは初期症状に幻視を訴えます。また、睡眠障害が初発症状となることが多いです。
前頭側頭型認知症はあまり多くはありませんが、人格変化や社会的行動異常、常同行動があります。
前頭葉に異常がおこった場合には攻撃的になるなど、人格変化があらわれ、側頭葉に異常がおこった場合には言葉の理解ができなくなり、記憶障害があらわれます。
幻視に対して、肯定的に対応し、一緒に解決策を試行しましょう。時間がたつと幻視を理解して訴えなくなります。
本人の言うことを否定するとかえって症状を増幅させる場合もありますので刺激の少ない環境づくりを心がけてください。
常に同じ行動をする症状があれば、それを利用して「決まった時間に一緒に散歩する」「決まった作業をする」など日課をつくることで、日中の活動性を促し、夜に寝られるようにします。
脳血管性認知症には薬の管理を
脳梗塞を多発した方が発症するケースが多く、脳血管障害の大きさが認知症の程度と関係してきます。また、発症や経過もさまざまです。
脳卒中の再発予防のために服薬管理をサポートすることが大切です。脳の障害部位によって、できなくなることに違いがあります。できることをしてもらうよう働きかけましょう。
本人が得意な分野で、脳のトレーニングにつながることを勧めることも効果的です。
そのほかの認知症では?
アルコール性認知症は孤独にならないよう工夫をしましょう。
アルコール依存は家族に見放されているような環境で生きてきた人に多いというデータがあります。作り話を否定せず受け入れ、孤独を感じさせないようにしましょう。
若年性認知症の場合、年齢的にも若く、自分が認知症であると受け入れがたい気持ちがより強いものです。そうした気持ちにより寄り添う必要があります。
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過剰な物忘れや性格が変わった場合は要注意
「最近物忘れがひどくなった」というだけでは加齢によるものなのか、それとも認知症によるものなのか、はっきりとわからないことも多くあります。
少しでも「おかしいな」と思うようなことがあれば、認知症に特徴的な症状を目安にするとよいでしょう。
特徴的な物忘れの症状としては、食事の記憶です。前日の食事の内容を忘れることは誰しもありますが、「食べたことそのもの」を忘れている場合は注意が必要です。
また、同じ話を何度繰り返す場合もあまりにも回数が多くなってきた場合は要注意のサインです。
また認知症によって性格が変わることがあります。今まで穏やかだったのに、急に暴言や暴力を振るう場合もあります。
趣味などへの関心を失い、人との関わりを避けているような場合も要注意です。
周囲の人からのケア
認知症での受診
本来であれば脳神経内科や脳神経外科、精神科、心療内科、老年内科、認知症外来、物忘れ外来などが専門科目です。
しかし、疑われる本人にこのような診療科目へ行こうと促すと、拒否をされる可能性があります。
そのため、はじめは慣れ親しんだかかりつけ医の受診につきそいましょう。認知症の疑いがあれば専門医を紹介してもらうこともできます。
現在、認知症を根本的に治癒する薬はありません。しかし、専門の医療機関で治療を受けずに放置していると、認知症は進行するばかりです。
進行すると飲み込む機能の低下によって誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)になったり、転倒によって骨折などの大ケガをしたりすることもあります。
定期的に医療機関を受診して、症状によってはリハビリができる機関を紹介してもらうとよいでしょう。
公的支援を活用しましょう
認知症の家族をお世話する介護者の疲労は計り知れません。
ひとりで抱え込んで介護をおこない、介護者自身が過労などで病気にならないようにすることも大切です。利用できる公的な支援や施設は大いに活用してください。
自治体ごとにさまざまな支援をおこなっています。支援の相談に関する窓口を独自にもうけている自治体もあります。
また、各自治体で設置している地域包括支援センターの、高齢者に関する総合相談窓口などで、どういった支援が受けられるか相談してみましょう。
同じ苦労をもつ人たちと情報や悩みを共有しあえるコミュニティに相談することもお勧めです。
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参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴東海大学医学部 卒業
日大板橋病院 勤務
日赤医療センター 勤務
国立病院東京災害医療センター 勤務
東大和病院 勤務
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