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ウェルニッケ・コルサコフ症候群とは
ウェルニッケ・コルサコフ症候群(うぇるにっけ・こるさこふしょうこうぐん)とは、ウェルニッケ脳症とコルサコフ症候群を組み合わせた呼び方です。
これらは二つは、もともと別の病気と考えられてきました。しかし、近年では、ビタミンB1 の一つであるチアミンが足りなくなることによっておこる同じ病気であることがわかっています。
ウェルニッケ脳症は、チアミンが足りなくなることによっておこる脳障害のことです。決して多くはありませんが、神経にかかわる重い病気です。
チアミンの足りない状態が慢性化すると、コルサコフ症候群となります。コルサコフ症候群は長期記憶に障害がおこります。長期記憶とは、比較的、長い期間にわたって保たれている記憶のことです。
チアミンが足りなくなる原因は、重いアルコール依存症であることが多くあります。アルコールを摂ることによってチアミンの吸収されにくくなり、ウェルニッケ脳症にかかります。
ウェルニッケ・コルサコフ症候群の症状
ウェルニッケ脳症の症状は意識障害です。意識障害は軽いこともあれば、錯乱し昏睡(こんすい)することもあるなど、さまざまです。
ほかにも、眼球が細かく震える眼振(がんしん)、眼の筋肉の部分的な麻痺など、眼球の動きに異常がおこります。平衡感覚を失うこともあります。
これが重症化し、治療されないままでいると、80%の患者さんに記憶障害がおこります。コルサコフ症候群の症状は、重い記憶障害です。
近い出来事についての記憶を失うことが多く、古い記憶ほど失われにくい傾向があります。そのため、短期的な記憶ができず、新しいことを覚えにくくなります。
計算や言語などを忘れることは少なく、多くの場合、会話や社会的な付き合いには問題がありません。認知機能が低下して無関心、無反応になり、認知症と診断されていることもあります。
治療を受けずにいると、生命にかかわることもあります。
ウェルニッケ・コルサコフ症候群の診療科目・検査方法
ウェルニッケ・コルサコフ症候群は、放置していると生命にかかわることもあるため、早めに治療を始める必要があります。脳神経内科を受診してください。
アルコール依存症があり、チアミンが足りないことが確認できる場合は、ウェルニッケ脳症が疑われます。
肝機能検査や、チアミンの濃さを測るための血液検査などによって診断されます。MRI検査をすることもあります。
ウェルニッケ・コルサコフ症候群の原因
ウェルニッケ・コルサコフ症候群の原因はチアミンの不足です。アルコールの摂り過ぎや、栄養状態が悪いことによっておこります。
なかでも、アルコール依存症が原因になっている場合が多くみられます。アルコールによってチアミンが吸収されにくくなるだけでなく、食事をあまり取らなくなることで栄養障害がおこりやすい状況になります。
ほかに、摂食障害や妊娠による悪阻(おそ:つわりのこと)などで十分に食事ができないことも原因になります。
多くはありませんが、頭のケガや、外科手術が原因となることもあります。
ウェルニッケ・コルサコフ症候群の予防・治療方法・治療期間
ウェルニッケ・コルサコフ症候群の主な治療法は、チアミンと水分を点滴で補給することです。チアミンは3~5日間、続けて投与します。
また、チアミンの代謝を助けるマグネシウムも注射などで投与します。
コルサコフ症候群の症状があらわれている場合、完全に治すことは難しく、チアミンの投与を続けていく必要があります。
栄養状態の悪化が原因であれば、総合ビタミン剤などが投与されることもあります。
アルコールが原因であれば、酒を飲むのを控えなければなりません。
ウェルニッケ・コルサコフ症候群の治療経過(合併症・後遺症)
ウェルニッケ・コルサコフ症候群は、コルサコフ症候群の症状があらわれてしまうと、記憶障害などの回復は難しく、後遺症として残ります。
そのため、ウェルニッケ脳症の段階で治療を受けておくことが大切です。
栄養状態を良好に保つことで予防できます。
ウェルニッケ・コルサコフ症候群になりやすい年齢や性別
ウェルニッケ・コルサコフ症候群は、男女関係なくかかりますが、比較的、男性に多い傾向があります。年齢に関係なくかかります。ただし、高齢の方が栄養不良になりやすいため、かかる恐れも高くなります。
日本よりも西洋で多くみられます。アルコール依存症の人はかかりやすい傾向があります。
執筆・監修ドクター
経歴平成14年福井医科大学(現福井大学医学部)卒業
岐阜大学高齢科神経内科入局後松波総合病院にて内科研修、
岐阜大学高次救命救急センター出向。
美濃市立美濃病院内科。
東京さくら病院及び同認知症疾患センター勤務の後
令和元年7月かつしかキュアクリニック開業。
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