HbA1cの基準値は?どこから糖尿病?高い場合の下げ方や検査について
HbA1cは糖尿病を判定する重要な数値
1.HbA1cとは
ヘモグロビンには、赤血球中のたんぱく質で、全身に酸素を運ぶ役割があります。
『HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)』とは、ヘモグロビンが血液中のブドウ糖が結合したものになります。
つまり、たんぱく質や脂質が糖と結びつき、糖化された状態のものです。
このHbA1cの数値によって、過去1~2か月間の血糖値の平均を調べることができます。
2.HbA1cの基準値
HbA1cが6.0%未満が正常範囲となります。
6.5%以上になると「糖尿病型」となります。6.0~6.4%の場合は「境界型」といい、糖尿病の疑いが否定できない状態です。
5.6~5.9%の場合、「 糖尿病予備群」とみなされる場合があります。
血液検査でHbA1cが6.0%以上だった場合は、病院を受診しましょう。
HbA1cの正常値(NGSP)は年代・性別で異なるため、以下の表を参考にしてください。
20歳~ | 30歳~ | 40歳~ | 50歳~ | 60歳~ | 70歳~ | |
男性(%) | 5.3 | 5.4 | 5.4 | 5.8 | 6.0 | 5.9 |
女性(%) | 5.2 | 5.4 | 5.5 | 5.7 | 5.9 | 5.8 |
3. HbA1cが高い場合のリスク
血液中に糖があればあるほど、ヘモグロビンが糖化され、HbA1cの値は高くなります。
HbA1cの値が高く、糖化が起こると、糖尿病・動脈硬化・アルツハイマーといった病気を引き起こすこともあります。
4. 血糖と血糖値、HbA1cとのちがい
血糖とは「血液中に含まれるブドウ糖」のことで、血糖値とは「血液中に血糖が占める濃度」のことです。
血糖値は食事や運動の影響を受けやすく、検査前に一時的に節制することで数値が変わってしまう性質があります。
それに対してHbA1cは、過去1~2か月間の血糖の平均的な状態がわかります。
5.HbA1cの数値だけが高い場合
HbA1cの数値のみが6.5%以上の場合、「糖尿病型」と判断されますが、血糖値は通常かそれ以下である場合もあります。
甲状腺機能亢進症・異常ヘモグロビン症・褐色細胞腫などが原因で、HbA1cが高い数値を示しているケースもあるでしょう。
HbA1cが基準値より高ければ、病院の受診を
1.糖尿病の検査について
HbA1cと血糖値両方が基準値より上回っていれば、糖尿病と診断されます。
しかし、1つの検査だけ基準値を超えていた場合は、可能性をしぼるために3つの段階に分けて検査をおこなっていきます。
糖尿病の判断材料
糖尿病の判断材料はHbA1cの数値のほか、空腹時血糖値・随時血糖値・経口糖負荷試験(OGTT)2時間値も3つがあります。
〈経口糖負荷試験(OGTT)2時間値〉
1.10時間以上絶食して検査前血糖値測定をおこなう
2.75gのブドウ糖を溶かした水を5分以内に摂取する
3.以後30分、1時間、2時間後の血糖値を測定。負荷前、負荷後で判定する
糖尿病型かどうかの診断
診断はまず、健康な「正常型」・糖尿病予備軍といわれる「境界型」・「糖尿病型」に分けられます。
「糖尿病型」とされるのは、以下の4項目のいずれかが該当する場合です。
・空腹時血糖値が126mg/dl以上
・随時血糖値が200mg/dl以上
・OGTT2時間値が200mg/dl以上
・HbA1cが5%以上
最終的な糖尿病の診断
「糖尿病型」であった場合、再検査や問診など精密な検査をおこない、糖尿病かどうかの診断をします。
2.糖尿病の治療について
基本は食事と運動
糖尿病の治療は、食事療法をおこなわなければ、どんな薬を使っても治療は成功しません。
食事療法にくわえ、運動療法も体内の脂肪を減らして、インスリンの作用を高め血糖値を下げる働きがあります。
薬物療法について
薬物療法もありますが、治療よりも病状のコントロールが目的です。
食事療法や運動療法がうまくいかない場合に、血糖降下薬が使われるほか、インスリンを分泌する力が非常に低下した場合、インスリン注射を使用することもあります。
3.糖尿病の治療期間は?
糖尿病は完全に治ることはありません。そのため治療期間は定められていません。
医師や管理栄養士の指導に基づいた食事と運動を続け、血糖コントロールをおこなっていきます。
網膜症・神経障害・腎症などの合併症を防ぐ治療もあわせておこないます。
一度上がったHbA1cは基準値まで下げられる?
1.食事面でできること
指導に沿った食事をおこなう
過食や偏食をせずに、正しい食習慣を身につけることが重要です。
主治医が血糖値などから病状を推測し、年齢・体格・労働量などを参考に、1日の食事のエネルギー量(kcal)を割り出します。
それに沿って1日の食事を考え、適正体重になるように努めましょう。
バランスの良い食事が大切!
1日のエネルギー量を気にするだけでなく、栄養バランスの良い食事をとることが大切です。
健康を保つために必要な栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)や、食物繊維の過不足がないように、気をつけましょう。
食品交換表を活用
食品交換表とは、日常食べている食品を、6つの食品グループに分けたものです。1単位を80kcalとしており、1日の摂取エネルギー量を計算しやすくなっています。
極度なエネルギー制限は低血糖をまねく恐れもあるので、g主治医の指示に従いましょう。
2.運動面でできること
運動による作用
運動すると血中のブドウ糖が大量に消費され、血糖値を抑制するように働きます。また、インスリン作用を高める作用があります。
健康状態に合った運動をおこなう
運動によるトラブルを防ぐために、事前に健康状態をチェックし、運動の種類や強度、時間を決定します。
糖尿病の運動療法としては、その人ができる運動強度を100とすると、その40~60%の強度がいいのだといわれています。(中等度の運動強度:酸素摂取量の40-60%)
有酸素運動がおすすめ
15~30分持続しできる速歩やジョギングなどの有酸素運動が推奨されています。
運動療法の目標は、できれば毎日、少なくとも週3〜5回の運動強度は上記の中等度となる有酸素運動を20~60分おこない、合計して150分/週となる運動をすることがすすめられています。
さらに運動をくわえるなら
週2~3回、骨格筋に負荷を与える運動を組み合わせることが望ましいとされています。水泳やウオーキングなどの有酸素運動がおすすめです。
しかし、運動も過度におこなうと低血糖をまねく恐れがあるので注意しましょう。
まとめ
執筆・監修ドクター
![岡村 長門](https://byouki-scope.empower-column02.com/wp-content/uploads/2019/02/nobuyuki_okamura-e1556267687708.jpg)
経歴1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年-2012年3月 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年4月 岡村医院、医師として勤務
2012年7月 岡村クリニック開院
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