食物繊維の効果をひきだす適量は?不足すると生活習慣病のリスクが…!?
食物繊維は一昔前、栄養にならずいらないもの、と考えられてきました。しかし、今ではさまざまな生理機能が明らかとなり、その必要性が認識され「第6の栄養素」とまで呼ばれるようになってきました。
現代の日本人の食生活において食物繊維は不足しやすい栄養素なので、積極的に摂取するように心がけましょう。
食物繊維はどんな食品に含まれ、どんな効果があるのか、詳しく解説していきます。
食物繊維の効果
食物繊維とは?
食物繊維とは、ヒトの消化酵素で分解されない成分の総称のことです。食物繊維は小腸内で消化吸収されず、大腸まで移動します。別名「難消化性多糖類」または「ダイエタリーファイバー」とも言われています。
食物繊維は炭水化物に含まれており(炭水化物は糖質と食物繊維に分かれます)、大きく分けて水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類されます。水溶性と不溶性では異なった性質を示し、身体に及ぼす影響も異なります。
一つの食材にどちらかの食物繊維が含まれているわけではなく、基本どちらの食物繊維も含まれています。
食物繊維の効果は?
不溶性食物繊維の効果
不溶性食物繊維は水に溶けませんが、水分を含む性質があります。そのため、水分を含んだ不溶性食物繊維が便をやわらかくし、排便を促進する効果が期待できます。
また、生体に有害な物質を吸着し、便とともに排泄させることにより、大腸がん発生抑制作用も期待できます。
その他、腸内細菌のビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌の増殖を助けるため、整腸作用もあります。不溶性食物繊維の代表的なものには、野菜や果物や穀物の外皮に含まれる「セルロース・ヘミセルロース」や、エビ・カニなどの殻に含まれる「キチン」などがあります。
水溶性食物繊維の効果
水溶性食物繊維は、水に溶けて粘性が増すという性質があります。また、大腸における腸内細菌によって分解され、一部エネルギーとしても利用されます。
他にも、糖質や脂質、ナトリウムの吸収を遅らせる効果があります。そのため、糖尿病の発症予防や血清コレステロール値の正常化、血圧上昇の抑制効果などが期待できます。
代表的な成分は、こんにゃくに含まれるグルコマンナンや、海藻類の寒天に含まれるフコイダンなどがあります。
食物繊維が足りないとどうなる?
食物繊維が不足したときのリスク
食物繊維が不足したときの代表的な症状は、便秘です。便秘になるということは腸内環境が悪化している場合が多く、その結果、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病にかかるリスクも増加します。
また、腸内環境と免疫の関係も少しずつ明らかになってきています。食物繊維の摂取が不足すると、間接的に免疫が衰えます。そのため、風邪をひきやすくなったり、アレルギーになりやすかったりするリスクも高まると考えられるでしょう。
理想の食物繊維量
1日にどれくらいの食物繊維を摂ったほうが良いかは、日本人の食事摂取基準に定められています。『日本人の食事摂取基準(2015年版)』によると、食物繊維の目標量は18歳~69歳の女性で18g以上、男性で20g以上となっています。
しかし実態は、国民健康栄養調査で見ると、日本人のどの年齢群も目標量に達していません。特に、10代~40代の摂取量が少ないことが顕著です。そのため、いつもの食事に食物繊維をプラスすることを意識したほうが望ましいといえます。
食物繊維が多く含まれる食品には海藻類(わかめ、こんぶ、ひじき、のりなど)、おから、きのこ類、こんにゃく、豆類(あずき、大豆、枝豆など)、切り干し大根、意外なところではココアなどがあります。
※100gあたりの食物繊維含有量の一例:こんぶ(10㎝角1枚で約3.7g)、こんにゃく(約3g)
また白米より玄米、胚芽米にすることで食物繊維量はアップします。これらの食材を上手に料理に取り入れて、いつもの食事より少しでも食物繊維量が多い食事になると、さまざまな良い効果が期待できます。
反対に摂りすぎるとどうなる?
過ぎたるは及ばざるがごとし、ということで、もちろん食物繊維であっても摂りすぎによる不都合があります。それは、栄養素全般の吸収を妨げてしまう、という点にあります。
飽食の毎日で食べすぎている人は問題ありません。しかし、ほとんどの人が潜在的に栄養不足と言われている今日において、必要な栄養素まで吸収を抑制してしまうことは軽視できません。
日本人が特に不足しているカルシウム・鉄の吸収も阻害してしまうため、食物繊維は毎日25gほどを目処に摂ることが理想的です。
また、上文にて「不溶性食物繊維が便をやわらかくし、排便を促進する」と述べましたが、便秘を感じる人のうち、下記のタイプの方にとっては、便が溜まって詰まるという、逆効果になる場合もあります。
・腹筋の力が弱い
・腸管が長い
・排便を我慢する癖がある
これらの場合は、不溶性食物繊維の摂りすぎには気をつけて、水分をこまめにとることを心がけましょう。
まとめ
食物繊維は継続的に目標量を摂取することで、良い効果をたくさん得ることができます。
最近では、食物繊維が入った飲み物などが数多く販売されるようになり、手軽に摂取できるようになりました。
ぜひ毎日の食生活を見直して、食物繊維の多い食材を一品加えてみてはいかがでしょうか。
執筆者:久野銀座クリニック 岡村信良 先生
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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