糖尿病と食事の関係は?食べてよいもの・いけないもの、注意点やカロリー計算、食事メニュー
食生活に気をつけているのに、糖尿病の血糖値がなかなか改善しない…などと悩んでいる方も多いでしょう。実は、ただ糖分などを避ければ良いという訳ではなく、食事のバランスを良くしないと数値は改善しません。
そこで、この記事では糖尿病の人が食べていいものやいけないもの、注意点について解説します。
- 目次
糖尿病は食事療法が基本。食事メニューはどう決める?
糖尿病治療のひとつに、食事療法があります。食事療法とは、食事の量や栄養バランスを調整し、一人ひとりに合わせたメニューを取り入れた、長期的な治療方法です。
糖尿病は、発症の要因から1型、2型に分けられます。1型糖尿病は突然発症し、子供や若い年代で多く、膵臓でインスリンを出す力が弱い、出せない病気です。
一方、2型糖尿病は、「ストレス」や「運動不足」だけでなく、「肥満」や「食べ過ぎ・飲み過ぎ」といった、生活習慣の乱れによって症状があらわれます。
2型糖尿病も1型糖尿病と同様、インスリンの分泌が少なかったり、うまく作用しない病気です。
そのため高血糖になり、「糖尿病性網膜症」「糖尿病腎症」などの合併症を引き起こす可能性もあります。
しかし、生活習慣を改善していくことで糖尿病がよくなり、合併症も引き起こしにくくなります。運動をすることも改善方法のひとつですが、その中でも食事療法は大切です。運動をしっかり行っていても、食生活が乱れていると糖尿病を改善できません。
糖分を多く含む食事をすることで血糖値が上がったり、脂質を多く含む食事をすることでコレステロール値が上がったりしてしまいます。そのため、食事療法は糖尿病治療において重要な役割を持っています。
1型糖尿病については、栄養バランスに気をつけた食生活を送っていれば基本的に問題はありません。しかし2型糖尿病については、食生活の改善を行うことで糖尿病性網膜症などの合併症を防ぐこともできます。
そのため、ここでは2型糖尿病の食事療法について、基本的な内容を紹介します。
食べる量やカロリー制限が必要?1日の目標摂取カロリーは?
糖尿病によい食べ物・悪い食べ物というものはありません。どんな食べ物でも、食べ過ぎ・食べなさすぎは身体にとってよくありません。
そのため、糖尿病で食べてはいけないものを避けるのではなく、食事バランスに気をつけて、どんなものでも適度に食べることが大切です。
糖尿病の場合、甘いものを食べてはいけないというイメージもあるでしょう。しかし、甘いものを一切摂取しないとなると、大きなストレスを抱えてしまうこともあります。そのため、かかりつけの医師や管理栄養士などとも相談をしながら、適度に甘いものも食べるとよいでしょう。
糖尿病の人の食事は、量やカロリーを制限するよりも、栄養バランスを整えることを意識しましょう。そうすることで、血糖値のコントロールがしやすくなり、自分に合ったカロリー摂取をすることができます。
また、栄養バランスを整えることは、塩分の過剰摂取による「糖尿病性腎症」や、「脂質摂取」による動脈硬化性の病気など、さまざまな合併症の予防にもつながります。
糖尿病食事療法の摂取カロリー計算
糖尿病の食事療法では、1日に適したカロリーはどれくらいでしょうか?年齢や性別、生活環境などは、一人ひとり異なるので、基本的に医師と相談して決めていきます。
一般的な、1日に必要な摂取カロリー(目安)の計算方法は以下になります。
摂取カロリー(kcal)=標準体重[身長(m)×身長(m)×22]×身体活動量
身体活動量
糖尿病を患っている方の場合は、こちらのカロリーの他、かかりつけの医師にも相談しながら1日の摂取カロリーを決めると良いでしょう。例)身長160cm デスクワーク中心の人の場合
[1,6cm×1,6m×22]×25=1,408カロリー
→1日の摂取カロリーは、約1,400カロリーとなります。
年齢や、運動量なども関係する
1日の摂取カロリーは、計算によって算出することができますが、個人の年齢や性別、日常生活における運動量にも関係してきます。食事内容は、算出した数字だけを見て、自己判断せずに、かかりつけの医師と相談し、指示を仰ぎましょう。
食事を抜いて、減らすのはダメ?
カロリー制限のため、食事を抜いて1日1食や2食にしているという人もいるかもしれません。しかし食事を抜いて摂取カロリーを減らすことは、よくありません。必要な栄養をバランス良く摂取することが大切です。
まずは、規則正しい食生活にしましょう。朝昼晩、きちんと食べて、間食を控えます。たとえば、「朝食を抜いて、昼食にまとめて食べる」というのは、インスリンが過剰に分泌され、膵臓に負担がかかります。
そのため糖尿病が悪化してしまう可能性があるため、食事を抜くのは控えましょう。
しかし、中には規則正しく食事を摂ることができない人もいるでしょう。その場合は、1日の総摂取カロリーを基準にし、間食などで調整する工夫をしましょう。
知っておきたい糖尿病食事交換表
食品交換表とは、糖尿病患者さんのために、食事内容を組み立てる際に使われる表です。1日の総摂取カロリー量に合わせて、バランスのとれた食事にするためのものです。
食品交換表は、食品に含まれる栄養素が六つの表に分けられています。各栄養素「80kcal」を「1単位」としていて、それぞれの食品によって、1単位分の重さが表されています。
一般的には、医師や管理栄養士が、患者さんごとに1日に必要な単位と、表への振り分けを指示します。患者さんはその単位数の指示に従って、好きな食品で食事内容を組み立てていきます。その結果、栄養バランスのとれた食事内容を組み立てることができるようになっています。
六つのグループに分かれているものをバランス良く摂取するために、医師や管理栄養士と相談しながら、配分を決めましょう。1日に目標とする摂取カロリーは、人によって異なります。そのため、食品交換表で摂取すべき単位数も異なります。また、目標摂取カロリーだからと言って、食事内容のバランスが偏っているのは推奨できません。
糖尿病の食事 注意したいポイントは?
糖尿病の食事は、食事を抜かない、栄養のバランスが大切、ということを紹介しました。では、食事の際に注意したいことは、この他にどのようなことであるのでしょうか?
ゆっくり、よく噛んで食べる
必要以上に食べ過ぎてしまうことを避けるため、よく噛んでゆっくり食べるようにしましょう。よく噛まずに急いで食べてしまうと、満腹感を得ることができず、結果的に食べ過ぎてしまう場合があります。また、食事の際は、腹八分目で抑えることも大切です。
脂質や塩分の摂り過ぎに注意する
脂っこい食べ物で脂質を摂りすぎると、脂質異常になり、動脈硬化の可能性がでてきます。うにやいくら、卵黄などのコレステロールが高い食品や、肉の脂身やバター、マーガリンなどの飽和脂肪酸が多い食品はできるだけ控えるようにしましょう。
そして、食塩の摂り過ぎにも注意が必要です。塩分が多い食品は高血圧の原因になり、糖尿病腎症や糖尿病網膜症のような合併症の引き金になりかねません。味付けは、できるだけ薄くして、塩分を控えた食事を意識しましょう。
夜遅い時間の夕食は避ける
夜遅くの食事は、できるだけ避けるようにしましょう。活動量が少なくなる夜遅い時間帯に、食事をとると身体に脂肪をため込みやすくなります。
夕食の時間が遅くなってしまう場合は、なるべく軽めにして、消化のよい豆腐や野菜を食べるように心がけて、脂っこい食べ物は控えるようにしましょう。
外食の場合
糖尿病の人が外食をする場合は、はじめに野菜から食べるように心がけましょう。空腹時に炭水化物を摂ってしまうと、血糖値が急激に上昇してしまいます。一般的に「ベジファースト」と言われている、野菜を先に食べる方法で、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
また、丼物やパスタだけのメニューにせず、サラダや温野菜などを追加するのがよいでしょう。
食べてはいけないものはある?
糖尿病の場合、基本的に食べてはいけない食品はありません。ただし、糖質は血糖値を上げる栄養素なので、糖質の多い食品の摂り過ぎには注意が必要です。
糖質を多く含む食品を摂り過ぎてしまうと、血糖値が下がらないので糖尿病が悪化してしまう可能性があります。では、糖質が多く含まれる食品にはどのようなものがあるのでしょうか?主な食品を紹介します。
ラーメン+チャーハンなど、主食に主食を重ねる食べ方や、パンやおにぎりだけ食べる、主食だけで済ませるのもよくありません。
糖尿病の人がおやつや間食を摂る際は、ナッツや煎った大豆などが、糖質控えめで満腹感が得られやすいのでおすすめです。また、ビタミンCを含むフルーツもよいでしょう。甘いものは抑えて、食事は主菜や副菜、野菜など、バランス良く取り入れることを心がけましょう。
食事の間隔はどのくらい?
糖尿病の食事療法では、規則正しい食生活を意識することが大切です。
食事の間隔が空きすぎてしまうと、小腹が減ってしまい間食してしまうことがあります。間食を控えるためにも、できるだけ食事の時間を決めておくとよいでしょう。
そして、食事の間隔がバラバラだったり、短かったりすると、膵臓(すいぞう)に負担がかかり、血糖値が乱れてしまいます。
膵臓は、血糖値を調整する働きのあるインスリンを分泌する器官です。食事の間隔が短いと、その都度インスリンが必要となってきてしまい、その結果、インスリンが不足し、血糖値が上がってしまいます。
推奨する食事の間隔は6時間ですが、生活スタイルには個人差があります。そのため、5~7時間の中で調整するといいでしょう。ただし、夜遅い時間の食事は摂取したカロリーが消費されません。夕食の時間は遅い時間帯や寝る前は避け、夜8時までに摂るか、就寝の3時間前までに済ませましょう。
そうは言っても、仕事などで帰りが遅く、どうしても早めに夕食を摂ることが難しい人もいるでしょう。その場合は、なるべく夕方におにぎりやパンなどの主食系を食べておいて、帰宅後はおかずだけ食べましょう。そうすることで、遅い時間帯にカロリーの過剰摂取を抑えることができます。
糖質制限は糖尿病にどのような働きがある?
糖質制限も糖尿病の改善には有効な手段で、血糖値の急な上昇が抑えられ、インスリンの分泌量が減ります。インスリンは、血糖値を下げる働きと、中性脂肪を作る働きがあるため、糖質制限をすれば脂肪が蓄えられにくくすることにつながります。
ただし、糖質を制限すると、代わりに肉や脂の多い食品などの脂質やたんぱく質を多く摂取しがちです。その結果、摂取するカロリーが高くなり、コレステロール値が上がってしまうこともありますので、糖質制限をする場合は、糖質以外の食品でカロリーが過剰にならないように気をつけましょう。
糖尿病の食事の支度も負担なく
少しでも日々の食事の負担を軽減するために、宅配サービスやコンビニの食事、レトルトを利用する方法があります。
糖尿病の食事療法で大切なことは、自分に合ったカロリーの食事をバランス良く食べることです。しかし、毎日のことなので、栄養バランスのコントロールをして、自分で用意することを負担に感じてしまうこともあるでしょう。また、「食事療法は難しい」と考えてしまう人も中にはいるかもしれません。
日々の負担を少しでも軽減させるために、さまざまな食事を上手に取り入れましょう。
宅配サービスを活用!
食事の宅配サービスには、管理栄養士が考えた数々のメニューがあります。冷凍で届くので、家で準備する際は、レンジでチンするだけのメニューや、レシピ通りに調理するだけのメニューなので、とても便利に食べられます。また、飽きがこないようなメニューが数多くあります。
3食作る負担や、仕事や家事などで忙しい人でも毎日栄養バランスのとれた食事を摂ることが可能です。
コンビニのご飯も、組み合わせが大事!
食事の基本は、主食・主菜・副菜をバランス良く摂取することです。それはコンビニのご飯でも同様です。コンビニでご飯を選ぶときのポイントは、主食のご飯が少なめで、肉より魚をメインにし、野菜を多く摂ることです。はじめからご飯を少量にしておくことが食べ過ぎの抑制には、望ましいです。しかし、場合によってはご飯を残す勇気を持つことも必要です。
コンビニ弁当は、ご飯が多い、揚げ物が多い、副菜の種類が少ない、野菜が少ないという弁当が多いです。さらに、味付けが濃い傾向があるので注意が必要です。
また、自分の1日の摂取カロリーに合わせて、主食・主菜・副菜のバランスを考えて、単品を組み合わせるのも良いでしょう。以下のコンビニ商品から、主食・主菜・副菜を1品ずつ選んで食べるようにしましょう。
ただし、総カロリー数が高い場合があるので、カロリー表記を確認してから決めるようにしましょう。パスタやどんぶり系を選ぶ場合は、他の単品の商品を追加することで全体のバランスがよくなります。たんぱく質を摂る場合は、ゆで卵や納豆、ヨーグルトを追加しましょう。お弁当なら、比較的塩分や脂質が考えられて作られている、幕の内弁当の方がその他のお弁当類よりもおすすめです。
また、コンビニにある糖質オフのパンや食物繊維を多く含む雑穀や大麦のおにぎりなどを活用するのもよいでしょう。
食事療法用の便利なレトルト食品も
食事の準備への負担を軽減するために、レトルト食品がおすすめです。毎日カロリー計算をして、バランスのとれた食事内容を考えるのは大変なこともあります。だからといってコンビニ食ばかりでも飽きてしまうでしょう。
糖尿病の食事療法をしている人向けのレトルト食品を販売しているメーカーがあります。糖質やカロリー、塩分を控えた内容になっていて、食べる場合は温めるだけなので、簡単に作ることができます。
糖尿病の食事は食材やメニューを工夫して
糖尿病の人の食事を作るときは、食材だけでなく、食べ方や調理方法も工夫することが重要です。あらかじめカロリー計算をした食事の献立を決めておくと、迷わないため便利です。
食事の献立に取り入れたい食べ物は?
食事の際は、メニューを工夫することで、血糖値の急激な上昇をコントロールができます。
糖尿病の改善にすすめの食品には、以下のようなものがあります。
豚肉
豚肉にはビタミンB1が豊富に含まれています。ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える働きがあります。そのため不足すると血糖値が上昇しやすくなります。
特にヒレやモモ部分は、脂が少ないためおすすめです。
サバやアジ、イワシ、サンマなどの青魚
サバやサンマなどの青魚には、体内で合成できない「DHA(ドコサヘキサエン酸)」「EPA(エイコサペンタエン酸)」などが豊富に含まれています。これらは「必須脂肪酸」とも呼ばれ、インスリンの分泌量を増やし、血糖値を下げる働きがあります。
野菜やきのこ類、海藻類などの食物繊維
食事の献立を考える際は、野菜やきのこ類、海藻類など食物繊維を多く含む食品を使うように心がけましょう。食物繊維には、食べ物の消化吸収を穏やかにする働きがあります。そのため、血糖値の急な上昇を抑え、緩やかにします。また、コレステロールを低下させる作用もあります。
さらに、食物繊維のナトリウムを排出する働きによって、高血圧の予防につながります。空腹感を抑える作用もあるので、食べ過ぎの予防にもなります。
食物繊維の1日の目標摂取量は、18歳~64歳の男性で21g以上、女性の場合は、18g以上が望ましい量とされています。
お米
ご飯に使うお米は、白米よりも玄米や発芽米の方が食物繊維を多く含むのでおすすめです。また、玄米にはビタミンやミネラルも多く含まれています。そのため、身体に必要な栄養素を効率よく摂取できます。ただし、玄米だけのご飯となってしまうと食べにくい、と感じる人もいるでしょう。その場合は、白米と混ぜて炊くと食べやすくなります。
牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品
近年の調査で、牛乳やチーズなどの乳製品を摂取する習慣のある人は、2型糖尿病の発症リスクが23%ほど低かったという報告があります。
牛乳であればコップ1杯(200ml)、チーズなら40g、ヨーグルトなら200g程度を目安に、週5日程度は摂取すると良いでしょう。
ただし、具体的になぜ乳製品が糖尿病予防に良いのか、はっきりしていない部分もあります。そのため今後の研究に期待が寄せられています。
豆腐や高野豆腐、納豆などの大豆製品
大豆には100gあたり17. 1gの食物繊維が含まれています。食物繊維が多い食品としては他にはごぼうなども挙げられますが、ごぼう100gあたりの食物繊維の量は5. 7gとなっています。そのため、比較的食物繊維の摂りやすい食品と言えます。
また、大豆に含まれる「大豆イソフラボン」が、インスリンの分泌を促すことで血糖値を下げる働きが期待できます。
自分に合った食生活で上手に糖尿病と付き合う
糖尿病の食事療法は、絶対に食べてはいけないものはありません。「1日に過剰にならないカロリー量や糖質量の食事を摂る」「栄養バランスのとれた食事内容にする」を守っていただければ大丈夫です。難しく考えられがちな食事療法ですが、食べる喜びを感じながら無理なく続けることがポイントです。
バランスのとれた食事を楽しみながら、正しい食生活を身につけましょう。自分に合った食事で、上手に糖尿病を付き合うことが大切です。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴2006年3月 北里大学医学部卒業
2008年4月 北里大学内分泌代謝内科学入局
(平塚共済病院、川崎市立井田病院などへ出向)
2011年4月 北里大学病院 内分泌代謝内科 助教
2014年4月 北里大学医学部 内分泌代謝内科学 助教
2016年4月 山岸クリニック相模大野 開院
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