気胸の症状を詳しく解説。どんな痛み?咳は?女性は子宮内膜症が原因
『気胸』は、肺の膜が破れることによって肺がしぼんでしまう病気です。
初めのうちはただの息切れと思いすごしてしまうことも多いため気づかない人もいます。
10代後半から30代のやせ型で胸の薄い男性に多いのが特徴で、女性の場合は月経時に気胸の症状が出ることもあります。
この記事では、気胸の症状や原因について解説しています。
気胸ってどんな病気?
1.気胸とは?
気胸とは、肺をおおう胸膜が破れて肺がしぼんでしまう病気で、呼吸困難や胸の痛みなどさまざまな症状が見られる病気です。
胸膜が破れると、肺から空気が漏れて血液に行き届くはずの空気(酸素)が胸腔にたまって肺を圧迫するため、呼吸がしづらくなります。
2. 気胸が起こるメカニズム
何らかの原因で胸膜が破れ、空気が胸膜の隙間である胸腔に入り込むと胸腔内の圧力が高くなります。その結果、肺の圧力が下がって肺がしぼみ胸痛や息切れなどが起こります。
3.気胸にはさまざまな種類があります
気胸にはいくつか種類がありますが、自然に破れて起こる『自然気胸』が最も多いとされています。
そのほか、交通事故や転落などによって胸部の外傷が原因で起こる『外傷性気胸』、医療行為によって起こる『医原性気胸』があります。
気胸の症状って?
1.肺に穴が空くと、突然症状があらわれる
胸膜が薄くなっていき、あるとき突然肺に穴が空いて空気が漏れてしまいます。
そのため、今までふつうに生活していたのに、急に症状があらわれることが多いでしょう。
2.気胸のおもな症状を詳しく解説
以下の症状がある場合は、念のため病院を受診したほうがよいでしょう。
- 息切れ…軽く走ったような息切れ
- 胸の痛み…特に何もしていないのに、急に胸が痛くなり、深呼吸をすると痛む
- 呼吸しづらい…特に何もしていなくても呼吸しづらさを覚える
- 咳…風邪を引いているわけでも、何かを詰まらせたわけでもないのに咳が出る
- 脈が速いと感じる…特には運動したり緊張しているわけでもないのに脈が速くなる
- 動悸がする…急に起きる
- 肩や鎖骨あたりの違和感
3.重い症状が出たらすぐに病院へ
チアノーゼ(酸欠で皮膚などが青黒くなること)や心臓を圧迫した際のショックなど、重い症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。
4.レントゲン検査で初めて気胸に気づくことも
肺に穴が空いていても気づいていないことも!
肺に開いた穴が自然にふさがり、漏れ出た空気がそのまま血液中に吸収されている場合は、気づかずに生活していることもあるでしょう。
「気胸」だと気づいたら、早期治療が大切
レントゲン検査をおこなった際に発見されて気づくこともあるでしょう。
放っておくと再発や悪化の可能性もあります。気胸だと診断された時点で、通院して治療をおこなっておくことが大切です。
気胸の原因を、種類に分けて解説!
1. 自然気胸
気胸は若くてやせている男性に起こりやすい?
最も多いのが、明確な原因がないまま突然発症するタイプで、『特発性自然気胸』です。
若い男性で長身、やせている人に起こりやすいといわれていますが、明確な理由はまだ解明されていません。
気胸の範囲によって重症度が決まります
気胸の範囲がどこまでおよんでいるかで重症度が決まります。
軽症の場合は自然に治る場合もあるでしょう。中等度気胸からは入院が必要になります。
- 軽度気胸:胸部レントゲン検査で気胸を起こしており、肺尖(はいせん)という肺の頂上部分が鎖骨より上にある。
- 中等度気胸:胸部レントゲン検査で気胸を起こしており、肺尖が鎖骨より下にある。
- 高度気胸:胸部レントゲン検査で気胸を起こしており、肺の虚脱(衰弱)が著しい。
肺の病気によって気胸を引き起こすことも
『続発性自然気胸』といって、「肺がん」や「肺気腫」など、肺に関連する病気によって気胸を引き起こすこともあります。
高齢男性に多い傾向があり、原因のひとつとして喫煙があげられます。
2.外傷性気胸
交通事故や転落、打撲などによって気胸を発症する気胸を『外傷性気胸』といいます。
肋骨が折れて肺に刺さるなどして、肺に穴があくことが原因です。
3.医原性気胸
病院における検査や治療で、肺に針が刺ささってしまったり、肺が損傷を受けたりすることが原因で発症する気胸を『医原性気胸』といいます。
4.月経随伴性気胸
女性がかかる月経随伴性気胸とは?
「子宮内膜症」が原因となって起こる気胸を『月経随伴性気胸』といいます。
子宮内膜症のある女性は気胸になるリスクが高く、とくに20代~30代後半の女性に多く発症します。
月経随伴性気胸は月経にともなって発症します
発症の理由はいくつかありますが、子宮内膜がはがれるときに肺に穴が空いてしまう のではないかと考えられています。子宮内膜がはがれるとき、とは「月経」のことです。
そのため、女性が気胸を発症した場合は、月経との関連を考えるのが自然です。
症状は、9割が肺の右側にあらわれ、左側にあらわれるのは1%以下だとされています。
『月経随伴性気胸』の治療について
『月経随伴性気胸』の治療は、「胸腔鏡手術」と婦人科での「ホルモン療法」の2種類があります。
●胸腔鏡手術
中程度気胸からは、手術が必要になります。
入院期間は1週間以上です。費用は入院した医療機関や治療方法によっても大きく異なりますが、保険が適用される前で30~150万円ほどです。
●ホルモン療法
ホルモン療法は、薬によって月経を止め、女性ホルモンによる影響を一時的に停止します。その間に子宮内膜組織を萎縮させていく治療です。
薬による副作用や投薬終了後に再発する可能性があります。厚生労働省では、薬による副作用があるため、連続使用は半年までと定められています。
5.ストレスが原因となる気胸もある?
これらとは別に、ストレスによる免疫力の低下 が原因で起こる場合もあります。
肺の表面で炎症が起こって、肺が部分的に膨らむと、『ブラ』とよばれる袋が破れて気胸を発症します。ブラは何らかの原因で出来たり、原因がなく突然出来たりする袋のことです。
気胸が疑われる場合の対処法
1.何科にかかる?
息切れや胸痛があり、気胸が疑われる場合は、内科か呼吸器内科、もしくは呼吸器外科を受診して検査をしてもらいましょう。
かかりつけ医院で紹介状をもらって専門医に診てもらうのもよいでしょう。
2.検査法について
気胸の検査は、以下のようなものになります。
胸部レントゲン検査
最も多くおこなわれているのが胸部レントゲン検査です。
肺の状態が分かりやすく、気胸の診断に適しています。
臓器や骨などの状態も映し出され、肺に影があるかどうかまで確認できます。そのため、気胸と似た症状のある、「風邪」や「気管支炎」、「助間神経痛」といった病気との区別がしやすいとされています。
胸部CT検査
肺がしぼんだままだと分かりにくい部分までを確認することができる検査です。
体の内部を輪切りにした断続撮影をおこなうため、幹部をよりくわしく確認できます。
3.治療について
軽度の気胸の場合
症状が軽度の場合は、注射針やチューブなどで肺から漏れ出た空気を逃がします。
また、軽度であれば薬等を使わずに、穴がふさがるまで経過観察をすることもあります。
重度の場合は、手術をおこなうことも
重度な場合や対処療法でもよくならない場合は、外科手術を行う場合があります。
手術をおこなった場合、1~2週間程度の入院が必要です。
手術は穴をふさぐ手術や気胸となった部位を切除する手術、肺をコーティングして強化する手術、再発防止を目的としておこなう手術など、さまざまな方法があります。
まとめ
気胸とは、突然肺に穴が空き、空気が漏れることで胸の痛みや息切れをともなう病気です。
一度発症すると再発することがあるため、気胸の症状があれば、早めに医師の診察を受け適切な治療をおこなうことが大切です。
とくに、気圧の変化や、呼吸器に負荷がかかるような活動には注意が必要です。
飛行機、登山、スキューバダイビング、息を使う楽器の演奏の際は気をつけましょう。
執筆・監修ドクター
経歴1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年-2012年3月 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年4月 岡村医院、医師として勤務
2012年7月 岡村クリニック開院
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