命に危険が及ぶ「急性心膜炎」とは?ひきおこす原因や治療について

『急性心膜炎』は、命にかかわることもある、危険な病気です。
この記事では、急性心膜炎とはどんな病気か、急性心膜炎を引き起こす原因や治療法について解説します。
急性心膜炎について
1.急性心膜炎とは

急性心膜炎は、心臓をおおう『心膜(しんまく)』という組織に急性に炎症が起る症状のことです。
この炎症で『滲出液(しんしゅつえき)』が出るものを『滲出性』、ともなわないものを『非滲出性』と分類しています。
2.急性心膜炎の症状
胸の痛みや風邪などの症状が重くなっていくことも
おもに『胸の痛み』や『風邪』のような症状が続きます。『発熱』や『呼吸困難』を併発したり、『血圧低下』や『意識障害』など、急速に症状が悪化したりすることもあります。また、風邪の症状が先行することもあります。
「心膜」の炎症や出血により、心臓が圧迫される
心臓をつつむ『心膜』に、炎症または出血がおこり滲出液や血液で心臓が圧迫される状態を『心タンポナーデ』といいます。心タンポナーデになると、心臓の伸縮運動が阻害されてしまいます。
急性心膜炎の種類と原因について
1.特発性心膜炎(原因がわからないもの)

急性心膜炎は、原因のわからない「特発性」が大半
急性心膜炎は、原因がわからないものが大半を占めます。それを『特発性心膜炎』と呼びます。ただ、その多くはウイルスによるものだと考えられています。
経過は良好だが、病気をくり返すことも
特発性心膜炎の経過は一般的に良好です。しかし、20%前後の方が数ヶ月〜数年にわたって、病気を繰り返します。これを『再発性心膜炎』と呼びます。
2.感染性心膜炎(ウイルス、結核、細菌)

原因が明らかなものの中で大半を占めるのが、『感染性心膜炎』です。
ウイルス性で最も多いのは、コクサッキーB群ウイルス
ウイルス性のものは、『コクサッキーB群ウイルス』、『エコーウイルス』、『インフルエンザウイルス』、『HIVウイルス』などが原因です。なかでも、コクサッキーB群ウイルスが最も多く、同時に『心筋炎(しんきんえん)』を合併することもあります。
細菌性は、レンサ球菌やブドウ球菌など
細菌性は、『レンサ球菌』、『ブドウ球菌』、『グラム陰性桿菌(かんきん)』などが原因です。そのほか真菌や寄生虫感染などが原因となることもあります。
3.膠原病にともなう心膜炎
膠原病の症状が心臓にも及び、心膜炎に
『膠原病』は、体のいたるところに炎症・変性を引き起こす『自己免疫疾患』です。膠原病は心臓にも症状が出現するため、心膜に炎症・変性が生じることで心膜炎になります。
特に頻度が高いのは、若い女性に多い『全身性エリテマトーデス』の合併症としての心膜炎です。
4.悪性腫瘍(がん)が原因となる心膜炎
がんが心膜に転移し、心嚢液貯留を起こすことが原因に
悪性腫瘍が心膜へ転移し、そこから『滲出液』や『心嚢液(しんのうえき)』が大量に発生すると『心嚢液貯留』が生じます。その心嚢液貯留が心膜炎を引き起こすことがあります。心嚢液の中にがん細胞がある場合は、予後不良になります。
肺がん、乳がん、卵巣がん、白血病、AIDS患者は、『カポジ肉腫』などから心膜炎を引き起こしやすくなります。
5.甲状腺機能低下症・亢進症による心膜炎

心筋細胞は甲状腺ホルモンの影響を受けやすい!
心筋細胞は、他の臓器よりも、甲状腺ホルモンの影響を受けやすいです。
甲状腺機能低下症の3~5割の方に心嚢液貯留が生じる
そのため、甲状腺ホルモンに異常が生じる『甲状腺機能低下症・亢進症』にかかると、心臓にさまざまな症状があらわれることがあります。特に、甲状腺機能低下症の場合は、3~5割の方に、先に解説した『心嚢水貯留』が認められます。
6.尿毒性心膜炎
尿毒症から心膜炎を発症する
『尿毒症』は、末期腎不全の状態になる病気です。
尿毒性心膜炎は、『心膜液貯留』、『心膜肥厚』、『癒着』などを引き起こします。これらの症状から炎症が起こり、心膜に新しく脆弱な血管が生じます。それが破裂することで、血性の心膜液があらわれます。尿毒性心膜炎は、尿毒素の関連が示唆されていますが、原因は不明です。
7.心筋梗塞後に生じる心膜炎
急性心筋梗塞の後に、心膜炎になることも
急性心膜炎の原因のうち、数%は『急性心筋梗塞』によるものです。
心臓手術の後に起こる「心膜切開後症候群」
『心筋梗塞』や『弁膜症』などにより心臓手術をおこなうと、手術後数か月経ってから、1~50%のかたに心膜炎が起こる可能性があります。これを『心膜切開後症候群』と呼びます。
8.心不全(心筋梗塞に続発して発症)
心筋梗塞ののち、心不全にかかり、心膜炎が生じる
先に解説した、心筋梗塞ののちに、『ドレスラー症候群』などにかかることで、心嚢水貯留が進み、心膜炎が起こることがあります。
そのほか、静脈のうっ滞症状や、頸静脈の拡大、肝腫大、下肢のむくみ、腹水、胸水などがみられます。
9.外傷性心膜炎(交通事故やケガによる心膜炎)

外からの強い刺激による心膜炎
『外傷性心膜炎』は、交通事故や胸に強い衝撃を受けたときなど、外からの強い刺激によって発症します。手術が必要になることもあります。
10.解離性大動脈瘤の心嚢内破裂による心膜炎
心嚢の中の大動脈が破裂する
心膜で覆われている『心嚢』のなかの大動脈の血管が破れて破裂が起こることがあります。
急激に症状が進行するため注意が必要!
その場合、心膜腔内に大量に出血するため、急激に症状が進行します。
11.その他の心膜炎
薬や、がんの放射線治療も原因に
薬や、がんの放射線治療などによっても、心膜炎が起こることがあります。
心膜炎を引き起こす可能性のある薬剤は、『抗凝固薬』や『ヒドララジン』、『イソニアジド』、『メチセルジド』、『ペニシリン』、『プロカインアミド』などです。
そのほか炎症性腸疾患などから心膜炎がおこることも
そのほか、『炎症性腸疾患』や『アミロイドーシス』、『サルコイドーシス』などの病気によって、心膜炎が起こることもあります。
急性心膜炎の検査について
1.まず、病歴の確認や胸部の聴診をおこなう

急性心膜炎の検査では、まず病歴の確認をおこないます。病歴は、がんや結核について確認します。
つづいて、胸部を聴診して、心膜炎に特有の『心膜摩擦音』を聴き取ります。
2.心電図検査

心膜炎の場合、(aVRを除く)全誘導でST波形の上昇所見が認められます。また、心嚢液の貯留が進むと、程度によって、波形全体が小さくなることがあります。
3.心臓超音波検査
心臓超音波検査はリアルタイムの心臓の動きを確認する、心嚢水の貯留の程度を確認するのに有用な検査です。
しかし一部の急性心膜炎には心嚢水が少量もしくはほとんど認められないこともあります。そのため、心臓超音波検査だけで診断することはできません。
4.心嚢穿刺(せんし)
心嚢穿刺(せんし)は、心臓周辺の心嚢水を直接吸引して、その状態(滲出性、血液など)やがん細胞の有無について確認する検査です。
5.採血検査
風邪のような症状が続く場合は、血液検査をおこなうこともあります。血液検査では、炎症反応を確認したり、ウイルスを特定したりします。
急性心膜炎の治療法について

1.炎症に対する対症療法
痛みや炎症に対しては、『非ステロイド性抗炎症薬』や、白血球のはたらきを抑える『コルヒチン』、『コルちこステロイド』を用いることもあります。
また、内科的治療が困難な場合は、心膜切除術の手術を実施することもあります。
2.原因疾患に対する治療
急性心膜炎の原因となる病気がある場合は、まずその病気の治療をおこないます。
3.心タンポナーデをともなう場合の治療
心タンポナーデをともなう場合、『心嚢穿刺・心嚢ドレナージ』という処置がおこなわれます。
『心嚢穿刺・心嚢ドレナージ』は、穿刺針や細い管を挿入して、貯留した液体を排出する治療法です。
心タンポナーデをともなう場合は、急速に症状が進行しているため、命にかかわることもあります。心膜炎の原因が『心筋梗塞』や『解離性大動脈瘤の心嚢内破裂』、『ケガや事故などの外傷』の場合は、緊急手術が必要なこともあります。
まとめ
急性心膜炎は、発症すると急激に進行し、命にかかわる状態にもなります。
病状の判断を迅速にするべき病気のひとつです。家族に明日起きないとも限りません。気になる症状があれば、すぐに医師へ相談しましょう。
執筆・監修ドクター
経歴1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年-2012年3月 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年4月 岡村医院、医師として勤務
2012年7月 岡村クリニック開院
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