エイズとHIV、梅毒との関係は?献血が検査代わりになるという誤解
今年、ヒットした映画のひとつに「ボヘミアン・ラプソディ」があります。
この映画の主人公でイギリスのバンドQUEENのボーカルでもあったフレディ・マーキュリーは、エイズによる肺炎合併症のためこの世を去りました。
彼らが活躍した1980年代当時には、エイズは「死の病」と恐れられていました。それから20~30年ほどが経過した今、「エイズ」という病はどのような状況なのでしょうか?
医療法人 小田原博信会の理事長であり、久野銀座クリニックの院長・岡村信良先生に、エイズに関していろいろお話を伺いました。
エイズとHIVの関係は?
エイズと並んでよく耳にするHIVですが、これらはどのような関係にあるのかについて、岡村先生はこう答えています。
「人の免疫力は、身体をウイルスや細菌から守る細胞に支えられています。HIV※はこれらの免疫に関わる細胞に感染するウイルスです。
HIV感染により免疫に必要な細胞が身体から減って、さまざまな病気を発症します。この病気の状態をエイズ※と言います」(岡村先生)
※HIV…ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)
※エイズ…後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome)
エイズの今―治療について
1980年代にエイズは「死の病」として恐れられていましたが、現在はどうなのでしょうか?
現在の治療の状況をお聞きしました。
「HIVウイルスを除去する治療法は現在ありません。しかし、抗HIV薬によりウイルスの増殖を抑え、エイズの発症を妨げるようになりました。
その結果、通院・投薬治療によって通常の生活を送れるようになり、寿命も感染していない人と変わりません」(岡村先生)
現在ではHIVウイルスに感染したとしても、エイズ発症を薬で防げるようになり、治療を続けることで長生きすることも可能になりました。
ただ、そのためには、HIVウイルス感染の早期発見が鍵となりそうです。
検査と治療について
感染の早期発見のためにも、感染の可能性がある場合には一刻も早く検査を受けるべきだと思われます。検査の目安について、岡村先生はこう答えてくれました。
「HIV感染は検査で分かります。しかし、検査時期が早すぎると、正確な結果が出ない場合があります。感染経路は輸血や注射器具の共有などによる血液感染、母子感染、性行為です。何らかの可能性が考えられる時期から3ヶ月以上経ってから検査を受けるようにしましょう」
また、検査内容や受けられる場所、費用については「保健所なら無料のうえ、匿名で受けることができます。医療機関で受ける場合には有料になります」
献血を検査代わりにしてはいけない
「献血をすることで、HIV検査が受けられると間違った情報が度々流れます。
献血を検査代わりに利用して、感染初期の血液が検査をすり抜け献血に使用されればHIV感染の原因となります。ですから、献血を検査代わりに行うことは絶対にしてはいけません。
正確な結果を得るためにも、保健所や医療機関の指示のもと検査を受けてください」(岡村先生)
実際に輸血によるHIV感染の報告もあります。検査目的での献血はとても迷惑で、危険な行為なのです。
【参考資料】輸血によるHIV感染事例を受けて~秘本赤十字社からのお願い
http://www.jrc.or.jp/activity/blood/news/131213_001189.html
もしも検査結果でHIVに感染していることが分かったら、内科か感染症内科を受診することになります。
梅毒によるHIV感染リスク
現在、梅毒が20代~40代を中心に大流行しています。梅毒になるとHIVにも感染しやすくなるそうですが、なぜでしょうか。
また、梅毒の治療法についてもお聞きしました。
「梅毒にかかっていると粘膜組織が弱ることで、HIV感染率が高まります。梅毒は薬を飲まなければ治せない病気です。
男性なら泌尿器科、女性なら婦人科で検査や治療を受けましょう。また、検査は保健所でも受けられます」(岡村先生)
2017年に報告された国内でのHIV感染者及びエイズ患者数は413件です。また、2016年も400件近くの報告があったことを考えると、この病は「昔流行った病」「遠い国での出来事」では済まされないのではないでしょうか?
HIV感染は、現在流行中の梅毒とも密接な関係があるようです。そのことを踏まえて今一度、この病についての正しい知識や注意が必要なようです。
【参考資料】平成29年エイズ発生動向年報 厚生労働省エイズ動向委員会
http://api-net.jfap.or.jp/status/2017/17nenpo/hyo_01.pdf
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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