若い女性に増えている!性感染症の種類や対策、予防法を医師が解説
『性感染症(STD)』は、近年10代~20代の女性を中心に、増加し続けています。
症状が出ない病気も多く、本人が感染に気づかないケースもあります。しかし、性感染症に感染したまま放っておくと、不妊や子宮頸がん、陰茎がんの原因になることもあります。
この記事では、増え続ける性感染症の種類や、予防する方法について解説します。
増え続ける性感染症
『性感染症(STD=sexually transmitted diseases)』は、かつてそれほど患者数は多くありありませんでした。しかし、セックスに対する意識の変化にともない、近年では性感染症にかかる人が増えています。
というのも、以前は感染の多かった『梅毒』などの病気が、抗生物質を投与することで減りつつあり、性感染症に対しての「恐れ」が薄くなっているのです。その結果、セックスに対して無防備な人が増え、性感染症が蔓延しています。
性感染症の種類について
性感染症の種類は、『性器クラミジア』、『性器ヘルペス』、『尖圭(せんけい)コンジローム』、『淋菌感染症』、『毛じらみ・疥癬(かいせん)』、『HIV感染症(エイズ)』などがあります。
また、『B型肝炎』や『C型肝炎』も性感染症に含まれます。
1.性器クラミジア
『性器クラミジア』は性感染症のなかでも、特に多い病気です。日本での患者数は、100万人近くだともいわれています。
男性が感染した場合の症状とリスク
男性が性器クラミジアに感染した場合の症状は、尿道に軽い炎症が起きて、排尿時の痛みを感じる、分泌物が出るなどです。ほとんど自覚症状がないこともあります。
しかし、軽い症状だからといって放置しておくと、『副睾丸炎』や慢性の『前立腺炎』などの病気にかかることがあります。
女性が感染した場合の症状とリスク
女性が性器クラミジアに感染した場合は、症状が出ないか、少量のおりものや不正出血、下腹部痛を覚えるなど、ごく軽い症状です。
しかし、感染に気づかず放っておくと、パートナーへの感染や、『卵管』や『骨盤内』に感染が広がる可能性があります。卵管や骨盤内に感染が広がると、『不妊症』や『子宮外妊娠』、『流産』、『早産』を引き起こすことがあります。
また、無事に出産を終えても、『産褥熱』が出る、母子感染で赤ちゃんが『眼瞼結膜炎』や『中耳炎』にかかる、重い『新生児肺炎』にかかるというリスクもあります。
2.性器ヘルペス
『性器ヘルペス』は、性器クラミジアの次に多い性感染症です。
性器ヘルペスの症状は、性器にできる水ぶくれや腫瘍です。急性型の場合は、加えて高熱と激しい痛みも伴います。
3.尖圭(せんけい)コンジローマ
『尖圭コンジローマ』は、『ヒトパピローマウイルス』に感染することが原因の性感染症です。
感染すると、性器や肛門付近に、白またはピンクの『小さなイボ』ができます。かゆみはほとんどありません。ヒトパピローマウイルスのタイプによって、女性は『子宮頚がん』、男性は『陰茎がん』の原因になることもあります。
4.淋菌感染症
『淋菌感染症』に男性がかかると、尿道から濃い膿が出ます。さらに、排尿時には激しい痛みも感じます。
女性がかかると、膿のようなおりものが出ます。また人によっては、ほとんど症状が無いこともあります。
オーラルセックスにより、咽頭への感染も増えています。咽頭に感染すると、『喉の腫れ・痛み』、『発熱』、『たんが絡みやすくなる』などの症状があらわれます。
5.毛じらみ・疥癬(かいせん)
『毛じらみ』は、吸血虫の一種です。陰毛などの体毛にくっつき、血を吸ったり、卵を産み付けたりします。激しいかゆみが症状としてあらわれます。
『疥癬(かいせん)』の原因は、『ヒゼンダニ』というダニです。感染すると、性器のみならず、全身に激しいかゆみを生じます。
6.AIDS
『AIDS』は、『HIV(ヒト免疫不全ウイルス)』に感染することが原因です。HIVに感染してから、AIDSを発病するまでの潜伏期間は、約10年間と長いです。
AIDSを発病すると、『カポジ肉腫』という腫瘍が出来たり、『カリニ肺炎』にかかったりして、だんだんと全身が衰弱していきます。
以前は亡くなる人も多いAIDSでしたが、治療薬が開発されたことで、亡くなる人の数は減っています。一方で、日本ではAIDSに対する予防意識が欧米に比べて低く、感染者は年々増加しています。
性感染症から身を守るために
1.セックスのさい、必ずコンドームをつける
感染に気づいていないことも…予防が何より大切!
性感染症は、自覚症状の少ないケースが多く、本人も感染に気がついていないことが多々あります。
そのため、きちんと予防することが何より大切です。セックスするときは、必ずコンドームをつけてください。避妊効果のある『殺精子剤』や、『ペッサリー』、『ピル』、『IUD』を使用しても、性感染症を予防することはできません。
挿入時につければいい、は間違い
コンドームは「挿入するときにつければいい」と思っている人は要注意です。挿入する前から、少しずつ精液がもれていることが多々あります。最初からきちんとコンドームをつけましょう。
また、オーラルセックスから感染することも多いです。その場合も、コンドームをつけてください。
2.身を守るため、勇気を出して検査を
いつもと違う症状があれば、早めに病院へ
「おりものがいつもと違う」、「性器がかゆい」といった症状があっても、恥ずかしくなかなか病院に行かない人も多いようです。
しかし、もし性感染症にかかっていたら、放っておくことで不妊症になったり、パートナーをも感染させてしまったりする可能性があります。早めに病院へ行きましょう。
性感染症の検査について
性感染症の検査は、ごく簡単にできます。病院で受ける検査や治療には、通常健康保険が適用され、患者のプライバシーにも配慮してくれます。
また、特に症状がない場合も、性生活があるようであれば、1年に1回以上は検査を受けることをおすすめします。
3.自宅で検査できるキットも
「なかなか病院へ行きづらい…」という人は、まず自宅でできる検査キットを使って、チェックしてみるのもひとつの方法です。
宅急便で送り、結果をメールで知らせてくれるサービスもあります。
4.検査や治療はパートナーと一緒にうける
パートナーにも検査や治療をうけてもらうことが大切です。自分だけ治療しても、パートナーに感染していれば、繰り返し感染してしまいます。
検査をして性感染症に感染していたら、『薬物療法』をおこないます。薬物療法では、塗り薬や飲み薬が処方されます。
また、性感染症は再発しやすいです。医師から処方された薬は、途中で飲むのを止めたりせず、しっかり服用してください。
執筆・監修ドクター
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