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とうにょうびょう糖尿病

更新日:2022/08/16 公開日:2019/02/08 view数:14,873

糖尿病とは?

「糖尿病」はインスリンがうまく分泌できずに高血糖になり、さまざまな合併症を引きおこす状態です。多くの糖尿病患者さんが慢性合併症にかかっていますが、糖尿病の慢性合併症は長期間にわたり高血糖状態が続くことによりひきおこされます。

一方、糖尿病の病状は人によって千差万別です。そのため、合併症の状態や血糖値の管理状態などはさまざまです。糖尿病を疑われたら、まずは自分自身の状態を確認することが重要です。必ず医療機関を受診し、まずは現在の状態の評価を受けます。

糖尿病性網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」が糖尿病3大合併症とされています。またインスリンが分泌されないことで糖分を分解できずに脂肪分を分解し始めると血液が酸性化して、危険な状態になる糖尿病ケトアシドーシスなどの症状がおこることもあります。

糖尿病には種類があります。
インスリンをつくるのは膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞が死滅してしまい、インスリンを分泌できなくなる「1型糖尿病」と世間一般で糖尿病と言った場合にイメージされる2型糖尿病にわけられます。遺伝的に「2型糖尿病になりやすい人」はいますが、生活習慣も大きく関連しています。糖尿病全体の95%以上が2型糖尿病だと推定されています。
1型糖尿病は本人の免疫細胞が自分の膵臓を攻撃する自己免疫性疾患の一種と考えられており、生活習慣は関係がありません。糖尿病全体から見れば、ごく少数です。

糖尿病の恐れがある場合、「糖尿病内科」「内分泌内科」などの診療科目を受診するのが望ましいでしょう。

日本糖尿病学会が診断基準を示していますので、多くは、その基準にそって診断がおこなわれることになります。





目次
  1. 糖尿病の症状
  2. 糖尿病の診療科目・検査方法
  3. 糖尿病の原因
  4. 糖尿病の予防・治療方法・治療期間
  5. 糖尿病の治療経過(合併症・後遺症)
  6. 糖尿病になりやすい年齢や性別

糖尿病の症状

初期の段階の多くは無症状です。
重度の2型糖尿病1型糖尿病では自覚症状があることもあり、疲労しやすい、体がだるい、異常にのどが渇く、頻尿などの症状がおこります。
慢性合併症として様々な臓器障害がおこり、それぞれの臓器の症状があらわれます。

血糖値のコントロール

人間の血糖値は、100mg/dL未満が正常値で、110mg/dL未満が正常ですが、やや高いので注意を要する数値です。空腹時はで60~110mg/dLが正常範囲となっています。
体内では血糖値を調整するためのホルモンが働いており、健康ならこの正常範囲に収まっています。
血糖値を調整するホルモンには、次のような種類があります。

血糖値を上げるホルモン
・アドレナリン
・グルカゴン
・コルチゾール
・成長ホルモン

・血糖を下げるホルモン

・インスリン

これらのホルモンによる調整がうまく機能しなくなり、血糖値が高いままになった状態が「糖尿病」と呼ばれるものです。

血糖値とは、血液に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度です。空腹時に下がり、食後に上がるなど、常に一定というわけではありません。

ブドウ糖は、身体を機能させるための重要なエネルギー源となります。
しかし、同時に高い濃度になると、血管の壁がグリケーション(糖化)をおこします。
グリケーションは「タンパク質と糖が結合すること」で、毛細血管がグリケーションをおこすと血管障害に至ります。

糖尿病の問題点は、「グリケーションにより、全身の毛細血管が破壊されること」にあります。

インスリンは「血糖値を下げるための唯一のホルモン」です。
膵臓(すいぞう)の「ランゲルハンス島」と呼ばれる場所で産生されています。

「血糖値を上げるホルモン」がいくつもあるのに対して、「血糖値を下げるホルモン」はインスリン1種類のみです。
歴史のなかで、動物は飢えと戦ってきたので「食べていなくても血糖値を上げるシステム」は重要でした。一方で「食べ過ぎたときに血糖値を下げるシステム」はあまり活躍する機会がありませんでした。

こうした進化の過程で、血糖値を下げるホルモンは、1種類しか備わっていません。その結果、飽食の時代を迎えた今、「高血糖」が問題化しています。

血糖値を上げる方法はいくつかありますが、血糖値を下げるためにはインスリンが不可欠です。
インスリンが機能しなくなったら、高すぎる血糖値を下げる手段はありません。このような状態に陥ると発症する病気が、糖尿病です。

初期症状

糖尿病は、きわめて自覚症状があらわれにくい病気です。
「尿が泡立つ」「喉が渇きやすい」「疲労感」などの目立たない症状が多く、それが治療開始を遅らせる原因になっています
実際、厚生労働省が2017年に実施した受療行動調査によると、糖尿病の診断を受ける患者さんの45.1%は「自覚症状がなかった」と回答しています。健康診断や人間ドックなどで受診を勧められただけで本人に自覚症状はありませんでした。

ただ、初期症状や自覚症状がまったくないわけではありません。ちょっとした自覚症状を見逃さなければ、早期に医療機関を受診して治療を開始することも可能です。
糖尿病の主な初期症状や自覚症状は下記の通りです。もし、「食生活の乱れ」「運動不足」などの自覚があり、下記の症状に心当たりがあるようなら、早めに医療機関を受診することが推奨されます。

1.喉の渇き / 多飲
血糖値が高くなると、脳は「脱水症状になっている」と誤認します。そのため、喉が渇いたように感じ、水分が欲しくなります。

2.多尿 / 頻尿
糖尿病になっていると、血液中のブドウ糖を尿と一緒に排出するために、尿の回数や量が増えます。多尿で体内の水分が失われることも、喉が渇く原因になります。

3.体重減少
インスリンには、血糖値を下げると同時に「血液中のブドウ糖を細胞に送りこむ働き」があります。細胞に取りこまれたブドウ糖は、エネルギー源となります。しかし、糖尿病の患者さんはインスリンがうまく機能していないので、ブドウ糖をエネルギー減として活用できません。

その結果、脂肪・筋肉などが分解されます。糖尿病になりやすい肥満体型の人が急に痩せてきたなら、糖尿病を疑う必要があります。

4.疲労感 / 倦怠感
糖尿病になると、ブドウ糖をエネルギー減として有効活用できなくなります。糖尿病の人は常にエネルギー不足に陥った状態です。そのため、いつも身体がだるかったり、疲れやすかったりします。

5.尿が泡立つ
健康な人でも泡立つことがありますが、多くの場合は「大きな泡が立ち、しばらくすると消える」という外見的特徴を持ちます。糖尿病の場合は、ビールの泡のようなきめ細かい泡が立ち、時間が経っても残る傾向にあります。

腎臓には「尿を濾過して、水分だけを排出する働き」がありますが、腎機能が低下していると、うまく濾過できず、尿にタンパクが混ざります。タンパクを含んだ尿は、泡立ちやすいという特徴があります。これらは「糖尿病性腎症」による症状です。

6.視界がかすむ
血液中のブドウ糖濃度が高すぎると、血管が傷つき、塞がります。目の血管が詰まった場合、網膜に酸素が届きにくくなり、視界がかすむなどの問題がおこります。これは「糖尿病性網膜症」の症状です。

7.手足のしびれ
手足の末端に「ビリビリ」「ジンジン」など、しびれる感覚が出てくることがあります。そのほか「電気が走るような感覚」「針で刺すような感覚」など、人によって表現に幅があります。「糖尿病性神経障害」の症状です。糖尿病性神経障害による末端のしびれは、手よりも足の症状が目立つ傾向にあります。

8.手足の冷え
高血糖の状態が続くと、血管がダメージを受けて動脈硬化が進みます。動脈硬化をおこした血管は詰まりやすくなり、血流が悪くなります。その結果、末端に向かう血流が低下し、手足が冷えることになります。

3大合併症

代表的な3大合併症ではそれぞれ以下のような症状がおこります。

1.糖尿病神経障害

・手足の感覚が鈍くなる
・手足の先端がしびれる

高血糖の状態が続くと神経障害がおこり、「手足の末端がしびれる」などの症状があらわれます。高血糖が神経障害につながるメカニズムは明確になっていませんが、たとえば、次のような説が有力とされています。

高血糖に陥ると、体内にあるアルドース還元酵素が「ソルビトール」と呼ばれる物質を作り出すと言われています。神経細胞にソルビトールが溜まると、機能低下を起こして神経障害に至るのではないかと考えられています。

ソルビトールの産生を防いで神経傷害を改善するための薬として、アルドース還元酵素阻害薬―エパルレスタットが販売されています。

そのほか、毛細血管がダメージを受けて末端の血流が悪化し、神経細胞に酸素・栄養分が行き渡らなくなるという説もあります。手足の末端からマヒやしびれがはじまります。「素足でも、靴下を履いているような気がする」といった感覚鈍麻(どんま)を訴える人もいれば、ジンジン、ビリビリとした「しびれ」を訴える人もいます。進行すると、末端の感覚がなくなり、足に切り傷などを負っても気づかない場合もあります。

痛覚がなくなると、小さな傷がきっかけで細菌感染が悪化し、身体の一部が壊死する壊疽(えそこ)をおこすこともあるので、十分な注意が必要です。壊疽がおこりやすいのは足です。入浴時に「足に外傷ができていないか」を確認する習慣をつけるようにする必要があります。

そのため糖尿病の患者さんが足に傷を負った場合は、医療機関の受診が推奨されます。

2.糖尿病性腎症

・たんぱく尿
・むくみ
・息切れ

腎臓は「血液を濾過(ろか)する役割」を果たしています。必要なものを体内に残し、不要なもの、特に不要な水分を尿として排出するためです。

腎臓で濾過装置の役割を果たしている部位を「糸球体(しきゅうたい)」と呼びます。糸球体は毛細血管の集合です。そのため、高血糖で血管が傷つくと、糸球体は十分に役割を果たせなくなります。

そのため濾過機能が低下し、「排出するはずのものが血液に残る」「必要なものが尿と一緒に排出される」などの問題がおこります。

糖尿病性腎症が進行すると、人工透析が必要になります。

人工透析は腎臓が濾過機能を果たせないので、機械の力で人工的に血液を濾過する治療です。透析は時間的・体力的負担の大きい治療です。

3.糖尿病性網膜症

・視界がかすむ
・視力低下

人間の目は、「瞳孔(どうこう)から入ってきた光が網膜で像を結ぶ構造」になっています。

網膜は、「目で見た映像を映し出すためのスクリーン」です。しかし、高血糖の状態が続くと、網膜の毛細血管が傷つけられて網膜症になります。

血管が詰まる、変形するなどの問題がおきて、網膜全体に酸素が行き渡らなくなります。酸欠に陥った網膜は新生血管という新しい細い血管を作って対処しますが、新生血管は弱く、簡単に出血します。

網膜での出血は、網膜剥離(もうまくはくり)の原因になります。糖尿病性網膜症は、視力の急激な低下のほか、失明の原因にもなる。

ほかにも急性合併症としてインスリン作用が極端に低下すると高血糖となって口渇、多尿、体重減少がおこり、更に進行するとケトアシドーシスとなり生命にかかわることがあります。


糖尿病の診療科目・検査方法

糖の異常を指摘されたらすぐに受診しましょう。診療科目は基本的には内科を受診しておけば問題ありません。ただし、医療機関によっては、「内分泌・代謝内科」「糖尿病内分泌科」「糖尿病内科」などの名称で診療を受け付けている場合もあります。糖尿病を専門的に診ている窓口があれば、そちらを受診しましょう。

検査では75g経口ブドウ糖負荷試験、血液検査で血糖値・HbA1c・インスリン値などの測定をおこないます。
合併症についてはさまざまな検査がおこなわれますが、一例として網膜症の評価のための眼底検査、腎症の評価のための血清クレアチニン・尿アルブミン、神経障害の評価のためのアキレス腱反射・振動覚検査、大血管障害の評価のためのABI測定・頸動脈エコーや血管の画像診断などがおこなわれます。

2型糖尿病の問診と検査

一般的に「糖尿病」と言えば2型糖尿病を指すため、まずは2型糖尿病の検査内容を紹介します。日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイド(2018〜2019)に「診断方法・診断基準」が記載されている内容を参考に紹介します。

1.問診

糖尿病が疑われる場合、問診で聞かれやすいのは以下のような内容です。

・遺伝的に関する質問
家族に糖尿病の病歴がある人はいるか?
家族に肥満体型の人はいるか?

・生活習慣に関する質問
ふだんの食生活はどうか?
仕事は何をしているのか?
飲酒の頻度、飲酒量はどれくらいか?
運動不足ではないか?
睡眠不足ではないか?

・糖尿病の症状に関する質問
いつも喉が渇いて、大量の水分を摂っていないか?
疲れやすい、身体がだるいと感じていないか?
急激な体重の減少はなかったか?
尿の回数が多く、トイレが近くなっていないか?

・糖尿病にかかりやすい病歴、経歴への質問
膵臓、肝臓、内分泌系の病気にかかったことはあるか?
(女性の場合)妊娠糖尿病の診断を受けたことはあるか?
(女性の場合)赤ちゃんは4,000g以上、または低体重児ではなかったか?

・糖尿病の合併症に関する質問
手足の先端がしびれていないか?
皮膚(特に指先)の感覚は正常か?
視界がかすんではいないか?
顔、手足がむくんでいる感じはしないか?

2.検査

・早朝空腹時血糖値の測定
10時間以上にわたって食事をしていない状態で、血糖値を測定します。

・75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)
検査当日の朝まで10時間以上の絶食をおこない、血糖値を測定します。その後、ブドウ糖75gを摂取し、30分後、60分後、2時間後の血糖値を測定します。

・随時血糖値の測定
時間・条件に関係なく血糖値を測定します。

・HbA1cの測定
HbA1cとは、「血液中のブドウ糖とヘモグロビンが結合したもの(グリコヘモグロビン)」を意味します。ヘモグロビンは、赤血球の中に存在するタンパク質で「酸素を運ぶ役割」を果たす物質です。血糖値が高いほどグリコヘモグロビンが増えるので、血糖値の指標として用いることができます。HbA1cは血糖値と違って、食事のたびに上下することがありません。数値が安定していることから、直近1~2か月の平均的な血糖値を知る指標として役立ちます。

診断基準

日本糖尿病学会の基準によれば、糖尿病の診断は次のようにおこなわれます。
・「型」の判定
「型」は「糖尿病型」「境界型」「正常型」の3種類に区分されます。

糖尿病型
次の4条件のうち、いずれか1つを満たすと糖尿病型と判定されます。

1.早朝空腹時血糖値が126ml/dL以上
2.75gOGTTにおける2時間後の血糖値が200ml/dL以上
3.随時血糖値が200ml/dL以上
4. HbA1cが6.5%以上

正常型
次の2条件を双方とも満たすと、正常型と判定されます。

1.早朝空腹時血糖値が110mg/dL未満
2.75gOGTTにおける2時間後の血糖値が140ml/dL未満

境界型
糖尿病型・正常型のうち、いずれの条件も満たさない場合は境界型と判定されます。

・「慢性的な高血糖の有無」を確認
「型の判定」で正常型なら、糖尿病ではありません。境界型は「糖尿病の疑い」があるので、経過観察となります。経過観察では生活習慣の改善を指導すると同時に、3~6か月以内の再検査をおこないます。

また、正常型でも「正常高値(正常範囲だが、やや高い)」を示した場合などは、境界型と同じように経過観察をしたほうが良いでしょう。

「型の判定」で糖尿病型と判定された場合は、慢性的に高血糖かどうかを確認します。判定基準は、次のようになっています。

血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型
初回検査だけで糖尿病と診断します。

血糖値は糖尿病型だが、HbA1cは糖尿病型ではない
典型的な糖尿病の症状があるかどうかを確認します。典型的な症状には「口が渇く」「水分の多量摂取」「多尿・頻尿」「体重減少」が挙げられます。

「糖尿病の典型的症状」または「糖尿病網膜症」が見られる
この時点で糖尿病と診断します。

「糖尿病の典型的症状」「糖尿病網膜症」が見られない
なるべく1か月以内の再検査をおこないましょう。再検査で「血糖値とHbA1cのいずれか1つでも糖尿病型を示した場合」は糖尿病と診断します。再検査で「いずれも糖尿病型を示さなかった場合」は、糖尿病の疑いがある段階と見なして経過観察(3~6か月以内に再検査)となります。

血糖値は糖尿病型ではないが、HbA1cは糖尿病型
なるべく1か月以内の再検査を実施します。再検査で「血糖値が糖尿病型を示した場合」は糖尿病と診断します。「HbA1cだけが糖尿病型を示した場合」と「血糖値・HbA1cのいずれも糖尿病型を示さなかった場合」は糖尿病の疑いがある段階と考えて経過観察(3~6か月以内に再検査)にとどめます。

1型糖尿病の検査内容

1型糖尿病が疑われるときは、次のような検査をおこないます。

1.尿ケトン体
1型糖尿病の患者さんは、体内でほとんどインスリンが産生されません。ブドウ糖をエネルギー源にできないので、脂肪をエネルギーに変換するときの副産物―ケトン体が増加します。

2.GAD抗体
インスリンの合成にかかわる酵素として、GAD(グルタミン脱炭酸酵素)という物質があります。自己免疫性疾患の1型糖尿病では、自分の体内にあるGADを誤って攻撃するため、GADを攻撃するための「GAD抗体」がつくられる場合があります。

3.IA-2抗体
IA-2は、膵臓内にある「膵内分泌腫瘍関連タンパクⅡ」というタンパク質です。1型糖尿病の場合、IA-2を攻撃するための「IA-2抗体」がつくられることも多くなります。

4.C-ペプチド
C-ペプチドは「プロインスリン(インスリンの前段階)」がインスリンに変わるときの副産物です。そのため、C-ペプチドの産生量は、インスリンの産生量に比例します。Cペプチドの量を測定することで、インスリン産生量を知ることが可能です。

1型糖尿病の診断基準

尿ケトン体、GAD抗体、IA-2抗体のいずれが陽性で、C-ペプチドが低下している場合、1型糖尿病が疑われます。逆に、尿ケトン体、GAD抗体、IA-2抗体のすべてが陰性で、血糖値と比較して妥当な量のC-ペプチドが維持されているようなら、2型糖尿病と判定されることになります。

糖尿病の原因

糖尿病は体内の糖代謝に異常が生じて血液中のブドウ糖の量が上昇します。
インスリンを産生する膵β細胞が破壊される1型糖尿病とその他の2型糖尿病に分類されます。
2型糖尿病は糖尿病になりやすい遺伝素因に過食・肥満・運動不足などの環境因子が加わった結果発症します。

種類ごとに原因・治療方針も異なります。

1型糖尿病

インスリンを分泌している膵臓の「ランゲルハンス島」にあるβ細胞が破壊されると、インスリンを分泌することができなくなります。1型糖尿病の多くは「免疫システムの誤作動によってβ細胞が攻撃される」というメカニズムで発症します。免疫細胞が本人の細胞を攻撃することで発症する「自己免疫性疾患(じこめんえきせいしっかん)」です。生活習慣とは関係なく、発症する人も2型と比較すると圧倒的に少ないです。

ただ、一部には自己免疫性疾患とは異なるメカニズムの1型糖尿病も存在しており、詳しい原因は未解明です。また、従来は「小児期~青年期にかけて発症することが多い」と考えられていましたが、第52回欧州糖尿病学会年次学術集会で「1型糖尿病の半分程度は30歳以降に発症している」という報告がおこなわれるなど、まだ未解明な部分が多くあります。

2型糖尿病

生活習慣病の一種として知られる糖尿病です。一般的に「糖尿病」と言った場合は、多くは2型糖尿病を指します。「膵臓のインスリン分泌能力が低下すること」と「肥満・運動不足でインスリンが作用しにくくなること」の2つが直接的な要因になります。

遺伝的に「2型糖尿病になりやすい人」はいるが、生活習慣などの環境要因が絡んでいるので、予防・改善を図ることは可能です。

遺伝子異常による糖尿病

遺伝子の機能異常が原因の糖尿病。常染色体優性遺伝(50%の確率で、親から子に病気の遺伝子が伝わる)の「若年発症成人型糖尿病」、ミトコンドリア遺伝子異常(母方だけから遺伝する)による糖尿病などが知られています。ただし、遺伝子異常による糖尿病は非常にめずらしい病気です。

続発性糖尿病

「ほかの病気が原因で生じた糖尿病」「薬剤の影響による糖尿病」をまとめて、続発性糖尿病と呼びます。たとえば、慢性膵炎(まんせいすいえん)、膵臓がん、肝硬変などが続発性糖尿病の原因になる病気です。薬剤では、ステロイド(免疫を抑制する薬)、フェニトイン(抗てんかん薬)などが、糖尿病を引き起こす例があります。

特に、ステロイドの影響による糖尿病は「ステロイド糖尿病」と呼ばれます。ステロイド糖尿病を発症するのは、全身性の自己免疫疾患など、ステロイド内服薬を長期連用したケースがほとんどです。皮膚炎に処方される軟膏などは、あまり心配する必要はありません。

妊娠糖尿病

妊娠中に血糖値の異常(高血糖)が見られる状態を「妊娠糖尿病」といいます。糖尿病の診断基準を満たしていないものだけを妊娠糖尿病と扱います。もし糖尿病の診断基準を満たしている場合は、「糖尿病にかかっている人が妊娠した」という扱いになり「糖尿病合併妊娠」と呼びます。

きちんと血糖値をコントロールすれば、産後、正常値に戻ることがほとんどです。ただし、妊娠糖尿病になった人は、将来的な2型糖尿病リスクが高いので、食事・運動などの生活習慣に注意する必要があります。

糖尿病の予防・治療方法・治療期間

食事療法・運動療法・薬物療法に分けられ、病態に応じて使い分けます。
例えば1型糖尿病ではインスリン分泌が不足または消失しているのでインスリン注射が中心となります。
過食・肥満・運動不足が中心で発症した2型糖尿病は食事・運動療法が大切となります。
現時点で配合薬を含む8種類の経口血糖降下薬があり、インスリン注射・GLP-1製剤の注射も選択可能です。

治療は生涯にわたり必要となります。
一方、早期からの治療や食事運動療法の取り組み次第では薬物治療が不要となることも多くあります。

2型糖尿病の治療

現在の医学では、糖尿病を治癒に導くことは困難です。そのため、血糖値をコントロールして、健康な人と変わらない寿命・QOL(生活の質)を維持することが目標となります。

初期の2型糖尿病であれば、生活習慣を改善することで血糖値のコントロールが可能です。具体的には、食事療法と運動療法をおこないます。早期に生活習慣を改善すれば、健康な人とほとんど変わらない生活を送ることも可能です。

1.食事療法

食事療法では、摂取カロリーを適正値にとどめて、糖尿病を含めた生活習慣病の改善を目指します。

食事療法をするにあたっては、次の計算式が重要です。

エネルギー摂取量(kcal)=標準体重×身体活動量
※標準体重=身長(m)×身長(m)×22

身体活動量は、デスクワーク主体の人で「25~30」、動き回る仕事で「30~35」、力仕事で「35~」です。

身長175cmでデスクワークをしている人なら、次のような計算式になります。
まずは、標準体重を計算します。身長をメートルに直してから計算するため、「1.75×1.75×22=67.375」となります。

ここで割り出した標準体重と、デスクワークを主体とする身体活動量(25~30)をエネルギー計算式に当てはめると次のようになります。「67.375×25=1684 kcal」

したがって、身長175cm、デスクワークをしている人の下限エネルギー摂取量の目安は、1684 kcalとなります。
上限を計算するにはさきほど掛けた25を30に置き換えます。

すると「67.375×30=2021.25kcal」になり、1684~2021kcalに摂取エネルギーを調整したほうが良いということになります。

・食事摂取のポイント
食事を摂るときのポイントは、以下の6項目です。

1.一日三食、朝・昼・晩を規則正しく食べる
2.時間をかけて、よく噛み、腹八分目にとどめる
3.バランスよく、さまざまな食品を摂る
4.野菜類・海藻類・きのこ類など、食物線維を積極的に摂る
5.脂質・塩分の摂取量を意識して減らす
6.肥満がある場合、まずは今の体重から5%減量を目指す

具体的な方法としては、「白米より玄米、精白された小麦粉より全粒粉」など全粒穀物を選ぶことなどが推奨されています。また、薄味の食事を心がけると、塩分摂取量が減るだけでなく、主食の摂取量を抑えることにつながります。

近年は、従来のカロリー制限食よりも、糖質制限食の有効性が知られ、次第に広まってきています。

2.運動療法

2型糖尿病の患者さんは、「インスリンが作用しにくい体質(インスリン抵抗性)」になっています。インスリンは、「ブドウ糖をエネルギーとして消費させる役割」を果たしています。血液中のブドウ糖・脂肪酸をエネルギー源として活用させることで、インスリン抵抗性を改善できる可能性があります。

推奨される運動量は、次のとおりです。

・有酸素運動
週に3回以上(可能なら毎日)、中等度の有酸素運動を20~60分実施しましょう。主な有酸素運動には、ジョギング、ウォーキング、水泳、サイクリングが挙げられます。呼吸しながら継続的に負荷をかける運動が推奨されます。

ちなみに、中等度の有酸素運動とは、50歳未満で「心拍数が毎分100~120拍の範囲」、50歳以上で「心拍数が毎分100拍以内」の負荷を指しています。最近は運動中、身につけておくことでリアルタイムの心拍数を計測できるグッズがあるので、うまく活用すると良いでしょう。

・レジスタンス運動
週2~3回のレジスタンス運動をあわせて実施します。レジスタンス運動は、要するに筋力トレーニングです。たとえば、腕立て伏せ、腹筋、ダンベルなどがレジスタンス運動です。筋肉量が増えて、基礎代謝(何もしなくても生きているだけで消費するエネルギー)を向上します。

・運動療法をする上での注意点
食後に血糖値が上がりやすい人は、食事の1~2時間後に運動をすると良いでしょう。「経口血糖降下薬を服用している人」「インスリン注射をしている人」は低血糖を起こしやすいので、医師と相談の上で慎重に運動を実施します。

また、糖尿病の患者さんでも「空腹時血糖値が250ml/dL以上の場合」「腎不全を起こしている場合」など、運動を制限や禁止するべき状況があり得ます。自己判断で運動するのではなく、医師と相談しながら運動の可否を決めましょう。

3.経口による薬物療法

食事療法・運動療法を2~3か月実施しても、血糖コントロールが不十分なら、薬物療法を実施します。主に3つの系統の薬剤が用いられます。全体をまとめて、経口血糖降下薬と呼びます。

・インスリン抵抗性改善系
2型糖尿病に特徴的な「インスリンが作用しにくい体質(インスリン抵抗性)」を改善するための薬です。ビグアナイド薬、チアゾリジン薬が代表例です。

・インスリン分泌促進系
インスリンの分泌を促すほか、グルカゴン(血糖値を上げる物質)の分泌を抑制する作用のある薬も含まれます。DPP-4阻害薬、スルホニル尿素薬、グリニド薬などがインスリン分泌促進系に分類されます。

・糖吸収・排泄促進系
「糖質の吸収を抑える」「血液中のブドウ糖排出を促進する」など糖代謝を調節し、血糖値が下がりやすいようコントロールする薬です。α-グルコシダーゼ阻害薬、SGLT2阻害薬などが知られています。

4.体外からインスリンを補う治療法

経口薬で十分な血糖コントロールができない場合など、医師が必要と認めたときはインスリン注射を実施します。身体の外側からインスリンを補って、血糖値のコントロールを目指す治療法です。

インスリンの補充が生存のために必要なら「絶対的適応」、より治療効果を高めるために必要なら「相対的適応」といいます。

・絶対的適応になる例
1型糖尿病
高血糖による昏睡を起こしている
糖尿病合併妊娠の妊婦
重度の腎機能障害、肝機能障害
糖尿病患者の外科手術

 

・相対的適応になる例
空腹時血糖値250ml/dL以上の著しい高血糖
随時血糖値300ml/dL以上の著しい高血糖
栄養不良で、やせ型の糖尿病患者

1型糖尿病患者ではインスリン療法が絶対的適応になります。インスリンの分泌機能に問題があるので、外部からインスリンを補給しないと生命にかかわります。

糖尿病の治療経過(合併症・後遺症)

糖尿病を完治させることは難しく、治療は長期戦になります。
1型糖尿病は治癒しない病気、2型糖尿病は症状を軽減することが可能な病気です。合併症をおこさないようにするために早期からの治療が重要です。
治療開始が遅れると血糖コントロールが困難になり、合併症が進みやすくなります。

生活習慣病の1つとされている2型糖尿病は、長期にわたる血糖値のコントロールを要します。しかし、きちんと血糖値を抑えれば、普通の人とあまり変わらない生活を送ることができます。

糖尿病はゆっくりと進行しますが、最終的には生命にかかわるリスクがあります。
「糖尿病は寿命を平均9年短縮する」という研究結果も存在しています。英国オックスフォード大学の研究チームが中国でおこなった調査では、「50歳までに糖尿病と診断された人は平均9年、余命が短い」という結果が出ています。この調査対象の母数は約51万人であり、統計としては十分な母数と考えて良いでしょう。糖尿病の疑いを指摘されたら、きちんと治療を開始し、継続することが必要です。
厚生労働省が発表している「人口動態統計の概況(2018)」によれば、日本国内で年間14,170が糖尿病で死亡しています。糖尿病は生命にかかわる病気であると強く認識する必要があります。

糖尿病を改善するためには「食生活の改善(カロリー制限など)」に加え、「適度な運動」が必要になります。つまり生活習慣を根本から変える努力をしなくてはなりません。しかし、生涯にわたる努力を続けられる人は、それほど多くありません。自己管理が不十分で糖尿病が悪化してしまう例も珍しくありません。
問題は「自覚症状が乏しく、症状が少しずつ進行する」といった糖尿病の性質です。実際、糖尿病の疑いで「要治療」と判定されても、約40%の人が治療を受けずに放置しています。もし激痛を伴う初期症状なら、誰でも安静にすることができます。
しかし、糖尿病の初期症状は目立たず、しかも、ゆっくりと進行します。そのため、患者さんが生活習慣を管理するにあたっては、強い意志で自己管理することが必要です。

糖尿病で寿命を大きく縮める人の多くは、「きちんと治療を受けない人」「自己管理をやめてしまう人」です。糖尿病が生命にかかわる病気であることを再認識し、適切な受診と治療に努める必要があります。

合併症

糖尿病の高血糖が直接、生命にかかわることはほとんどありません。将来的に、どれくらい生存できるかを意味する生命予後に影響するのは、主に糖尿病血管障害に起因する合併症です。
高血糖の状態が続くと、血管内皮(血管の内側の壁)がダメージを受けます。

正確なメカニズムは解明されていませんが、血管内皮の機能が低下して動脈硬化が進み、血管が詰まりやすくなることはわかっています。

この状態を「糖尿病血管障害」と呼びます。

糖尿病血管障害による主な合併症には、3大合併症とよばれる糖尿病性網膜症糖尿病性腎症糖尿病性神経障害のほかに以下のものがあります

大血管障害
糖尿病にかかっている人は、動脈硬化をおこしやすくなります。高血糖は毛細血管に大きなダメージを与えますが、太い血管の内壁にもダメージを蓄積させていきます。

動脈硬化をおこした血管内は、だんだん狭くなっていきます。

そうなると血流が悪化するだけでなく、血栓による血管詰まりのリスクが増大します。脳の血管が詰まれば脳梗塞、心臓の血管が詰まれば心筋梗塞をおこすので、「動脈硬化は生命にかかわる」と認識する必要があります。

糖尿病ケトアシドーシス
インスリンは、血液中のブドウ糖をエネルギーとして活用するための物質です。そのため、インスリンが極端に不足すると、ブドウ糖をエネルギー源として使うことができません。

エネルギー不足に陥ると、身体は脂肪を分解してエネルギーに変換します。脂肪を分解すると「ケトン体」と呼ばれる物質が産生されますが、血液中のケトン体が急激に増えると血液が酸性になります。これにより体調が急変する恐れがあります。この状態が「糖尿病ケトアドーシス」です。

最近は、糖尿病に対する糖質制限食が理解され広まっており、この場合にはケトン体の産出が増えます。ただし、血糖は低く保たれており、糖尿病性ケトアシドーシスではなく、「ケトーシス」という安全な状況です。この両者を混同しないよう注意しましょう。

ケトアシドーシスは腹痛、嘔吐、脱水症状などをきたし、ひどい場合は意識を失い昏睡状態になります。昔は「1型糖尿病の症状で、2型糖尿病ではほとんど起こらない」と考えられていましたが、近年は肥満体型の若い人を中心に糖尿病ケトアドーシスをおこす例が見られます。

清涼飲料水を多量摂取して血糖値が急上昇した場合におこることから、「ペットボトル症候群」と呼ばれることもあります。

糖尿病になりやすい年齢や性別

2017年の国民健康・栄養調査で約1000万人と推計され、年々増加していると考えられています。

生活習慣を見直さなければ糖尿病に発展する可能性の高い境界型糖尿病についても約1000万人いると推計されています。

20高齢になるに従いかかる人の割合が上がっていました。

糖尿病が強く疑われる人は、男性18.1%、女性10.5%とやや男性に多くみられます。

実際、2017年におこなわれた厚生労働省の患者調査の概況調査によると、糖尿病の患者数は328万9,000人でした。

患者数というのは「きちんと診断を受けて、継続的に治療をおこなっている人数」ですので、実際の罹患者数はもっと多いことになります。

前述の「国民健康・栄養調査」では、20歳以上の「糖尿病を強く疑がわれる人」は、14.3%に及びます。診断や治療を受けていない人の割合も多く、「診断を受けたけれど放置している人」もいるのが現状です。

執筆・監修ドクター

板東 浩
板東 浩 医師 医師 担当科目 内科

経歴1957年生まれ。
1981年 徳島大学を卒業。
ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

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