【監修】北村 聖 先生(東京大学医学教育国際協力研究センター教授)

中耳炎と耳の構造の関係

中耳炎は、主に細菌が中耳に入り炎症を起こす病気です。比較的子供に多くみられますが、大人でもかかる場合があります。
成長途中の乳児や子供は、耳管(じかん)が未発達で十分な長さがなく、また角度も水平に近く、細菌などが侵入しやすいと考えられています。
このため、風邪をひいたとき、鼻や喉(のど)に病気が起こったときなどは、特に中耳炎にかかりやすいとされます。

中耳炎という病名は、耳の構造に由来します。耳は、外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)、内耳(ないじ)に分けられ、中耳で起こった炎症を中耳炎といいます。
中耳は、耳管(じかん)といわれる通路で鼻から入ってきた空気が出入りできるようになっています。一方、耳管は鼻に通じているためウイルスや細菌が侵入するルートにもなります。

中耳炎と耳の構造の関係

中耳炎の種類

中耳炎は、急性中耳炎と慢性中耳炎に分けられます。急性中耳炎が3ヵ月以上続いて治らないときは慢性中耳炎と診断されます。

急性中耳炎が治った後、中耳に炎症などが原因で周囲の組織からしみ出した液体が溜まったままになることがあり、これを滲出性(しんしゅつせい)中耳炎といいます。滲出性中耳炎は、子供に多くみられる中耳炎です。

中耳炎の合併症

まれですが、急性中耳炎から重い合併症が起こることがあります。
合併症では、耳の周囲の骨に起こる炎症や内耳まで感染が及ぶ内耳炎、脳や脊髄(せきずい)を包む髄膜(ずいまく)に炎症が起こる髄膜炎などが知られています。また、急性中耳炎の再発を繰り返し、慢性中耳炎になると鼓膜(こまく)に穴が開く、鼓膜穿孔(こまくせんこう)が生じることがあります。

鼓膜穿孔になると正常な聴力が失われ、子供では呼びかけても気がつかなかったり、テレビの音を極端に大きくするようになったりします。お子様が操作するテレビの音が極端に大きい場合、難聴が疑われます。ですので、早めに耳鼻科を受診されることをおすすめします。

中耳炎の症状

急性中耳炎

耳痛、難聴、耳閉感(じへいかん:耳をふさがれたような感じ)、耳鳴(じめい:耳なりのこと)、発熱、耳漏(じろう:耳だれのこと)などの症状が出ます。大人の場合は、発熱は少ないといわれます。

乳児の場合は症状を訴えることができないため、発熱の他、理由なく泣いたり、不機嫌になったり、耳を触ったり、食欲不振になる様子を注意深くみておくことが大切です。

滲出性中耳炎

子供の80%は、中耳炎になっても自覚症状を訴えないといわれます。集中力の低下や返事が遅い、ボーっとしているといった様子から中耳炎に気がつくことが多いので注意が必要です。

乳児では、耳を触る、ぐずついてよく泣くといったそぶりに注意しておきます。幼児に対しては、言葉の発達が遅い、怒りっぽい、よく泣くといった様子をよく観察することが大切です。
少し成長した子供には、呼びかけても返事をしない、聞き返す、言葉が少ない、落ち着きがない、テレビの音を大きくするなどの行動変化に注意してみておきます。

慢性中耳炎

痛みはほとんどなく、難聴や耳漏が主な症状です。

中耳炎の検査

中耳炎の検査には、純音聴力検査とティンパノメトリーがあります。

純音聴力検査

難聴の程度や障害が起こっている場所を調べます。

ティンパノメトリー

鼓膜の動きや中耳の状態を調べます。
また、滲出性中耳炎になると耳管機能検査やレントゲン検査、内視鏡検査を行うこともあります。

耳管機能検査

耳管が正常に開いたり、閉じたりしているかを調べます。

レントゲン検査

鼻に炎症が起こっているかどうかを調べます。

内視鏡検査

鼻の奥の耳管開口部やリンパ節の状態を調べます。成人では、腫瘍ができていないかをみます。

中耳炎の診断

中耳炎の診断は、ほとんどの場合、問診と視診が中心です。視診では、耳鏡(じきょう)という器具を使って耳内を観察し、鼓膜の異常や耳漏の有無などをみます。

乳児や幼児の場合は、家族が問診に答えるので、いつもと違う様子を具体的に伝えることが大切です。

中耳炎の治療

治療は薬物療法が基本ですが、鼓膜切開などの手術療法を行います。鼓膜切開は、中耳に溜まった液体や膿(うみ)などを排出するために行う手術です。

また、鼓膜に開けた穴に小さなチューブを留置して、中耳に空気が入るような処置を行う場合もあります。鼓膜は再生するので、耳が聞こえなくなる可能性は低いです。

薬物療法

軽い中耳炎は、医師の処方による解熱鎮痛薬だけでも治りますが、重い中耳炎は抗生物質の服用が中心となります。中耳炎の原因となる細菌は、その80%が肺炎球菌とインフルエンザ菌といわれ、最近では抗生物質に対する耐性菌が増えていることが問題となっています。

抗生物質を服用してもなかなか治らない場合は、耐性菌が疑われます。また、適切な抗生物質を使用しないと中耳炎が治らなくなるだけでなく、さらに薬剤耐性菌を増やすことになります。このため、耐性菌のことを考えて治療を受けることが大切です。

内服薬として使われる主な抗生物質:アモキシシリン、クラブラン酸カリウム・アモキシシリンなど

手術療法

鼓膜切開術

中耳に膿や液体が溜まっている場合、鼓膜切開をして溜まっているものを排出します。切開により鼓膜に開いた穴は自然にふさがります。

鼓室内チューブ留置術

滲出性中耳炎では、鼓膜の内側に溜まった液体を排出させることが治療の目的になります。このため、鼓膜切開をしてチューブを差し込み、外耳と中耳との間に通路をつくります。

チューブは、滲出性中耳炎の改善に伴って数ヵ月後には自然に耳の外に排出されます。

通気療法

滲出性中耳炎の治療法です。耳管から空気を中耳に送り、溜まった液体の排泄を促します。

通気の方法には、鼻の入り口からゴムでできた器具を使って発声と同時に空気を送る方法と、細い金属製の管を鼻の奥に入れて、耳に空気を送り込む方法があります。

日常生活の注意

・痛みや発熱のある間は安静にします。

・洗髪や入浴は、医師の許可を得るまで控えます。

・鼻は強くかまないで、左右別々にそっとかむようにします。

・鼻水をすする行為は、中耳炎を悪化させる場合があります。

・医師から治ったといわれるまでは治療を続けましょう。自己判断で治療を中断すると慢性中耳炎になり、難聴を起こすことがあります。

 

監修/北村 聖 先生
東京大学医学教育国際協力研究センター教授