耳が臭い!イヤなにおいはどこからやってくるのでしょう
耳は、鼻や口のそばにありますが、耳の「におい」というのは自分では気が付きにくいものです。
家族や友人など、身近な人に指摘されることで初めて自分の耳のにおいに気が付くことがあります。
耳はさまざまな原因によってにおいを発するようになることがありますが、そのにおいの原因に対応したケアの方法について考えてみましょう。
原因の多くは耳垢
適度な量の耳垢(じこう:みみあか)は分解されることで皮膚の雑菌の繁殖をおさえ、また適度に湿度を保つことで敏感な耳の皮膚を健康に保つために役立ちます。
しかし、過剰に耳垢が蓄積すると、においの原因になることがあります。
耳垢の主成分は、耳垢腺(じこうせん)という外分泌腺から分泌される脂肪分が中心です。これは汗がにおうのと同じように、においがすることがあります。
それに加えて耳自体は複雑な形をしています。そのため、こうした分泌物がたまりやすかったり、洗い足りなかったりしがちになるという事情もあります。
耳垢の状態には個人差があり、しっとりしていることも、乾燥していることもあります。
しっかりと洗って、においを予防
このタイプのにおいの対策法は「しっかりと洗う」ことに尽きます。
耳の中に水が入ることを怖がられる方も多いですが、顔を洗うときや、お風呂に入るとき、耳まできれいにすることを心がけてください。
耳の表面の凹んだ部分や、耳たぶの裏も忘れずに洗いましょう。
ただし、耳はとてもデリケートな部分でもあります。傷つけたりしないよう、ていねいに洗うことも忘れないようにしましょう。
外耳道、つまり耳の穴や耳の外側の部分を指す耳介(じかい)をきれいにする場合は、凹凸になっているところを綿棒などできれいにふき取ることが有効です。
また、手探りだけで外耳道の深いところを掃除しようとすると、かえって耳垢を奥に押し込むことがあるので注意しましょう。
赤ちゃんの耳のにおい
赤ちゃんの耳のにおいを気にして外来を訪れる方もよくあります。
生まれたばかりの赤ちゃんの場合、胎内で赤ちゃんの表面を覆っている胎脂(たいし)という脂状の成分が外耳道に張り付いて残っていることがあります。この胎脂がにおうことがあります。
胎脂の量が多いために外耳道を完全にふさいでいる場合もあります。この場合には専門医への受診が必要になります。
また、よだれの多いお子さんでは、流れ込んだ唾液が耳のにおいの原因になることもあります。
いずれにしてもまずできるのは見える範囲で可能な限りきれいに清掃しつつ、それでも違和感が残れば専門医での処置をおこなうことです。
頭皮や首のにおいかもしれません
後頭部の頭皮や、首の皮膚がにおっているのを、耳のにおいと誤解していることもあります。
耳のにおいが気になったり、指摘されたりしたときには、後頭部や首もしっかりと洗うようにしてみてください。これだけで改善されることがあります。
病気が原因でにおうこともあります
多くはありませんが、耳や、皮膚の病気が原因で、耳が臭くなっていることもあります。そうした場合には、耳の表面を洗っても改善しません。医師による治療が必要になります。
耳への感染に注意
耳に感染が生じた場合、耳から膿(うみ)が流れる耳漏(じろう)がにおいの原因となる場合があります。
耳への感染では、耳の穴の皮膚を構成する外耳道に炎症をおこすことがあります。感染で炎症をおこすのは細菌や、カビなどの真菌などです。
細菌性外耳道炎では、耳を引っ張ると痛みが強くなるのが特徴です。
感染のきっかけは耳掃除や水泳などです。真菌性外耳道炎ではよく塊(かたまり)状の耳漏が出てくることがあり、かゆみを伴います。
小さなお子さんの場合、中耳炎で耳漏が出るときには多くは耳の痛みが先行します。
鼓膜(こまく)に穴があく穿孔(せんこう)をおこした後や、鼓膜換気チューブ挿入術などの治療の後などでは特に先にそういった症状もなく耳漏が生じることがあります。
このため、慢性中耳炎にかかったことがあったり、耳の手術を受けたりしたことがある人で、耳のにおいに気が付かれた場合には専門医の速やかな受診が必要です。
まれな原因ですが、注意が必要な病気
同じように真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)では臭いにおいのする耳漏が最初の症状となることがあります。
真珠腫性中耳炎は、鼓膜の内側の中耳(ちゅうじ)に皮膚の一部が入り込むことでおきます。
これは以前に繰り返していた中耳炎が原因になって生じる病気で、腫瘍性の病気ではありません。
非常にまれですが、外耳道にもがんができることがあります。この場合には血液の混じった、においのある耳漏がみられる場合があります。
いずれの場合もやはり専門医への受診が必要です。
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耳痩孔のある人は感染に注意
生まれつき、耳のつけ根に耳痩孔(じろうこう)という小さな穴が開いていて、そこからにおいが出ていることもあります。
この穴の奥は袋状になっていて、ここに細菌などが感染すると、痛みがおこり、においやドロっとした液体が出てくることもあります。
多くの場合、耳痩孔そのものに害はなく、通常は放置していても問題ありません。
しかし、一度感染がおこると、再発することも多いので、しっかり治療しておくのがよいでしょう。
抗菌薬を使って炎症が治まるのを待ってから、外科的な治療をおこないます。
まとめ
自分の耳のにおいが気になったり、ほかの人から指摘されたりしたら、まずはよく洗ってみましょう。
耳そのものだけでなく、耳の周囲や、後頭部、首のあたりまで、ていねいに、しっかりと洗ってみてください。
そういった場合では年齢によっては、加齢臭があらわれにくくなるような生活習慣を心がけることも有効です。
よく洗っても改善しない場合や、においでだけでなく、痛みもある、できものができている、液体が流れ出ているといったことがある場合は、耳鼻いんこう科などを受診してください。
執筆・監修ドクター
経歴平成 2年 岡山大学医学部 卒業
平成 6年 岡山大学医学部大学院 卒業
平成 2年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 入局
国立岡山大学 耳鼻咽喉科 研修医
平成 7年~ 米国アイオワ大学医学部 耳鼻咽喉科 研究員
平成 9年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 助手
平成12年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 講師
平成26年4月~ 新倉敷耳鼻咽喉科クリニック 院長
平成27年~ 埼玉医科大学 客員教授
九州大学 臨床教授
平成29年10月~ 早島クリニック耳鼻咽喉科皮膚科 院長
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