耳が痛くなったら、耳鼻いんこう科へいくのがキホンです
急に耳が痛くなると、誰でも戸惑います。
耳は「音を聞く」という大切な役割をもつ部分なのに、自分で自分の耳を見ることはできません。
また、耳は人間の平衡感覚をつかさどる部分でもあるため、病気の原因によっては痛みと一緒に、頭痛や吐き気、めまいなどの症状をともなうこともあります。
耳はどのような原因で痛くなるのか、痛くなったときにどうすればよいかを考えてみましょう。
耳介(じかい)と耳前部の病気~外から見てわかる異常
耳が痛くなる原因が、外から見ておしはかれる場合もいくつかあります。
生まれつき、耳の前に「耳ろう孔(じろうこう)」という小さな穴のある人がいます。
ここに細菌などが感染すると、「感染耳ろう孔」という状態になり、痛みがあらわれます。
穴のまわりが腫れるだけのこともあれば、穴から膿(うみ)が流れ出ることもあります。
抗菌薬を飲んで治しますが、手術をして耳ろう孔を取り除くこともあります。
もっとシンプルには、メガネや、イヤホン・ヘッドホンなど、耳に触れるものを使う習慣がある場合、それらが痛みの原因となっていることも考えられます。
メガネの「つる」がおさえつけた様なあとを残す圧痕(あっこん)をつけたり、耳が赤く腫れたりするような様子があれば、痛みを引きおこす原因となっていることがあります。
メガネなどを調整するか、耳に合ったものと交換するなどして、様子をみてみましょう。
耳は、顔の中でも飛び出したところなので、さまざまなかぶれや皮膚炎の原因物質にさらされやすいところでもあります。
虫刺症や接触皮膚炎が痛みの原因となっている場合もあります。
この場合には同時に皮膚の発赤、腫脹(しゅちょう)、ただれなどをともなう場合もあり、刺し口の存在や、屋外活動の有無についての情報が診断に役に立つことがあります。
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外耳道と中耳の病気~耳の内部での炎症
耳の内部で炎症がおこっている場合には、外から見てもわからない耳の痛みをおこすことがあります。
炎症がおこっている部分によって、中耳炎と外耳炎(外耳道炎)があります。
外耳炎は、外耳(がいじ)とよばれる耳の穴の皮膚に生じた皮膚炎に由来する痛みがあります。
このため耳介(耳たぶ)を引っ張ったり、押さえたりすると痛みが強くなる特徴があります。
水泳などで耳に水が入ったり、耳掃除で耳をいじりすぎたりすることが原因になる場合が多いです。
子どもが急に耳の痛みを訴えた場合、急性の中耳炎であることがよくあります。
中耳は強い痛みが持続しますが、側頭骨という骨の中にあるため、外耳炎と違って耳を引っ張っても痛みは強くなりません。
また、耳の内部で管状になって鼻とつながっている耳管(じかん)から、鼻の感染が中耳にひろがり感染をおこすことが原因となる場合がよくあります。
症状が軽ければ、痛み止めのみで経過を観察すれば十分なこともありますが、抗菌薬を飲んで症状の悪化をコントロールすることもあります。
治療が難しい場合には、鼓膜に穴が残って慢性化する慢性中耳炎や、長期間にわたって中耳に貯留液を残す滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)など、別のタイプの中耳炎に変化していくことがあります。
こうしたタイプの中耳炎では痛みをともなわなくなりますが、難聴などの他の症状に長い間、悩まされることもあります。
痛みが消えたからといって軽く見ず、注意する必要があります。
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耳以外に異常があることも
耳そのものには異常がなくても、のどやあごにおこった痛みを耳の痛みと自覚することもよくあります。
例えば、急性扁桃炎(きゅうせいへんとうえん)をおこすと、飲み込んだときに特に痛みが強くなるような耳の痛みを自覚します。
顎関節症(がくかんせつしょう)というあごの関節を痛めたような病気であれば、食べものを噛む咀嚼(そしゃく)にあわせて耳の痛みが激しくなります。
つまり、耳の痛みがある場合には、耳鼻いんこう科を受診して、耳以外にも、あごやのどの状態をきちんと確認してもらう必要があります。
なかにはさまざまなタイプの腫瘍(しゅよう)によって耳の内側に痛みを感じている場合もあります。慢性的な痛みが続く場合には専門的な検査が必要です。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)という皮膚の病気で、耳が痛むこともあります。
たいていは耳のまわりに水ぶくれができることから見分けることができますが、こうした水ぶくれもなく、ピリピリしたような皮膚の異常感とともに痛みを自覚することもあります。
治療には抗ウイルス薬を飲んで症状をおさえるのが一般的です。
帯状疱疹のウイルスは、神経を障害するためにこうした痛みを引きおこしますが、ウイルス以外にもさまざまな原因による神経の「いたずら」によって、耳に痛みがあらわれる耳介神経痛(じかいしんけいつう)をおこすこともあります。
こうした場合には神経痛独特の痛みがあらわれますので、病院で相談すると診断がつきます。
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外からの衝撃でも痛くなります
病気以外にも、外からの衝撃による外傷、つまり、ケガによって耳が痛くなることもあります。
耳を何かにぶつけたり、殴られたりすると、当然、強い痛みがあらわれます。場合によっては、耳の外傷が原因で聞こえが悪くなることもあります。
例えば、平手打ちで耳の入り口をたたかれると、強い圧力を受けて鼓膜が破れることがあります。
また、自分で耳かきをしているときに、後ろから押されて鼓膜を傷つける場合もあります。
軽い障害の場合にはすぐになおることもありますが、中にはずっと続く難聴の原因になることもあります。
耳をケガした後、聞こえにくかったり、めまいを自覚したりするような場合には早めに病院を受診しましょう。
こうした外傷には、耳介の部分を激しくこすった後に耳介に血がたまる耳介血腫(じかいけっしゅ)という状態から、交通事故などにともなう側頭骨骨折(そくとうこつこっせつ)などさまざまなものがあります。
「音響外傷」を知っていますか?
突然、もしくは、長時間にわたって大きな音を聞いたことにより、耳の聞こえが悪くなることがあります。
これは「音響外傷」と呼ばれ、仕事中の事故や、コンサートなどの観賞、イヤホンからの不適切な大音量などでおこります。
時間経過に従って自然に落ち着く一過性のものが多いですが、数時間経過しても改善しないほど続く場合には、耳鼻いんこう科に相談しましょう。
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耳の痛みは耳鼻いんこう科へ
執筆・監修ドクター
経歴平成 2年 岡山大学医学部 卒業
平成 6年 岡山大学医学部大学院 卒業
平成 2年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 入局
国立岡山大学 耳鼻咽喉科 研修医
平成 7年~ 米国アイオワ大学医学部 耳鼻咽喉科 研究員
平成 9年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 助手
平成12年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 講師
平成26年4月~ 新倉敷耳鼻咽喉科クリニック 院長
平成27年~ 埼玉医科大学 客員教授
九州大学 臨床教授
平成29年10月~ 早島クリニック耳鼻咽喉科皮膚科 院長
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