耳垂れに注意!放置すると怖い「好酸球性中耳炎」について
「中耳炎(ちゅうじえん)」という病気は耳にしたことがある方も多いとは思いますが、「好酸球性中耳炎(こうさんきゅうせい ちゅうじえん)」という病気は、聞きなれないという方も多いのではないでしょうか。
好酸球性中耳炎の歴史はまだ浅く、医師のあいだでも約15年前から注目され始めた新しい種類の中耳炎です。
この記事では、好酸球性中耳炎の症状や原因、治療法などについて解説しています。
- 目次
好酸球性中耳炎について
好酸球性中耳炎とは
好酸球性中耳炎は、白血球のひとつである「好酸球(こうさんきゅう)」が耳にしみこんで広がることで起こる病気です。
「好酸球」は、寄生虫から体を守ってくれる役割もありますが、アレルギーの原因になってしまうこともあるのです。白血球のなかにある好酸球の適性な量は1%~5%ですが、量がふえてしまうと様々な疾患におかされる可能性がでてきます。
難聴のリスク
症状が進むと、難聴になる恐れのある病気です。患者の約50%に聴力の低下がみられたという研究結果もあるため、正しい診断と治療を早急に行うことが重要です。
医師のあいだでも発見されてまだ新しい!
もともとは、1992年に「気管支ぜんそく患者における難治性中耳炎」という位置づけで報告されたことがはじまりで、1995年に「好酸球性中耳炎」という名称でよばれるようになりました。
医師のあいだでも、約15年前から注目され始めた比較的あたらしい種類の中耳炎で、治療が難しい病気だといわれていました。
しかし研究は少しずつ進んでおり、2010年に初めて、「好酸球性中耳炎の診断基準」が耳鼻咽喉科免疫・アレルギー学会で発表されました。効果がみられる治療法もみつかっています。
原因は明らかになってないことも多い
原因は、まだまだ明らかになっていないところが多い病気です。
病気が発生するメカニズム自体は、好酸球が「中耳腔(ちゅうじくう)」に浸潤し、ニカワ状の滲出液(しんしゅつえき)がたまることだとわかってきていますが、原因は不明な点も多いです。
ちなみに、「ニカワ状」とは、ネバネバした粘土やピーナッツバターにも例えられます。
先程も解説しましたが、 好酸球自体は悪い成分ではないのですが、必要以上の浸潤が身体の異変につながってしまいます。
気管支ぜんそく患者がかかりやすい
大きな特徴として、成人発症型の気管支ぜんそく患者が発症することが多いです。
だからといって、気管支ぜんそくであっても、必ず好酸球性中耳炎を発症するわけではありません。
気管支ぜんそくは、女性患者が多いことから男女比では女性のほうが上回る結果となっています。
だからといって、気管支ぜんそくであっても好酸球性中耳炎をかならず発症するわけではありません。また、年齢的には40代~50代に多いです。
症状
主な症状としてあげられるのは下記になります。
粘り気のある耳だれが出る
耳鳴りが起こる
めまいがする
難聴が起こる
主に耳だれから始まり、症状が進むことでその他の症状が発生することが多いようです。
耳だれが出た時点で、自己判断したり放置したりせずにすぐに病院へ行くべきです。正確な診断をしてもらうことをおすすめします。
また、初期段階では「伝音性難聴(でんおんせいなんちょう)」がはじまります。
そのあと、内耳にまで病気が広がってしまうと、「感音性難聴.(かんおんせいなんちょう)」になり耳が聞こえづらくなります。
似た症状の病気
『滲出性中耳炎』や『ANCA関連血管炎性中耳炎』と間違われることもある病気なので、的確な診断が求められます。
これらの病気とは治療方法が違うので、正しく判断されないと有効な治療を行うことができません。
治療方法
ステロイド治療をおこなう
ステロイドを使用した治療をおこない、好酸球が染み込み拡がるのを抑えます。
ステロイドを全身投与することで、より改善する傾向にありますが、副作用が強いため注意が必要です。状況に応じて、局所投与したり、全身投与にする場合は量を調節したりと調整が行われます。
ステロイドは内服薬として処方される、またはステロイドを注射する「局所注入」する方法が一般的です。
まとめ
好酸球中耳炎は、放置すると、難病指定されている病気(指定難病306)のうちのひとつ、「好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)」や「アレルギー性鼻炎」などを合併することもあるので、なるべく早く医師と相談するようにしてください。合併症状が出る前に治療すれば、それだけ早く治る可能性が高くなります。
執筆・監修ドクター
経歴2002年5月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科臨床研修医
2004年5月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科助教(院外)
2006年6月 幕内会 山王台病院 外科
2007年6月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科助教
2008年6月 関東労災病院 外科
2009年6月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科 助教
2012年10月 横浜旭中央総合病院 外科、昭和大学藤が丘病院 兼任講師
2017年11月 しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開業、院長に就任
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