耳管狭窄症
概要
耳管狭窄症とは?
耳管狭窄症は、上咽頭と中耳をつなぐ「耳管」という管が狭くなってしまう病気です。耳管は通常閉じていますが、飲み込む動作やあくびなどによって開き、鼓膜の奥にある中耳の空気圧の調整をしています。
しかし耳管が開きにくくなると、中耳との空気圧をコントロールできなくなり、耳が詰まった感じになったり、自分の声が響いて聞こえたりします。
耳管狭窄症自体は心配ないですが、滲出性中耳炎を併発したり、上咽頭癌の症状として出現することもあるため、耳の閉塞感があったら早めに受診をしましょう。
症状
日本耳科学会によると、広義では「耳管の開大不良や狭窄(狭くなること)により起こる中耳病態または耳症状 」、狭義では「耳管が器質的(物理的)に狭窄しているために起こる中耳病態または耳症状」とされています。
代表的な症状としては、耳が詰まったような感覚になる「耳閉感」と、自分の声が反響し大きく聞こえる「自声強調」、があります。
中耳圧力が低い状態が続くことで鼓膜が陥凹し、中耳腔に液が溜まり滲出性中耳炎を起こすこともあります。
身近なところでは、エレベーターで高層階に登った時や飛行機の離着陸の際のような耳詰まり感がでます。
診療科目 ・検査
耳閉感や難聴といった症状があらわれたら、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
検査は、耳鏡や顕微鏡で耳の中を見て、鼓膜の状態を確認します。また、聴力検査や、鼓膜に圧を加えて動きを確認する「ティンパノメトリー」検査をおこないます。耳管狭窄症の診断には、耳管機能検査装置の耳管の圧力を測定できる加圧減圧法(インフレーション・デフレーション法)がもっとも適しているとされています。
滲出性中耳炎や真珠腫性中耳炎を合併したり、腫瘍ができていたりする可能性もあるので早めに受診するべきです。
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原因
耳管が開きにくいことが原因となります。通常耳管は閉じており、食べ物や飲み物、空気や唾液などを飲み込む際には開きます。しかし、十分に開かないと耳閉感(耳が塞がった感じ)や難聴(音が聞こえにくい)といった耳症状が起こります。
耳管が開きにくい原因としては、風邪やアレルギー、副鼻腔炎、扁桃腺炎や咽頭の腫瘍など、耳管周辺に炎症や腫れができることが挙げられます。これにより耳管が狭くなって開きにくくなります。しかし多くの場合は、原因不明です。
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治療方法と治療期間
耳管狭窄を引き起こしている原因がある場合には、根本の原因を取り除く治療をおこないます。炎症が起こっていれば抗炎症剤や抗生剤、鼻水の分泌を抑える薬が処方されます。また、カテーテルを鼻から入れて耳管にあて空気を送る「耳管通気療法」をおこなうこともあります。
また、鼻水を吸引したり、ネブライザーという、薬剤を霧状にする医療機器を使って炎症を抑える薬剤を噴霧する治療をしたりすることもあります。難治の場合は、鼓膜を切開したり、鼓膜チューブを設置することもあります。
原因となる疾患によって治療期間は異なります。原因となっている炎症が治れば4、5日ほど、多くは2週間ほどで治ります。ただ、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など併発している場合は長引く場合も多々あります。また、原因となる疾患がない場合には、治療に難渋することがほとんどです。
治療の展望と予後
原因となる疾患がある場合には、治療をすれば予後は良好です。炎症が治れば完治することが多いため、早めの治療が大切です。放置した際は合併症を引き起こしたり、QOL(生活の質)が低下したりする恐れがあるため注意しましょう。また原因がはっきりしない場合には治癒が見込めないことがほとんどです。
発症しやすい年代と性差
男女差、性差はあまり関係なく、風邪や鼻炎の後などに発症しやすいとされています。
ただし、防御機能が弱い子供や年配の方は、風邪をひきやすいため、耳管狭窄症を罹患することも多いとされています。さらに、上咽頭にあるリンパ組織のかたまりの「アデノイド」は、5歳前後くらいまで肥大しやすいため、特にその年代の子供たちは注意をするべきであると言えます。