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遅発性内リンパ水腫とは
遅発性内リンパ水腫(ちはつせいないりんぱすいしゅ)とは、「高度の難聴」を発症したことのある人が、数年~数十年後に回転性のめまいや聴力の変動を繰り返すようになる原因不明の病気です。
「高度の難聴」とは、内耳炎(ないじえん)や突発性難聴などを発症し、有毛細胞などの聞こえに関係する細胞が欠損したり傷ついたりすることで日常的な音が聞こえない難聴のことを指します。
こうした細胞は内耳(ないじ)で、「内リンパ」と呼ばれる液が満たされたスペースに存在しています。
これらの細胞の障害によっておきた病変が少しずつ進行し、内リンパの循環に障害をおこすことが原因ではないかと考えられています。
現在、この病気は難病に指定されています。
この病気に対する根治的な治療法はありませんが、薬物療法や、症状がひどい場合には手術療法によって苦しい症状をコントロールすることができます。
平衡感覚の障害は体の他の機能を使って補う代償(だいしょう)によって軽くなることも多くあります。平衡機能のリハビリによって日常生活を改善することもできます。
高齢者の場合には「転んで骨折する」などから、運動機能の障害や認知症の症状を進行させる可能性があるので注意が必要です。
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遅発性内リンパ水腫の症状
遅発性内リンパ水腫は、嘔吐(おうと)を伴うような激しい回転性めまいを繰り返したり、低音域を中心とした聴力の変動や耳鳴り、「音が響く感じ」を繰り返したりすることがあります。
こうした症状は、何度も発作的な出現を繰り返しながら、聴覚や平衡覚を慢性的に障害していきます。
そのため長期的なフォローをおこなって生活の質(QOL)の低下に注意を払う必要があります。
遅発性内リンパ水腫の診療科目・検査方法
遅発性内リンパ水腫は聴力検査、平衡機能検査で症状を確認します。
画像診断、眼振検査、生化学検査などをおこない、めまいや難聴をおこすほかの病気である可能性を除外します。
生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性があるため、速やかに耳鼻いんこう科を受診することが推奨されます。
遅発性内リンパ水腫の原因
遅発性内リンパ水腫の原因はわかっていません。
高度の難聴をおこすような病変から、年月をかけて内耳に続発的な内リンパ水腫(内リンパの循環不全)が生じ、それによってめまいがおこるのではないかと考えられています。
この病気を合併する高度の難聴は側頭骨骨折、ウイルス性の内耳炎、突発性難聴などが知られています。こうした病気から、高度な難聴が残った場合には将来的に発症する可能性があります。
難聴は最初の難聴と同じ側(同側性:どうそくせい)の場合も、反対側(対側性:たいそくせい)の場合もあり、対側性の場合には最終的に両耳の難聴の原因となる場合もあります。
最初の難聴の後に、こうした遅発性の発作がおこる背景には、生活習慣やストレスが原因となっている場合もあるのではないかと考えられています。
遅発性内リンパ水腫の予防・治療方法・治療期間
遅発性内リンパ水腫の根治的な治療法は確立されていません。
そのため、短期的には症状の改善を、また長期的には永続する聴覚障害や、平衡機能障害を予防することを目的にして治療をおこないます。
発作急性期には、メニエール病や突発性難聴に準じた治療として、ステロイド薬や、利尿薬などによる薬物治療をおこないます。
めまい症状が激しい場合には、それぞれの症状に応じた対症療法がおこなわれます。めまいを改善させる鎮暈薬(ちんうんやく)や吐き気をおさえる制吐剤(せいとざい)を使用します。
また、発作の再発を予防する意味では生活環境の改善も有効です。中耳に直接薬物を投与する方法が選択される場合もあります。
こうした治療でめまいを抑制できない場合には耳栓をして中耳に圧力をかける中耳加圧治療や手術をおこなう場合もあります。
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遅発性内リンパ水腫の治療経過(合併症・後遺症)
遅発性内リンパ水腫の治療では、聴覚と平衡覚を良好な状態に保つために、長期にわたる観察とコントロールが必要となります。
不快な発作を繰り返し、放置すると進行することもあります。発作が頻発する場合には著しく生活の質(QOL)が低下しますが、どの程度の頻度で発作を繰り返すかは人によって異なります。
また同じ人の経過中にも頻発する時期もあれば、何年も落ち着いている時期もあったりと、その予後を予測することは難しいこともあります。
最終的に永続する平衡機能障害が残った場合には、バランスなどを回復させるために「前庭リハビリテーション」をおこない代償が成立するように誘導します。
同じように難聴が残存した場合には補聴器や人工内耳を使用することで生活上の困難を取りのぞくようにします。
遅発性内リンパ水腫になりやすい年齢や性別
遅発性内リンパ水腫は、厚生労働省の調査によると、日本に4000~5000人の患者さんがいると考えられています。性差については触れられていません。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴平成 2年 岡山大学医学部 卒業
平成 6年 岡山大学医学部大学院 卒業
平成 2年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 入局
国立岡山大学 耳鼻咽喉科 研修医
平成 7年~ 米国アイオワ大学医学部 耳鼻咽喉科 研究員
平成 9年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 助手
平成12年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 講師
平成26年4月~ 新倉敷耳鼻咽喉科クリニック 院長
平成27年~ 埼玉医科大学 客員教授
九州大学 臨床教授
平成29年10月~ 早島クリニック耳鼻咽喉科皮膚科 院長
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