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じこうかしょう耳硬化症

更新日:2022/08/16 公開日:2019/01/31 view数:6,556

耳硬化症とは?

耳硬化症は、鼓膜が正常であるにも関わらず「伝音難聴」をきたす代表的な病気で、中耳にある耳小骨のひとつである「アブミ骨」の周囲にできる骨代謝異常によって難聴が進行してくる病気です。

聞こえは徐々に悪化し、日常生活に支障をきたすレベルにまで達することも少なくありません。病変が内耳に進むと高度な「感音難聴」になることがあります。

基本的には白人に多い病気です。日本人などのアジア人ではまれであり、かつ典型的な経過にならないことが知られています。

病変が軽度であれば経過観察や、補聴器での対応が可能ですが、進行すればアブミ骨手術で聴力の改善を行います。内耳にまで病変が進むと、人工内耳手術の適応になることがあります。

目次
  1. 耳硬化症の症状
  2. 耳硬化症の診療科目・検査方法
  3. 耳硬化症の原因
  4. 耳硬化症の予防・治療方法・治療期間
  5. 耳硬化症の治療経過(合併症・後遺症)
  6. 耳硬化症になりやすい年齢や性別

耳硬化症の症状

耳硬化症の主な症状は難聴です。

しばしば若いうちから一部症状が発症しますが、症状が明らかになるのは40代以降のことがよくあります。片耳の難聴から始まって緩やかに(1年で2~3dB程度)難聴が進行し、両耳の難聴になりますが、進行の程度や左右差は個人差が大きくなっています。

難聴の特徴は低音に比較的強い「伝音難聴」(中耳など、音を伝える仕組みに原因のある難聴)です。他のタイプの難聴と違って騒音がある方がかえって会話がしやすくなるという「ウイリス錯聴」という状態になることもあります。

病変の進行に伴って「感音難聴」(内耳など、音を感じる仕組みに原因のある難聴)が目立つようになり、「高度感音難聴」まで悪化することがあります。

難聴に伴って耳鳴りを自覚することがよくあり、耳硬化症の60~90%の患者には耳鳴りを伴うとされます。耳鳴りは様々なタイプのものが含まれますが、「拍動性耳鳴」という、「ザーザー」「どくどく」といった耳鳴りを感じることがあるとされます。

耳硬化症には30%程度の頻度でめまいを合併します。

耳硬化症の診療科目・検査方法

耳鼻いんこう科で臨床経過および聴覚検査所見より診断します。

耳硬化症の特徴は、「鼓膜所見が正常な伝音難聴」です。鼓膜所見は耳鏡検査で確認し、耳硬化症以外の原因による伝音難聴、例えば慢性中耳炎や滲出性中耳炎との鑑別を行います。その上で「純音聴力検査」を行って伝音難聴の存在を確認します。

少なくとも初期の耳硬化症では、低音域により強い伝音難聴と、2000Hzでの骨導聴力(こつどうちょうりょく)の低下が特徴的と言われます。アブミ骨筋反射等を行って、他の耳小骨病変、例えば耳小骨離断症等との鑑別診断を行います。

側頭骨CTでは、伝音難聴の耳硬化症以外の原因である耳小骨奇形や、鼓室硬化症(こしつこうかしょう)などの所見がみられないことも確認します。もしアブミ骨底板周囲の硬化巣や、内耳周囲の脱灰像(だっかいぞう)などがあれば、診断が確定します。

鼓膜正常な混合難聴をきたす病気として、半規管裂隙症候群(はんきかんれつげきしょうこうぐん)との鑑別が必要な場合もあります。この場合にも側頭骨CT等様々な検査で鑑別します。

さらに似たような伝音難聴との鑑別診断として、様々な骨の異常を検討することがあります。手指の骨や、首の骨の異常、あるいは骨が骨折しやすい傾向にないかなど、体の他の部位のX線検査を行って骨の評価を行うことがあります。

このような検査や臨床経過の確認によって、他の病気との鑑別を行います。

耳硬化症の原因

内耳骨包(ないじこっぽう:内耳を包む骨)の骨の代謝異常が、この病気の原因であると考えられています。

中耳には、鼓膜からの音を伝えるために「耳小骨」と呼ばれる骨がありますが、その最も内耳側の骨であるアブミ骨の関節に硬化巣ができ、この病変のためにアブミ骨の可動性が低下して難聴になります。

病変がアブミ骨周囲だけでなく、内耳に至ることで、感音難聴が生じます。そのため、伝音難聴と感音難聴との両方が伴う、「混合性難聴」という状態になることもあります。

こうした骨代謝異常の病変が何によって起こるかについてはまだはっきりと分かっていません。そもそも人種によってかなり発症率に差があり、またしばしば家族内発生があることから少なくとも何らかの遺伝性があるとは考えられ、一部のケースからは、原因となる遺伝子の変異も見つかっています。

麻疹(ましん)に小さいころに感染していることが悪化につながる、という説もあり、また、妊娠や出産を契機に難聴が進行することから、女性ホルモンの影響による増悪についても推定されています。

耳硬化症の予防・治療方法・治療期間

治療効果のある薬物療法は存在しません。聴力を改善するための手段として、特に初期には補聴器が用いられます。少なくとも診断がついた早期には、伝音難聴が主であることが多く、補聴器装用の良い適応であることもよく経験します。

両側の伝音難聴が高度になってきた場合にはアブミ骨手術が行われます。この場合、固着したアブミ骨の一部に穴をあけ、ピストンと呼ばれる人工の耳小骨を入れることで伝音難聴を解消します。

耳硬化症の病変が進み、高度感音難聴となった場合には、補聴器やアブミ骨手術では対応しきれない高度な難聴となることがあります。この場合には人工内耳手術の適応となります。

耳硬化症の治療経過(合併症・後遺症)

難聴そのものが軽度である場合には、進行が緩やかである傾向からも、定期的な聴力検査による経過観察のみが行われることもまれではありません。ただし、個人差がみられることや、時に急激に進む傾向からも、定期的なフォローアップは必須です。

一般に伝音難聴の多くは補聴器による聞き取りの改善は良好で、耳硬化症もその例外ではありません。音声コミュニケーションに支障が出るほどの難聴であれば、補聴器装用を躊躇することはありません。

アブミ骨手術では80%の症例で聴力が改善するとされ、聴力改善の見込みは高いため必要とあれば手術は推奨されます。

ただし、2%程度は聴力悪化の危険性があること、味覚の神経などの副損傷の危険があること、年数が経ってピストンの位置がずれることがあること等の注意が必要になります。

より高度な難聴になった場合には人工内耳手術が選択肢に上がることになりますが、その場合の聞き取り成績も一般には良好です。

耳硬化症になりやすい年齢や性別

耳硬化症自体は若年期に発症することが多いとされますが、難聴としての症状が明らかになるのは30〜40代です。女性は、男性に比べて3倍頻度が高く、また妊娠・出産に際して増悪することが多いとされます。

ただし、個人差が大きく、特に日本人を含むアジア系では状況が異なる場合が多いようです。

執筆・監修ドクター

福島 邦博
福島 邦博 医師 早島クリニック耳鼻咽喉科皮膚科 院長 担当科目 耳鼻いんこう科

経歴平成 2年 岡山大学医学部 卒業
平成 6年 岡山大学医学部大学院 卒業
平成 2年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 入局
      国立岡山大学 耳鼻咽喉科 研修医
平成 7年~ 米国アイオワ大学医学部 耳鼻咽喉科 研究員
平成 9年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 助手
平成12年~ 岡山大学医学部耳鼻咽喉科 講師
平成26年4月~ 新倉敷耳鼻咽喉科クリニック 院長
平成27年~ 埼玉医科大学 客員教授
      九州大学 臨床教授
平成29年10月~  早島クリニック耳鼻咽喉科皮膚科 院長

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