粉瘤とは
粉瘤はアテロームや表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)とも呼ばれます。
代謝によって落ちる垢や角質が表皮の内部に溜まってしまい、顔やお尻だけでなく全身に大小さまざまな袋のようなもの(膿疱/のうほう)ができる病気です。
袋を圧迫して中身を出すと、臭いのある粘り気のある物質が出ます。
ほとんどが良性腫瘍ですが、放っておくと炎症をおこしたり、かなり大きくなってしまうこともあります。細菌感染をおこして赤く腫れることもあるので、自分で無理に圧迫して内容物を出そうとせず、医療機関に相談してください。
粉瘤の症状
粉瘤は皮膚に数ミリから十数センチのドーム状のしこりができます。初期段階では目立ちにくく、気づかないことが多いです。
そのまま時間が経つにつれて大きくなり、白や黄色、黒色に変色することもあります。
色が変化することで、にきびやおできとの判別がしやすくなります。
粉瘤は数個単位ではなく、数十個単位で発生することがあります。例えば、中高年の男性の陰嚢(いんのう)に多数の粉瘤ができる場合は、多発性陰嚢粉瘤症(たはつせいいんのうふんりゅうしょう)という名前で呼ばれます。女性の外陰部におこる場合は、多発性陰唇粉瘤(たはつせいいんしんふんりゅう)といいます。この粉瘤は石灰化して、白く硬いしこりとなります。石灰化とは柔らかい組織にカルシウム塩が蓄積し、硬化した組織になる現象です。
痛みの有無
粉瘤は痛みを感じることはほぼありません。粉瘤の皮膚開口部より細菌が侵入して、化膿する炎症性粉瘤では痛みを伴います。
臭いの有無
粉瘤は垢や角質といった老廃物が時間をかけて膿となり、押したり潰したりして外に出すことで臭いを放つ場合があります。ただし、胸や首、わきにできる多発性毛包嚢腫は臭いがないのが特徴です。
しこりの表面にも特徴あり
粉瘤でできたしこりの中心部分に、小さな黒い穴(へそ)ができるのも特徴の一つです。しこりを押しつぶすと、この穴から粘り気があって臭う内容物が出ます。
また、粉瘤にはいくつか種類があります。
外毛根鞘嚢腫(がいもうこんしょうのうしゅ)
顔面や頭部に発生することが多いアテロームで、特に髪の毛があるところには増殖性外毛根鞘腫ができやすいとされています。
多発性毛包嚢腫(たはつせいもうほうのうしゅ)/脂腺嚢腫(しせんのうしゅ)
腕や首、わき、胸に発生することが多いタイプです。思春期や若年成人期に発症している人が多いため、ホルモンバランスが原因と考えられています。
また、出てくる膿は黄色い粘液で、通常の粉瘤と違い臭いを発しないのが特徴です。
炎症性粉瘤(えんしょうせいふんりゅう)
粉瘤に細菌が入り込み、炎症をおこして赤くなることがあり、痛みを伴います。
外傷性表皮嚢腫(がいしょうせいひょうひのうしゅ)
足の裏や手のひらにできる嚢腫で、外傷によって皮膚の一部が皮膚の下に入り込んでしまいます。
毛包腫(もうほうしゅ)
10mm以下のドーム状の丘疹(きゅうしん)で、顔面の特に鼻近くにできます。
中央に角化性小陥凹(かくかせいしょうかんおう)があり、羊毛に似た複数の幼弱毛が生えています。
粉瘤の診療科目・検査方法
粉瘤は皮膚の症状なので、皮膚科を受診します。
手術での傷口が気になる人はきれいに治療してもらえる形成外科や美容外科、美容皮膚科で治療することも可能です。
主な診療内容
まず、触診・視診がなされます。
しこりが表皮と癒着し下床(かしょう/しこりの下部分にある組織) との可動性があれば、まず粉瘤と考えられます。
可動性がない場合、悪性の腫瘍であることもあり得るため、重要な診断材料となります。
また、毛包系嚢腫(もうほうけいのうしゅ)があった場合も粉瘤と判断します。
超音波検査
触診、視診でも粉瘤の判断がつかない場合は、画像で患部の中身を診ることで判断します。超音波(エコー)を用いることにより、粉瘤のしこりを鮮明に見ることができます。
しかし、小さすぎる粉瘤には超音波検査を実施することはできません。
CT、MRI検査
より鮮明な判別をしたいときにCTかMRIを使用し、画像によって判断します。
特に脂肪腫の場合、MRIではT1強調画像(脂肪組織が白く見え、水分や嚢腫は黒く見える)を用いると脂肪の塊かどうかが判別しやすくなります。
粉瘤の原因
粉瘤の原因は明確に分かっているものはありません。
粉瘤は本来皮膚からはがれ落ちるはずの垢や、毛穴から出る皮脂が表皮の内部で溜まり、嚢胞(のうほう/袋のようなもの)をつくることが原因でできます。
この嚢胞ができる原因が特定できていないため、手術で対処して取り除くしかありません。
かつては原因として細菌感染説も考えられていました。しかし、細菌はあくまで赤く腫れさせ、痛みを伴う種類の粉瘤になるだけであり、根本的な原因ではないことが確認されています。
きっかけとして挙げられるもの
粉瘤の根本的な原因ではありませんが、できやすいきっかけは以下のようなことが挙げられます。
生まれつきの粉瘤
上まぶたからまゆげと頭にできる嚢腫は皮様嚢腫(ひようのうしゅ)と呼ばれ、生まれつきあることが多いものです。
また、側頸嚢腫 (そくけいのうしゅ)、正中頸嚢腫(せいちゅうけいのうしゅ)、耳前瘻孔(じぜんろうこう)も生まれつきあるか、できやすい人がいます。
側頸嚢腫・・・首の横側にでき、頚動脈まで食い込んでくる嚢腫。
正中頸嚢腫・・・首ののど部分にできる舌骨という、のどの骨に癒着(ゆちゃく/隣接した組織にくっつくこと)しています。
耳前瘻孔・・・耳の穴の上に小さな穴があり、軟骨まで空洞が続いています。
ホルモンバランスの乱れによる肌のターンオーバーの崩れ
新しい細胞が生まれ、垢になってはがれ落ちるまでの過程を、ターンオーバーまたは角化といいます。ターンオーバーの期間については個人差がありますが、本来28~55日周期でおこなわれます。
この周期が乱れると老廃物が溜まり、粉瘤ができるといわれています。
外傷、打撲
負傷した部分に嚢胞ができ、老廃物が溜まってしまうとされています。
ウイルスが原因になる粉瘤
粉瘤のなかでも外傷性表皮嚢腫は足の裏や手にできる嚢腫で、イボウィルスが原因であることがわかっています。
粉瘤の予防・治療方法・治療期間
粉瘤は薬で治療することはできません。
しかし、手術をおこなうことできれいに取り除くことが可能です。
手術のタイミングはいつでもよいのですが、痛みを伴っている炎症性粉瘤の患者さんは早めに手術を受けることが推奨されます。手術方法には「へそ抜き法」というものがあります。
手術療法
・へそ抜き法(くり抜き法)
傷ができにくい手術方法。粉瘤の部位に局所麻酔をおこない、ディスポーザブルパンチという器具で直径4㎜ほどの円筒状のメスを差し込み、表面の皮膚とともに袋状になっている部分をくりぬく方法。
そこから内容物を抜き出し、内容物を囲んでいた皮を切り取ります。基本的には、縫う処置はおこなわずに傷がふさがるのを待ちます。2〜3週間経てば、傷跡は、ニキビ痕程度の凹みとなります。
炎症性粉瘤の場合
炎症性粉瘤の場合は嚢腫を取り除く前に細菌を除去しなければなりません。
そのため膿を出した後に抗生剤を投与して嚢腫内を洗浄します。
これには数日かかることがあり、通院する必要があります。
粉瘤の治療経過(合併症・後遺症)
手術で嚢腫を摘出すれば、再発することはないとされています。
粉瘤は自然治癒することはありません。老廃物が溜まっている嚢胞を手術で取り出さない限り、内容物を出しても再発する可能性が高いです。
直接命に関わる症状ではありませんが、放置していても治ることはありません。
また、ごく稀にがん化することもあります。
粉瘤になりやすい年齢や性別
発症者に男女差はなく、年齢も関係なく発症する皮膚の病気です。ただ、体質的に粉瘤ができやすい人も存在します。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター

経歴2002年 金沢医科大学医学部 卒業
2002年 金沢医科大学病院 小児科、内科勤務
2004年~2018年大阪、神戸、東京、福岡の病院、クリニックで内科、皮膚科勤務
2018年 クリスタル医科歯科クリニックインターナショナル内に医科開設
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