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花粉症

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

花粉症について

花粉症について

花粉症ってどんな病気?

花粉症は名前のとおり花粉が関係して発症し、くしゃみや鼻みず、鼻づまりを引き起こしたり、目がかゆくなったり、のどが痛くなったりする病気です。

日本では4人に1人が発症しているとされており、特にスギやヒノキの花粉が飛ぶ2~5月ごろがピークにあたります。

全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした2008年(1月~4月)の鼻アレルギーの全国疫学調査があります。それによるとアレルギー 性鼻炎全体の有病率は39.4%であり、花粉症全体の有病率は29.8%、そしてスギ花粉症の有病率は26.5%でした。

花粉症の発症者は女性を中心に年々増加傾向にあり、仕事や勉学を妨げる症状に悩まされています。

花粉の種類と飛散時期

花粉症を引き起こす代表的な花粉を紹介します。

・スギ花粉

2~4月にかけて飛散する花粉。日本での花粉症になるとしたら、最も多いのがこのスギ花粉です。沖縄と北海道を除き、全国的に発症の引き金になります。

・ヒノキ花粉

3~5月にかけて花粉が飛びます。スギと同じく全国的に広がる花粉で、スギ花粉と一緒に花粉を持つと重症になるので注意が必要です。

・ブタクサ花粉

8~10月に飛散し、スギやヒノキに続いて飛散量が多い花粉です。しかし、背の低い草花系の花粉で飛距離が短いので、植物が生えているところに近づかないことで防止することができます。

・イネ花粉

イネの飛散時期は5~9月であり、他のイネ科の飛散時期も考慮すると、春から秋にかけて長い間飛散している種類です。スギやヒノキと違い、北海道、沖縄も含めて全国的に飛散しています。


 【監修医】医学博士 / 内科医: 板東浩 先生
 1957年生まれ。
 1981年 徳島大学を卒業。
 ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
 抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

インフルエンザ

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

インフルエンザとはどんな病気?

インフルエンザとは

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。

風邪はさまざまなウイルスが原因となって感染しますが、インフルエンザはインフルエンザウイルスからの感染のみが発症する原因となります。

インフルエンザと風邪は初期症状が似ているため、発症してすぐは勘違いすることが多くあります。

インフルエンザの場合、発症してから1~3日で38℃を超える高熱やのどの痛み、頭痛、全身のだるさ、関節痛などの全身症状が急激に現れます。
風邪は一般的にゆるやかに症状が現れるケースが多く、このように短期間で急速に症状が悪化するのがインフルエンザの特徴と言えます。

治療は薬の服用と十分な休養、栄養補給により、1週間ほどで症状が治まることがほとんどです。
まれに肺炎や気管支炎、脳症などの合併症を引き起こし、重症化する恐れもあります。

インフルエンザの流行時期

毎年流行する季節性のインフルエンザは、例年11・12月頃から流行が始まり、1月~3月頃にピークを迎えます。

近年では4月以降にもインフルエンザの流行が続き、学級閉鎖になるケースなども見られるので、普段流行しない時期であっても注意は必要です。

2016/17年に流行したインフルエンザ

2016年に、国内で最初に流行したのは「A香港型」ウイルスでした。

2016/17年シーズンはA型が収束した4月中旬になってB型が流行し、一部の地域では新学期早々に学級閉鎖にまで追い込まれました。
「春インフル」という言葉も話題となりました。

最新のインフルエンザの流行情報については、全国の市区町村や厚生労働省のホームページにて確認していただくことができます。

板東浩先生
 【監修医】医学博士 / 内科医: 板東浩 先生
 1957年生まれ。
 1981年 徳島大学を卒業。
 ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
 抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。

子どものアレルギー性鼻炎

【監修】北村 聖 先生(東京大学医学教育国際協力研究センター教授)

鼻をいじる子どもは注意!アレルギー性鼻炎

ハウスダスト(※)や花粉などで鼻粘膜が刺激されて起こる鼻炎をアレルギー性鼻炎といいます。
最近では発症の低年齢化も進み、子どものアレルギー性鼻炎も多くみられます。

生命にかかわる病気ではありませんが、そのまま放っておくと、鼻のかゆみが気になって授業に集中できない、鼻が詰まって眠れないなど、日常生活に影響を及ぼします。
鼻のかゆみや鼻づまりが気になり、鼻をほじったりいじったりして鼻血が出ることもしばしばあります。

乳幼児の場合は、鼻が詰まってミルクが飲めなくなったり、食事ができなくなったりすることもあります。
子どもは自分の苦しんでいる症状をうまく伝えることができず、病気を悪化させてしまうことも少なくありません。
気になる症状がみられたら、早めに耳鼻咽喉科の医師に相談しましょう。

※ハウスダスト・・・ダニの糞や死骸、カビやペットの毛などが含まれた室内の塵や埃のことで、アレルギーの原因になる

アレルギー性鼻炎の症状

くしゃみ・鼻みず(水溶性)・鼻づまりが三大症状で、風邪の初期症状とよく似ています。
子どものアレルギー性鼻炎では、成人に比べて鼻づまり型が多く、くしゃみ型が少ない傾向にあります。
また、眼のかゆみや充血といった症状が成人に比べて強く現れる傾向がみられます。

アレルギー性鼻炎の発症は、自律神経の働きと深いかかわりを持っています。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、日中は交感神経が、夜から朝にかけては副交感神経が働きます。
アレルギー性鼻炎の症状は、副交感神経の働きが活発になった時に出やすくなるため、朝夕に強く現れる傾向です。

アレルギー性鼻炎の症状

アレルギー性鼻炎になる原因

アレルギー性鼻炎の原因となる物質を「抗原(=アレルゲン)」といいます。
抗原が鼻から体内に侵入すると、私たちの体は「抗体(=IgE抗体(※))」という物質を作って抗原を攻撃します。

このような体の防御システムを「免疫」といいます。しかし、抗体が体内で増えすぎると過剰反応を起こし、くしゃみや鼻みずなどによって抗原を排除しようとします。これがアレルギー性鼻炎の原因となります。

※IgE抗体・・・アレルギーの原因となる抗原との接触を繰り返すたびに体内に蓄積される物質で、一定量を超えるとアレルギー性鼻炎を発症する

アレルギー性鼻炎の種類

アレルギー性鼻炎は、ほぼ一年中症状が現れる通年性アレルギー性鼻炎と、ある特定の時期に症状が現れる季節性アレルギー性鼻炎の2つに分かれます。

通年性アレルギー性鼻炎は、冬場や夏場に症状が強く現れる傾向にあります。これは、冷暖房をかけるため窓が閉め切った状態となり、ハウスダストが室内を飛び回るからです。
また、空気の乾燥も症状を悪化させる原因となります。

季節性アレルギー性鼻炎は「花粉症」とも呼ばれ、花粉が抗原である場合がほとんどです。発症時期は、抗原である植物の開花時期と一致しています。
複数の花粉に反応を起こすと、ほぼ一年中症状が現れます。また、くしゃみ・鼻みず(水溶性)・鼻づまりの三大症状に加え、眼やのどのかゆみ・眼の充血・涙目などの症状を伴います。

検査と診断

まず、問診で発症時期や症状の程度、家族のアレルギー既往歴などについて質問されます。

次いで、鼻粘膜の状態をみるための鼻鏡検査や、風邪の初期症状とアレルギー性鼻炎を見分けるための鼻汁中好酸球検査などを行います。
アレルギー性鼻炎と診断されると、原因となっている抗原を特定するための皮膚反応検査・血中特異的IgE抗体検査・鼻粘膜誘発テストを行います。

そのほか、副鼻腔炎(蓄膿症)の合併の有無を調べるためレントゲン検査を行う場合もあります。

アレルギー性鼻炎を診断するための主な検査

■鼻鏡検査
鼻鏡という器具を使用して、鼻粘膜の状態をみる検査。
アレルギー性鼻炎だと、粘膜が青白くふくらんでいたり、鼻みずが粘膜の周りを覆っていたりする。

■鼻汁中好酸球検査
風邪の初期症状とアレルギー性鼻炎の症状を見分ける検査。
スライドガラスに鼻みずをとり、試薬を加えて好酸球(※)の数値を調べる。
好酸球の数値が増加しているとアレルギー性鼻炎と診断される。

■皮膚反応検査
抗原を特定する検査。抗原液を注射したり、ごく浅い傷を作って抗原液をたらしたりして、皮膚の反応をみる。
抗原に対する抗体をもっていると、かゆみや腫れなどの症状が現れる。
検査結果に影響を及ぼすため、薬を服用している場合は必ず医師に相談すること。

■血中特異的IgE抗体検査
抗原を特定する検査。採血し、抗原に対する抗体の有無を調べる。

■鼻粘膜誘発テスト
抗原を特定する検査。抗原を染み込ませたろ紙を鼻粘膜に置いて反応をみる。
くしゃみや鼻みずなどの症状が現れることによって、抗原を特定する。

※好酸球・・・白血球の1種。アレルギー反応を高め、症状を悪化させたり慢性化させたりする

アレルギー性鼻炎の治療法

治療法は、抗原の除去や回避・薬物療法・特異的免疫療法(減感作療法)・手術の4つに分かれます。重症度や抗原の種類、患者さんのライフスタイルによって治療法を選択します。

抗原の除去や回避

アレルギー性鼻炎の治療の基本であり、患者自身や家族が日常生活の中で行うことのできる治療法です。

■ハウスダストの除去

  • ・室内の掃除には、排気循環式の掃除機を使用する。1平方メートルに付き20秒を目安に、1週間に2回以上掃除機をかける
    ・ハウスダストが付くのを防ぐため、布製のソファーの使用を避ける
    ・カーペットや畳をフローリングに変更する。また、ダニが繁殖しやすくなるため、畳にカーペットを敷くのを避ける
    ・マットレスや布団、枕には抗ダニ作用のあるカバーをかける
    ・ダニは高温多湿を好むため、部屋の湿度を50%、室温を20~25℃に保つよう心掛ける
    ・ぬいぐるみなどのハウスダストが付きやすい玩具は、小まめに洗って清潔に保つ
    ・布団は日光に当てて乾燥させ、掃除機をかける。花粉症の場合は、掃除機をかけるのみとする

■花粉の回避

  • ・花粉情報に注意し、飛散が多い時は外出を控える
    ・窓や戸を閉めて花粉が室内に入らないよう注意する
    ・外出時にはマスクやメガネを着用する
    ・毛織物などの衣服は避ける。付いた花粉をふき取ったり、払い落としたりしやすいように、ツルツルした素材の衣服を着用する
    ・帰宅時は、衣服や髪に付いた花粉をよく払い落としてから入室するよう心掛け、洗顔やうがいをし、鼻をかむ
    ・基本的に布団や衣類は屋外に干さない

■ペット抗原の除去

  • ・ペットは屋外で飼育する。特に寝室には入れないように注意する
    ・ペットの飼育環境を清潔に保つ

薬物療法

最もよく行われる治療法ですが、市販薬の多くは成人用で、子どもには適さないことも少なくありません。
必ず耳鼻咽喉科を受診したうえで、子どもに適した薬を処方してもらいましょう。

また、点鼻薬が苦手な子どもの場合は、周囲の大人がまずお手本をみせてあげてから徐々に慣らしていくことが大切です。

■アレルギー性鼻炎の治療で使用される主な薬剤

  • ・ケミカルメディエーター遊離抑制薬
    鼻づまりに効果がある。内服薬と点鼻薬があり、効果が現れるまで2週間ほどかかる。・第二世代抗ヒスタミン薬
    症状全般に効果がある。眠気などの副作用が少ない。内服薬は、効果が現れるまでに2週間ほどかかる。点眼薬や点鼻薬は比較的即効性がある。飲み合わせの悪い薬があるため、ほかの薬を服用している場合は必ず医師に相談すること。・抗トロンボキサンA2薬、抗ロイコトリエン薬
    鼻づまりに効果がある内服薬。穏やかな効き目で効果が現れるまでに時間がかかる。・ステロイド薬
    鼻粘膜の炎症を抑え、症状全般に効果がある薬。内服薬と点鼻薬がある。点鼻薬は数日で効果が現れ、副作用が少ない。内服薬は、ほとんどが症状の強い成人用であり、子どもには適さない場合が多い。・抗コリン薬
    鼻みずに効果がある点鼻薬。副交感神経の働きを抑える薬で、原則として12歳以上に使用する。・血管収縮薬
    鼻づまりに効果がある。即効性はあるが、使用しすぎると鼻づまりがひどくなる場合もあるため注意が必要です。
    原則として6歳未満での使用は避け、それ以上の年長児に使用する場合にも医師に相談しなければなりません。

特異的免疫療法(減感作療法)

抗原を少量ずつ注射して体内に取り込むことによって、その抗原に対する反応を徐々に弱めていく治療法です。
ごくまれに、アナフィラキシーショック(※)などの副作用がみられるため、反応に注意しながら行います。

治療期間は2~3年間ほどを必要としますが、治療を続けることで完治する可能性もあり、アレルギー性鼻炎の患者さんの約70%に効果があるといわれています。

※アナフィラキシーショック・・・抗原が体内に入り、血圧低下や呼吸困難、皮膚の発赤などの全身症状が現れた状態

手術

強度の鼻づまりやほかの治療法で効果がみられない場合は、手術による治療を行います。

レーザー手術は、抗原に対して過敏になった鼻粘膜を軽く焼くことで反応を弱めます。
入院が不要なため用いられやすい方法ではありますが、おとなしく治療を受けられない乳幼児などには適しません。
個人差はありますが、数カ月から2年程度効果が持続します。しかし、焼かれた鼻粘膜はいずれ再生するため、完治にはいたりません。

そのほか、鼻粘膜を切除する手術や鼻づまりを改善する整復術、鼻みずを分泌する神経を切って鼻みずを止める手術などがあります。
これらの手術はそれぞれ全身麻酔で行われ、1週間ほどの入院を必要とします。 ただし、子どもに適用されることはほとんどありません。

日常生活での注意点

アレルギー性鼻炎は完治の難しい病気ですが、日常生活に気をつければ症状の緩和や発症の予防も可能です。
子供が快適に過ごせるように、下記のことに気をつけましょう。

■周囲の大人は禁煙を
たばこの煙は鼻粘膜を刺激し、症状の悪化につながります。周囲の大人は禁煙を心掛けましょう。

■十分な睡眠がとれる環境作りを
睡眠不足は身体の抵抗力を弱めます。十分な睡眠がとれるような環境を整えましょう。

■バランスのよい食事を
野菜などのビタミンやミネラルを多く含む食品を取り入れ、バランスのよい食事をつくるように心がけます。
タンパク質や脂肪、食品添加物を多く含む食品はなるべく避けましょう。

■室内の乾燥に注意
鼻粘膜には適度な湿度が必要です。加湿器などを使用し、乾燥を防ぎます。
加湿器はカビが発生しやすいため、定期的な掃除を行いましょう。

■一緒に楽しめる運動を
適度な運動は、ストレス解消とともに自律神経の働きを高めます。
子供が継続して運動を楽しめるようサポートしましょう。
水泳をする場合は、鼻粘膜を敏感にして症状の悪化をさせてしまうことがあるため、十分に注意が必要です。

 

監修/北村 聖 先生
東京大学医学教育国際協力研究センター教授

子供の夏の感染症

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

夏に子どもがかかりやすい感染症

夏に子供がかかりやすい感染症は、手足口病 や咽頭結膜熱(プール熱) 、ヘルパンギーナ 、溶連菌感染症(猩紅熱(しょうこうねつ))などがあります。

感染力が高いものが多く、幼稚園や保育園では集団感染しやすくなっていますので、周りの子供の感染の様子で気を付ける感染症が判断できるケースもあります。

手足口病

症状

大人の場合は手、足、口に、子どもの場合はさらに肘、膝、お尻に米粒ほどの水疱性の発疹ができます。
発疹は水疱状で、やがて破れて潰瘍になり、痛痒くなってきます。口の中にできると、痛みで食事が困難になり、脱水症状をおこすことがあります。
発熱や下痢、嘔吐をともなうことも。

嘔吐や頭痛が続く場合、心筋炎や髄膜炎を合併していることもあります。

原因

エンテロウイルスなどの腸管ウイルスやコクサッキーウイルスなどの感染が原因となります。
複数のウイルスがあるので、一度かかったら大丈夫という病気ではありません。

感染経路は、風邪と同じように鼻汁・唾液などからの感染です。
また、便からも感染しますので、子供の手をよく洗うように保護者の方は気をつけましょう。

治療

小児科を受診しますが比較的軽い病気ですので、自然に治るケースが多いです。

しかし、口の中の痛みや発熱が強い場合は症状を緩和する対症療法をおこないます。
口腔内の痛みのために食事がしにくい場合は水も飲むのも困難なため脱水症状を起こしやすい状態です。
刺激が少なく、無理なく飲み込める食事内容にし、また水分補給を十分におこないます

【参考】「健康Salad」手足口病の時のおすすめレシピ<すいとん>

手足口病

咽頭結膜熱(プール熱)

症状

急な発熱(38~40℃)、のど腫れや痛み、リンパ節の腫れ、目やに、涙、充血など結膜炎の症状がみられます。
それ以外に吐き気、腹痛、下痢などが見られることもあります。

原因

アデノウイルスが感染の原因です。プールの水から感染することから、「プール熱」とも呼ばれます。6~9月頃に発生しやすく、幼稚園児や小学生はプールでうつることが多いのですが、せきやくしゃみを介して感染したり、便を介して目や口に感染して、赤ちゃんが感染したりすることもあります。
プールに入る前と後にシャワーでよく体、手、目を洗うことと、タオルや洗面器、食器を共用にしないことです。また、洗濯も別にします。

治療

小児科や眼科を受診します。症状を和らげる対症療法を行います。
高熱の場合は小児科を、結膜炎の症状がある場合は眼科での治療が必要です。

ヘルパンギーナ

症状

急な高熱(39℃前後)と咽頭、口の中の上顎の奥の粘膜に、小さな水疱ができます。
水疱が破裂し潰瘍状(かいようじょう)になることもあります。5歳未満の乳幼児に多く、食欲低下、嘔吐する場合もあります。

原因

おもにコクサッキーウイルスへの感染が原因ですが、原因となるウイルスは複数種類あるため、何度も発症することがあります。

治療

小児科を受診し、対症療法を用います。症状が重い場合は解熱剤を服用するなどで症状を和らげます。
口腔内の痛みで食事が難しい場合があるので、食事内容はやわらかく、のどごしの良いものを食べさせましょう。

また脱水症状への注意も必要ですので、水分補給をこまめに行います。

溶連菌感染症(猩紅熱(しょうこうねつ))

症状

急な発熱(38~40℃前後)と頭痛、のどの痛み、食欲不振、吐き気など、風邪のような初期症状があります。
やがてのどが非常に赤くなり、舌の表面にブツブツの赤みができることが多く(いちご舌)、口の中も真っ赤になります。

また扁桃腺や首のリンパ節が腫れたり、扁桃腺に白~黄色がかった膜ができたりすることがあります。
他に嘔吐、腹痛、筋肉痛、関節痛、首のリンパ節が腫れて痛むこともあり、発症後1~2日すると、かゆみをともなう小さな発疹が全身にあらわれます。

原因

A群β溶血性連鎖球菌が原因の溶連菌感染症です。A群β溶血性連鎖球菌という細菌が、くしゃみやせきを介して感染しておこります。
5歳をピークに4~9歳がかかりやすく、秋から春に多く発症します。
のどは12~3月に、皮膚では7月~9月に多い傾向にあります。

治療

小児科を受診し、抗生物質を服用します。
服用後、1~2日で元気になったように見えて溶連菌を完全に除く前に服用をやめてしまい再発することが多く、中耳炎・気管支炎・リンパ節炎・副鼻腔炎、急性腎炎、リウマチ熱を合併する危険度が高くなります。

単なる風邪の場合は、途中で服薬をやめても特に影響はありません。一方、溶連菌感染症の場合は、医師の指示通りの治療を最後まで続けることが大切です。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

単純ヘルペス

【監修】北村 聖 先生(東京大学医学教育国際協力研究センター教授)

単純ヘルペスってどんな病気?

「単純ヘルペス」は、私たち誰もがかかる可能性のある、ごくありふれた皮膚の感染症です。
「単純ヘルペスウイルス」というウイルスが原因となって起こり、発疹や水ぶくれなどの症状が現れます。

ウイルスには1型と2型の2種類があります。1型は口の周りや顔面など上半身に発症することが多く、2型は性器や下肢など主に下半身に症状が出るといわれています。
このうち、口手鏡の周りにできるものを「口唇ヘルペス」、性器周辺にできるものを「性器ヘルペス(GH:Genital herpes)」と呼び、単純ヘルペスの中でも最も一般的な病気です。

単純ヘルペスウイルスは感染力が強く、しかも一度感染すると、症状は治まってもウイルスは体内の神経節()に潜り込み、一生そこに棲みついてしまいます。そのため、しばしば再発を繰り返します。
大切なのは、もし感染してしまった場合にも、症状を悪化させずに早期に治療すること、人にうつさないこと、そして再発を予防していくことです。

神経節は、神経細胞が集まっているところです。

病気の特徴と症状は?

単純ヘルペスに感染すると、発疹や水ぶくれなどの皮膚症状が現れます。初感染の場合は、高熱などの重い全身症状を伴うことがあります。
その一方で、感染していても自覚症状がなかったり、症状がまったく出なかったりすることもあります。

口唇ヘルペス

口唇ヘルペスの主な原因は単純ヘルペス1型ウイルスで、接触や飛沫(※)による感染が一般的です。

初期症状としては、唇や口の周りの皮膚にピリピリ・ムズムズした不快感や痛がゆさを覚えます。その後、数時間から数日で患部に皮膚の赤みや水ぶくれができます。やがて水ぶくれは破れてかさぶたとなり、2週間程度で治ります。

初感染時には、大きめ(直径5ミリ程度)の水ぶくれが多発し、熱が出たり、あごの下のリンパ節が腫れたりすることもあります。それに比べて再発の場合は、皮膚の赤みや水ぶくれの現れる範囲が狭く、症状も軽くてすみます。

※飛沫:くしゃみや咳(せき)などでだ液や鼻水が小さな水滴となって飛び散ること

口唇ヘルペス

性器ヘルペス

性器ヘルペスは、性交渉による感染がほとんどです。感染してから2日~12日の潜伏期間をおいて発症し、性器やおしりの周辺の皮膚に赤いブツブツや水ぶくれ、ただれができます。
初感染の場合は、強い痛みや発熱を伴う場合があり、排尿や歩行が困難になることもあります。治療をきちんとすれば1週間程度で治ります。

性器ヘルペスは主として単純ヘルペス2型ウイルスへの感染によって発症します。2型ウイルスは頻繁に再発を繰り返す傾向があります。
ただ再発時には、小さな水ぶくれやただれができる程度の軽い症状ですむことが多く、それに気付かずに感染を拡げてしまうことがあるため注意が必要です。

また、女性の感染率が男性に比べて高く、20代の女性に最も多いとされています。最近では性体験の低年齢化により、若年層の患者が増えています。

単純ヘルペスウイルスによるその他の感染症(主なもの)

ヘルペス角膜炎…目の角膜に感染します。目の痛み・涙目・目が赤くなるといった症状が出ます。何度も再発すると、重大な視力障害を引き起こすこともあります。

ヘルペス脳炎…発熱・意識障害・けいれん発作・幻覚などの症状が起こります。

新生児ヘルペス…母子感染などによって発症するもので、生後間もなく発熱、黄だん、呼吸障害などの症状が現れます。脳症などの後遺症が残ったり、死亡したりするケースもあります。

アトピー性皮膚炎の人は感染に要注意

アトピー性皮膚炎の人は皮膚が弱いため、単純ヘルペスウイルスに比較的簡単に感染してしまいます。
感染すると顔や身体などの広範囲に水ぶくれが現れ、ただれたような状態になります。
特に初感染の場合は、ウイルスに対する免疫がないため重症化し、命に関わることさえあります。

アトピー性皮膚炎の患者が単純ヘルペスウイルスに感染することで起こる合併症の代表的なものに「カポジ水痘様発疹症」があります。症状としては、広範囲にわたって顔や首などに小さな水疱ができ、リンパ節が腫れたり高熱が出たりすることもあります。
アトピー自体の悪化との見分けがつきにくいことがあるので注意が必要です。

検査方法と診断

「ヘルペスかな?」と思ったら、病院やクリニックでできるだけ早く受診しましょう。唇などの症状の場合は皮膚科へ、性器や下半身の場合は泌尿器科・産婦人科に行くことをおすすめします。

単純ヘルペスは、唇や性器にできた水ぶくれなど皮膚の症状から診断することができます。
症状が出ている部分の皮膚や粘膜を綿棒でとって組織検査をすれば単純ヘルペスかどうかが簡単にわかります。

その他、症状が出ていない場合、あるいは初感染なのか再感染なのかといったことを判定するために血液中のウイルス抗体()を測定する検査もあります(これは主に皮膚科・泌尿器科、感染症内科などの専門医で受けることができます)。

ウイルス抗体:リンパ球でつくり出される糖タンパク分子で、主に血液や体液の中に存在し、体内に侵入してきたウイルスに対処しようとするもの

どんな治療をするの?

現在の医学では、いったん体内に入った単純ヘルペスウイルスを完全に排除することはできません。しかし、薬を用いることによって、ウイルスの増殖を抑えることは可能です。適切な処置をするのが早ければ早いほど、症状は軽くてすみます。
そのため、再発の前兆を感じたり症状が出てきたりしたら、できるだけ早い時期に治療を始めてください。

一般的な治療としては、抗ウイルス薬の外用薬や内服薬を用います。
全身症状が現れるなどの重症例や免疫不全の人に対する治療では、入院した上で抗ウイルス薬の点滴静脈注射を行います。
その際、細菌の二次感染を防ぐために、抗生物質を服用することもあります。

単純ヘルペスのための抗ウイルス薬

薬の名前薬の形使用法(※)副作用
アシクロビル経口薬・軟膏・点滴など経口薬は1日5回服用吐き気など胃腸症状
塩酸バラシクロビル
経口薬
1日2~3回服用
同上
ビダラビン軟膏1日1~4回、患部に適量を塗布または貼布皮膚の刺激感、皮膚のかゆみや赤みなど

症状の程度などによって、薬の服用回数は変わることがあります。

性器ヘルペスの再発を抑える療法について

単純ヘルペスの中でも、特に「性器ヘルペス」は再発を繰り返すのが特徴です。
この再発の頻度を少なくするために、症状が現れる前にウイルスの増殖を抑える治療が、最近になって日本でも行えるようになりました。
「抗ウイルス薬」を毎日少しずつ飲むことによって、再発リスクを低下させる治療法で「再発抑制療法」と呼ばれています。

「再発抑制療法」は、性器ヘルペスの標準的な治療法として、現在世界50カ国以上で認められています。
この療法は、性器ヘルペスの再発を抑えるメリットに加え、パートナーへの感染率を下げることがわかっています。
「再発抑制療法」は、おおむね年に6回以上再発する患者さんが対象となります。

詳しくは医療機関(泌尿器科・産婦人科などの専門医)にご相談ください。

単純ヘルペスの予防と対策

単純ヘルペスウイルスは人に感染する力が強く、人と人との直接的な接触のほか、タオルなどを介して感染してしまうことがあります。
皮膚に傷や湿疹ができて抵抗力が弱まっていると、ヘルペスウイルスが侵入しやすくなるので注意が必要です。

また、既にウイルスを持っている人は、身体の抵抗力が低下すると体内に潜むウイルスが暴れ出し、再発しやすくなります。
再発のきっかけとして考えられるのは、かぜ・性交渉・過労・ストレス・紫外線などです。

単純ヘルペスの種類にかかわらず、再発のリスクを減らし、パートナーや他の人にうつさないためにも、予防を心がけましょう。

再発を予防するために

ストレスや疲労をためない

まず日ごろの健康管理を心がけ、ストレスや疲労をためないことが大切です。バランスのよい食事と十分な休息をとるようにしましょう。
お酒を大量に飲むことも控えるようにしてください。

紫外線に注意する

紫外線は口唇ヘルペスを再発させる可能性があります。海水浴やスキーなどで紫外線の強い場所に行くときには、日焼け止めを使う、帽子をかぶるなどの紫外線対策をしっかり行いましょう。

人にうつさないために

患部はいつも清潔に

水ぶくれなど明らかな症状が出ているときはウイルスの量も多く、感染力の強い時期です。患部を触ったら、きちんと手洗いをしてください。
水ぶくれを破ると症状が治まるのを遅らせるほか、細菌に感染したり痕が残ったりすることもあります。患部を不潔にしないように十分に気をつけましょう。

直接の性的接触を避ける

単純ヘルペスを発症しているときは、性的接触は避けるようにしましょう。
性器ヘルペスによる感染だけではなく、口唇ヘルペスの人とのオーラルセックスによって感染し、性器ヘルペスを発症することもあります。
特にパートナーがウイルス抗体を持っていない場合には、重症化させる可能性があります。

また、たとえ自覚症状がなくても、だ液や精液などにウイルスが排泄されていることがあり、キスやセックスでパートナーに感染させてしまうことがあります。
前出の「再発抑制療法」を受けていても、感染リスクが完全になくなるわけではありません。

パートナーとともに病気についての理解を深め、コンドームを使用することが、より確実な感染防止策だと考えられます。

新生児に触れる際の心がけ

赤ちゃんは免疫機能が未熟なため、口唇ヘルペスなどができている間のキスは避けてください。
患部を触った手で、赤ちゃんに触れないように注意しましょう。

身の回りのものは共用しない

タオルの共用は避けましょう。コップやグラスなどの食器も、単純ヘルペスの症状が出ている間は、人と同じものは使わないようにしてください。

 

監修/北村 聖 先生
東京大学医学教育国際協力研究センター教授

風疹

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

風疹とは

子供のときと大人になったときの風疹の症状と特徴

38℃くらいの発熱、目の充血、のどのはれと痛みといった風邪に似た症状とともに、小さな赤い発疹が、顔、体、手足など全身にでます。
この発疹にかゆみはほとんどなく、はしかのように発疹が大きくなることもありません。また、耳のうしろのリンパ節がはれて痛む点も特徴です。

これらの症状は、3~4日でおさまります。そのため、「3日はしか」と呼ばれることもあります。

風疹の症状は、子どものうちは比較的軽いものですが、まれなケースとして脳炎や血小板減少性紫斑症(けっしょうばんげんしょうせいしはんしょう)など合併症が発生することがあります。

また、子どもの感染症と思われがちですが、大人が感染すると、発熱や発疹期間が長く(一週間かそれ以上)、関節痛がひどいなど、子どもと比較し症状が重くなることが多いと言われています。

風疹にかかる原因はウイルス

風疹ウイルスへの感染が原因です。春先から初夏にかけて流行する傾向があります。潜伏期間は2~3週間です。
一度感染すると免疫ができ、多くの人は生涯かかることはありません。感染しても明らかな症状が出ることなく免疫ができてしまう人もいます。
風疹にかかったことがあるかどうかは、血液検査で調べられます。医師に相談しましょう。

風疹ウイルスの感染力は弱いですが、感染しても発症しないことがあることから、知らないうちに他の人にうつしてしまいます。感染の原因は主に飛沫感染であり、風疹ウイルスをもった人のくしゃみや会話などの唾液しぶきなどから感染します。

風疹の治療

通常は、安静にしていれば問題ありません、症状が重い場合には、症状を緩和する対症療法が行われます。
二次感染予防のために、抗菌薬が使われることもあります。

予防方法

ワクチンの予防接種をします。(後述)

大人の風疹は、とくに男性の割合が多い

子どもの頃に予防接種を受けなかった成人に多く、とくに男性の割合が多い

患者は成人が9割で、とくに男性は20~40代に多く、男女差は3.7倍程です

風疹患者の性別年齢分布(2010年~2013年)
https://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/34/398/graph/f3983j.gif

2014年度の感染症流行予測調査によると、30代前半~50代前半の成人男性の5人に1人は風疹の免疫を持っていませんでした。
20代の男性は10人に1人、30代後半の男性では5人に1人です。

この男女比および世代比の差は、風疹の定期予防摂取制度の変遷によるもので、成人になって風疹にかかる人の多くは、子どもの頃に予防接種の機会がなかったためです。

予防接種は、以前は女子中学生のみを対象としてきましたが、1995年より生後12ヶ月から90ヶ月未満の男女小児、および、中学生男女となりました。

2014年7月~9月に実施された抗体化測定:赤血球凝集抑制法(2015年3月時点)HI法で8未満

参照:NID国立感染症研究所 平成26年度(2014年)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/y-graphs/5502-rubella-yosoku-serum2014.html

風疹にかかると、妊娠中の女性が近くにいた場合、風疹をうつし、赤ちゃんが先天性風疹症候群となって生まれてくる可能性があります。

大人の風疹は、とくに男性の割合が多い

先天性風疹症候群とは

風疹に対する免疫が不十分な妊娠初期の女性が風疹ウイルスに感染することで胎児も感染してしまい、生まれてきた赤ちゃんが難聴、心疾患、白内障、そして精神や身体の発達の遅れ等が見られる可能性があります。これらの病気を先天性風疹症候群と呼びます。

予防のために、予防接種を受けてください

大人になる前に予防接種を!

これまで風疹の予防接種を受けたことがない人は、男女関係なく風疹ワクチンを接種しましょう。
前述のとおり、通常、風疹の症状自体は重いものではありませんが、まれに合併症を引き起こし、重症化するケースがあります。

また、妊婦への感染および先天性風疹症候群発症の可能性もありますので、家族もできれば早めに、予防接種を受けてください。

風疹は一度かかると生涯かかることはありませんが、「子どもの頃に風疹にかかった」「予防接種を受けた」と家族に言われても、『記録』がなければ医療機関に相談してください。
すでに風疹にかかったと『記憶』のある人たちに血液検査を行ったところ、約半数は記憶違いか、風疹に似た他の病気にかかっていたというケースがあるようです。

もし、風疹にかかったことが血液検査によって確かめられていない場合は、予防接種を受けることをおすすめします。
本当に子どもの頃に風疹にかかったことがあったとしても、成人になって予防接種を受けることに問題はありません。

成人女性の予防接種

妊娠中は予防接種することができません。妊娠出産年齢の女性にワクチン接種する場合は、妊娠していない時期(生理中あるいはその直後が確実)にワクチン接種を行い、その後2ヶ月間は避妊しましょう。

妊娠中に風疹ワクチンを接種したために胎児に障害が出たという報告は現時点ではありませんが、理論的に100%危険の可能性がないとは言えないため、注意が必要です。

風疹ワクチンとは

弱毒性を行った種(たね)ウイルスを培養・増殖させて凍結乾燥したものを接種します。
通常の風疹感染とは異なり、ほとんど症状が出ませんが、風疹ウイルスに対する免疫を得ることができます。
麻疹(はしか)ワクチンと混合した麻疹風疹混合ワクチンが定期予防接種に用いられています。

予防接種の費用

自己負担になります。接種を行っている医療機関にお問い合わせください。料金の設定は、医療機関によって異なります。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

食道がん

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

食道がんとは

気管との分岐点から胃の入り口をつなぐ一本のパイプ状の臓器(食道)にできたがんを「食道がん」といいます。

食道は「頸部(けいぶ)食道」「胸部食道」「腹部食道」の大きく3つに分かれ、日本人の食道がんの90%近くは「胸部食道」にできると言われます。
食道の入り口の約3cm下から20cmのあたりにできるがんです。

食道がんとは

食道がんの種類と原因

食道がんには2タイプあります。

扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)

食道の内側(筒の内側)の表層部(粘膜上皮)できるがんです。日本人の食道がんの90%を占めると言われます。

扁平上皮がんの特徴は、口から入ってきた刺激物や異物に繰り返しさらされ、細胞分裂が著しく、そのため細胞の異変もおこりやすいという点です。
異変が起きても自然修復が追いつかなくなり、異変が積み重なりがん細胞ができます。
健康であれば免疫の力でがん細胞は排除されますが、排除が追いつかなくなるとがん細胞が活発に細胞分裂しはじめます。

原因:喫煙、大量の飲酒、刺激的な食べ物(熱い飲食物、焦げた食べ物)などの危険因子に長期間さらされること。

がんを発症しやすい人:若いころから喫煙、毎日大量に飲酒(アルコール分解力が弱く、飲酒で顔が赤くなる人)、肥満、野菜不足

また、食道がん患者が、女性と比較し男性が6倍ほど多いのは、これらの危険因子に長期間さらされることが多いためと言われています。

腺がん

食道の内側の壁(食道壁)には粘液を分泌する「食道腺」があります。この食道腺を形成している腺細胞ががん細胞と化したものです。

原因:喫煙、食道炎が進行したバレット食道(食道の壁の内側の細胞が異常になる)

がんを発症しやすい人:胃酸が食道に逆流して食道が炎症をおこす逆流性食道炎が慢性化し、食道粘膜の細胞が変質してしまった状態の「バレット食道」の人、白人男性、喫煙者

食道がんの進行と転移

扁平上皮の下に発生したがんは、周囲の組織を破壊しながら増殖を続け、上下左右へと広がっていきます。これを「浸潤(しんじゅん)」といいます。
奥深くへ浸潤し、粘膜層、固有筋層、外膜をこえ、やがて食道の外へ広がります。
がんが粘膜内に留まっているうちは「早期食道がん」、粘膜下層にまで進んだものを「表在食道がん」、固有筋層まで進むと「進行がん」と呼びます。

「早期食道がん」の初期段階であれば、がん細胞を切除することで完全に治ります。
「表在食道がん」まで進むと、がんがリンパ節などへ転移しやすくなります。
「進行がん」にまで進むと、食道周辺の臓器に浸潤していきます。

さらに、食道壁にはリンパ管や血管が張り巡らされ、また食道の周辺にはリンパ管が豊富にあるため、リンパ液や血液などによってがん細胞が体の様々な部位に運ばれ、転移していきます。

食道がんの症状

早期食道がん

自覚症状がありません。人によっては飲み込む時にのどに違和感がある、熱いものや酸っぱいものでのどがしみるといった違和感があります。
この違和感が続くようであれば、受診をおすすめします。

進行がん

飲み込む時に、つかえた感じがします。食事をするとのどや胸に痛みを感じるようになります。
これはがんが進行して大きくなって、食道の内側に張り出したりして食べ物の通り道が狭くなっているからです。食事がしづらくなって体重が減少していきます。

転移がん

がんを放っておいてリンパ節や食道から遠い臓器にも転移すると、そこからがんが増殖していきます。
例えば背骨に転移すると、背中や胸が痛み出します。肺などの呼吸器に転移すると、声がかすれたり咳が出たりします。

食道がんの診断方法と治療方針の検討

自覚症状に気づいた、あるいは検診などでがんの疑いがあったら、専門医による診断を受けます。
検査で詳しく調べ、体力や身体の状態など様々な状況を考慮して治療方針を決めます。

検査から治療方針の策定まで

1.検査
内視鏡検査(胃カメラ検査)および食道造影検査(バリウムを飲んでレントゲン検査)で食道壁の状態を確認します。

2.診断
内視鏡検査時に採取した食道の組織を詳しく調べ、がん細胞なのか正常な細胞なのかを判定します(組織生検)。「扁平上皮がん」なのか「腺がん」なのかはここで判定されます。

3.病期の確認
がんの進行度や悪性度、転移の有無、健康状態などを検査します。検査方法は、CT検査、MRI検査、PET/CT検査、骨シンチグラフィーなどで行います。

4.治療方針の策定
検査結果などを考慮し、治療方針を決めます。

食道がんの治療法

食道がんの標準的な治療法は大きく4つあります。これら4つを組み合わせて治療がなされます。
身体やがんの状態、転移の部位などによって治療法が異なります。

手術療法

治療の中心となるのは手術療法です。がんを切除する手術を行います。病巣の切除とその周囲の組織も切除します。
病巣の位置によっては声帯や気管も切除するので、これらの失った部分の再建が必要です。
術後には飲み込みの訓練なども行われるため、入院期間が長くなります。近年はおなかを切らずに、内視鏡を用いて切除する方法もあります。

内視鏡的治療

がんの進行が初期の場合、内視鏡で操作器具を挿入してがんを切除することができます。がんの大きさによって切除方法が異なります。
スネアを挿入し、がんを切り取る方法(EMR:内視鏡的粘膜切除術)、ナイフで粘膜下層の組織ごとがんを切除する方法(ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術)がよく用いられます。

他にもレーザーやアルゴンプラズマ、電磁波を使った治療法があります。がんの深さと大きさから方法を検討します。

化学療法

抗がん剤と呼ばれる薬を注射したり、内服したりする治療法です。抗がん剤を使って、がん細胞の増殖・分裂を阻害し、がんを死滅させたり小さくさせたりします。
抗がん剤は健康な細胞も攻撃してしまうため、化学療法は副作用が出やすい治療法です。

放射線療法

毎日少しずつ放射線をがんにあて、がん細胞を攻撃する治療法です。体の外側から放射線をあてる外照射と、内側からあてる腔内照射があります。
食道がんの疑いがあったら、すぐに専門医を受診しましょう。内視鏡検査(胃カメラ)では早期の小さながんでも発見することができます。

治療方針は、進行度、悪性度、体力などを総合的に判断して決定します。医師に相談したり調べたりして、最終的には自分自身の意思で決定しましょう。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

アレルギー性鼻炎

【監修】北村 聖 先生(東京大学医学教育国際協力研究センター教授)

アレルギー性鼻炎ってどんな病気?

かぜでもないのに、くしゃみや鼻水がとまらない。鼻もつまり鼻水が出る。そんな症状が起こったら、アレルギー性鼻炎かもしれません。
アレルギー性鼻炎は、アレルギー反応により起こる鼻の粘膜の炎症です。

近年、アレルギー性鼻炎にかかる人の数は増加しており、日本人の5人に1人は、この鼻炎に悩まされているといわれています。この病気が増えている原因には、気密性の高い居住環境によるハウスダスト(※)の増加、花粉の飛散量の増加、大気汚染、ストレス、食生活の変化などが挙げられます。

アレルギー性鼻炎に一度かかってしまったら、アレルギーを引き起こす原因となる物質、アレルゲン(抗原)との接触を断つことが肝心です。症状を改善するために、日々の生活を見直しケアを行いましょう。

※ハウスダスト…室内塵のことで、ホコリやペットなど動物の毛、ダニ、カビなど、アレルギーを引き起こすいくつかの抗原が混ざっています。

アレルギー性鼻炎ってどんな病気?

アレルギー性鼻炎の症状

アレルギー性鼻炎は、発作的に起こるくしゃみ、さらさらした水のような鼻水、鼻づまりが何度も繰り返し起こるのが特徴です。
この鼻炎には、症状が1年中現れる「通年性アレルギー性鼻炎」と、一定の季節に限って症状が現れる「季節性アレルギー性鼻炎」の2つがあります。また2つともが同時に起こることもあります。

通年性アレルギー性鼻炎の場合、冬により強い症状が出ます。暖房で窓を閉め切っているため室内でハウスダストが飛び回り、さらに空気が乾燥することで症状が悪化します。また合併症として、ぜんそくやアトピー性皮膚炎が起こることもあります。

季節性アレルギー性鼻炎のほとんどはいわゆる「花粉症」と呼ばれるもので、その発症時期は、原因となる植物の開花時期と一致しています。
鼻の症状のほか、目のかゆみ・充血(アレルギー性結膜炎)、のどの違和感、皮膚のかゆみや湿疹、咳、頭が重たい感じなどの症状が出ることがあります。

アレルギー性鼻炎を起こす抗原

アレルギー性鼻炎の原因となる抗原のほとんどは、呼吸によって体内に入ってくる吸入性のものです。繰り返し抗原を吸い込むことでアレルギー反応が起き、鼻の不快な症状が現れます。

〈主な吸入性の抗原〉

・ハウスダスト・・・ダニ、ネコ、トリなどのペットの毛や羽根など

・花粉・・・(春)スギ、ヒノキなど

(夏)スズメテッポウなど

(秋)ブタクサ、ヨモギなど

その他・・・カビ類、そば粉、きのこの胞子など

アレルギー性鼻炎はかぜと間違えやすい?

アレルギー性鼻炎の症状は、かぜの初期症状ととてもよく似ています。
それぞれ治療法が異なるので、アレルギー性鼻炎にとって適切な治療を受けてください。

アレルギー性鼻炎の検査と診断

くしゃみ、鼻水などの症状がアレルギー性の反応であるかどうかを調べ、そうである場合は、アレルギー反応を起こしている抗原が何かを調べる検査を行います。

アレルギー性の症状であるかどうかを調べる検査

・問診

年齢、性別、職業、症状の種類、程度、発症年齢、発症時期、合併症、アレルギー既往歴、家族歴、治療歴と経過などを詳しく聞きます。

・鼻鏡検査

鼻の粘膜の色、腫れ具合、鼻水の分泌量などの状態を診ます。

・鼻汁中好酸球検査

アレルギー性鼻炎の人に多く見られる「好酸球(※)」という細胞の数を調べます。

※好酸球…血液の中の白血球の一種。アレルギー反応に関与する細胞で、鼻水や痰(たん)の中に分泌されます。

原因となる抗原を調べる検査

・皮膚テスト

皮内テストとスクラッチテストの2種類があります。
皮内テストは、問診の結果から推測される抗原の水溶液を前腕に皮内注射して、皮膚の赤くなった面積や状態を観察します。スクラッチテストは皮膚を出血させない程度にひっかいて傷をつけ、そこに抗原をたらして反応を診ます。

・血清特異的IgE抗体(※)検査

採血をして抗原に反応するIgE抗体を使って調べる検査で、一度に多数の抗原を調べることができます。アレルギーの強さもある程度までわかります。

※IgE抗体…体内に入ってくる異物を排除する免疫のしくみに関係する抗体。原因となる抗原との接触を繰り返すうちにこの抗体が体内に蓄積され、一定量を超えるとアレルギー症状が起こります。

・誘発テスト

抗原をしみ込ませたペーパーディスク(ろ紙)を鼻の粘膜において、アレルギー反応が現れるかどうかを調べます。
ただし、危険性もあり現在ではほとんど行われていません。

その他の検査

重症のアレルギー性鼻炎では、副鼻腔炎(蓄膿症)の合併がないかどうかを調べるために、レントゲン撮影を行う場合もあります。

アレルギー性鼻炎の治療法

アレルギー性鼻炎の治療法には、抗原の除去と回避、薬物療法、特異的免疫療法、手術療法があります。

抗原の除去と回避

アレルギー性鼻炎になるかどうかは、その人自身の遺伝的な体質によるところが大きいため、完全に予防することは困難です。
ですが、生活環境から原因となる抗原を取り除き、接触を避けることで症状を軽くできます。

ハウスダストの除去

  • 居間、寝室などは毎日掃除する。
  • 排気循環式の掃除機を用いて、1平方メートルにつき20秒以上の時間をかける。
  • 布団、毛布などはよく日光にあてて乾燥させ、週に1度は掃除機をかける。ただし、花粉症の場合は外に干さないようにする。
  • 防ダニの布団を使用する。寝具にはダニを通さないカバーをかける。
  • 布製ソファ、カーペットの使用、畳はやめてフローリングにする。
  • 部屋の湿度は50%、室温は20~25℃に保つ。

花粉の回避

  • 花粉情報に注意する。
  • 飛散の多いときは窓、戸を閉めて花粉を家の中に入れないようにする。
  • 飛散の多いときの外出を控える。外出する場合はマスクやメガネを着用する。ニットなど花粉が付着しやすい衣服の使用は避ける。ツルツルした素材がおすすめ。
  • 帰宅時には玄関先で服や髪についた花粉を落とす。うがいと洗顔をして、鼻をかむ。
  • 衣類の乾燥は乾燥機を使う。基本的には外に干さないことが重要。布団など外に干した場合は花粉をよく落としてから取り込む。

薬物療法

薬物治療は、最も一般的に行われている治療法です。抗アレルギー薬を基本に、必要に応じて症状をやわらげる薬を併用します。

■抗アレルギー薬

・ケミカルメディエーター遊離抑制薬
鼻づまりを改善します。効き目が現れるのが遅く、1~2週間は続けて飲む必要があります。使い続けることで症状が改善される確率がさらに上昇します。

・ケミカルメディエーター受容体拮抗薬
・第2世代ヒスタミン拮抗薬(抗ヒスタミン薬)
症状全般を改善します。十分な効果を得るまで2週間程度かかります。初期に開発された第1世代ヒスタミン拮抗薬よりも眠気などの副作用が少なくなっています。

・トロンボキサンA2拮抗薬
鼻づまりをはじめ、くしゃみ、鼻水にも効果があります。血小板が固まるのを抑えるため、脳血管障害や虚血性心疾患の抗血栓治療などに使われる抗血小板薬、血栓溶解薬、抗凝固薬との併用には注意を要します。

・ロイコトリエン拮抗薬
鼻の粘膜の腫れを抑え、鼻づまりを改善するという点では、第2世代ヒスタミン拮抗薬よりも効果が早く現れます。

■ステロイド薬

・局所ステロイド薬(点鼻薬)・飲み薬
鼻粘膜の炎症を抑えるとともに、くしゃみ、鼻水、鼻づまりにすぐれた効果を示します。効果もすぐ早く現れ、抗アレルギー剤の経口薬と併用することで症状はかなり抑えられます。

■自律神経作用薬

・α交感神経刺激薬
主として点鼻薬として用いられます。鼻づまりは速やかに改善されますが、続けて使用すると効果の持続は短くなり、かえって慢性的な鼻づまりを引き起こすことがあります。

特異的免疫療法(減感作療法)

薬で症状が改善しない場合に用いられる治療法で、原因となっている特定の抗原の抽出液を皮下注射します。
低濃度・少量からはじめて、徐々に濃度と量を増やし、その抗原に対する体の免疫機能を高めていきます。2~3年間、定期的に抗原の注射を続けると約70%の人が良くなるといわれています。

薬物療法などの対症療法とは異なり、現在のところ長期的な症状の改善、完治も期待できる唯一の治療法です。

手術療法

鼻腔の形に異常があって症状が改善されにくい人、薬物療法等では鼻づまりが治らない(鼻の粘膜の腫れがひどい)人には手術療法が効果的です。

手術の種類としては、鼻粘膜にレーザー照射してアレルギー反応をやわらげるレーザー手術、鼻粘膜を切除する手術、電気で鼻粘膜を焼く手術などが行われます。
特にレーザー手術は出血もほとんどなく、痛みも少ないため、入院しない日帰り手術も可能です(ただし1~2年経つと鼻粘膜が再生され、効果が薄れる場合があります)。

生活上の注意点と予防法

日常生活の中で注意を払うことで、アレルギー性鼻炎の症状を改善するとともに、発症を予防したり悪化を遅らせたりすることが可能です。主な予防法は下記の通りです。
■分煙・禁煙を徹底する
たばこの煙は鼻の粘膜を刺激し、症状を悪化させる原因になるため注意が必要です。職場や家庭で、分煙・禁煙を実践しましょう。

■ペットを室内で飼わない
イヌやネコなどの体に住みついたダニはアレルギーの原因になります。ペットはできるだけ屋外で飼い、寝室に入れないようにしましょう。
またペットの飼育環境を清潔に保つことも大切です。

■体に抵抗力をつける
十分な睡眠を取り、過労を避け、ストレスをためないことが大切です。体の抵抗力を高めるため、厚着や冷暖房に頼った生活を避け、適度にスポーツをするようにしましょう。

■バランスの取れた食生活を心掛ける
タンパク質や脂肪の摂り過ぎは控えてください。毎日のメニューにビタミンやミネラルをたっぷり含む野菜などを取り入れ、バランスの良い食事を摂る習慣をつけましょう。食品添加物を含む食品にも注意が必要です。

◎花粉情報を以下のホームページからキャッチしておきましょう。
環境省花粉観測システム(はなこさん)

http://kafun.taiki.go.jp/

環境省花粉情報サイト

http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/

環境省花粉症保健指導マニュアル

http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/html/001.html

 

監修/北村 聖 先生
東京大学医学教育国際協力研究センター教授

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

COPDとは~大気汚染や喫煙が原因

COPDとは~大気汚染や喫煙が原因

COPDはChronic Obstructive Pulmonary Diseaseの頭文字であり、日本語名で慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)といいます。肺に慢性的な炎症がおこることで気道が狭まり、呼吸困難を招く病気です。

大きく分けて、気腫(きしゅ)型(気管支の先端にある、酸素と二酸化炭素を交換する肺胞が壊れる肺気腫)と、非気腫(ひきしゅ)型(炎症により気管支が狭くなる慢性気管支炎)があります。この二つは過去に分けて考えられていましたが、現在はこの二つのどちらもCOPDとよびます。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の症状

ちょっとした動作での息切れ、長引く咳やたん(痰)などの症状があらわれます。
長い年月をかけてゆっくりと進行するため、自覚しにくい病気です。階段の上り下りによる息切れや咳などの初期症状は、加齢によるものと見過ごしてしまいます。
気づかないうちに肺機能が低下し、命にかかわるほどにどんどん悪化していくのです。

COPDの原因!大気汚染、喫煙に警告

大気中の有害物質やガスを吸い込むことで気管支が炎症をおこし、肺胞(血中の二酸化炭素と酸素を交換する)が破壊されます。有害物質の中でも身近なものは喫煙です。COPD発症原因の8~9割は喫煙が占めています。そして、喫煙者の約2割はCOPDを発症するという状況です。

COPDは長期にわたる喫煙習慣によりゆっくりと進行するため、中高年になってから発症することが大半です。とくに10年以上の喫煙歴がある人、いわゆるヘビースモーカーやチェーンスモーカーにおいては発症リスクが高くなる傾向にあります。
大気汚染による肺への悪影響だけでなく、主な要因として喫煙や副流煙が肺に与える影響が大きいことを忘れてはいけません。

COPDの治療

治療は内科あるいは呼吸器科で行います。
COPDは治癒させることはできません。一度壊れてしまった肺は元に戻らないからです。そのため、症状の程度に合わせた治療を行うことで、呼吸機能低下の進行速度を抑えます。

大半の原因は喫煙です。したがって治療にはまず禁煙を行い、そのうえで薬物療法により症状を緩和、運動療法でリハビリを行いながら運動能力の低下を抑えます。

COPDの薬物療法

息苦しさなどの症状を和らげることを目的とします。処方する薬は、気道を広げて呼吸を楽にする気管支拡張薬、たんを出しやすくする去痰薬(きょたんやく)や喀痰調整薬(かくたんちょうせいやく)を用います。症状が重い場合は、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬を服用したり、在宅酸素療法をおこなったりします。

生活習慣を整える包括的リハビリテーション

薬物療法や酸素療法では不十分な場合、治療を全身の病気としてとらえ、運動療法、栄養療法、呼吸訓練、心理面でのサポートをおこなう包括的リハビリテーションが行われます。

類似の病気、急性気管支炎

同じような症状で、急性気管支炎という病気があります。COPDは慢性的な病気ですが、急性気管支炎は慢性化することはありません。ウイルスや、刺激性、化学ガスや粉塵などの有害物質が原因で発症します。症状として発熱や喉の痛み、激しい咳、たんといった症状が現れます。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

アレルギー疾患とうつ

【監修】北村 聖 先生(東京大学医学教育国際協力研究センター教授)

アレルギー性疾患とこころの不調

アレルギー性疾患は、治療が長期にわたる慢性的な病気のひとつです。
そのため、治療の見通しへの不安や生活の質(QOL:Quality of Life)の低下などから、大きなストレスを感じてしまう傾向がみられます。特にアトピー性皮膚炎では皮膚の赤みなどが気になり、外出するのが憂うつになってしまうことも考えられます。

そのまま放っておくと抑うつ状態になり、治療への意欲が低下したり症状の悪化をもたらしたりする場合もあります。
アレルギー性疾患に伴うこころの不調は、かかっている病気に隠れて気づかれにくく、患者さんが一人で悩みをかかえてしまうことも少なくありません。

アレルギー性疾患の治療の過程で「なぜか治療への意欲がわかない」などのこころの不調を感じたら、まずは担当医に相談してみましょう。

こころの不調を伴いやすいアレルギー性疾患とは?

アレルギー性疾患の中でも、アトピー性皮膚炎と喘息(ぜんそく)は、治療が長期にわたって肉体的な負担も少なくないことから、こころの不調を伴いやすいといわれています。
アトピー性皮膚炎と喘息についての概要は下記の通りとなります。

アトピー性皮膚炎

症 状発疹、かゆみ など
原 因主に、アレルギーの原因物質である抗原(アレルゲン)により引き起こされる。気温や湿度の変化、衣類などでこすれたときの刺激、ストレスなどが誘因となる
検査と診断抗原を特定するために血液検査や皮膚反応検査を行う
治療法ステロイド外用薬やタクロリムス水和物軟膏薬で炎症を抑える。
かゆみの強い場合は抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を服用する
アトピー性鼻炎

喘息

症 状喘息発作、せき、喘鳴(ぜんめい)(※1) など
原 因気道(※2)が炎症を起こし、収縮することによって発症する。主に、アレルギーの原因物質である抗原(アレルゲン)によって引き起こされるが、風邪やストレスが誘因となる場合もある
検査と診断抗原を特定するための血液検査や皮膚反応検査に加えて、スパイロメーター(肺活量計)を用いた呼吸機能の検査を行う
治療法主に吸入ステロイド薬を使用し、気道の炎症を抑えて喘息発作を予防する。喘息発作が起こった場合には、気道を拡げて呼吸を楽にするためにβ2刺激薬を使用する。重症の喘息には、経口ステロイド薬を使用する

※1喘鳴・・・ゼイゼイ、ヒューヒューというような雑音のある呼吸
※2気道・・・気管支や肺など、呼吸するときの空気の通り道

アトピー性皮膚炎とこころの不調

アトピー性皮膚炎によるかゆみのために、発疹患部位をかくことを「掻破行動(そうはこうどう)」といいます。
掻破行動は、人間関係や仕事などのストレスによっても誘発されます。

なかには、かゆくないにもかかわらず、ストレスを一時的に解消するためにかき、その結果、症状が悪化してしまうケースも見受けられます。
こうしたケースでは、症状の改善のためにストレスの除去が不可欠です。

抑うつ状態の有無を診断するために「アトピー性皮膚炎用心身症尺度」という質問表を用いる場合もあります。
また、アトピー性皮膚炎と抑うつ状態では、ともに睡眠障害が見受けられます。

さらに、その特徴に違いがあり、前者はかゆみのために寝つけない入眠困難型が、後者は早朝に目が覚めてしまう早朝覚醒型が多いといわれています。
そのため、アトピー性皮膚炎で早朝に目が覚めるという場合は、抑うつ状態を伴っている疑いがあります。

喘息とこころの不調

患者さんの心理状態を把握するために「気管支喘息症状調査票」などの問診表を用いる場合もあります。
問診表は点数化されており、点数が高いと抑うつ状態を伴っていると診断されます。
特に、小児から喘息を発症し長い間患っている場合は、治療の見通しへの不安から抑うつ状態を伴う頻度が高いといわれています。

また、抑うつ状態を伴う喘息では喘息発作がないにもかかわらず、早朝覚醒型などの睡眠障害が起こる場合があります。

こころの不調を伴う場合の治療法

まずはそれぞれの病気に適切な治療を行って、ストレスの軽減やQOLの向上を図ることが大切です。
それでも効果がみられない場合は、主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を使用した薬物療法を行います。
SSRIは、第3世代の抗うつ薬で、精神を安定させる脳内物質(セロトニン)のバランスを整えます。

比較的副作用も少なく、安全性も高いといわれているため、精神科や心療内科以外の医師でも使用しやすい薬剤とされています。
そのため、皮膚科や呼吸器内科の担当医から心身両方の治療を受けることも可能です。
また、必要に応じて精神科や心療内科などの専門医を紹介される場合もあります。

アトピー性皮膚炎で抑うつ状態を伴うと、睡眠障害が強く現れる傾向にあります。
睡眠が浅いと掻破行動が激しくなる恐れがあるため、ベンゾジアゼピン系短時間型睡眠薬を併用する場合もあります。
ベンゾジアゼピン系薬は呼吸抑制作用もあるため、抑うつ状態を伴う喘息には、あまり使用しません。

日常生活におけるセルフケアとは?

アレルギー性疾患やそれに伴うこころの不調を改善するためには、日常生活におけるセルフケアも大切です。
下記のようなポイントを抑えながら、できることから始めてみましょう。

上手にストレス解消

不安によるストレスは、症状の悪化や抑うつ状態を招く恐れがあります。好きな音楽を聴いてリラックスするなど、上手にストレスを解消しましょう。
規則正しい生活習慣を身につけてストレス耐性を高めることも大切です。

周囲の人に相談

一人で悩まず信頼できる人に相談してみましょう。ほかの患者さんと交流がもてる勉強会などに参加するのもよいでしょう。
人に話すことで気持ちが楽になったり、ほかの患者さんの体験や治療への取り組みを聞くことで、治療への意欲がわいたりすることもあります。

症状日記をつける

掻破行動や喘息発作が起こるパターンを把握し、予防するためには症状日記が有効です。
掻破行動や喘息発作が起こったきっかけや時刻、症状の強さなどについて記録しましょう。
喘息ではピークフローメーター(最大呼気流量計)(※)を使用して、起床時と就寝時に呼吸機能をチェックし、記録しておくとよいでしょう。

※ピークフローメーター:深く息を吸って一気に吐き出した時の最速値を測定する器具。手に持てるほどの大きさで、取り扱いは簡単。比較的安価で市販されている

家族や周囲の人が気をつけること

抑うつ状態を伴ったアレルギー性疾患の治療には、家族や周囲の人々の理解が必要です。
下記のことに注意して、適切な治療が行えるようサポートしましょう。

聞き役に徹する

患者さんが自分の悩みや不安を打ち明けたときには、あれこれ質問したり意見を述べたりせず、聞き役に徹して静かに耳を傾けましょう。

励ましは厳禁

「頑張って」などの励ましは、かえって患者さんに負担をかけてしまいます。つらい気持ちを理解し、共感する言葉をかけ、気持ちを楽にしてあげるよう心がけましょう。

ゆっくり休養できる環境づくり

仕事や家事・育児などは分担して、患者さんが気兼ねなくゆっくりと休養できるような環境を整えましょう。

服薬のサポート

自己判断による薬の中断や飲み忘れ防止のために、医師の指示どおり服薬しているかを確認しましょう。患者さんの服薬後の変化も観察し、医師に伝えましょう。

気長に見守る

一見元気に見えても、精神面がまだ不安定だという場合も少なくありません。あせらず気長に患者さんを見守ってあげましょう。

 

監修/北村 聖 先生
東京大学医学教育国際協力研究センター教授

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