食欲不振の病気一覧

症状から調べる

生活習慣病とうつ

【監修】北村 聖 先生(東京大学医学教育国際協力研究センター教授)

生活習慣病とは?

食べ過ぎや運動不足など、生活習慣の乱れによって引き起こされる病気をまとめて生活習慣病といいます。
日本では人口の約半分が何らかの生活習慣病にかかっているとの説もあり、最近では中高年だけではなく、若年層での発症も多くみられます。

特に、糖尿病や高血圧、高脂血症などは継続した治療が必要であり、また病気による合併症が怖い病気だといわれているため、患者さんは不安などのストレスを感じやすくなっています。時には不摂生な生活習慣を送っていた自分に対し、自己嫌悪に陥ってしまうこともあります。

さらに、自己嫌悪によって抑うつ状態にまで状態が進行してしまうと、治療への意欲が減退して症状の悪化や合併症を引き起こす危険性もあります。
そのため、強い不安を感じてしまい生活習慣病の治療が思うように進まない、といったことで悩んでいる場合は、早めに担当医に相談しましょう。

生活習慣病とは?

長期の治療が必要な糖尿病や高血圧の症状・原因とは?

生活習慣病の中でも糖尿病や高血圧の患者さんは、長期にわたって治療を続ける必要があり、食事制限など日常生活での制約が多いため、こころの不調を感じやすい傾向にあります。

また、糖尿病と高血圧の概要については、下記のようなものがあります。

糖尿病とは?

糖尿病は「1型糖尿病」「2型糖尿病」「妊娠糖尿病」「その他の糖尿病」の大きく4つに分かれます。
このうち最も高頻度で、生活習慣が発症に大きく関与しているのは「2型糖尿病」で、糖尿病患者さんの約90%を占めています。

■糖尿病(2型糖尿病)

症状口渇(こうかつ)、多飲、多尿、倦怠感、体重減少など
原因インスリン(※1)が不足したり働きが鈍くなったりして、ブドウ糖がうまく体内に行きわたらなくなり、血糖値(※2)が上昇して発症する。高脂肪食中心の食生活や運動不足などによる肥満が誘因となる。加齢やストレス、遺伝的体質などが関係しているとの説もある
検査と診断空腹時血糖値、随時血糖値、ブドウ糖負荷試験(※3)を行う
治療法食事療法と運動療法が基本となる。血糖コントロールが不十分な場合は、経口血糖降下薬(スルホニル尿素薬、速攻型インスリン分泌促進薬、αグルコシダーゼ阻害薬、ビグアナイド薬、チアゾリジン誘導体)を使用する

※1 インスリン:血液中のブドウ糖の濃度を下げる働きをもつ体内物質
※2 血糖値:血液中のブドウ糖の濃度
※3 ブドウ糖負荷試験:一定量のブドウ糖を溶かした液体を飲み、飲む直前と飲んでから1時間後、2時間後の計3回採血して血糖値の推移を調べる。飲む直前と2時間後の血糖値を診断基準として用いる。

■高血圧とは?

高血圧には、発症の原因が特定できない「本態性高血圧」と、内分泌疾患や腎臓病などの病気に付随して発症する「二次性高血圧」の大きく2つに分かれます。
このうち「本態性高血圧」は、高血圧患者さんの約90%を占めており、ストレスや生活習慣に深い関係があるといわれています。

高血圧(本態性高血圧)

症状頭痛やめまい、動悸などが挙げられるが、それらは高血圧の誘因でもあるとの説もある
原因原因は特定できない。高脂肪食中心の食生活や運動不足などによる肥満、およびストレスなどが誘因となる
検査と診断血圧を数回測定する。測定値が収縮期血圧(※1)140㎜Hgまたは拡張期血圧(※2)90㎜Hg以上の場合、高血圧と診断される
治療法食事療法と運動療法が基本となる。血圧のコントロールが不十分な場合は、降圧薬(カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬 など)を使用する

※1 収縮期血圧:心臓が収縮して血液を押し出したときの血圧で、血管に最も圧力がかかっている状態
※2 拡張期血圧:心臓が収縮したあと拡がるときの血圧で、血管にかかる圧力が最も低い状態

糖尿病とこころの不調

糖尿病は、食事療法や運動療法などの自己管理を必要とする病気です。適切な自己管理が行えず、罪悪感に悩まされている患者さんも少なくありません。また、放っておくと眼や腎臓、神経などの合併症につながる恐れもあり、患者さんは不安を抱えやすい病気と言えます。

不安や罪悪感などのストレスが高まると、体内でアドレナリン(※1)やコルチゾール(※2)などが分泌され、インスリンの働きが妨げられるため、血糖値の上昇につながります。

さらに、抑うつ状態を伴うと外出が困難になって運動不足になったり、治療への意欲を失って服薬を止めたりするケースも見られます。
その結果、糖尿病の治療に悪影響を及ぼしてしまいます。また、食欲が低下して低血糖(※3)を引き起こす恐れもあるため、早めに対処する必要があります。
抑うつ状態の有無は、質問票や問診票を用いて診断される場合もあります。

※1 アドレナリン:ストレスを感じると分泌される生体内情報物質。血中に放出されると血圧や血糖値を上昇させる
※2 コルチゾール:糖の代謝に影響し、血糖値を上げる作用をもつ生体内情報物質。ストレスを感じると分泌される
※3 低血糖:血糖値が必要以上に下がった状態。頭痛、吐き気、動悸などの症状がみられる。重症になると意識を失う場合もある

高血圧とこころの不調

高血圧は、日常生活におけるあらゆるストレスと深いかかわりのある病気です。高血圧を長期間放置することで動脈硬化のリスクが高まり、脳卒中や心疾患を合併する可能性もあるため、患者さんが強い不安を感じることも多くなります。

また、不安などのストレスを感じることで脳の交感神経の働きが活発になり、心拍数を上昇させたり血管を収縮させたりするため、血圧が上昇する傾向にあります。

さらに、抑うつ状態になると血圧がより不安定になり、血圧のコントロールが難しくなります。
高血圧と抑うつ状態を併発すると、心不全を合併する危険性が高まったり、不眠などの睡眠障害を発症しやすくなったりします。
睡眠障害は血圧を上昇させたり、抑うつ状態を悪化させたりするため、症状がみられた場合には早めに医師に相談しましょう。

生活習慣病でこころの不調を伴う場合の治療法

生活習慣病によるこころの不調では、まず食事療法や運動療法などを行い生活習慣全般を改善することが大切です。生活習慣が改善されれば、生活の質(QOL:Quality of Life)が向上し、こころの不調も次第に解消されていきます。

それでもこころの不調が解消されない場合は、薬物療法を行います。主に第3世代の抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を使用して、脳内のセロトニン(※1)のバランスを整えます。

SSRIは、糖尿病や高血圧の治療を妨げず、血圧の管理にも効果があるといわれています。比較的副作用も少なく安全性も高いことから、精神科や心療内科以外の医師でも処方しやすい薬剤です。
心身両方での治療を担当医から受けることも可能ですが、重症度によっては専門医を紹介される場合もあります。

また、高血圧の治療薬である降圧薬の中には、抗うつ薬と併用すると睡眠時無呼吸症候群(※2)を引き起こす薬剤もあります。そのため、自分が服薬している降圧薬について、必ず医師に報告しましょう。

※1 セロトニン:精神を安定させる働きをもつ脳内物質
※2 睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に10秒以上呼吸が停止する病気。主に、いびきや昼間の眠気、起床時の頭痛などがあげられる

日常生活におけるセルフケア

日常生活ではまず、規則正しい生活習慣を心がけましょう。
また、日常生活において次のようなセルフケアを行い、生活習慣病の予防に役立てましょう。抑うつ状態を伴う場合は、無理をせず楽しく続けられる範囲で行うことが大切です。

ウォーキングなどの有酸素運動を

ウォーキングなどの有酸素運動は、ストレスや肥満を解消したり血液循環をスムーズにしたりする効果があります。
準備運動をしっかりと行い、軽く汗ばむ程度で20分以上歩いてみましょう。場合によっては、血圧を上昇させたり低血糖を招いたりする恐れがあるため、医師の指導の下で適切に行うことが大切です。

一人で悩みを抱えこまないで

一人で悩んでいると、こころの負担が大きくなり症状の悪化につながってしまいます。
そのため、まずは信頼できる人に相談してみましょう。同じ病気をもつ患者さんの交流会などに参加し、情報交換するのもよいでしょう。

急激な温度変化を避けて

急激な温度の変化は、血管の収縮をもたらし血圧を上げる原因となります。家の中では、温度をなるべく一定に保ちましょう。
また、暑すぎたり寒すぎたりしないよう、自分で温度調節できる服装を心がけましょう。

水分補給に注意

多量の糖分を含んでいる清涼飲料水の飲みすぎは、血糖値を上昇させます。
水分補給にはミネラルウォーターなど、糖分が含まれていない飲料水を飲むよう注意しましょう。

フットケアを心がけて

糖尿病患者さんは足先の血液循環が悪くなり、痛みを感じにくいことがあります。
また、外傷に気付かないまま放っておくと、細菌が入って悪化する恐れがあります。日頃から足の感覚や外傷の有無をチェックし、早期発見を心がけましょう。
さらに、状況に応じてフットケアの専門医に相談することも大切です。

定期健診やこまめな血圧測定を

糖尿病や高血圧はゆっくりと進行し、自分では気付きにくい病気です。定期健診やこまめな血圧測定で、早期発見をすることが重要です。
家庭用血圧測定器は市販されており、取り扱い方も簡単です。朝晩の1日2回測定して記録し、受診の際には記録を持参しましょう。

バランスのよい食事を

野菜などの食物繊維を多めにし、脂質やタンパク質を控えたバランスのよい食事作りも大切です。
くだものに含まれている果糖は体内に吸収されやすいため、1日当たり握りこぶし1個分にとどめましょう。

家族や周囲の人ができるサポート

適切な治療を行うためには、家族や周囲の方々の協力が大切です。上手なサポートをするためのポイントには下記のようなものがあります。

じっくりと話をよく聞く

自分の意見を押し付けたり質問したりせず、患者さんの話をじっくりとよく聞きましょう。
回復を急がせず、患者さんがゆっくりと休養できる環境を整えましょう。

できるだけ病院に付き添う

抑うつ状態を伴っていると、思考力や判断力が鈍くなることも少なくありません。できるだけ病院に付き添い、患者さんの症状を医師に伝えましょう。
また、処方された薬を指示どおり服薬しているか、服薬後の変化などを観察し、治療をサポートしましょう。

 

監修/北村 聖 先生
東京大学医学教育国際協力研究センター教授

五月病(季節性うつ)

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

うつ病とは

眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないなど、このような「気分が落ち込む」「憂うつ」が長期にわたって続いている場合、うつ病の可能性があります。

うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、さまざまな理由から脳の機能障害が起きている状態のことを言います。この状態になってしまうと、ものの見方が否定的・悲観的になり、自分がダメな人間だと感じてしまいます。
普段なら乗り越えられるストレスもよりつらいものに感じられ、よりストレスに感じさらなる悪循環に陥ってしまいます。

五月病とは

仕事や学校、転居などで環境が変わり、最初は張り切って活動していたのに、5月の連休明け頃からだんだんと気分が落ち込む、疲れやすい、仕事や勉強、家事などに集中できない、眠れないといったスランプ状態に陥ること、これがいわゆる「五月病」です。

精神的な症状だけでなく、食欲不振や胃の痛み、めまい、動悸などの症状を訴える方も多く、新しい環境での変化についていけないあせりやストレスが、知らず知らずのうちに身体的な症状となって出てくるのです。

五月病といっても、新入生の方や5月限定で起きる病気ではなく、完璧主義で物事にこだわりやすい人や、内向的で孤立しやすい人、過保護に育てられた人などが五月病になりやすいといわれています。たいていの場合は一過性の心身の不調で、1~2ヶ月程度で自然と環境に適応でき、症状が改善すると言われています。

五月病とは

五月病かな?と思ったら

五月病かなと思ったら、まずはとにかく気分転換やリラックスできることをしてみましょう。これらは五月病の予防法でもあります。

  • ・趣味やスポーツでストレスを発散する
    ・十分に睡眠を取る
    ・ゆっくりお風呂に入る
    ・好きな音楽を聴く
    ・アロマテラピーなどでリラックスする
    ・映画や絵画展、コンサート、小旅行などに出かけて気分転換をする
    ・新しい目標を見つける
    ・友人や先輩などに、話を聞いてもらう

うつ病の治療法

五月病のいろいろな対処法を試してみても心身の不調がなかなか治らない場合、睡眠はたっぷりとっているのに悩みや疲れが消えない状態が1ヶ月以上続く場合は、軽症のうつ病の可能性があります。

特に仕事や家事などにやる気が出なくなるだけではなく、好きな趣味などの以前は興味があったものにも関心がなくなってしまった場合は要注意です。

こんな症状が続く場合は、早めに心療内科か精神科を受診しましょう。

  • ・ 憂うつ、気分が重い(抑うつ気分)
    ・ 何をしても楽しくない、何にも興味がわかない
    ・疲れているのに眠れない、一日中眠い、いつもよりかなり早く目覚める
    ・イライラして、何かにせき立てられているようで落ち着かない
    ・悪いことをしたように感じて自分を責める、自分には価値がないと感じる
    ・思考力が落ちる
    ・死にたくなる

また、周囲から見てもわかる変化もあります。身近な人が「どこかいつもと違う」と感じるような変化に気づいたら、もしかしたら本人はうつ病で苦しんでいるかもしれません。

  • ・表情が暗い
    ・涙もろくなった
    ・落ち着かない
    ・飲酒量が増える

さらに、身体的な症状が現れることもあります。
食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛や肩こり、動悸がする、胃の不快感、便秘、めまい、口が渇くなど

うつ病かな?と思ったら

これらはあくまで目安となるものの、いつもと違うと感じたら一人で悩まず、まずは専門家に相談してみましょう。専門家とは、精神科や心療内科あるいはかかりつけの医師がいるクリニックなどです。

また、地域の保健所や保健センター、都道府県・指定都市に設置されている精神保健福祉センターなどにあります。これらの相談窓口を利用する場合は、市区町村役所に電話で問い合わせるか、ホームページで調べてみましょう。電話相談、来所相談のどちらも可能で、こころの専門医の意見を聞くことができます。

また全国共通の「こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」があり、電話をかけると、地域の公的な電話相談窓口につながります。こころの問題だけでなく、さまざまな相談窓口を掲載している「いきる・ささえる相談窓口(http://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php)」などがあります。
学生の方であれば、各学校に在籍するスクールカウンセラーに相談してみるのも良いでしょう。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

子供の夏の感染症

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

夏に子どもがかかりやすい感染症

夏に子供がかかりやすい感染症は、手足口病 や咽頭結膜熱(プール熱) 、ヘルパンギーナ 、溶連菌感染症(猩紅熱(しょうこうねつ))などがあります。

感染力が高いものが多く、幼稚園や保育園では集団感染しやすくなっていますので、周りの子供の感染の様子で気を付ける感染症が判断できるケースもあります。

手足口病

症状

大人の場合は手、足、口に、子どもの場合はさらに肘、膝、お尻に米粒ほどの水疱性の発疹ができます。
発疹は水疱状で、やがて破れて潰瘍になり、痛痒くなってきます。口の中にできると、痛みで食事が困難になり、脱水症状をおこすことがあります。
発熱や下痢、嘔吐をともなうことも。

嘔吐や頭痛が続く場合、心筋炎や髄膜炎を合併していることもあります。

原因

エンテロウイルスなどの腸管ウイルスやコクサッキーウイルスなどの感染が原因となります。
複数のウイルスがあるので、一度かかったら大丈夫という病気ではありません。

感染経路は、風邪と同じように鼻汁・唾液などからの感染です。
また、便からも感染しますので、子供の手をよく洗うように保護者の方は気をつけましょう。

治療

小児科を受診しますが比較的軽い病気ですので、自然に治るケースが多いです。

しかし、口の中の痛みや発熱が強い場合は症状を緩和する対症療法をおこないます。
口腔内の痛みのために食事がしにくい場合は水も飲むのも困難なため脱水症状を起こしやすい状態です。
刺激が少なく、無理なく飲み込める食事内容にし、また水分補給を十分におこないます

【参考】「健康Salad」手足口病の時のおすすめレシピ<すいとん>

手足口病

咽頭結膜熱(プール熱)

症状

急な発熱(38~40℃)、のど腫れや痛み、リンパ節の腫れ、目やに、涙、充血など結膜炎の症状がみられます。
それ以外に吐き気、腹痛、下痢などが見られることもあります。

原因

アデノウイルスが感染の原因です。プールの水から感染することから、「プール熱」とも呼ばれます。6~9月頃に発生しやすく、幼稚園児や小学生はプールでうつることが多いのですが、せきやくしゃみを介して感染したり、便を介して目や口に感染して、赤ちゃんが感染したりすることもあります。
プールに入る前と後にシャワーでよく体、手、目を洗うことと、タオルや洗面器、食器を共用にしないことです。また、洗濯も別にします。

治療

小児科や眼科を受診します。症状を和らげる対症療法を行います。
高熱の場合は小児科を、結膜炎の症状がある場合は眼科での治療が必要です。

ヘルパンギーナ

症状

急な高熱(39℃前後)と咽頭、口の中の上顎の奥の粘膜に、小さな水疱ができます。
水疱が破裂し潰瘍状(かいようじょう)になることもあります。5歳未満の乳幼児に多く、食欲低下、嘔吐する場合もあります。

原因

おもにコクサッキーウイルスへの感染が原因ですが、原因となるウイルスは複数種類あるため、何度も発症することがあります。

治療

小児科を受診し、対症療法を用います。症状が重い場合は解熱剤を服用するなどで症状を和らげます。
口腔内の痛みで食事が難しい場合があるので、食事内容はやわらかく、のどごしの良いものを食べさせましょう。

また脱水症状への注意も必要ですので、水分補給をこまめに行います。

溶連菌感染症(猩紅熱(しょうこうねつ))

症状

急な発熱(38~40℃前後)と頭痛、のどの痛み、食欲不振、吐き気など、風邪のような初期症状があります。
やがてのどが非常に赤くなり、舌の表面にブツブツの赤みができることが多く(いちご舌)、口の中も真っ赤になります。

また扁桃腺や首のリンパ節が腫れたり、扁桃腺に白~黄色がかった膜ができたりすることがあります。
他に嘔吐、腹痛、筋肉痛、関節痛、首のリンパ節が腫れて痛むこともあり、発症後1~2日すると、かゆみをともなう小さな発疹が全身にあらわれます。

原因

A群β溶血性連鎖球菌が原因の溶連菌感染症です。A群β溶血性連鎖球菌という細菌が、くしゃみやせきを介して感染しておこります。
5歳をピークに4~9歳がかかりやすく、秋から春に多く発症します。
のどは12~3月に、皮膚では7月~9月に多い傾向にあります。

治療

小児科を受診し、抗生物質を服用します。
服用後、1~2日で元気になったように見えて溶連菌を完全に除く前に服用をやめてしまい再発することが多く、中耳炎・気管支炎・リンパ節炎・副鼻腔炎、急性腎炎、リウマチ熱を合併する危険度が高くなります。

単なる風邪の場合は、途中で服薬をやめても特に影響はありません。一方、溶連菌感染症の場合は、医師の指示通りの治療を最後まで続けることが大切です。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

急性アルコール中毒

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

飲んだお酒は体の中でどうなるのか

  • 1.お酒を飲むと、約20%のアルコールは胃の中で吸収され、残りは小腸でゆっくりと吸収されます。
  • 2.次に肝臓で「アルコール脱水素酵素」という分解酵素がアルコールをアセトアルデヒドに分解します。さらに、アセトアルデヒドは肝臓内で酢酸に分解されて血中に放出されます。
    最終的に水と二酸化炭素になり、体外に排出されます。摂取したアルコールの2~3%はそのまま呼気に含まれたり、尿や汗となったりして排出されます。
  • 3.血中に入ったアルコールは、血液の循環によって脳に到達し、脳の神経に作用し、麻痺させます。その結果として酔うのです。

二日酔いの原因と酔いがさめるまでの時間

例えば体重60Kgの人がビール500mlを30分で飲んだとしましょう。
そうすると、アルコールは3時間から4時間は体内に留まります。1000mlの場合はアルコールが体内から消失するまでに6時間から7時間かかります。この時間は個人の能力に差があるため、お酒が飲めない体質の人、弱い体質の人、女性などはもっと長い時間がかかります。

また肝臓がアルコールを分解してアセトアルデヒドを作り無毒の酢酸と水に酸化分解する時、肝臓は一時間に54ccのアルコールしか処理できません。これよりも多いと血液中のアルコール量が増加し、大脳を主とする各臓器に害を与えます。

アルコールの消化には上記のプロセスと個人の能力差があるため、許容量以上のお酒を飲むと体内にアルコールが残ってしまい、結果として二日酔いとなるのです。

二日酔いを治す基本として、冷や水を多く飲むことです。水は血液中のアセトアルデヒドの濃度を薄め、汗や尿とともに体外へ排出させることができます。

  • お酒の1単位1単位=ビール(アルコール度数5度の場合)500ml
  • 日本酒(アルコール度数15度の場合)なら180ml
  • 焼酎(アルコール度数25度の場合)なら110ml
  • ワイン(アルコール度数14度の場合)なら180ml

お酒を飲む時の秘訣

酔わないための方法として、お酒を飲む前にタンパク質や脂質を含んだ食品を食べると、アルコールと粘膜の接触を緩和し、アルコール吸収のペースがゆるやかになり、胃腸障害を防ぐことができます。また、食べ物に含まれる水分が血液中のアルコール濃度を薄める効果も期待できます。

食前にお酒を飲まなければならないときは、少量のお酒を飲むならば胃液の分泌を促し、食欲を増進させる良い働きがあります。しかし、空腹状態から多くのお酒を飲むと、胃は保護されない状態となりアルコールの吸収スピードを早めます。そのため肝臓の解毒する時間がなくなり、アルコールの濃度が増して酔いやすくなります。

お酒を飲んだ後はできるだけお湯、特に生姜湯を飲むと、酒ざめへの効果は意外に良いです。
ここまで酔わない方法を紹介しましたが、何よりお酒を飲み過ぎないことが大切です。

アルコールの適正な摂取量

アルコールの代謝能力には個人差があるため、適正な量も個人差があります。
一般的には、2単位程度(ビールなら中びん2本1000ml、日本酒なら2合360ml、焼酎なら1.2合220ml、ワインなら360ml)を限度とし、個人差はありますが「ほろ酔い」で お酒を楽しむことができる量と言われています。

急性アルコール中毒

お酒を飲み過ぎると、肝臓のアルコール処理が追いつかないことで酔いが回ります。このサイクルがより急速におこなわれると「急性アルコール中毒」に陥ります。一気飲みや短時間に大量のお酒を飲むと、アルコールの処理が追いつかず、血中アルコール濃度が高まります。
症状として、「酔い」ではなく、頭痛や吐き気、場合によっては意識を失う危険性もあります。

【参考】 Asahi 人とお酒のイイ関係

急性アルコール中毒

もし身近に急性アルコール中毒になった人が出たら

  • ・意識がない(反応がない)場合は救急車を呼ぶ
    ・一人にしない
    ・横向きに寝かせる(仰向けにすると吐瀉物をつまらせて窒息する恐れがあります)
    ・ベルトやタイツ、ブーツなど身体を締め付けている物をはずす
    ・無理に吐かせない
    ・嘔吐した場合は吐瀉物をよく拭き取る
    ・呼吸や脈の有無を確認する
    ・体温が下がらないように毛布や上着をかける
    ・水分補給をさせる

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

熱中症

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

熱中症とは

熱中症は、身体が高温になり脱水症状が続いていると体温調節機能が破綻し、意識を失う危険性がある症状です。身体が熱いと、身体は体温を調節しようと発汗したり血管を拡張させたりします。しかし、水分を補給せず高温の場所にいると、脱水症状に陥り危険です。

また、その状態に加えて体温調節機能や血液循環機能が低下していき、脳へ血液が回らず、意識を失う可能性があります。

熱中症の予防

予防には、エアコンや扇風機などをうまく取り入れた室温調整、塩分を含んだ水分補給、十分な休息、また日々の体調管理が大切です。

熱中症の症状

熱中症は、熱失神・熱痙攣(ねつけいれん)・熱疲労・熱射病の4つに分かれます。また、比較的軽症である熱失神や熱痙攣はI度、中程度である熱疲労はII度、重症である熱射病はIII度というように、症状の程度によって位置付けられています 。

症状病態
熱失神(Ⅰ度)顔面蒼白、頻脈、めまい、立ちくらみ、生あくび、数秒間の失神、呼吸数の増加血管が広がって血圧が低下し、脳への血流が減少している状態
熱痙攣(Ⅰ度)多量発汗、吐き気、口渇、痛みを伴う痙攣(腹部、手足)など多量の発汗に伴って、筋肉の収縮に必要な血液中の塩分が不足した状態
熱疲労(Ⅱ度)倦怠感、虚脱感、頭痛、嘔吐、血圧低下、多量発汗、高体温(40℃以下) など多量発汗による体重比2%以上の脱水や、血液中の塩分などが不足した状態
熱射病(Ⅲ度)熱失神、熱痙攣、熱疲労の症状全般、臓器の機能障害、意識障害、過呼吸、体温調節機能の障害による高体温(40℃以上) など熱失神、熱痙攣、熱疲労の病態がより進行した状態

熱中症になる危険要因

一般的に熱中症の発症年齢は、乳幼児から高齢者までと幅広く、なかでも高温多湿である夏に発症率が高いと言われています。しかし、熱中症を誘発する要因は高温多湿という環境要因のみでなく、行動要因、衣類要因、不摂生・年齢・体調といった個人の身体要因も関わってきます。
危険要因を知ればおのずと予防策も見えてくるので、自分の状態や生活環境などを振り返ってみましょう。

環境要因

気温が高いことが危険要因であること以外に、湿度や風の有無、屋内の環境も深く関係してきます。湿度が高いと汗の蒸発による身体の冷却効果が低下するので、熱中症を引き起こしやすい環境となります。
また風(自然や扇風機を含む)があることで汗の蒸発が促進されますが、風が弱いあるいは無風状態(閉め切った屋内・屋外を含む)は熱中症の危険要因となります。しかし、身体表面温度を上回るような高温の環境下においては、風が熱を身体に送り込むことになるので、この場合は熱風自体が危険要因となります。
エアコンや扇風機といった家電などを有効活用し、熱中症を予防しましょう。

行動要因

農業を含む屋外での筋肉運動、激しいスポーツにおいて、十分な休憩をとれない、自分のペースで作業できない点が危険要因となります。運動を行えば筋肉から熱が発生します。自分の健康状態に合っていない作業を十分な休憩を取らずに行うと、上昇した体温の回復が間に合わず、熱中症を発症させる危険が高まります。
気温や湿度を鑑み、労働時間や休憩、水分補給のタイミングを調整しましょう。

【参考】 厚生労働省 職場での熱中症による死亡災害及び労働災害の発生状況(平成24年)

行動要因

衣類要因

主に職場での服装の問題となりますが、防護性が高い衣類ほど透湿性・通気性が悪い傾向があります。透湿性・通気性が悪い衣類は保温性・断熱性も高く、身体からの放熱を阻害するため体温上昇を促し、熱中症を誘発します。

このような衣類を着用する職場などにおいては、それを考慮した休憩時間、水分、空調を整えることが必要です。
暑い環境で働く労働者に対して、小さな扇風機が内蔵されているジャンパーが開発され、熱中症に対する効果がみられています。

時間的要因

暑い環境での長時間にわたる行動が熱中症を誘発することは言うまでもありませんが、急激な環境変化における行動にも注意が必要です。人間の身体は周りの環境にある程度は慣らしていくことができますが、慣れていない状態の人が急に暑い環境にさらされると、身体に大きな負荷がかかります。

例えば、梅雨明けからは猛暑日が続くことが多く、気温が急上昇する梅雨明けの頃はとても危険な時期と言えます。

身体要因

50歳を過ぎると暑さに対する体温調整機能が低下し始めます。身体は体温調整力、発汗能力が衰えるだけでなく、暑さへの感度も鈍り、エアコン等で室温を調整しづらい状態になっていきます。実際に65歳以上の高齢者では、男女ともに自宅での発生が一番多い状況です。
近年は一人暮らしの高齢者も多いため、周囲からの声掛けなどの支援が必要となってきます。

また、肥満者は暑さに弱く、普段から運動の習慣が無い場合が多いため、体温調整、心臓循環機能が低下しており、熱中症のリスクが高い傾向にあります。
糖尿病患者は喉が渇きやすく、それが熱中症につながる要因の一つです。水分はたくさん摂っていてもその分尿の量も増えるため、気づかないうちに脱水症状となっていることがあります。

その他、高血圧や心疾患を治療中の場合、降圧利尿剤を服用していると利尿剤で脱水傾向になったり、ナトリウムも排泄されたりするので塩分不足になりがちになります。

応急処置

意識が無い場合は医療機関へ

暑い環境下に長時間居た場合の体調不良は、熱中症であるという点を認識してください。まずは熱中症を疑う症状の有無を確認し、その上で意識がなければ救急車を呼びます。救急車が到着するまでの間に患者を涼しい場所へと移動させ、衣類をゆるめて体を冷やします。

冷やす場所は首、脇の下、太股の付け根を集中的に冷やしてください。医療機関では、分かる範囲で患者本人が倒れた時の状況を冷静に説明しましょう。また、患者に意識があった場合も涼しい場所に移し、衣類をゆるめて体を冷やします。自力で水分および塩分を補給できなければ医療機関へ連れて行ってください。
自力で水分・塩分を補給できれば、回復するまで安静にしましょう。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

秋バテ(季節性うつ)

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

気温の変化で起こる「秋バテ」とは?

秋は雨の日が多かったり台風などもきたり、気圧がとても乱れやすい季節です。気圧の変化は頭痛やめまい、食欲がなくなる、疲れやすい、だるい、立ちくらみがする、寝不足でボーっとするなど身体に様々な変化を起こします。
これは自律神経が乱れることで起こる、いわゆる「秋バテ」です。予防には身体を温めるなどして自律神経を整えることが肝心とされているため、次のことを実践していきましょう。

秋バテ対策①:ぬるめのお湯にゆっくりつかる

お湯の目安は37~39℃となります。ぬるめのお湯につかることで副交感神経が優位になり、リラックスモードに入って体温が上がり眠気が増してきます。

気温の変化で起こる「秋バテ」とは?

秋バテ対策②:白湯を飲む

朝1杯の白湯を飲むことで胃腸が温まり、血行が良くなります。体温が上がって代謝や免疫力もアップするため、風邪対策にも効果的です。

秋バテ対策③:1日1回は汗をかく

現代人は汗をかくのが下手とされています。汗をかかないと体温調節がうまくいかず、自律神経は乱れていきます。そのため、スポーツや入浴で1日1回は汗をかきましょう。そうすることで体臭予防にもなります。

秋バテ対策④:睡眠をしっかりとる

自律神経が乱れやすい秋は、睡眠のコントロールが悪くなりがちになります。そのため、リラックスをして早く床につき、朝は早めに起きてカーテンをあけ、光を浴びることを心がけましょう。

日照時間の低下で起こる「秋うつ」とは?

秋バテとともに最近言われているのが、日照時間が低下して起こる「秋うつ」です。
日照時間が低下すると、精神の安定化を保つ脳内の神経伝達物質「セロトニン」の分泌量が低下して、身体が急に冬眠モードに変わります。まだ夏モードの身体は冬眠モードへの変化についていけず、その歪みがうつ症状を起こしてしまいます。
また、暗い時間が長くなり、眠気の原因とも言える生体リズムを司るホルモン「メラトニン」が活性化されてしまうことも原因のひとつです。

うつというと大きい病気のように感じますが、症状は何となくだるい、眠れない、やる気がでないなどの身近なものです。特に女性に多く、男性の4倍はなりやすいと言われており、約5人に1人がかかる一般的な病気です。
対策としては「光を浴びること」が大切です。朝の散歩やウォーキングで太陽の光を浴びるといいでしょう。

水溶性食物繊維を積極的に摂って、秋バテ・秋うつを予防

「水溶性食物繊維」を積極的に摂るのも秋の不調に効果的です。便の水分を増やして軟らかくし、排便をスムーズにするとともに善玉菌のえさになって腸内環境を整え、自律神経の安定につながります。

日本人の食物繊維の平均摂取量は戦後間もない頃と比較すると約半分とされ、現代人の腸内環境が悪化している要因とも言われています。水溶性食物繊維が豊富に含まれる、こんにゃくや人参、山芋、海藻類をぜひ積極的に摂るようにしましょう。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

適応障害

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

説明

適応障害とは、生活が変化することにストレスを感じ、そのストレスに適応できずに生じる心の症状です。
「学校に行けない」「無気力でやる気が出ない」などの症状があらわれ、社会生活に影響します。悪いことだけでなく、進学や部署異動、結婚、離婚などの一般的に良いとされる出来事での変化でも適応障害は起こりうるのです。

環境が変化しても特に問題なく適応できる人もいますが、その一方で同じ環境の変化に苦痛を感じて、社会生活を健康的に送れなくなってしまう人もいるのです。

説明

症状

「適応障害」の症状はいずれも一見は強いものではありませんがさまざまな症状があります。
しかし、それらはどれもストレスに適応できない場合の心の反応です。

また、健康かどうかの判断は社会生活を維持できているか否かによって決まります。

適応障害の精神症状は、不安や抑うつ、焦燥感、敏感、混乱などがみられます。
一方で身体的にあらわれる症状は、倦怠感や頭痛、腹痛などで、行動面では遅刻や欠勤、不眠、犯罪などが挙げられます。

適応障害のタイプ

「適応障害」の症状は、主な症状から下記の6つに分けられます。

・抑うつ気分を伴うタイプ
憂鬱感、涙もろくなる、絶望感、思考力・判断力の低下、感情のコントロールが難しくなるなど。いずれの症状も、気分障害ほどではありません。
気分障害:抑うつ気分を主症状とする精神疾患のグループ。代表的なものは「うつ病」。

・不安を伴うタイプ
漠然とした不安感があり、災害、病気、死などを心配しすぎたり、精神が過敏になって、不安から呼吸困難に陥ったり、軽いパニック発作を起こしたり、社会生活を送ることが困難な状態。不安障害ほどではない。
不安障害:病的な不安感が高まり社会生活が困難になる症状。神経症とも。

・抑うつと不安を伴うタイプ
不安と心配、気分の落ち込みが同時に現れ、社会生活に支障をきたすタイプ。例えば健康診断で「要精密検査」となることで不安と憂鬱な日々が続くことです。身体の病気で入院したことが心に影響した人の多くは、このタイプの適応障害です。

・行動の障害を伴うタイプ
万引き、飲酒運転、暴力、無断欠席・無断欠勤、公共の場へのいたずらなどの行動を伴うタイプです。
ただ思春期の青年は、この時期によくある精神的な不安定さから反社会的な行動や言動を起こしてしまうことがあります。

・情緒と行為の混合した障害を伴うタイプ
不登校やかん黙など。子どもが適応障害となる場合、情緒障害や行動障害を伴うタイプである場合が多い傾向があるようです。
情緒の障害:情緒障害とは病名ではなく文部科学省が規定している名称。

・特定不能のタイプ
肩こり、頭痛、疲労感などの身体症状を主に訴えたり、主症状がひきこもりだったりする例です。
さまざまな症状がありますが、どれも適応障害特有のものではないため、医師は患者さんの病歴や環境などから診断を進めます。

適応障害の診断基準(DSM-IV-TRより)

■A
はっきりと確認できるストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから3ヶ月以内に情緒面または行動面の症状が出現

■B
これらの症状や行動は臨床的に著しく、それは以下のどちらかによって裏付けられている

■(1)
そのストレス因子に暴露されたときに予測されるものをはるかに超える苦痛

■(2)
社会的または職業的(学業状の)機能の著しい障害

■C
ストレス関連性障害は他の特定のⅠ軸*障害の基準を満たしていないし、既に存在しているⅠ軸障害またはⅡ軸*障害の単なる悪化でもない。

■D
症状は、死別反応を示すものではない

■E
そのストレス因子(またはその結果)がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない

I軸・II軸

DSM(米国精神医学会診断基準)では、診断が偏らないように「多軸方式」をとっています。

■I軸
II軸以外の心の病気

■II軸
パーソナリティ障害と精神遅滞

■III軸
体の病気

■IV軸
心理社会的・環境問題の視点

■V軸
機能

※DSM-Vでは、家族など愛する人との死別も適応障害の発症の原因となるストレスとみなされています。この基準は変更されることがあります。

要因

適応障害の原因はストレス

日常生活において大きなストレスになる出来事が起こると、身体にさまざまな反応が出ます。これは普通のことですが、これが「反応」を超えて「症状」にまで至った状態が適応障害です。

誰でもショックな出来事に遭遇すれば驚いたり、あるいは悲しんだりします。環境の変化があれば緊張したり不安を感じたりします。はじめはこのような心の動揺があっても、だんだん気持ちがこの状況に適応してきて、環境に馴染んだり、価値観を変えてみたり、新たな楽しみとして受け取るなど問題解決の方法を考えはじめます。適応障害は、このような出来事への心理的な反応がうまくいかなかったために起こります。本人にとっては極端な反応に見え不思議に思うこともあるでしょう。

身のまわりのさまざまなストレス

ストレスを感じるのは、つらいことや悲しいことだけではありません。結婚や引っ越し、昇進など、プラスなことも心のストレスの原因になります。あるいは、プラスな変化であっても、それらの受け取り方によってマイナスのストレスにもなります。また、少しのストレスは生活の「はりあい」にもなりますが、これが過度になってしまうと心にとって大きな負担となっていきます。

住居や経済的な問題といった環境的なストレス、病気や食習慣といった健康面のストレス、家族や学校、職業、文化など心理社会的なストレス、対人関係のストレス、一般的には良いことと思われていることへのストレス(結婚、出産、就職、子どもの独立、定年退職など)

ストレスへの耐性が弱いと適応障害になりやすい

同じ環境下でストレスを受けても、適応障害になる人とならない人がいます。これはストレスを乗り越える力は人によって異なるためです。

この力は個人の資質によるところがあり、よく「がんばりやさん」は適応障害になりやすいといわれています。まじめで努力家、他者からの評価を気にし、仕事も多少無理をしてでも片付けて、自分を抑えてでも相手に合わせようとする。
子どもの頃からわがままを言わず、聞き分けがよく、自分を抑えて生きてきた人が少なくありません。

その反面、自己主張ができず、感情や欲求の表し方がわからなくなっている可能性があります。
一見、「いい人」のようですが、とてもストレスをためています。資質的な傾向としては下記が挙げられます。

  • ・感情の表し方がわからない
  • ・傷つきやすい(周囲の人が理解できないほどささいなことで傷ついてしまう)
  • ・白黒思考(100点でなければ0点と同じ)
  • ・まじめだけどがんこ(いいかげんなことが許せない、これと思ったら変更できない)
  • ・断れない(無理なことや嫌なことも自分を抑えてしまい断れない)
  • ・自律神経失調傾向(もともと自律神経のバランスが乱れやすい)

治療と治療薬

最初はひとりで我慢したり、家族や友人に相談したりするでしょう。ストレスはこの段階で解消することも多くあります。
ですが、それができない状態が続き、抑うつ状態が続くようであれば、カウンセリングや医療機関での受診を検討しましょう。
医師は上記のような個人の資質やその他の精神疾患を念頭におきながら患者さんの話を聞きます。

適応障害の原因はストレスであることから、そのストレスの原因をつきとめ、解決するための行動を起こしていきます。
しかし、解決できないストレスであるなら受け止めることで気持ちを楽にしていきます。あるいは薬物療法で現れている症状を緩和します。
いずれの治療も、社会生活が送れるようにすることを目的としています。したがって、医師に治してもらうのではなく、自分で治していく意識が大切です。

FAQ

・IT関連企業に勤めている人は適応障害になりやすい?

IT関連企業に勤めている人にはうつ病や適応障害が多いと言われています。
仕事量が多く、残業しがちで職場によってはパーテーションで区切られ、人と会話することなく、一日パソコンに向かっているなど環境的な問題もあります。
また目の疲れや肩こりなど身体的不調もあらわれるでしょう。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

アレルギー疾患とうつ

【監修】北村 聖 先生(東京大学医学教育国際協力研究センター教授)

アレルギー性疾患とこころの不調

アレルギー性疾患は、治療が長期にわたる慢性的な病気のひとつです。
そのため、治療の見通しへの不安や生活の質(QOL:Quality of Life)の低下などから、大きなストレスを感じてしまう傾向がみられます。特にアトピー性皮膚炎では皮膚の赤みなどが気になり、外出するのが憂うつになってしまうことも考えられます。

そのまま放っておくと抑うつ状態になり、治療への意欲が低下したり症状の悪化をもたらしたりする場合もあります。
アレルギー性疾患に伴うこころの不調は、かかっている病気に隠れて気づかれにくく、患者さんが一人で悩みをかかえてしまうことも少なくありません。

アレルギー性疾患の治療の過程で「なぜか治療への意欲がわかない」などのこころの不調を感じたら、まずは担当医に相談してみましょう。

こころの不調を伴いやすいアレルギー性疾患とは?

アレルギー性疾患の中でも、アトピー性皮膚炎と喘息(ぜんそく)は、治療が長期にわたって肉体的な負担も少なくないことから、こころの不調を伴いやすいといわれています。
アトピー性皮膚炎と喘息についての概要は下記の通りとなります。

アトピー性皮膚炎

症 状発疹、かゆみ など
原 因主に、アレルギーの原因物質である抗原(アレルゲン)により引き起こされる。気温や湿度の変化、衣類などでこすれたときの刺激、ストレスなどが誘因となる
検査と診断抗原を特定するために血液検査や皮膚反応検査を行う
治療法ステロイド外用薬やタクロリムス水和物軟膏薬で炎症を抑える。
かゆみの強い場合は抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を服用する
アトピー性鼻炎

喘息

症 状喘息発作、せき、喘鳴(ぜんめい)(※1) など
原 因気道(※2)が炎症を起こし、収縮することによって発症する。主に、アレルギーの原因物質である抗原(アレルゲン)によって引き起こされるが、風邪やストレスが誘因となる場合もある
検査と診断抗原を特定するための血液検査や皮膚反応検査に加えて、スパイロメーター(肺活量計)を用いた呼吸機能の検査を行う
治療法主に吸入ステロイド薬を使用し、気道の炎症を抑えて喘息発作を予防する。喘息発作が起こった場合には、気道を拡げて呼吸を楽にするためにβ2刺激薬を使用する。重症の喘息には、経口ステロイド薬を使用する

※1喘鳴・・・ゼイゼイ、ヒューヒューというような雑音のある呼吸
※2気道・・・気管支や肺など、呼吸するときの空気の通り道

アトピー性皮膚炎とこころの不調

アトピー性皮膚炎によるかゆみのために、発疹患部位をかくことを「掻破行動(そうはこうどう)」といいます。
掻破行動は、人間関係や仕事などのストレスによっても誘発されます。

なかには、かゆくないにもかかわらず、ストレスを一時的に解消するためにかき、その結果、症状が悪化してしまうケースも見受けられます。
こうしたケースでは、症状の改善のためにストレスの除去が不可欠です。

抑うつ状態の有無を診断するために「アトピー性皮膚炎用心身症尺度」という質問表を用いる場合もあります。
また、アトピー性皮膚炎と抑うつ状態では、ともに睡眠障害が見受けられます。

さらに、その特徴に違いがあり、前者はかゆみのために寝つけない入眠困難型が、後者は早朝に目が覚めてしまう早朝覚醒型が多いといわれています。
そのため、アトピー性皮膚炎で早朝に目が覚めるという場合は、抑うつ状態を伴っている疑いがあります。

喘息とこころの不調

患者さんの心理状態を把握するために「気管支喘息症状調査票」などの問診表を用いる場合もあります。
問診表は点数化されており、点数が高いと抑うつ状態を伴っていると診断されます。
特に、小児から喘息を発症し長い間患っている場合は、治療の見通しへの不安から抑うつ状態を伴う頻度が高いといわれています。

また、抑うつ状態を伴う喘息では喘息発作がないにもかかわらず、早朝覚醒型などの睡眠障害が起こる場合があります。

こころの不調を伴う場合の治療法

まずはそれぞれの病気に適切な治療を行って、ストレスの軽減やQOLの向上を図ることが大切です。
それでも効果がみられない場合は、主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を使用した薬物療法を行います。
SSRIは、第3世代の抗うつ薬で、精神を安定させる脳内物質(セロトニン)のバランスを整えます。

比較的副作用も少なく、安全性も高いといわれているため、精神科や心療内科以外の医師でも使用しやすい薬剤とされています。
そのため、皮膚科や呼吸器内科の担当医から心身両方の治療を受けることも可能です。
また、必要に応じて精神科や心療内科などの専門医を紹介される場合もあります。

アトピー性皮膚炎で抑うつ状態を伴うと、睡眠障害が強く現れる傾向にあります。
睡眠が浅いと掻破行動が激しくなる恐れがあるため、ベンゾジアゼピン系短時間型睡眠薬を併用する場合もあります。
ベンゾジアゼピン系薬は呼吸抑制作用もあるため、抑うつ状態を伴う喘息には、あまり使用しません。

日常生活におけるセルフケアとは?

アレルギー性疾患やそれに伴うこころの不調を改善するためには、日常生活におけるセルフケアも大切です。
下記のようなポイントを抑えながら、できることから始めてみましょう。

上手にストレス解消

不安によるストレスは、症状の悪化や抑うつ状態を招く恐れがあります。好きな音楽を聴いてリラックスするなど、上手にストレスを解消しましょう。
規則正しい生活習慣を身につけてストレス耐性を高めることも大切です。

周囲の人に相談

一人で悩まず信頼できる人に相談してみましょう。ほかの患者さんと交流がもてる勉強会などに参加するのもよいでしょう。
人に話すことで気持ちが楽になったり、ほかの患者さんの体験や治療への取り組みを聞くことで、治療への意欲がわいたりすることもあります。

症状日記をつける

掻破行動や喘息発作が起こるパターンを把握し、予防するためには症状日記が有効です。
掻破行動や喘息発作が起こったきっかけや時刻、症状の強さなどについて記録しましょう。
喘息ではピークフローメーター(最大呼気流量計)(※)を使用して、起床時と就寝時に呼吸機能をチェックし、記録しておくとよいでしょう。

※ピークフローメーター:深く息を吸って一気に吐き出した時の最速値を測定する器具。手に持てるほどの大きさで、取り扱いは簡単。比較的安価で市販されている

家族や周囲の人が気をつけること

抑うつ状態を伴ったアレルギー性疾患の治療には、家族や周囲の人々の理解が必要です。
下記のことに注意して、適切な治療が行えるようサポートしましょう。

聞き役に徹する

患者さんが自分の悩みや不安を打ち明けたときには、あれこれ質問したり意見を述べたりせず、聞き役に徹して静かに耳を傾けましょう。

励ましは厳禁

「頑張って」などの励ましは、かえって患者さんに負担をかけてしまいます。つらい気持ちを理解し、共感する言葉をかけ、気持ちを楽にしてあげるよう心がけましょう。

ゆっくり休養できる環境づくり

仕事や家事・育児などは分担して、患者さんが気兼ねなくゆっくりと休養できるような環境を整えましょう。

服薬のサポート

自己判断による薬の中断や飲み忘れ防止のために、医師の指示どおり服薬しているかを確認しましょう。患者さんの服薬後の変化も観察し、医師に伝えましょう。

気長に見守る

一見元気に見えても、精神面がまだ不安定だという場合も少なくありません。あせらず気長に患者さんを見守ってあげましょう。

 

監修/北村 聖 先生
東京大学医学教育国際協力研究センター教授

情報リクエスト

病気スコープは、ユーザーの皆様が求めている情報を可能な限りお届けしたいと思っています。
「掲載されている病気についてより深く知りたい」「新しい情報として掲載してほしい病気がある」どちらの場合も、お気軽にリクエストしてください。
皆様の期待に応え続けることで、より信頼できるサイトとして成長して参ります。

どちらの情報をリクエストしますか?

または

送信完了

リクエストいただきありがとうございました。
いただいたご意見を元に、より信頼していただけるサイトとして成長して参ります。