まんせいこつずいせいはっけつびょう慢性骨髄性白血病
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慢性骨髄性白血病の症状
病気が進行すると、全身のだるさ、体重の減少、夜間の寝汗、脾臓(※1)腫大(ひぞうしゅだい)が原因の腹部膨満などの症状があらわれます。
初期段階では目立った自覚症状が現れないため、健康診断などで白血球数の増加が認められ、発見されるケースが50%以上に上ります。
慢性骨髄性白血病の診療科目・検査方法
血液検査で白血球の増多や異常白血球の出現を認めた場合、局所麻酔で腸骨に細い針を刺し、採取した骨髄細胞を病理検査で診断します。
分子学的検査や染色体検査で血中細胞のBCR-ABL遺伝子を特定する方法も診断に有効です。
血液の悪性腫瘍であり、血液内科など血液疾患の専門医への受診が必要です。
慢性骨髄性白血病の原因
発症の大半は、フィラデルフィア染色体(※2)が生じることが原因です 。
フィラデルフィア染色体は慢性骨髄性白血病に見られる染色体の異常で、9番と22番の染色体の一部が入れ替わることで発生します。9番と22番の遺伝子が入れ替わったときにできるBCR-ABL融合遺伝子(※3)という異常な遺伝子の影響で、血液細胞が過剰に増殖します。
慢性骨髄性白血病の予防・治療方法・治療期間
慢性期では、イマチニブ・ニロチニブ・ダサチニブの3つの中から患者さんに合った分子標的薬を選択します。慢性期をできる限り持続することが治療目標になります。
病期が進行した場合は、分子標的薬(※4)の増量・変更や化学療法との併用、造血幹細胞移植などが検討されます。分子標的治療の出現により骨髄移植(※5)をしなくとも治療効果をあげることができるようになってきています。
分子標的薬で寛解状態を得られた後も、数年単位での通院治療が必要です。
近年は一定期間治療ののち、休薬後も一部で寛解状態が持続することがわかり、完治も期待できるようになりました。
慢性骨髄性白血病の治療経過(合併症・後遺症)
悪性疾患ですが、治療薬の進歩により長期生存例も飛躍的に増加しています。
慢性骨髄性白血病になりやすい年齢や性別
1年に約7~10人(100万人あたり)の人が新たに慢性骨髄性白血病と診断されます。
50歳代の発症が多く、若干男性に多い傾向があります。成人の白血病患者の約20%が慢性骨髄性白血病とされます。
参考・出典サイト
編集部脚注
※1 脾臓 (ひぞう)
脾臓は、「左の脇腹あたりに位置する臓器」です。
・古くなった赤血球の破壊
・血液の貯蔵
・リンパ球の製造
などの役割を果たしています。
また、乳幼児期に限り、赤血球・白血球・血小板などの産生もおこなっています。
※2 フィラデルフィア染色体
フィラデルフィア染色体は、染色体異常によって現れる「異常な染色体」です。
染色体に関しては、とりあえず「遺伝子の置き場所」と理解してください。
人間の染色体は、同じ染色体が2本ずつ存在します。
全部で「23対46本」となっており、2本1組で番号が振られています。
染色体を呼ぶときには、「1番染色体」「2番染色体」などと番号で呼びます。
さて、フィラデルフィア染色体に関連するのは、「9番染色体」と「22番染色体」です。
染色体異常の1つに「相互転座(そうご-てんざ)」と呼ばれるものがあります。
これは、「染色体の一部が入れ替わる」という異常です。
9番染色体と22番染色体が相互転座を起こすと、「22番染色体の一部が付着した9番染色体」と「9番染色体の一部が付着した22番染色体」ができます。
このうち、「9番染色体の一部が付着した22番染色体」を「フィラデルフィア染色体」と呼んでいます。
フィラデルフィア染色体は白血病に関与する染色体であり、「95%以上の慢性骨髄性白血病」「一部の急性骨髄性白血病」「約25%の成人急性リンパ性白血病」に認められます。
フィラデルフィア染色体を発見したのは、「Fox Chase Cancer Center(フォックス・チェイス・がんセンター)」と「ペンシルバニア大学医学大学院」です。
そのため、2つの研究施設が存在するペンシルバニア州の都市の名前が冠されました。
※3 BCR-ABL融合遺伝子
BCR-ABL融合遺伝子は、「フィラデルフィア染色体で形成される異常な遺伝子」です。
フィラデルフィア染色体は、「22番染色体に9番染色体の一部が付着した染色体」です。
その結果、本来は別の場所にある「9番染色体の遺伝子」と「22番染色体の遺伝子」が融合してしまいます。
具体的には、「9番染色体に存在するc-ABL遺伝子」と「22番染色体に存在するBCR遺伝子」が融合して、BCR-ABL融合遺伝子となります。
BCR-ABL融合遺伝子は、「BCR-ABLチロシンキナーゼ」と呼ばれる異常なタンパク質を生み出す原因になります。
BCR-ABLチロシンキナーゼは、未熟な血液細胞が無限に増殖するのを促進します。
「無限に増殖する未熟な血液細胞=白血病細胞」ですから、「BCR-ABLチロシンキナーゼは白血病の要因である」と結論づけることができます。
※4 分子標的薬
分子標的薬は、「選択的にがん細胞を攻撃する薬」です。
「選択的」というのは、「がん細胞には大きな打撃を与えるが、正常細胞にはあまり影響を与えない」という意味になります。
がん細胞の増殖・転移などにかかわる特定の分子を攻撃目標とすることから、正常細胞への影響が少なくなっています。
簡潔に表現するなら、「副作用が少なくなる」ということです。
※5 骨髄移植
骨髄移植は、「白血病の根治を目指す治療法の1つ」です。
あらゆる血液細胞のもとになるのは、「造血幹細胞(ぞうけつかん-さいぼう)」と呼ばれる細胞です。
造血幹細胞が成長することで、「赤血球」「白血球」などができあがります。
白血病にかかると、「造血幹細胞が最終段階まで成長しない状態」になります。
その結果、血液が生命維持に必要な役割を果たせなくなるのです。
そこで、骨髄移植では「健康な人の造血幹細胞を移植する」という方法を採ります。
健康な人の骨髄から「きちんと成長できる造血幹細胞」を採取して、白血病の患者さんに移植します。
事前に前処置として、患者さん自身の造血幹細胞(白血病細胞)を破壊しておく必要があります。
いわば、「血液を根本的に入れ替える治療」と考えてください。
執筆・監修ドクター
経歴東北大学医学部 卒業
東京大学大学院 博士課程終了
国際医療福祉大学 元准教授
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