肺炎

肺炎の説明

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

肺炎とは

肺炎は、肺胞(はいほう:肺に存在する空気の袋)及び周辺組織に発生する炎症です。
ほとんどは細菌・ウイルスなどの病原体による感染症ですが、一部に例外も存在します。

肺炎全般に共通する症状としては、次のようなものが知られています。

・湿性の咳(痰がからんだ咳)
・胸痛 ・悪寒
・発熱 ・息切れ

厚生労働省の2015年統計によると、肺炎は日本人の死因―第3位となっています。
参考として、日本人の主な死因を掲載します。

第1位:悪性新生物(がん)…28.7%
第2位:心疾患…15.2%
第3位:肺炎…9.4%
第4位:脳血管疾患…8.7%
第5位:老衰…6.6%

人口10万人あたりの死亡者数に直すと、2015年、「人口10万人あたり96.4名」が肺炎で死亡しています。

1947年には「人口10万人あたり約130名」が肺炎により死亡していました。
その後、肺炎による死亡者数は急減し、1965年以降は「人口10万人あたり20~30名」を推移していました。
しかし、1980年代から再び増加に転じて現在に至ります。

「抗生物質の進歩」「衛生面の改善」により減少した肺炎ですが、高齢化が進んだことで再び死亡者が増加したものと考えられています。

【参考】厚生労働省 平成27年 人口動態統計月報年計(概数)の概況
内科 末廣医院 『肺炎が死因の第3位になりました』

肺炎とは

 

肺炎の分類

肺炎にはいくつかの分類方法がありますが、こちらでは「MSDマニュアル()」の分類に準じます。

MSDマニュアルは、アメリカのニュージャージー州に本拠を置く製薬関連企業―メルク&カンパニーが発行する医学書です。はじめて出版されたのは1899年のことで、2017年現在はオンライン版も無償提供されています。

市中肺炎(CAP:しちゅうはいえん)

一般的な社会生活を送っていて、医療機関・介護施設などにほとんど関連がない人の肺炎です。
簡単に表現するならば、「普通の生活をしている人の肺炎=市中肺炎」と捉えることができます。
こちらの記事では、この「市中肺炎」を主軸に扱います。

市中肺炎の原因は病原体への感染です。
患者さんの年齢、生活環境などにより、さまざまな病原体が考えられます。
市中肺炎の主な病原体は細菌、非定型病原体、ウイルスの3種類です。
そのほかに、真菌(カビ・酵母の仲間)、寄生虫による肺炎も存在します。

▼細菌性肺炎

真正細菌と呼ばれる細菌が引き起こす肺炎です。
一般的に「細菌」と呼んだ場合、真正細菌を指していると考えて構いません。
肺炎の起炎菌(きえんきん:炎症の原因となる菌)として代表的なのは、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌()、黄色ブドウ球菌などです。

インフルエンザ菌は細菌であり、インフルエンザウイルスとは別物です。インフルエンザを引き起こす病原体ではありません。

▼非定型肺炎

非定型病原体と呼ばれる病原体が引き起こす肺炎です。
通常の細菌と異なり、β-ラクタム系抗生物質()が効かない病原体による肺炎を「非定型肺炎」と呼んでいます。
代表的な病原体としては、マイコプラズマ、レジオネラ、クラミジアが知られています。

β-ラクタム系抗生物質は、細菌の細胞壁合成を阻害する作用を持っています。「ペニシリン系抗菌薬」「セフェム系抗菌薬」などが、β-ラクタム系抗生物質に該当します。細胞壁の合成を阻害するので、細胞壁を持たない細菌には効きません。また、β-ラクタム系抗生物質を分解する酵素―β-ラクタマーゼを産生する細菌にも効果は期待できません。

▼ウイルス性肺炎

ウイルスが引き起こす肺炎です。
インフルエンザウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、RSウイルスなどが原因になります。
厳密には非定型肺炎の一種です。

▼真菌性肺炎

カビ・酵母の仲間である真菌が引き起こす肺炎です。
真菌による肺炎を「肺真菌症」と呼ぶこともあります。
アスペルギルス、カンジダ、クリプトコッカスなどの真菌が肺真菌症の原因になり得ます。
非定型肺炎の一種ですが、健康な人が肺真菌症に罹患することは稀(まれ)なので、別の項目として扱っています。

▼寄生虫による肺炎

寄生虫が肺に侵入すると、肺炎を引き起こす恐れがあります。
寄生虫による肺炎を「肺寄生虫症」と呼ぶこともあります。
イヌ回虫、ネコ回虫、イヌ糸状虫などが原因になります。
非定型肺炎の一種ですが、ほかの病原体に比べると稀(まれ)なので、別項目として扱います。

▼誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

誤嚥とは、本来、「気道に入るべきではないものが気道に入る現象」です。
唾液、食べ物などが気道に入り、肺に炎症をきたした状態が「誤嚥性肺炎」です。

本来、器官に異物が入ると、咽(む)せて咳きこみます。
無意識のうちに(=反射的に)咳が出るので、咳反射と言います。
咳で異物を外に出し、誤嚥を防いでいるわけです。
しかし、高齢者は咳反射がうまく機能せず、頻繁に誤嚥を起こす場合があります。
そのため、誤嚥性肺炎は高齢者に多く見られる肺炎として知られています。

医療ケア関連肺炎(HCAP)

医療・介護との関連が疑われる肺炎を「医療ケア関連肺炎」に分類しています。
次のいずれかの条件を満たす場合、医療ケア関連肺炎として扱います。

・過去90日以内に、急性期病棟に入院している
・過去30日以内に、在宅での点滴静注・創傷ケアを受けている
・過去30日以内に透析を受けている
・過去90日以内に、介護施設、療養施設に居住している ・家族内に多剤耐性菌(※)の感染者がいる

多剤耐性菌は、複数の薬剤に耐性を持っている(=効かない)細菌です。

医療ケア関連肺炎の場合、市中肺炎に比べて薬剤耐性菌が関与している確率が高くなります。
入院治療をおこなった場合の死亡率は20~40%と高く、市中肺炎より明確に予後不良(=経過・生存率が思わしくない)です。

透析患者や化学療法を受けている患者の肺炎に対して、市中肺炎と同様の治療を行うべきではないとの考えから「医療ケア関連肺炎」という分類が生まれました。
薬剤耐性菌が関与している確率が高い以上、市中肺炎と同じ扱いにはできないからです。
これは、肺炎の原因による分類ではなく、肺炎患者の環境要因による分類となります。

介護施設居住者の肺炎を「医療ケア関連肺炎」と扱うことから「高齢者の肺炎」と誤解する人もいますが、条件さえ満たしていれば年齢は関係ありません。
ただし、「医療ケア関連肺炎を起こす人に高齢者が多い」というのは事実です。

ちなみに、近年は療養型病床・精神病床を療養施設に含めて、当該の病床に入院中の肺炎を医療ケア関連肺炎と捉えるのが一般的です。

【参考】日本内科学会雑誌第99巻第11号『HCAP(医療ケア関連肺炎)はCAPやHAPとは対応が異なる?』

院内肺炎(HAP)

院内感染した肺炎を「院内肺炎」に分類しています。
具体的には、「入院から48時間以上が経過している一般病床の入院患者」に発生した肺炎を指します。

すでに入院が必要な基礎疾患を持っている状態なので、予後は芳(かんば)しくありません。
迅速に治療開始できる環境にもかかわらず、院内肺炎の死亡率は25~50%()に達します。

ただし、主な死因が基礎疾患にある場合も含んでいます。

【参考】MSDマニュアル

易感染性患者における肺炎

「抗TNFα製剤(=免疫機能を低下させる薬)を投与している状態」「免疫機能が障害された状態」など、日和見感染(ひよりみかんせん:)を起こす患者さんの肺炎を指しています。

日和見感染とは、「免疫機構がきちんと機能せず、さまざまな病原体に感染する状態」です。健康な人なら感染しないような病原体にも容易に感染します。

ニューモシスチス肺炎

ニューモシスチス肺炎を引き起こすのは、「ニューモシスチス・イロベチイ」と呼ばれる真菌です。
健康な人がニューモシスチスに感染する例はきわめて稀(まれ)です。
基本的には、「後天性免疫不全症候群(AIDS)の人」「ステロイドの全身投与を受けている人」など、免疫機構がきちんと働いていない人が感染する病原体だと考えてください。

間質性肺炎(かんしつせいはいえん)

「肺胞(空気を取りこむ袋)の壁」が硬く厚い状態に変化し、呼吸しにくくなる病気を指します。
正式名称は「間質性肺疾患」で、このうち原因不明のものを「突発性間質性肺炎」と呼んでいます。
一般的な「感染による肺炎」とは別の病気なので、こちらの記事では扱いません。

※一般に「肺炎」と呼ばれる疾患はさまざまに細分化されますが、こちらの記事では、主に市中肺炎を扱います。中でも「細菌性肺炎」の解説を中心としています。

板東浩先生
 【監修医】医学博士 / 内科医: 板東浩 先生
 1957年生まれ。
 1981年 徳島大学を卒業。
 ECFMG資格を得て、米国でfamily medicineを臨床研修。
 抗加齢医学、糖質制限、プライマリ・ケア、統合医療などの研究を行う。
 
病気スコープ編集部
2018年1月26日

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