いかいよう胃潰瘍
胃潰瘍とは?
胃壁が胃液で消化されてしまうと、胃潰瘍につながります。
胃潰瘍の代表的な原因は「ヘリコバクター・ピロリ菌」と「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)」です。
ピロリ菌による潰瘍を「Hp潰瘍」、非ステロイド性消炎鎮痛薬による潰瘍を「NSAIDs潰瘍」と呼ぶことがあります。
近年はピロリ菌感染が減ったことから、NSAIDs潰瘍の割合が増えているようです。
NSAIDs潰瘍の場合、「鎮痛剤がみぞおちの痛みを抑えてしまう」という問題があります。
患者さん本人が自覚症状を訴えて医療機関を受診するころには、すでに大きな潰瘍ができている恐れもあります。
「少しの胃痛だから」と軽視することなく、なるべく早めに医師に相談することが悪化防止の第一歩です。
胃潰瘍の症状
上腹部痛や吐血、黒色便を認めることがあります。
胃潰瘍の診療科目・検査方法
上部消化管内視鏡(胃カメラ)、胃部X腺(バリウム)検査を行います。
胃穿孔(いせんこう※2)や吐血をともなうこともあり受診が必要です。消化器内科を受診しましょう。
胃潰瘍の原因
胃潰瘍の予防・治療方法・治療期間
出血を伴う場合は内視鏡的治療を行います。基本的には制酸剤(プロトンポンプ阻害薬)と粘膜保護剤にて加療します。
ピロリ菌感染が原因の場合はピロリ菌除菌治療も行います。胃穿孔を起こした症例では外科的手術となることもあります。
治療期間は約4週間〜8週間になります。
胃潰瘍の治療経過(合併症・後遺症)
制酸剤、胃粘膜保護剤を使用することで治療可能です。
胃潰瘍になりやすい年齢や性別
厚生労働省の患者調査では、胃潰瘍の1987年の患者数は61万3千人でしたが、2014年には27万2千人に減少しました。性差はありません。
発症のリスクはピロリ菌感染単独で18.1倍、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)服用単独で19.4倍、ピロリ菌(※1)に感染かつNSAIDs服用で61.1倍に増加すると報告されています(Huang JQ, et al. : Lancet 359:14~22,2002.より)。
編集部脚注
※1 ピロリ菌
ピロリ菌は、「胃潰瘍、胃がんの原因となる細菌」です。
正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」と言います。
ピロリ菌に感染していると胃粘膜が炎症を起こし、「萎縮性胃炎」と呼ばれる胃炎に進展します。
そして、萎縮性胃炎の一部が、将来的に胃がんに変わります。
ピロリ菌感染者が胃がんになる確率は0.5%程度とされています。
しかし、胃がんにかかる人の大半がピロリ菌感染者なので、「ピロリ菌=胃がんの原因」であることは明白です。 ピロリ菌を除菌することで、胃がんリスクを抑えることが可能です。
※2 胃穿孔 (いせんこう)
胃穿孔は、「胃に穴があいて、内容物が消化管の外まで漏れてくる状態」です。
ごく簡単に表現するなら、
胃潰瘍:胃の内側がえぐれた状態
胃穿孔:胃壁の穴が胃の外側まで貫通した状態
ということです。
消化管穿孔を放置すると腹膜炎を起こし、生命にかかわります。
執筆・監修ドクター
経歴2010年 昭和大学医学部卒業
2010年 昭和大学横浜市北部病院初期研修医
2012年 昭和大学横浜市北部病院総合内科
2014年 帰陽会丹羽病院
2015年 昭和大学横浜市北部病院総合内科助教
2017年 霞ヶ関診療所
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