憩室炎
大腸憩室炎
概要
憩室炎とは?
憩室炎(けいしつえん)とは、大腸などにできた憩室(けいしつ)という部分に炎症がおこる病気です。
憩室は大腸の壁にできる袋状のへこみで、風船のような形をしています。憩室ができている状態を憩室症(けいしつしょう)と呼びます。憩室症は通常、痛みはなく、危険なものでもありません。
しかし、便秘や、細菌の感染などによって炎症がおこると、憩室炎になり、痛みがあらわれます。
症状が軽い場合は、安静にすることで回復に努めます。細菌性の炎症であれば、抗菌薬を飲んで治療します。症状が重い場合は、手術が必要になったり、腹膜炎(ふくまくえん)という別の病気に進行したりすることもあります。
症状
基本的には、腹部の痛み、押さえつけられるような痛みを感じる圧痛(あっつう)、発熱があります。
憩室から出血すると、肛門から血液が吹き出る下血(げけつ)がみられることがあります。また、吐き気があることもあります。
診療科目・検査
痛みがあれば、内科、消化器内科などを受診しましょう。
腹部の診察に加えて、以下のような検査がおこなわれます。
血液検査は炎症の程度や、下血による貧血がないかなどを調べます。腹部超音波検査、腹部CT検査で憩室の状態や、大腸に穴が開いていないかなどを調べます。また、大腸に造影剤(ぞうえいざい)を流し込んだうえで、レントゲン写真を撮る注腸造影検査をおこないます。
こうした検査では、いわゆる「盲腸」ともよばれる虫垂炎(ちゅうすいえん)や、結腸がん、卵巣がん、膿瘍などと見分けるのが難しい場合もあるので、注意が必要とされています。
原因
大腸にできた憩室という部分の炎症が原因です。
憩室は大腸の壁にできる袋状のへこみです。大きさは5~10㎜程度ですが、大きいと20mm以上になることもあり、風船のような形と表現されることもあります。
便秘などで、大腸の内側の圧力が高くなることによって大腸の壁が部分的に押し出されたものです。
先天的な理由でできることもあります。日本人では、上行結腸やS状結腸部分にできることが多いといわれています。
憩室ができている状態を憩室症と呼びます。憩室そのものに害はなく、特に治療の必要もありません。
便が憩室の中にはまり込むなどで細菌が繁殖すると、炎症を引きおこすことがあります。
治療方法と治療期間
症状が軽い場合は、安静にして、柔らかく繊維質の少ない食事をすることで回復に努めます。細菌性の炎症であれば、抗菌薬を飲むことで改善することもあります。
炎症が強い場合や、範囲が広い場合は、入院したうえで、食事を控え、水分を補給しつつ、抗菌薬を注射することによって治療します。抗菌薬での効果が期待できない場合などでは細い管(ドレーン)を大腸に差し込んで、憩室に溜まった膿を身体の外へ出す経皮的ドレナージをおこないます。経皮的ドレナージができない場合や、効果がない場合は、腹を切り開いて、大腸の憩室炎がおこっている部分を取り除く手術をします。
治療期間は、症状が軽い場合、3~5日程度の通院で改善がみられます。入院となった場合で、1週間~10日程度、手術をした場合は2週間~1カ月以上かかることがあります。
治療の展望と予後
放置していると、大腸に穴が開き、腹膜炎(ふくまくえん)という重い病気に進行することもあるので、注意しなければなりません。腹膜炎になった場合には早急に治療を開始する必要があります。
炎症が収まれば、病気としては完治となります。ただし、炎症が収まったあとで、大腸内視鏡検査をすることもあります。大腸がんや虚血性大腸炎などが憩室炎の原因となっている可能性があるためです。
また、憩室が多くできている患者さんには、再発の可能性もあります。
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発症しやすい年代と性差
どの年代でもかかることがあります。ただし、高齢になるほど、大腸の壁が弱くなって憩室ができやすくなることから、憩室炎も高齢者に多い傾向があります。また、高齢者は免疫力が低下していて、重症になる可能性が高いため、より注意が必要です。
慢性の便秘は憩室を作りやすいので、日頃の食生活にも注意が必要です。