ストレス性胃潰瘍にかかるしくみ・症状とは?病院でうける検査や治療を解説
胃潰瘍はさまざまな原因で起こります。
この記事では、その中でも『ストレス』によって起きる『ストレス性胃潰瘍』について解説します。
私たちの身体の中で、ストレスがどのように病気へと変わっていくのか。そして、どのように対処すればいいのか、病院へのかかり方もご紹介しています。
ストレス性の胃潰瘍について
1.そもそも胃潰瘍とは?
『胃潰瘍』とは、胃の壁の内側に傷がつく病気です。
胃酸は強い酸性で、食べ物だけでなく、胃の粘膜をも溶かす力を持っています。健康な状態であれば、胃の粘膜は粘液やアルカリを分泌することで自らを守っています。しかし、胃酸の分泌が通常よりも増えたり、胃の粘膜が自らを守る力が低下したりすることで、胃酸によって胃が傷つき、胃潰瘍を発症します。
胃酸のpHは1.2と強酸で、食べ物を溶かして消化するだけでなく、自分の胃粘膜をも溶かすほどですが、胃粘膜は粘液やアルカリ(重炭酸イオン)を分泌することによって、胃酸による消化から自らを守っています。
しかし、胃酸の分泌が亢進したり、胃粘膜の防御能が低下したりすると胃潰瘍ができやすくなります。
2. ストレスが胃潰瘍を引き起こすメカニズム
2種類のストレス
私たちが感じるストレスには大きく分けて、『心理的ストレス』と『身体的ストレス』があります。心配事や怒り、悩みなどは心理的ストレス、過度の疲労や重労働、外傷、手術、感染、化学物質などは身体的ストレスに分類されます。
ちなみに、心理的ストレスでもっとも多きなものは、”身内(とくに配偶者)の死”だといわれています。
ストレスを感じると体に変化が起こる
私たちの身体にストレスが加わると、中枢神経系・自律神経系・免疫系・内分泌系などで、さまざまな生体反応が起こります。
適度なストレスは悪いものではありませんが、ストレスの大きさが個人の適応レベルを超えてしまうと、この生体反応は体にとって悪い方へ作用し、病気や体の不調をひきおこすことがあります。
変化を正常に戻そうとする反応が、胃に障害を引き起こす
ストレスを感じる環境下では、心拍数や血圧が上がる「交感神経系の機能亢進状態」になります。そのあと、副交感神経が亢進し生体の内部環境を一定に保とうとします。この現象を『ホメオスタシス』といいます。
3.ストレス以外で胃潰瘍になる原因
ストレス以外で胃潰瘍になる原因は『ピロリ菌』と『薬剤』があります。
ピロリ菌による胃潰瘍
ピロリ菌には多くの場合幼少期に感染します。幼いころ感染したピロリ菌はそのまま長期間胃の粘膜に居座り、『炎症細胞浸潤(しんじゅん)』を引き起こします。
それによって、胃の粘膜が傷つき、胃潰瘍を発症します。
薬剤による胃潰瘍
慢性関節リウマチや風邪などの治療に使用される、『非ステロイド性消炎鎮痛剤』や『ステロイド性消炎鎮痛薬』などの薬によって胃潰瘍が引き起こされます。
ストレス性胃潰瘍の症状や似た病気
1.ストレス性胃潰瘍の症状
みぞおちやその他の腹部、背中に痛みや不快感、膨満感(ぼうまんかん…お腹が張って苦しい症状)があらわれます。
また、胸焼けや吐き気を伴うこともあります。
2.ほかに疑われる病気
しかし、上記の症状がみられたからといって、必ずしも胃潰瘍とは限りません。
次の病気でも、似た症状があらわれます。
<良性疾患>
・胆石症(たんせきしょう)
・胆嚢炎(たんのうえん)
・膵炎(すいえん)
・過敏性腸症候群
<悪性腫瘍>
・胃がん
・膵がん
・胆嚢がん(たんのうがん)
ストレス性胃潰瘍の検査と治療法
胃に不快感を覚えたら、『内科』または『消化器外科』を受診しましょう。
1.胃潰瘍の検査
上記のような似た病気と胃潰瘍とを見分けるため、主に『X線検査』と『内視鏡検査』を行います。
X線検査
バリウムを飲み、体位を変えながら胃の中を撮影する検査です。
内視鏡検査
胃カメラで胃の中を観察する検査です。X線検査に比べて得られる情報量が多く、放射線を浴びずに検査ができるため、初めから内視鏡検査を実施することも多いです。
カメラで観察するとともに、胃の粘膜を採取し、顕微鏡で詳しく調べる、生検を行うこともあります。
2.胃潰瘍の治療
胃潰瘍の治療では、『ヒスタミンH2受容体拮抗剤』や『プロトポンプ阻害剤』と呼ばれる薬を使用します。
ヒスタミンH2受容体拮抗剤
胃酸の分泌を抑制するはたらきをする薬です。
プロトポンプ阻害剤
胃酸の生成自体を止めるはたらきをする薬です。
プロトポンプ阻害剤には『内服』と『静脈注射』の両方があります。
基本、内服の場合は1日1回の服薬、点滴の場合は1日2 回、もしくは1日2回ゆっくりと静脈に注射をします。
3.ストレスの発散も治療の一環
ストレス性胃潰瘍の場合、ストレス自体を取り除くことも大切です。
全てのストレスの原因を解決することは難しいかもしれませんが、何かしらストレスを発散できるような方法があるとよいですね。日常生活の中で、上手にストレス状態を緩和することが、ストレス性胃潰瘍の予防や治療に大きな意味を持ちます。
まとめ
胃に違和感を覚えたら、まずは検査を受けましょう。
病院に行かず違和感を放っておくこと自体がストレスとなり、病気をさらに悪化させることにも成りかねません。
胃の痛みを引き起こす病気はたくさんあり、それぞれに応じた治療が必要です。胃が痛いからといって、安易に市販の胃薬に手を伸ばすことはやめましょう。病院へ行き、きちんと病気に合った治療を受けることをおすすめします。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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