朝起きられなくてツラい…もしかして病気かも!?解決策を医師が解説
朝起きるのがツラくてなかなか起き上がれない…という悩みを抱えている方は多いといわれています。
このような状態は、大人なのに朝起きられないなんてありえない、自覚が足りないなどと思われがちですが、実は何らかの病気が潜んでいることで朝起きることが困難になっている可能性があります。
朝起きるのがツラいと感じてしまう原因は何なのか、詳しく紹介していきます。
朝起きられないのは病気のせい?
朝起きられない原因をチェック
朝起きられない原因をここでチェックしてみましょう。下記、15項目のチェックリストでいくつ当てはまるでしょうか。
チェックリスト
① 体が重苦しくだるい
② 動悸、息切れ
③ 立ちくらみやめまい
④ 起床時に気分が悪い
⑤ 午前中具合が悪い
⑥ イライラする
⑦ 食欲不振
⑧ 倦怠感
⑨ 腹痛
⑩ 頭痛
⑪ 乗り物酔い
⑫ 顔色が青白い
⑬ 眠っても疲労が残る
⑭ 物が飲み込みにくい
⑮ 胃腸の不具合
病気の場合
① 起立性調節障害
起立性調節障害は子どもに多い病気ですが、30歳以降に発症することもあり、症状としては「朝起きることが困難」「起床時気分が悪くなる」「頭痛」「めまいや立ちくらみがする」といった例が挙げられます。
起立性調節障害の症状は、午前中に強くあらわれて午後は軽減する傾向にあり、交感神経と副交感神経(自律神経)のバランスが崩れることで発症し、ストレスに影響されやすい傾向にあるといわれています。
また、生活習慣の乱れも原因の一つといわれています。大人になってから起立性調節障害を発症した場合、そのまま放置するとうつ病を発症するおそれもあるため、できるだけ早めに医療機関を受診するようにしましょう。
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② 低血圧、低体温
女性は筋肉量が少ない傾向にあるため、低血圧になりやすいといわれています。
低血圧になると、体内の血液の循環が悪くなり、頭、手、足にまで血液を届けることが困難になり、体が重くだるいと感じます。
低体温の場合は、脳からの指示が速やかに行われず、交感神経系の働きも鈍くなります。
その結果、血液が体内を巡る速度が遅くなり、体の各細胞に酸素が送られる速度も弱まる傾向にあります。
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③ 貧血
貧血になると、血中ヘモグロビン量が減少し、体の中の各細胞に酸素を送る機能が低下します。
すると、脳にも十分な量の酸素が届けられなくなり、自分では良く寝たと思っても脳には疲労が残っているため、朝起きるのがツラいと感じます。
④ 自律神経失調症
自律神経失調症は、うつ病に併発することもあります。
過度のストレスが自律神経の機能を低下させることにより、朝起きる時間になっても脳が覚醒されることなく眠りの状態をキープしようとします。
すると、脳が体に必要な指示を出すことができず、体温が上昇せず、神経機能や胃腸機能が低下したままになり、体が重くてだるいような感覚に陥ることになります。
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⑤ 概日リズム障害による過眠
体の睡眠リズムを司る体内時計が狂うことで、夜眠ることが困難になり、朝起きられないという症状があらわれることがあります。
睡眠リズムが乱れているため結果的に眠気が強くなり朝起きることが困難になるなどの症状が見られます。
日中に強い光を浴びることを心がけ、薬を上手に活用して、生体のリズムを整えることが有効な治療法になります。
⑥ 睡眠時無呼吸症候群
何らかの原因によって、夜寝ている間に気道が塞がれてしまうことで、睡眠が浅くなり、朝起きられないという症状があらわれることがあります。
⑦ レム睡眠行動障害
夢を見る睡眠であるレム睡眠中に、体の動きが抑えられなくなって行動してしまうレム睡眠行動障害という病気があります。
その結果、睡眠不足のようになり、朝起きられないという状態になることがあります。朝起きられない人は、レム睡眠行動障害の可能性もあります。
上記のような症状があらわれた場合には、内科、循環器科、精神科、睡眠医療専門クリニックなどの医療機関を受診することをおすすめします。
病気でない場合
感染症や薬物治療などによる過眠
風邪などに感染すると、免疫機能の働きにより、健康なときよりも眠りを求めるようになります。
すると、眠りが強くなり、いつもより長い睡眠を欲するようになります。
また、薬物治療をしている場合には、薬の副作用により眠気が起こることがあります。
朝起きられない病気の治療
どんな検査をするの?
医療機関ではまず問診、血圧測定、脈拍測定が行われます。そして、血液検査、検尿、レントゲン(胸部)検査などが行われます。
治療方法は?
各種検査を行い、最終的な診断が出た後は、まず生活習慣の見直しや改善策が提案されます。
そして、生活習慣の改善を試みても症状が一向に快方に向かわない場合には、薬物療法が行われるケースが多いとされています。
朝起きられるようにするための自分でできる対処法
5つのポイント
① 規則正しい生活習慣
ストレス過多、慢性的な疲労、睡眠不足、食生活の乱れなど、日々の生活習慣を見直して改善することが大切です。
② バランスの良い食生活
好き嫌いや偏食、食事時間の変動などをできるだけ避けて、ビタミン、ミネラルを豊富に含む食品や良質なタンパク質を含む食品を意識して摂るようにしましょう。
③ 適度な運動
無理のない範囲で、適度な運動を毎日継続することで、筋肉量を維持しましょう。
運動することで、体力もつき、健康的なストレス解消も期待できます。
④ 朝の日差しを浴びる
朝の日差しを浴びると起床を促し、気分を良くする効果があるといわれている「セロトニン」という脳内ホルモン(神経伝達物質)の分泌が促進されると考えられています。
⑤体をゆっくり動かすようにする
朝起きたら、ベッドや布団の中で手や足を動かすようにしてください。例えば、手足をグーパーグーパーする、足を上げてバタバタする、腰を上げるなど、簡単に体を動かすだけで起床時の体のだるさを軽くすることができます。
症状別の対処法
起立性調節障害
適度に運動をして、体の血行改善を促進して、循環しやすい体質に変えていくことが大切です。
また、ストレス過多により自律神経は乱れる傾向にあるため、自分なりのストレス発散方法を身に付けることも症状改善につながります。
症状については立位や座位で増強し、臥位(がい)にて軽減する傾向にあります。
自律神経失調症
早寝早起きを心がけて、朝起きたら日の光を浴びて体内時計のズレをもとに戻すことも重要です。
低血圧、低体温
バランスの良い食習慣を送ることや、水分をしっかり摂ること、温度差に注意することなどを意識して行うことで改善が期待できます。
貧血
鉄分をしっかり摂取し、血中ヘモグロビン値を上げることで貧血を解消することが期待できます。一日に摂りたい鉄分量は、成人女性で12mgです。
レバー、しじみ、小松菜、パセリ、イワシなどに多く含まれているので、日々の食生活に取り入れることをおすすめします。
鉄分は、一回に体内で吸収できる量が決まっているため、必要量を毎日摂取することが大切です。
睡眠障害
人それぞれ適切な睡眠時間は異なります。
自分自身が十分睡眠がとれたと実感することができて、すっきり目覚めることができる睡眠こそがその人の理想の睡眠時間となります。
そのためにも、まずは自分にあった理想の睡眠時間を把握しましょう。
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まとめ
若い人が朝起きられない多い原因として、起立性調節障害が挙げられます。
起立性調節障害は、毎日の生活習慣により発症しやすい病気でもあるためご自身の心がけで改善が可能です。
しかし、原因を究明せず放置してしまうことで、うつ病などの精神疾患の初発症状であるおそれもあり、気になる症状がある場合には、専門の医療機関を受診して現状を相談することをおすすめします。
執筆・監修ドクター
経歴1986年 浜松医科大学 ・同大学院修了 博士(医学)卒業
埼玉医科大学精神医学教室,
2003年 石心会狭山病院(現埼玉石心会病院)精神科部長,
2007年 医療法人弘心会 武蔵の森病院副院長
2011年 医療法人弘心会 武蔵の森病院 院長
2019年 日本医療科学大学兼任教授
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