「新型コロナによるストレス」自律神経失調症で微熱・倦怠感の症状が…ストレス解消はどうすればいい?
新型コロナウイルスの症状には発熱や倦怠感、息苦しさなどがあると言われています。
ただ、疑わしい症状が出たため新型コロナウイルスの検査をしたものの、結果が陰性だったというケースがあります。
もちろん、結果が陰性でも100%感染していないとは言い切れませんが、このようなケースで感染経路が思い当たらない場合には、他の病気が隠れていることがあり、注意が必要です。
特に、最近では長い自粛生活によるストレスで、自律神経に支障が出るなど心身の不調を訴える人が増えています。
そこで今回は、新型コロナウイルスにより「自律神経失調症」になった場合の症状や治療、予防のしかたなどを解説します。
自律神経失調症でも発熱や倦怠感が出る?
今、発熱や倦怠感があると新型コロナウイルスに感染したのではないかと不安になると思いますが、たとえば、風邪や食中毒、熱中症などでも同様の症状があらわれることがあります。
そのため、まずは自己判断をせずにかかりつけの医師や「帰国者・接触者センター」などに相談することが必要です。
診察の結果、上記のような病気ではないと診断された場合には、自律神経失調症の可能性を疑うことがあります。
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自律神経失調症とは?
自律神経失調症とは、身体疾患などの器質的な原因がないにもかかわらず、自律神経のバランスが崩れている状態のことです。
日本の医療現場では、よく使われている病名ですが、国際的に通用する病名ではありません。
世界保健機構(WHO)の診断ガイドライン(ICD-10)では「身体表現性障害」、アメリカ精神医学会(APA)の精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)では「身体症状症」という病気があり、同じような扱われ方をしています。
自律神経は、暑いときに汗をかいて体温の上昇を抑えたり、食後に胃腸の動きを活発にして消化を促すなど、体内のバランスを維持する働きをしています。
そのため、自律神経が乱れると体内のバランスが崩れと、汗をかかなくなって身体がほてったり、胃腸の活動が弱まり下痢気味になる、などの不快な症状があらわれます。
ただ、決まった症状はなく、人によって種類や程度は様々です。
発熱や倦怠感などの症状がみられ、検査をしても目立った異常が見つからない場合は「自律神経失調症」とみなされることがあります。
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新型コロナウイルスと自律神経失調症の違い
新型コロナウイルスに感染した場合は、高熱や咳、倦怠感が主な症状としてあらわれます。
中には、鼻づまりや鼻水、喉の痛み、筋肉痛、下痢などの症状もみられます。
一方、自律神経失調症の場合には、似た症状がみられるものの、発熱であっても夜に微熱程度だけ、あるいはまったく出なかったり、なんとなく息苦しい、といった違いがあります。
症状が似ており、問診だけではわからないこともあります。そのため新型コロナウイルス関連の検査として、血液検査やレントゲン検査、PCR検査などを行います。
医療機関に行く場合には、事前に「帰国者・接触者センター」や、かかりつけの医師に相談のうえ、指示を仰ぐようにしましょう。
「心因性発熱」の可能性も
ストレスによって発熱が引き起こされることがあり、「心因性発熱」と呼ばれます。
一時的に強いストレスを受けた場合、あるいは長期的にストレスにさらされ続けた場合に、急な高熱や、長期間の微熱といった症状があらわれることがあります。
たとえば「周囲で新型コロナウイルスに感染した人がいる」という情報を耳にしたとき、強く不安な気持ちになり高熱を出してしまうこともありえます。
また、日々更新される新型コロナウイルスのニュースを見続けるうちに、不安な気持ちが蓄積されて長期間にわたって微熱が出続けることも十分に考えられます。
心因性発熱も自律神経失調症と同様、倦怠感などの症状があらわれることもあります。
新型コロナウイルスかどうかの見分けが難しい場合は、やはり「帰国者・接触者センター」などに相談しましょう。
自律神経失調症の治療
新型コロナウイルスの感染でもなく、風邪や食中毒、熱中症でもないのに、体の不調を感じる場合は、心療内科や精神科に相談してみましょう。
自律神経失調症であれば、症状に応じた治療が可能です。
自律神経失調症の治療に最も大切なのは、「ストレスのコントロール」と「生活習慣の改善」です。
症状によっては神経バランスを整える目的で、漢方薬や抗不安薬、抗うつ薬などを使う場合もあります。
しかし薬による治療だけではなく、患者さん自身が体調と環境に応じて生活を工夫することが大切です。
ストレスのコントロールとして、意識的に休息をとるようにします。自分では心の疲れに気づきにくい患者さんも多くいらっしゃいます。
そのため、たとえば「新型コロナウイルスの情報から離れて、読書などほかのことに集中する」など、緊張感を和らげるようにします。
このほかにも、規則正しい食事や睡眠、ストレッチ、軽い運動など、活動と休息のリズムをつくり、体調を整えることを目指します。
ストレスコントロールのためのポイント
休息が大切とわかってはいても、新型コロナウイルスのことが心配でなかなか心が休まらないという方も多いでしょう。
まずは自分でできるストレスのコントロール方法を、ポイントを絞って考えてみましょう。
適切な感染予防
以下の基本的な感染予防策をしっかり行いましょう。
・うがい、手洗い、マスク、外出時のアルコールを使った手指消毒
・感染リスクの高い人混みを避ける
・生活リズムを整える
感染予防には、衛生面だけではなく、免疫力をつけることも大切です。適度な食事や睡眠、運動によって、ストレスをためないようにしましょう。
不安や恐怖に「対処」する
不安や恐怖は必要な感情ではあるものの、過剰になってしまうと心身に悪影響を及ぼします。
感情自体をコントロールすることはできませんが、情報を調べすぎない、スマホやテレビから離れるなど、不安や恐怖が引き起こされるものから距離をとることで「対処」することができます。
どうしても情報を調べたい場合には、テレビや雑誌などではなく、厚生労働省やWHOといった公的機関から情報を集めるとよいでしょう。
まとめ
発熱や倦怠感などの症状があるときは、まずは帰国者・接触者センターの職員や、かかりつけ医師に相談しましょう。
検査や診察を受けて、新型コロナウイルスや他の病気など、どれにも当てはまらない場合は、自律神経失調症とみなされることがあります。
体調が悪い場合は無理をせず、ストレスになるようなことから離れてゆっくり休むことが大切です。かかりつけ医師と相談をしながらしっかりと治療していきましょう。
「勤労者心のメール相談」の利用
横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義医師(心療内科医)が自ら回答する「勤労者心のメール相談」という事業があります。
仕事上のストレスによる、身体的・精神的問題などに関する相談を、年中無休の24時間、無料で受け付けていて、24時間以内に返信があります。積極的に利用しましょう。
メールアドレス:mental-tel@yokohamah.johas.go.jp
厚生労働省でも、新型コロナウイルスによって、仕事や生活にストレスや不安を感じている方むけにサイトを立ち上げています。
様々な専門家からのアドバイスや、新型コロナウイルス関連の情報、相談窓口などが紹介されていますので、受診前にぜひ参考にしてみてください。
【記事監修】横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長 山本 晴義医師
執筆・監修ドクター
経歴1972年 東北大学医学部 卒業
1976年 東北大学医学部付属病院 心療内科助手
1981年 呉羽総合病院 心療内科部長
1983年 梅田病院 院長
1991年 横浜労災病院 心療内科部長
1998年 横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長
現在に至る
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