えーでぃーえいちでぃーADHD
ADHDとは
ADHD(えーでぃーえいちでぃー)(注意欠陥/多動性障害)とは、注意力の障害と多動や衝動性の問題をあわせもつ発達障害のひとつです。
英語の「Attention Deficit Hyperactivity Disorder(注意欠陥多動性障害)」の頭文字を略しADHDとよばれます。
年齢に見合わない落ち着きのなさ、注意力散漫、集中力の足りなさ、衝動的な行動をとるなどがみられます。
こうした注意欠如や多動性のため学習や学校生活に支障をきたすため、学業不振や対人関係でつらい思いをすることも多く、不安感や、ゆううつなどで心の病気になることもあります。
専門の医療機関と家庭や学校が連携して治療にあたることが大切です。およそ7歳くらいまでに特徴があらわれます。
しかし障害を理解されないまま適切な治療を受けずに成人になる場合もあります。そうなると大人になっても障害は治らず、社会生活に支障をきたすケースもみられます。
ADHDの症状
ADHDは注意の持続や集中力、物事を計画的におこなう能力に問題があります。2~6割の患者さんに学習上の問題が生じます。
ほかにも、多動や衝動性の問題があり、列に並んで順番を待つことが出来ない人が多くみられます。
就学前の子供の場合、コミュニケーションの問題が目立ちます。落ち着きがなく手をそわそわ動かしていたり、人の話が聞けない、忘れっぽい、だらしないといった行動が見受けられます。
学齢期に達すると、注意力がなく落ちつきがないため、教室内を徘徊したり、大声を出したりと、学校生活に適応できないことがあります。
青年期以降は、注意散漫でなかなか仕事が覚えられず、周囲にいつもうわの空のような印象を与えてます。
約束事を守れないなどで周囲とのまさつを生むこともあります。安定して職に就けないことが多く、そのストレスからうつ病になることも多いとされます。
▼子供の場合のADHDについてもっと詳しく知りたい方はこちら
ベビママほっと。:子どもの年齢に応じた「ADHD」の特徴とは?接しかたや治療法について
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ADHDの診療科目・検査方法
ADHDは専門の医師による評価によって診断されます。また、医師や心理士による心理学的検査も診断には必要です。
基本的には、行動に関するさまざまな質問が書かれた質問票によって診断を下します。
以下の条件が満たされた場合、ADHDと診断されます。
- じっとしていられない、待つことができずに他人を阻害してしまうなどの「多動・衝動性」と、集中力の欠如、物を紛失しやすいなどの「不注意」がその年齢の発達に比べてあきらかにあらわれること。
- 家庭や学校などふたつ以上の場において障害となっていること。
- 複数の注意欠如や多動性障害の症状が7歳以前にあらわれていること。
- 年齢相応の学業的、職業的、対人関係においての機能に障害があること。
- 自閉症スペクトラム障害、学習障害など、ほかの発達障害や統合失調症などではないこと。
子供の場合、小児神経科、児童精神科専門医の在籍する医療機関を受診するとなおよいでしょう。
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ADHDの原因
ADHDの具体的な原因はまだわかっていません。
脳内での神経伝達物質の異常や、遺伝的な要因が関与している可能性が高いと考えられています。
第一親族に同じ障害をもつ場合は、遺伝する確率が高いといわれています。
環境的な要因として1500g未満で生まれてくる低出生体重児、脳への感染症、鉄欠乏症、出生前の母親の飲酒、タバコやコカインの影響などがあげられます。
生育環境として児童虐待、育児放棄(ネグレクト)などがかかわっているとも考えられています。
ADHDの予防・治療方法・治療期間
ADHDは薬物療法と行動療法を用いて治療をします。薬物療法では、ADHDに効果がある薬剤が3種類、国内で使用できます。
行動問題の改善が比較的高い割合で期待できる、注意力や衝動制御の調節作用にはたらきかけるなど、自己評価の回復につながり、次第に薬物に頼ることなく自身でコントロールできるようになることをめざします。
薬物のなかには食欲低下、眠気などの副作用が発生することがあります。また、発育期の子供への使用は、処方できる医師や薬局が限定されている薬品もあります。
治療中は定期的な診察を受け、血圧や心電図などの検査をする必要がある薬物もあります。
著しい副作用がある場合は、休薬日を設けることで調節します。
また、薬を長期間使用すると小児の成長が遅れることもあります。医師は体重と身長をモニタリングする必要があります。
薬を使うことで症状が緩和され、学校や他の活動に参加しやすくなるため、薬との上手な付き合い方が必要となる病気でもあります。
行動療法では、スケジュールに基づいた生活指導、支援学級プログラム、個人に合わせた心理プログラム方法などが必要です。
薬物療法と併用する場合は、心理士による行動療法を取り入れることが推奨されます。
ADHDの治療経過(合併症・後遺症)
ADHDと診断される子どもが増加していますが、親や医師は、適切な判断や診断ができているのかが懸念されています。
発達途上にある子どもは活発で衝動的なことも多いため、診断することが難しいとされます。
そのため、適切な治療の機会を得られないまま、周囲から行動をとがめられたり、人間関係がうまく築けないため、不安や抑うつなどの二次障害症状があらわれたりする場合があります。
成人になっても引き続き症状がみられるケースが多く、多動性症状は薄れるものの、不注意でミスをしたり、感情のコントロールがうまくできず、人間関係がうまく築けないなどの障害が残ることがあります。
ADHDになりやすい年齢や性別
ADHDになりやすいのは子どもの約3~5%、成人では2~2.5%がADHDであると考えられています。
男児の数は女児より約4~5倍多いといわれています。
徴候の多くは4歳頃までに気づかれ、12歳までには診断可能な症状があらわれます。
しかし、なかには成人になるまで気づかれないこともあり、社会生活に大きな影響を及ぼさない場合は、成人になってADHDに気づかれるケースも多く見受けられます。
執筆・監修ドクター
経歴昭和61年3月 青山学院大学文学部教育学科心理学専修コース卒業
平成6年3月 東邦大学医学部卒業
平成6年4月 東京女子医大病院で臨床研修を終え、
東京女子医大精神神経科入局
平成8年7月 武蔵野赤十字病院心療内科勤務
平成11年10月 しのだの森ホスピタル入職
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