子宮筋腫があっても妊娠できる?普通分娩は?初期から中期は特に注意
子宮筋腫は良性の腫瘍で自覚症状がなく気づかない場合も多くありますが、不妊や難産につながる可能性もあります。生理が長すぎる、下腹部にしこりがあるなど気になる症状がある方は、妊娠前に検査を受けておきましょう。
子宮筋腫による妊娠への影響や、妊娠してから子宮筋腫に気づいた場合の対応などについて、詳しく説明します。
子宮筋腫があっても妊娠できる?
1.子宮筋腫があっても妊娠可能
子宮筋腫があっても、それほど大きくなければ妊娠は可能です。しかし、リスクがまったくないわけではありません。
子宮筋腫により月経量の多さや、月経以外での出血、腰痛、頻尿など、何かしらの症状が出ている場合は、若い人でも妊娠しにくくなったり、流産しやすくなったりします。
妊娠を希望している方で子宮筋腫が見つかった時は、早めに手術などの治療を検討した方がよいでしょう。症状によっては治療方法に個人差があるため、必ず医師に相談しましょう。
2.子宮筋腫のリスクとは
妊娠率の低下
子宮筋腫がある方が妊娠を望んでいる場合、妊娠率が低下することがあります。
子宮筋腫がある場合、約5%~10%の人が不妊症と診断されています。
しかし、子宮筋腫を取り除くことで妊娠率が50%まで高まったというデータも出ているので、妊娠を希望している場合は早めに治療を受けるようにしましょう。
流産、早産、難産などにつながる可能性
妊娠したとしても、流産してしまう可能性は高くなります。子宮の中で赤ちゃんの育つ場所を筋腫がふさいでしまう可能性があるためです。
子宮筋腫の数が多い、子宮筋腫のサイズが大きい場合に高まるリスクには、次のようなものがあります。
考えられるリスクとは
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・流産
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・早産
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・胎児発育不全
胎児の発育が遅れる、停止するなどの状態になります。帝王切開で早めに出産することがあります。出生後、問題なく成長する子もいれば、障害が残ることもあります。
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・変性による疼痛や感染
子宮筋腫が大きくなることで、子宮筋腫の内部が硬くなったり、筋腫の内側に血流が届かず中身が壊死するなど、圧迫感や痛みを生じます。また、細菌に感染することで、炎症や痛みを伴うこともあります。
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・前期破水
陣痛前の破水。早産、胎児の感染が起こる危険な状態です。
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・常位胎盤早期剥離
胎盤が正常な位置に付着しておらず、妊娠中または胎児が生まれる前に、子宮壁から剥がれてしまう現状、剥がれてしまった状態をいいます。
妊娠時に子宮筋腫が発覚…どうすればいい?
1.妊娠初期から中期は特に注意
子宮筋腫がある妊娠・出産において、特にリスクが高まるのが妊娠の初期から中期にかけてです。
リスクとして考えられるのは、切迫流産や切迫早産です。
2.子宮筋腫は大きくなる?
妊娠初期から中期にかけて子宮筋腫は大きくなりやすい
妊娠初期から中期にかけて子宮筋腫は増大傾向があります。
妊娠初期から中期にかけては、特にホルモンの血中濃度が上昇する時期であるためです。女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの血中濃度は上昇すると、筋腫の発生が促進されると考えられています。
しかし、個人差があり、ほとんど大きくならないこともあります。
また、妊娠中の母体のホルモン環境の変化により、子宮筋腫が大きくなり、子宮筋腫の内部が硬くなったり、筋腫の内側に血流が届かず中身が壊死するなど、圧迫感や痛みを生じることもあります。
子宮筋腫は良性の腫瘍なので、妊娠中は基本的に手術の必要はなく、経過観察を行います。
3.母体もリスクが高まる
赤ちゃんだけでなく、子宮筋腫があることで妊娠中は母体にもリスクが高まります。
赤ちゃんの胎位の異常(逆子など)、分娩時の弛緩出血(子宮の収縮が不十分で出血すること)などが考えられるため、出産の時には小さな個人産院ではなく、設備の整った大きな病院を選んだほうがよいでしょう。
4.出産は帝王切開になる?
必ずしも帝王切開になるわけではないけれど…
子宮筋腫があるからといって、必ずしも帝王切開になるとは限りません。
しかし、子宮内に腫瘍がある場合、微弱陣痛や胎位異常が発生することが多いため、帝王切開になる可能性は、通常の6倍ほどになるといわれています。
帝王切開になるかは陣痛の状況次第
帝王切開になるか自然分娩になるかは、陣痛が起きた段階で赤ちゃんがどのくらい下がっているかなどの状況により判断されます。
5.帝王切開であれば同時に子宮筋腫も取ることも
また帝王切開をする際に同時に子宮筋腫も取り除くことがあります。
そのままにしておくと、出産後、子宮収縮がうまくできなかったり、子宮内膜炎を引き起こす可能性があったり、今後の妊娠時の流産や早産にもつながるからです。
病院により判断は分かれる
子宮筋腫は一度取り除いても再発する可能性があるため、帝王切開の場合でも同時に子宮筋腫も取り除くかどうかは、病院により判断が分かれます。医師とよく相談するようにしましょう。
子宮筋腫に妊娠前に気づくには?
1.生理の経血が多くなる、期間が長くなることも
子宮筋腫は自覚症状がみられない場合も多くあります。
しかし症状として多く見られるのは、月経量が多くなる過多月経や月経期間が長くなる過長月経です。
筋腫が子宮の内側に飛び出したりしていることで、出血量が増えることが原因と言われています。これにより貧血を引き起こすケースもあります。
月経量は他人と比べることができないため、過多月経に気づかず放置してしまうことがあります。
2.その他の症状
自分で触ってわかることも
筋腫が大きい場合は、下腹部にしこりがあることが自分で触ってもわかることがあります。
頻尿や便秘になることも
子宮の前に膀胱があるため、筋腫が膀胱を圧迫することで頻尿になったり、腸の周りを圧迫している場合は便秘の原因となります。
妊娠前の子宮筋腫の治療
子宮筋腫が原因で不妊となっている場合は、治療が必要になります。
妊娠の可能性を高めるためには、早めの治療が大切です。子宮筋腫の治療には、薬物による治療と手術があります。
1.薬物療法
子宮筋腫の発育を抑える方法ですが、完治することは難しいです。
2.手術療法
子宮そのものを摘出する子宮全摘術と、子宮を温存して筋腫のみを取り除く筋腫核術があります。
妊娠を希望している場合は、筋腫のみを摘出します。
この方法の場合は、その後出産も可能となります。
まとめ
子宮筋腫が見つかった場合、不妊の原因になるのではと不安になるかもしれませんが、早めに治療することで妊娠、出産も可能です。
しかし、子宮筋腫は再発の可能性も高いため、一度治療したからといって油断せず、定期検診や経過観察が重要です。しっかりと病院を受診するようにしましょう。
執筆・監修ドクター
経歴1999年 日本医科大学産婦人科教室入局 日本医科大学付属病院 産婦人科研修医
2001年 国立横須賀病院(現 横須賀市立うわまち病院) 産婦人科
2002年 東京都保健医療公社 東部地域病院 婦人科
2003年 日本医科大学付属病院 女性診療科・産科 助手代理
2004年 日本医科大学付属第二病院 女性診療科・産科 助手
現在 石野医院の副院長
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