五月病とは
五月病は医学的な病名ではありません。あくまで通称です。
日本では4月が入学や就職、転勤などの変化が多い節目の月になります。そのため、大きな生活の変化の後で不調が生じた場合を「五月病」と呼ぶようになりました。
一方、日本以外では9月が入学や就職の時期になっている国が大半です。英語では「10月病」のような呼び方はせず、夏休みの後に生じる不調と考えて「休み明けブルー」(Post-vacation blues)と呼んでいます。
いずれにしても不調が起きた時期だけに注目して病名をつけることはないため、「五月病」や「休み明けブルー」を正式な病名として医師が診断することはありません。
4月に新入学や進級、入社、転勤など環境の大きく変わった人たちが、今までやる気に満ちていたのに5月の連休明け頃から、不調を訴えることから名づけられました。
一般的には1~2ヶ月様子をみていれば改善することが普通ですが、症状が重かったり、長引いたりする場合は「適応障害」や「うつ病」などが当てはまることが普通です。思春期の場合には精神病性障害の可能性もあります。
五月病のように時期やきっかけをもとにした通称の病名は他にも例があります。「マタニティーブルー(産後うつ病)」、「空の巣症候群(子育てが終わり、子供が家を巣立っていった後から母親が経験する不安やうつなどの症状)」、「定年病」などの例があります。
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五月病の症状
仕事や学校、転居などで環境が変わり、最初は張り切って活動していたのに、5月の連休明け頃からだんだんと気分が落ち込む、疲れやすい、仕事や勉強、家事などに集中できない、眠れないといったスランプ状態に陥ること、これがいわゆる「五月病」です。
精神的な症状だけでなく、食欲不振や胃の痛み、めまい、動悸などの体の症状を訴えるケースもよくあります。
五月病の診療科目・検査方法
心身ともに調子が悪いと感じたら一人で悩まず精神科や心療内科あるいはかかりつけの医師がいるクリニックなどに相談しましょう。
また、地域の保健所や保健センター、都道府県・指定都市に設置されている精神保健福祉センターなどにある相談窓口を利用する方法もあります。市区町村役所に電話で問い合わせるか、各自治体のホームページで調べてみましょう。電話相談、来所相談のどちらも可能で、こころの専門医の意見を聞くことができます。
全国共通の「こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」があり、電話をかけると、地域の公的な電話相談窓口につながります。
こころの問題だけでなく、さまざまな相談窓口を掲載している「いのち支える相談窓口一覧」などもあります。学生であれば、各学校に在籍するスクールカウンセラーに相談する方法もあります。
五月病の原因
新しい環境での変化についていけない焦りやストレスが、知らず知らずのうちに精神的及び身体的な症状となってあらわれます。
五月病の予防・治療方法・治療期間
五月病かなと思ったら、まずはとにかく気分転換やリラックスできることをしましょう。これらは五月病の予防法にもなります。
- 趣味やスポーツでストレスを発散する
- 十分に睡眠をとる
- ゆっくりお風呂に入る
- 好きな音楽を聴く
- 自分なりの方法でリラックスする
- 映画や美術館、コンサート、小旅行などに出かけて気分転換をする
- 新しい目標を見つける
- 友人や先輩などに、話を聞いてもらう
五月病の治療経過(合併症・後遺症)
たいていの場合は一過性の心身の不調で、1~2ヶ月程度で自然と環境に適応でき、症状が改善すると言われています。
眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないなど、このような症状が長期にわたって続いている場合は「うつ病」の可能性があります。うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、さまざまな理由から脳の機能障害が起きている状態のことです。
この状態になってしまうと、ものの見方が否定的・悲観的になり、自分がダメな人間だと感じてしまいます。普段なら乗り越えられるストレスもよりつらいものに感じられ、悪循環に陥ってしまいます。
五月病のいろいろな対処法を試してみても心身の不調がなかなか治らない、睡眠はたっぷりとっているのに悩みや疲れが消えない状態が、ほとんど毎日続き2週間以上解消しなければ、うつ病の可能性があります。
特に仕事や家事などにやる気が出なくなるだけではなく、趣味といった、以前は興味があったものにも関心がなくなってしまった場合は注意が必要です。その場合は、早めに心療内科か精神科を受診しましょう。
- 憂うつ、気分が重い(抑うつ気分)
- 何をしても楽しくない、何にも興味がわかない(失快楽症)
- 疲れているのに眠れない、一日中眠い、いつもよりかなり早く目覚める
- イライラして、何かにせき立てられているようで落ち着かない
- 悪いことをしたように感じて自分を責める、自分には価値がないと感じる
- 思考力が落ちる
- 死にたくなる
また、周囲からみてわかる変化もある。身近な人が「どこかいつもと違う」と感じるような変化に気づいたら、本人はうつ病で苦しんでいる可能性があります。
- 表情が暗い
- 涙もろくなった
- 落ち着かない
- ちょっとしたことでもイライラする
- 飲酒量が増える
さらに、身体的な症状があらわれることもあります。
- 食欲がない、おいしいと思えない
- 体がだるく、休んでも回復しない
- ちょっとしたことでも疲れやすい
- 性欲がない
- 頭痛や肩こり
- 動悸やため息、胸苦しさ
- 胃の不快感
- 便秘
- めまい
- 口が渇く
など
五月病になりやすい年齢や性別
五月病と言っても、新入生や5月に限って起きるわけではありません。
完璧主義で物事にこだわりやすい、内向的で孤立しやすいなど、さまざまなことが五月病になりやすい要素ではないかとされています。特に年代や性差を調査したデータはありません。
執筆・監修ドクター
経歴1984年 岐阜大学医学部卒業,ミシガン大学文学部に留学(文化人類学専攻)
1985年 神戸大学精神科で研修
1986年 国立肥前療養所に就職,山上敏子先生から行動療法を学ぶ
1998年 国立菊池病院に転勤。精神科医長、うつ病や不安障害,薬物依存の専門外来と治験などを担当
2000,2001年 ハワイ大学精神科アルコール薬物部門に留学
2003年 臨床研究部長
2007年 診療部長
2008年 医療法人和楽会なごやメンタルクリニック院長
2013年 ハワイ大学精神科臨床准教授
2018年 千代田心療クリニック非常勤医師、BTCセンター・カウンセラー
2019年 原井クリニック開業
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