ひとつのIDでさまざまな施設の順番待ち・予約が可能

EPARKグループ

夜間・休日に電話1本で医師がご自宅へ

急な発熱時など往診(自宅で診察・処方)の無料電話相談を受付しています。

0066-98090-0345523(無料電話相談)

夜間・休日に電話1本で医師ご自宅へ

今すぐ電話する無料電話

ましん麻疹

はしかはしか
更新日:2022/08/10 公開日:2019/02/12 view数:6,202

麻疹とは?

麻疹(ましん)は「はしか」という名でも知られている感染症です。
日本では和名で「はしか」として一般的に知られていますが正式な病名は麻疹(ましん)であり、別名が「はしか」です。

現在の日本では感染の広がりは珍しくなり、コントロールされた状態といえます。
世界的にみるとまだまだ流行している地域は多く、患者さんの命を奪うこともある病気です。

麻疹の症状の特徴は発熱と発疹です。
ウイルスに対する効果的な治療薬はありませんが、多くは安静にすることで治癒します。
また予防接種を受けることで感染を防ぐことが最も効果的な対策です。

麻疹ウイルスに感染することで発症し、高熱や全身に発疹(ほっしん/皮膚が腫れてできるもの)といった症状が出てきます。

麻疹は、ウイルスに感染した人の90%が発症し、基本的には7~10日ほどで軽快します。
しかしながら、稀(まれ)に肺炎・脳炎といった合併症をきたし、生命にかかわる恐れもあります。
先進国における麻疹患者の死亡率は、1000人に1人くらいです。

麻疹ウイルスは感染力が強く、感染者の近くにいて免疫を持っていない(=予防接種を受けていない)人は、ほぼ100%感染するとされています。

インフルエンザと同じように、法律で定められた学校感染症です。
そのため、学生は学校に行くことはできません。
麻疹は発疹に伴う解熱をしてから3日経過するまで出席停止扱いです。

ちなみに社会人が感染症にかかると、予防措置をしていなければ就業停止になることがあります(都道府県に感染したことを届け出ると就業禁止となる場合もあります)。

外出を控えて他の人への感染、流行を防止してください。

名前が似ている「三日はしか」

三日はしかという病気がありますが、正式名称は「風疹(ふうしん)」です。
風疹は麻疹と同じく感染性の病気で症状も似ており、高熱と発疹、リンパ節の腫れが特徴的です。
しかし、麻疹ほど強い症状はなく、早めに回復します。

風疹のもう1つの特徴として先天性風疹症候群(せんてんせいふうしんしょうこうぐん)というものがあります。
免疫のない妊婦さんが風疹ウイルスに感染すると胎児にも感染し、小頭症(しょうとうしょう)や精神発達遅滞(せいしんはったつちたい)、小眼球(しょうがんきゅう)など、さまざまな先天異常を引きおこすことがあります。



目次
  1. 麻疹の症状
  2. 麻疹の診療科目・検査方法
  3. 麻疹の原因
  4. 麻疹の予防・治療方法・治療期間
  5. 麻疹の治療経過(合併症・後遺症)
  6. 麻疹になりやすい年齢や性別

麻疹の症状

麻疹は潜伏期間を置いて発症し、38℃程度の発熱とともに、上気道炎症状(風邪の症状)、結膜炎症状、倦怠感があらわれます。
その後、いったんは熱が下がりますが、半日ほどで39℃程度の高熱が出て、全身に発疹があらわれます。
耳の後ろや頬などに赤い発疹がでるのが特徴です。

疹(しん)が出る1~2日前、頬の内側に水ぶくれができ(口内の粘膜。コプリック斑と呼ばれる斑点)があらわれます。
直径1mm程度の白い斑点であり、麻疹に特徴的な臨床所見といえます。

コプリック斑は、発疹出現の翌日あたりには消失します。
乳幼児の場合、腹痛や下痢などの消化器症状を伴う例もあります。

麻疹の症状は発症してから回復するまで順に「前駆期」「発疹期」「回復期」の3つの時期に分けられます。

前駆期(カタル期)

麻疹ウイルスに感染すると、10~12日ほどの潜伏期のあとに発症します。
発症すると38℃前後の発熱が2~4日続きます。
併せて倦怠感、咳、喉の痛み、鼻水、目の充血、目やにがあらわれて、徐々に症状が増強していきます。
全体的な症状は風邪に似ています。

乳幼児の場合は、腹痛や下痢といった消化器系の症状があらわれることもあります。

発疹期に入る前兆として、頬の内側(奥歯の近く)にコプリック斑という粘膜疹(ねんまくしん / 口の粘膜にできる発疹)がみられます。
コプリック斑が出るこの期間は、コプリック期と分類されることもあります。
直径1mmほどの白い斑点です。

なお、感染力はこの前駆期が最も高くなります。周りの人は感染防止を徹底する必要があります。

発疹期

発疹期に入ると、熱が1℃ほど下がった後に再び高熱が出ます。
また、コプリック斑に続いて耳の後ろや首回り、額に発疹があらわれます。
次の日には顔面や上半身に広がり、2日後には手足まで全身に広がります。
このとき、発疹ができた顔面は麻疹の特徴的な顔貌(がんぼう / 顔の形)です。

できたばかりの発疹は赤く平らな状態ですが、時間が経つと隆起して赤黒くなっていきます。
色は出現した順番に無くなります。

回復期

熱も下がり、発疹も治まる時期です。
発疹の色素は次第に無くなっていき、少しだけ角質がポロポロとれるような状態になります。
全身の倦怠感や咳、鼻水も徐々に改善していきます。

合併症が出ない限り、発症から7~10日くらいで回復します。

修飾麻疹

過去にワクチンを接種してから長い時間が経ち、ウイルスに感染すると、軽度の麻疹症状が出ることがあります。
このような不十分な抗体を持つ人が発症する軽度の麻疹が、修飾麻疹です。
抗体を持つ母体から生まれた乳児も抗体を持つことがあり、感染しても軽い症状で済むことがあります。

麻疹の診療科目・検査方法

症状に応じて内科小児科皮膚科、感染症内科などを受診します。
先進国である本邦においても、1,000人に1人程度は死亡するので、早期受診が望まれます。発疹、コプリック斑などの臨床所見から診断します。
診断の際には、麻疹患者との接触の有無、予防接種歴の有無なども確認します。
検査はウイルスを採取してその遺伝子などを調べるか、血液検査があります。IgM抗体検査、PCR検査などです。

受診について

麻疹は専門的な感染症科でももちろん診てもらえますが、最寄りの内科小児科で診てもらうことも可能です。
発熱と発疹が出ているような麻疹の疑いがある場合は、事前に病院に伝えておきます。
感染症であるため、他の患者さんに移らないように別室で診察を受けるといった配慮が病院側で必要になるためです。

検査内容

麻疹を検査するには2つの手段があります。

1.ウイルス遺伝子検出法

発疹出現後7日以内に、

・血液(EDTA血)
・咽頭ぬぐい液
・尿

の3点セット(できれば2点以上)を地方衛生研究所に送り、検査します。

いずれも4℃以下で冷蔵して3日以内に搬送します。

咽頭ぬぐい液
医師が患者さんにアーと声を出してもらいながら、口を広げて舌を押さえます。
綿棒で口のなかの患部や扁桃腺(へんとうせん)をこすり、ウイルスや細菌がないかを調べます。

2.血清診断方法

感染症にかかると身体のなかで抗体(ウイルスが体内に入っても病気にならないための物質)がつくられます。
この抗体があるかを診ることで、麻疹になっているかを診断します。

診断方法は以下の2通りです。

IgM抗体検査
発疹が出て4~28日に、麻疹特異的IgM抗体検査(EIA法)を、病院で実施します。
抗体のなかでも最初につくられるものをIgMといいます。
この抗体が存在しているかを検査することで、麻疹にかかっている(かかっていた)のかを判断できます。

IgG 抗体検査(ペア血清)
IgMよりも抗体としての力が強いのがIgGです。
IgMがつくられた後に産生されていきます。
そのため、発疹出現から7 日間のうちに1回、1回目から2 週間〜4 週間後に2回目のIgGを検査することで、麻疹にかかっていたかどうかを判断します。

麻疹の原因

麻疹ウイルスに感染することが原因。
感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染で、感染力は非常に強いです。

感染力は1人が感染すれば周りの12~14人は感染するといわれています。
感染ルートとしては飛沫感染(空気中に咳やくしゃみでウイルスが飛び、周りの人が感染すること)や接触感染(ウイルスがついた手や食器、モノに触れることで感染すること)といった複数の感染ルートが存在します。

麻疹ウイルスはA ~Hのグレードと24の遺伝子型で分類されます。
日本には元々D5型の麻疹ウイルスが存在していますが、発症者が減少し、2010年には罹患者がほとんどいなくなりました。

近年では、渡航者によって主に中国からH1、タイ、インド、オーストラリアからのD8、インドネシアからG3、フィリピンのD9、フィリピン、タイ、スリランカからのB3 といった輸入株の麻疹ウイルスによって感染・発症しているケースが多いとされています。

麻疹の流行時期は3~8月と、春~夏の期間に流行する傾向にあります。
年単位では2~3年に一度流行します。

日本においては2015年から麻疹排除状態となっており、定期的な流行がおこる可能性は低いとされていました。

麻疹の予防・治療方法・治療期間

麻疹ウイルスに対して、有効な抗ウイルス薬は存在しません。
そのため、対症療法をおこなって自然治癒を待つことになります。

麻疹への対策としては、あらかじめ予防接種を受けておくことがもっとも有効です。
また、麻疹患者との接触から72時間以内に麻疹ワクチンを接種することで、発症を抑えられる可能性があります。

合併症がなければ、7~10日ほどで治癒します。

あくまで出ている症状に対して最適な方法を選択して対処し、合併症などを防ぎながら体内から麻疹ウイルスが排除されるのを待ちます。

薬以外の対処療法

・水分を十分にとる

水分をとって脱水症状を予防します。
幼い子どもは機嫌を損ねると水を飲まないことがあるため、こまめに水分補給が必要です。

・発熱時には頭部を冷やす

・暑すぎない程度に保温し、保湿する

発熱があっても、なるべく温かくします。
また、ウイルスが蔓延するため、定期的な換気と保湿も怠らないようにします。

・病院で診察を受ける

本当に麻疹かどうかを診断してもらいます。
風邪だと思い込み、幼稚園や学校に行くと感染させる可能性があります。

予防

はしかは空気感染するうえに、強い感染力をもっています。そのため、インフルエンザなどのように手洗いやうがいなどでは、効果がないとはいえませんが、予防は難しいです。しかし、現在ではワクチンが開発されており、予防接種を受けることで感染を防ぐことができます。

はしかのワクチンは抗体を体内に作ることで予防します。一度、はしかにかかった場合も、それ以降は感染しなくなります。

そこで日本では麻疹の予防接種を、2006年4月から、定期接種を2回受けるよう推奨されています。
ワクチンは麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)というもので、名前の通り麻疹と風疹を予防するものです。

1回目の予防接種(第1期)は1歳児におこないます。
麻疹が流行している国へ旅行する、保育園や幼稚園で流行しているといった場合は1歳以前に受けることが可能です。
その場合は任意接種のため有料となります。

2回目は小学校入学前の1年間のうちにおこないます。
国立感染症研究所によると、1回目の予防接種を受けると免疫がつく確率(抗体陽転率)は約95%、2回目の実施により免疫がつく確率は97~99%とされており、麻疹予防として十分な効果があります。

麻疹患者との接触があり、感染が疑われる場合は緊急的に24~72時間以内にワクチンを接種すると感染を防げる可能性があります。

また、定期接種をしていない人は任意での予防接種が可能です。

副反応

1回目の予防接種を受けると、以下のような症状が出る場合があります。
いずれも軽症で、自然治癒します。
発熱での熱性けいれんをおこしても対処できるように準備しておく必要があります。

・発熱
・発疹

熱性けいれんは生後6ヶ月~5歳までの乳幼児にみられる、38℃以上の熱がある場合におこるけいれんや意識障害のことです。
身体が硬くなり、手足が震え、白目を向いて意識を失い、呼吸が荒くなります。ほとんどの場合、5分ほどすると何事もなく眠っている状態に落ち着きます。

ワクチンを受けられない人

基本的には体調がすでに崩れている人、他の病気を発症している人は予防接種を受けることはできません。

・発熱がある人(37.5℃以上)
・重篤な急性疾患を発症している人(急性肺炎、急性心不全など)
・アナフィラキシーがおこったことがある人

ワクチンに含まれる成分によって卵アレルギーによるアナフィラキシーをおこす人もいます。
しかし、近年製造されているワクチンにはその成分が含まれていません。
そのため、あまり気にする必要はありませんが、過去にアナフィラキシーショックをおこした人は接種を控えて、医師と相談します。

・免疫異常がある人、免疫を抑える治療をおこなっている人

他の病気の治療で、副腎皮質ステロイド剤を使用している人は予防接種を受けられません。
ステロイドは一時的に免疫力を抑え、アレルギー反応をおこさないための薬です。
免疫力が低下している状態でワクチンを接種すると、身体の免疫機能が働かず病気を引きおこしてしまいます。

・上記以外にも医師が予防接種は不適当だと判断した人

麻疹の治療経過(合併症・後遺症)

ほとんどの場合、問題なく治癒します。
しかし、肺炎、脳炎などの合併症をおこした場合は治癒までに時間を要します。
脳炎を合併するのは1,000人に1人程度ですが、脳炎を合併した患者は死亡率が15%程度となります。
肺炎と脳炎が、麻疹における死亡例の多くを占めます。

麻疹の合併症がおこる可能性は多くはありません。肺炎や中枢神経にかかわる病気を発症した場合、生命にかかわります。

また他にも中耳炎、心筋炎や脳症などの可能性もあります。
麻疹の合併症で特に注意すべき病気は、肺炎と中枢神経系の合併症です。
この2つの病気についてそれぞれ紹介します。

合併症の発症率や致死率を表示してますが、確率としてはとても低い数字です。
しっかりと療養して合併症を引きおこさないようにすることが重要です。

・肺炎

麻疹から肺炎への合併率は6%ですが、乳児が合併した場合には致死率が高くなります。
実際、乳児が麻疹で死亡する場合、死亡例の60%は肺炎の合併によります。

合併しておこる肺炎の種類は主に以下の3つ。

1.ウイルス性肺炎

麻疹の発症する初期から合併することがあります。
麻疹ウイルスが肺に感染して発熱、咳を引きおこします。
重度になると呼吸困難になります。
ウイルス性肺炎の特徴は、痰(たん)が出にくく、全身の倦怠感が見られます。

2.細菌性肺炎

発疹期を過ぎても熱が下がらない場合に注意すべき合併症です。
麻疹ウイルスによる症状が治まるまでに、他の細菌に感染することで合併する肺炎です。
インフルエンザ菌(中耳炎や肺炎になる原因菌。インフルエンザにはならない)や黄色ブドウ球菌(皮膚の炎症や肺炎になります)といった細菌が主な原因菌となります。

症状は発熱、咳、痰、呼吸困難、全身の倦怠感を伴います。

3.巨細胞性肺炎

成人の麻疹の患者さん、または細胞の免疫不全(めんえきふぜん / 遺伝子の異常や薬の影響で、ウイルスや細菌から身体を守る力が低下している状態のこと)がみられる子どもが、稀(まれ)に合併する肺炎です。

肺が麻疹ウイルスに持続的に感染した結果生じる合併症で、予後が悪いとされています。

・中枢神経系合併症

中枢神経系の合併症は、発疹が出てから2~6日目に発症することが多いです。
麻疹の重症度と脳炎発症には関連はありません。
合併した人の約60%は回復しますが、25%に中枢神経系の後遺症(精神発達遅滞やけいれん、行動異常、麻痺)を残し、約15%は命にかかわります。

・中耳炎

麻疹患者さんの約7%が合併する病気です。
細菌の二次感染によっておこり、乳幼児は耳が痛いことを伝えられないため、膿性耳漏にまで発展してしまうことがあるので、注意が必要です。膿性耳漏(のうせいじろう)とは膿が混じった液体が耳から出る症状のことです。

・クループ症候群

麻疹ウイルスや二次感染によって、気管支炎(きかんしえん)を引きおこす病気。
咳や痰、倦怠感が主な症状で、呼吸困難に陥ることもあります。

・心筋炎

ウイルスによって心臓の筋肉が炎症を引きおこす病気。
炎症が起きることで、心臓の血流を送る機能が低下します。
命にかかわることは稀(まれ)。

・亜急性硬化性全脳炎(あきゅうせいこうかせいぜんのうえん/subacute sclerosing panencephalitis:SSPE)

SSPEは稀(まれ)な合併症の1つ。
潜伏期間が4~8年あり、麻疹が治ってから数年後に症状が出はじめます。

免疫不全に陥っている1~2歳の子どもが、麻疹にかかると合併して発症する恐れがあります。
先に述べたように数年の潜伏期間があるため、発症年齢は6~10歳頃が多いとされています。

SSPEにかかる可能性は極めて低いとされていますが、効果的な治療法がないため、予後が非常に悪いことも特徴です。

症状は中枢神経系の異常であり、知能障害や運動障害が徐々に進行します。
成人が発症すると進行性の認知機能障害(にんちきのうしょうがい)がおこる場合があります。
男女の発症率は男:女=2:1と男性の方が女性よりも高い傾向にあります。

SSPEは発症原因の1つにウイルスがあること以外は不明なことばかりで、現在も研究が進められています。
若年性(じゃくねんせい)の認知機能障害は65歳未満の人がなる認知機能障害で、数日前のことが思い出せない、約束を忘れるといった記憶障害や、今日の日付がわからない、自分の居る場所がわからなくなる見当識障害がおこります。そのほかにも性格の変化、発作的な脱力がおこることがあります。

麻疹になりやすい年齢や性別

2008年以降、麻疹は5類感染症(全数把握対象)となっています。
全数報告がはじまった2008年は麻疹の流行があり、1万1,013例の報告がありました。
一方、2015年には35例を記録しています。
そのほかの年は、おおむね200~700例で推移しています。

もともとは1歳代が最多であり、基本的に5歳以下の子どもがかかる病気でした。
しかし、近年(2008年以降)は10~20代の罹患者が増えており、2015年以降は20歳以上の罹患者が7割以上を占めています。

ウイルス感染症なので、男女差はみられません。

世界的に見ると、今でも麻疹は多くの子供の生命を奪う病気です。
ただ、麻疹ワクチンの普及が進んだことで、過去と比較すれば劇的に減少しました。
2000年、麻疹による年間死亡者数(全世界)は約55万人でしたが、2016年には約9万人になっています。

とはいえ、定期予防接種を実施している国では、麻疹は稀(まれ)な病気といえます。

日本での麻疹の発生状況は、国立感染症研究所のデータを参考にすると、麻疹への感染は11,013例(2008年)から、2009年には732例と93%も減少しています。

2010年には447例、2011年に439例、2012年に283例、2013年は229例と減少しつつありましたが、2014年には462例と増加しました。

2014年の増加は海外からの輸入感染によるものとされています。

2015年3月には国内での「麻疹排除状態(麻疹ウイルスが国内で流行してから予防体制をつくり、3年以上流行を防いでいる状態)」となり、国内での発症はきわめて少なくなっています。

そのため、近年、日本国内で「麻疹の流行」といった場合、2014年と同じような輸入感染による突発的流行を示すのが普通です。

麻疹の流行時期は3~8月と、春~夏の期間に流行する傾向にあります。
年単位では2~3年に一度流行します。
日本においては2015年から麻疹排除状態となっており、定期的な流行がおこる可能性は低いとされています。

2000年代に入り、台湾では麻疹がほぼ根絶状態になっていましたが、2018年3月、台北の航空会社職員など、12人の感染・発症が確認されました。

そのほか、東南アジアでも増加の傾向がみられ、フイリピンのダバオでは2018年に入って4000人以上の感染・発症が確認されています。

さらには、西欧でも流行の兆候がみられ、フランス南西部のボルドーで1300人以上、イタリアで400人以上の感染・発症がわかっています。

ほかにも、南アメリカのベネズエラで約300人、ブラジル北部でも増加傾向にあると考えられています。

日本国内においても、20代後半~40代前半において、麻疹ウイルスに対する免疫力が落ちてきているとされています。
当該の年齢層にある人が、麻疹流行中の外国旅行を考えている場合、渡航前のワクチン接種が推奨されます。

麻疹ウイルスは感染力の強いウイルスなので、今後もまた、海外からの流入により、突発的・局所的な流行が発生することは避けられないと考えられています。

2018年3月、沖縄県における麻疹の流行

2018年3月末あたりから、沖縄県で麻疹の患者さんが増加傾向をみせました。
5月には、沖縄県の麻疹患者さんが90人ちかくに膨れあがり、小規模ながら「突発的流行」と呼べる状況に至りました。

さらに、沖縄を訪問した人々が各地で麻疹を発症し、愛知県名古屋市、神奈川県川崎市、さらには東京都、茨城県などでも感染者が確認されました。

沖縄県で麻疹が流行したきっかけは、「台湾からの旅行者」と考えられています。

執筆・監修ドクター

大利 昌久
大利 昌久 医師 おおり医院 院長 担当科目 小児科/内科/外科/精神科/アレルギー科/呼吸器内科

経歴1968年 長崎大学医学部卒
1978年 医学博士 東京大学大学院
1986年 おおり医院開設

不正確な情報を報告

不正確な情報を報告

メールアドレス:任意
※メールアドレスをご入力いただいた方には、改善結果をご報告致します。
コメント(オプション):

関連する病気

麻疹以外の病気に関する情報を探したい方はこちら。

関連カテゴリ

麻疹に関連するカテゴリはこちら。

関連コラム

「麻疹」に関するコラムはこちら。