はいそくせんしょう肺塞栓症
肺塞栓症とは?
肺塞栓症(はいそくせんしょう)は、主に静脈でできた血の固まり(血栓)によって、心臓から肺へ血液を送る血管(肺動脈)が詰まってしまう症状のことです。
肺梗塞やエコノミークラス症候群は肺塞栓症の別名でもあります。
血栓は飛行機などの乗り物などに乗った際に長時間同じ姿勢で、水分を取らずにいると静脈内でできることがあります。また手術や妊娠などが原因の場合もあります。
肺動脈が詰まると酸素を血液に取り込めず、全身へ血液を送れないなどの症状がおこります。そのため、命にかかわる病気ともいえます。
肺塞栓症の症状
肺動脈の閉塞範囲により、無症状からショックに至るまで様々な臨床症状がみられます。同じ体勢が長く続いた後の突発的な「呼吸困難」「胸痛」が本症を疑うきっかけになります。
血痰(けったん)、意識消失、血圧低下などの症状が現れます。下肢の深部静脈血栓症を合併する場合、足のはれ、痛みが出ます。
肺塞栓症の診療科目・検査方法
肺塞栓症の原因
心臓から肺に血液を送る血管―肺動脈に血栓が詰まるのが原因です。血栓ができるのはほとんどが脚部です。
脚の静脈の中で血液が凝固して血栓(深部静脈血栓)になり、血の流れに乗り、(心臓を経由して)肺動脈に詰まります。大きな血栓が肺動脈を塞ぐと、そこで血流が止まります。
「酸素を血液に取り込めなくなる」「心臓から血液を押し出せなくなる」などの理由で最悪の場合、生命にかかわります。
肺塞栓症の予防・治療方法・治療期間
この病気が疑われる場合、検査と並行して酸素吸入、薬物療法を行います。
まず血液が固まらないようにする抗凝固薬を使った薬物療法を実施します。その後、少なくとも数ヶ月は抗凝固薬の服用が必要です。
症例によっては、永続的に服用する場合もあります。
重症例においては、血栓を溶解するための血栓溶解薬を投与します。ただし、副作用による出血をきたしやすいので、適応には慎重な判断が求められます。
救命のため、カテーテル治療・手術で直接的に血栓を取り除くこともあります。
手術・薬物療法が奏効するまで待つだけの時間的余裕がない場合、人工心肺装置を使って循環機能・呼吸機能を補助する場合があります。この処置はベッドサイドで実施することが可能です。
出血などで抗凝固薬の使用が難しいときは、下大静脈にフィルターを留置します。下大動脈は脚の静脈から心臓に戻る途中の静脈です。フィルターの設置により、血流を維持しながら、血栓が肺に流れこむのを防ぐことが期待できます。
また、再発予防として、「弾性ストッキングの着用」「間欠的空気圧迫法」が知られています。
軽症例は外来通院、中等症では1~2週間の入院、重症例では2週間以上の入院が必要です。その後も継続して外来治療が必要です。
肺塞栓症の治療経過(合併症・後遺症)
早期発見、早期治療が重要です。
入院での治療後に、継続して外来治療が必要となります。
肺塞栓症になりやすい年齢や性別
人口100万人あたり62人(2006年の発症率をもとにした疫学調査による)になります。これまでは欧米に多くみられる疾患でしたが、食事の欧米化などに伴って、わが国でも頻度が増加してきています。
男性より女性に多く、60~70 歳代にピークがみられます。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴2005年 日本医科大学医学部医学科 卒業
横浜市立市民病院
日本医科大学医学部付属病院
2008年 国際親善総合病院内科
2009年 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院循環器センター内科
2011年 湘南鎌倉総合病院 心臓センター循環器科
2014年 スイス留学・チューリッヒ大学病院循環器内科
2015年 日本医科大学医学部付属病院 循環器内科
医療法人笹野台内科 院長
2019年 5月より二俣川内科・循環器内科クリニック 院長
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